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「みんな、私と燐に今日任務があるって、話してくれたでしょ?」
玲薇は優しく、三人に聞いてみるものの、彼らは顔を合わせるばかり。
しばらく沈黙があって、困ったような顔をした志摩がおずおずと言った。
「そないな話、した覚えもないし、聞いてもいませんけど・・・?」
「な・・・」
「え?」
二人して、言葉に詰まる。
どういうこと・・・?
「おや、奥村先生」
背後で呑気な声がし、振り向く。
雑踏(ざっとう)の中に祓魔塾の同僚が並んで立っている。
「椿先生・・・湯ノ川先生」
雪男が思わず顔をしかめる。
「お若いってのは、いいですねー。デートだなんて」
「「っ・・・」」
「いや、これは・・・!」
身振り手振りで言葉を探す。
「まぁまぁ、そう否定しなくとも。お二人とも、どうですか?」
はっぴ姿ではないが、椿は手にあるトレーから湯気の立ったタコ焼きを勧めてきた。
いかにも買ったばかりという様子だ。
「ここの、タコが大きくて美味しいんですよねー」
横から湯ノ川が口を挟む。二人のいかにものんびりとした様子に、雪男が眉を吊り上げた。
「タコ焼きなんて食べている場合じゃないでしょう!!」
「えー?大判焼の方がよかった?」
「な・・・!!そういうことじゃ・・・」
軽い調子で返され、思わず語調を荒らげる。
玲薇にとっては、もうどうしていいのかわからない状態だった。
そんな時、再び背中に声がかかった。
「おや?奥村先生も来ていたのですか?」
今度は何だと振り返ると、玲薇も知る審問官の姿があった。
「あ」
雪男に処分を言いわたしたあの小柄な審問官である。
彼は布で吊るされた雪男の右腕を見ると、ケガですか、と眉をひそめた。
「ずいぶんとひどいようですが、それは任務の折に?」
「・・・・・・」
「は・・・?」
雪男は黙ったままだが、玲薇は間抜けな声を出してしまう。
なぜ、この人は雪男がケガをした原因を忘れたのか・・・。
「お若いですし、血気盛んなのはしかたがないとは思いますが、
くれぐれも気をつけてくださいね」
審問官が好好爺然とした顔で笑う。
雪男は今度こそ絶句した。
(どうなってるんだ・・・一体・・・)
まるで、不思議の国に迷いこんでしまったかのようだ。
何かがおかしい。表面上はまったく変わらないのに、何かが歪んでいる。
「雪男・・・」
自分たちはどうすればいいのか、何をすればいいのか。
雪男が情報を頭の中で整理していると、上空で大きな爆発音が聞こえた。
祭りに浮かれていた人々から悲鳴がもれる。
仰ぎ見ると、近隣の建物の屋根を突き破って、巨大なモルブが姿を現していた。
ぶよぶよとした重たげな頭をもたげ、こちらにせり出してこようとしている。
「バカな・・・どうやって結界を・・・」
山車の上で祭囃子に興じていた祓魔塾たちがざわめく。
一般の観衆もにわかに騒然となった。
「な、なんだ!?」
「今のって、まさか・・・ガス爆発・・・?」
「あそこだ!見ろ!!屋根が」
「消防車、呼べ!消防車ーっ!!」
大半が魔障を受けていない一般人である彼らには、悪魔の姿は見えていない。
いきなり吹き飛んだ屋根に、ガス爆発か何かの類いだと思っている。
誰もがわれ先にと逃げ出したため、蜂の巣をつついたような状態になった。
上空では、モルブが山車に乗り移っていた。
祓魔師たちが慌てて山車から飛び降りる。
「くっ・・・玲薇は待ってて!」
「え、雪男!?」
逃げ惑う人々の間を縫って山車へと近づいていく雪男。
彼に言われた通り、玲薇は人の波に逆らいながらも、
なんとか近くの建物の隙間に滑りこむ。
それと同時かのように、雪男は左手で銃を抜いた。
モルブの巨大な頭部へ、次々に銃弾を撃ちこんでいく。
不気味に膨れた悪魔の巨躯が、瞬時に弾け散った。
降り注ぐ悪魔の体液によって、山車だけでなく、
祓魔師たちや一般観衆、塾生らも毒々しい色に染まった。
「なんじゃこりゃ!?」
悪魔の体液に染まった勝呂が絶叫する。同じ状態になった子猫丸が、
ネバついた眼鏡をはずしながら、苦い顔でそれに答えた。
「おそらく・・・モルブの体液ですね」
「・・・最悪やぁ」
ネバネバの液体を頭から滴らせた志摩が、半泣きの顔でぼやく。
(・・・・・・?)
その光景をなぜか前にも見たような気がして、
ぼんやりとしていた燐が、はっと我に返る。
「うさ麻呂?」
横にいたはずのうさ麻呂がいない。
どうやら、混乱の最中にはぐれてしまったらしい。
慌てて周囲を見わたしたが、この人の多さでは、
小さなうさ麻呂を見つけ出すのは困難だった。
「うさ麻呂ー!!」
大声で名を呼ぶと、燐は一人、人ごみをかきわけるように走り出した。
玲薇は優しく、三人に聞いてみるものの、彼らは顔を合わせるばかり。
しばらく沈黙があって、困ったような顔をした志摩がおずおずと言った。
「そないな話、した覚えもないし、聞いてもいませんけど・・・?」
「な・・・」
「え?」
二人して、言葉に詰まる。
どういうこと・・・?
「おや、奥村先生」
背後で呑気な声がし、振り向く。
雑踏(ざっとう)の中に祓魔塾の同僚が並んで立っている。
「椿先生・・・湯ノ川先生」
雪男が思わず顔をしかめる。
「お若いってのは、いいですねー。デートだなんて」
「「っ・・・」」
「いや、これは・・・!」
身振り手振りで言葉を探す。
「まぁまぁ、そう否定しなくとも。お二人とも、どうですか?」
はっぴ姿ではないが、椿は手にあるトレーから湯気の立ったタコ焼きを勧めてきた。
いかにも買ったばかりという様子だ。
「ここの、タコが大きくて美味しいんですよねー」
横から湯ノ川が口を挟む。二人のいかにものんびりとした様子に、雪男が眉を吊り上げた。
「タコ焼きなんて食べている場合じゃないでしょう!!」
「えー?大判焼の方がよかった?」
「な・・・!!そういうことじゃ・・・」
軽い調子で返され、思わず語調を荒らげる。
玲薇にとっては、もうどうしていいのかわからない状態だった。
そんな時、再び背中に声がかかった。
「おや?奥村先生も来ていたのですか?」
今度は何だと振り返ると、玲薇も知る審問官の姿があった。
「あ」
雪男に処分を言いわたしたあの小柄な審問官である。
彼は布で吊るされた雪男の右腕を見ると、ケガですか、と眉をひそめた。
「ずいぶんとひどいようですが、それは任務の折に?」
「・・・・・・」
「は・・・?」
雪男は黙ったままだが、玲薇は間抜けな声を出してしまう。
なぜ、この人は雪男がケガをした原因を忘れたのか・・・。
「お若いですし、血気盛んなのはしかたがないとは思いますが、
くれぐれも気をつけてくださいね」
審問官が好好爺然とした顔で笑う。
雪男は今度こそ絶句した。
(どうなってるんだ・・・一体・・・)
まるで、不思議の国に迷いこんでしまったかのようだ。
何かがおかしい。表面上はまったく変わらないのに、何かが歪んでいる。
「雪男・・・」
自分たちはどうすればいいのか、何をすればいいのか。
雪男が情報を頭の中で整理していると、上空で大きな爆発音が聞こえた。
祭りに浮かれていた人々から悲鳴がもれる。
仰ぎ見ると、近隣の建物の屋根を突き破って、巨大なモルブが姿を現していた。
ぶよぶよとした重たげな頭をもたげ、こちらにせり出してこようとしている。
「バカな・・・どうやって結界を・・・」
山車の上で祭囃子に興じていた祓魔塾たちがざわめく。
一般の観衆もにわかに騒然となった。
「な、なんだ!?」
「今のって、まさか・・・ガス爆発・・・?」
「あそこだ!見ろ!!屋根が」
「消防車、呼べ!消防車ーっ!!」
大半が魔障を受けていない一般人である彼らには、悪魔の姿は見えていない。
いきなり吹き飛んだ屋根に、ガス爆発か何かの類いだと思っている。
誰もがわれ先にと逃げ出したため、蜂の巣をつついたような状態になった。
上空では、モルブが山車に乗り移っていた。
祓魔師たちが慌てて山車から飛び降りる。
「くっ・・・玲薇は待ってて!」
「え、雪男!?」
逃げ惑う人々の間を縫って山車へと近づいていく雪男。
彼に言われた通り、玲薇は人の波に逆らいながらも、
なんとか近くの建物の隙間に滑りこむ。
それと同時かのように、雪男は左手で銃を抜いた。
モルブの巨大な頭部へ、次々に銃弾を撃ちこんでいく。
不気味に膨れた悪魔の巨躯が、瞬時に弾け散った。
降り注ぐ悪魔の体液によって、山車だけでなく、
祓魔師たちや一般観衆、塾生らも毒々しい色に染まった。
「なんじゃこりゃ!?」
悪魔の体液に染まった勝呂が絶叫する。同じ状態になった子猫丸が、
ネバついた眼鏡をはずしながら、苦い顔でそれに答えた。
「おそらく・・・モルブの体液ですね」
「・・・最悪やぁ」
ネバネバの液体を頭から滴らせた志摩が、半泣きの顔でぼやく。
(・・・・・・?)
その光景をなぜか前にも見たような気がして、
ぼんやりとしていた燐が、はっと我に返る。
「うさ麻呂?」
横にいたはずのうさ麻呂がいない。
どうやら、混乱の最中にはぐれてしまったらしい。
慌てて周囲を見わたしたが、この人の多さでは、
小さなうさ麻呂を見つけ出すのは困難だった。
「うさ麻呂ー!!」
大声で名を呼ぶと、燐は一人、人ごみをかきわけるように走り出した。