7
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(だけど・・・)
鬼灯から天へと昇っていった霊の放った美しい光。
しえみの、心からうれしそうな笑顔。
あの白々と明けゆく空の下で見た光景が、
雪男の心に暗い影を落とす。
やがて、ケーブルカーがゴトッという音を立ててホームに止まった。
薄暗いホームに降り立つと、ホームに待っていたリュウと二人の部下が顔を上げた。
「来たか、遅かったな」
「すみません」
小さく頭を下げ、彼らのもとへと向かう。
歩きながら雑念を振り払った。
「二時間ほど前、南町で幽霊列車の目撃情報が出た。今から向かうぞ」
「はい」
うなずいた雪男がリュウに続く。
斜め先を行くリュウには、昨夜からの疲れなど微塵も見えない。
その端整な横顔は、無駄な馴れ合いを拒絶するようですらあった。
悪い人間ではないのだろうが、言葉尻がいちいちきつく、
冷静沈着、抜き身の刃物のような目つきのせいか、
氷のような印象を受ける。
一方で、悪魔と対峙する時の彼は、別人のように猛々しく、まるで炎のようだ。
雪男はそこに、彼の悪魔を祓うことへの執念のようなものを感じ取っていた。
祓魔の名門の血がそうさせるのか・・・。それとも、何か他に理由があるのだろうか。
「そういえば、シュラさんに聞いたんですが、
リュウさんはこのお祭りで称えられている祓魔師の末裔だそうですね」
黙っているのも気づまりなので、何気なく話を振っただけだが、
そのとたん、リュウの顔が目に見えて不機嫌になった。
雪男の問いには答えない。
「さっさと向かうぞ」
そう言い捨て歩調を早める。明らかにこの話題を避けていた。
その強張った横顔に、雪男が眉をひそめる。
一体、何が気にさわったのかと測りかねる雪男の視線の先で、
異国からの祓魔師は、何かとてつもなく苦いものを飲み下すような顔で、
薄暗い虚空を睨んでいた。
男子寮旧館の自分の部屋で、玲薇はベッドに潜ったままだった。
「・・・・・・・」
昨日の夜の出来事が、脳裏に焼き付き離れない。
それでいて、顔を合わせるなんてとんでもないことだ。
なんで、こんなことになるのか・・・。
大っ嫌いとも、言ってしまった・・・。
「・・・・・・・」
あれから、一言も言葉をかわしていない。
「りん」
「んー?」
窓の外をボーッと眺めていた燐は、うさ麻呂の顔を見る。
「今日は、なにもせんのか?」
「・・・なんもやる気が出ねーというか・・・」
「?」
でも、ずっと部屋にいるわけにもいかないか。
「外に行くか?」
「いく!」
キラキラなその笑顔は、まるで本当の無邪気な子供のよう。
一緒に部屋を出れば、うさ麻呂は隣の部屋を見た。
「一緒に、行かぬのか?」
「玲薇のことか・・・?」
声をかけても、部屋からは出てこないだろう。
「あ、うさ麻呂?」
うさ麻呂は小さな足を懸命に走らせて、
玲薇の部屋のドアノブに必死に手を伸ばす。
「んー、届かぬ・・・!」
燐の寂しい顔なんて、見たくない。
「しょうがねぇな」
その一生懸命な姿が、微笑ましく思う。
ドアノブを手にして、扉を開けた。
「!」
ハッとし、玲薇はベッドから上半身を起こす。
「あそぼ!」
「キャッ」
胸元に飛び込んできたうさ麻呂に、驚きを隠せない。
「な、なに・・・?」
「お姉ちゃん!」
「?」
「一緒に外で遊ぼうってさ」
「燐!」
申し訳ないのか、照れ臭いのか、燐は髪の毛をかきながら入ってくる。
「な?」
な、と言われても・・・。
「あのことは俺、気にしてねぇからさ」
「・・・・・・」
「なにか、あったのか?」
「ううん、何もない」
うさ麻呂を抱き上げて、燐の方へと行く。
「ごめんね、燐」
一人で感情をぶつけ、イライラして。
「大嫌いなんて、そんなことないから。雪男のことも・・・」
嫌われるのが怖くて、直接謝れないと思っていた。
でも、うさ麻呂がいてくれたからかな。素直になれる・・・。
うじうじしても、仕方ない。
すると、うさ麻呂を抱いた玲薇を、燐はそのまま優しく抱いた。
トクンと、小さく心臓が鳴るのが聞こえる。
「あんなん本気で言ったなんて、俺思ってなかったからな。ぜってー、違うって」
嫌いなんて、嘘だって。
「うん」
よかった・・・ありがとう、燐。
「苦しい」
二人の間にいたうさ麻呂が、小さくうめく。
「あ、ごめんね」
離れて、腕の中から解放してあげるように下ろしてやった。
「そと、行くのじゃろ?」
首をかしげるうさ麻呂の視線に合わせるよう、燐はしゃがんで頭をなでる。
「おう。悪いけど、先に行けるか?」
「わかった」
子供は素直なんて聞くけど、本当なんだと実感させられる。
「燐?」
うさ麻呂の背中を見守りつつ、声をかける。
「!」
ふと、振り返ったと思うと、触れるだけの優しいキス・・・。
唇が離れた瞬間に、きつく抱き締められた。
「燐」
「雪男の奴に、見せつけられたからな。俺も負けねー」
「もー。別に三人でいられればいいのに」
「俺はイヤだね」
キミの隣は、俺だ。
鬼灯から天へと昇っていった霊の放った美しい光。
しえみの、心からうれしそうな笑顔。
あの白々と明けゆく空の下で見た光景が、
雪男の心に暗い影を落とす。
やがて、ケーブルカーがゴトッという音を立ててホームに止まった。
薄暗いホームに降り立つと、ホームに待っていたリュウと二人の部下が顔を上げた。
「来たか、遅かったな」
「すみません」
小さく頭を下げ、彼らのもとへと向かう。
歩きながら雑念を振り払った。
「二時間ほど前、南町で幽霊列車の目撃情報が出た。今から向かうぞ」
「はい」
うなずいた雪男がリュウに続く。
斜め先を行くリュウには、昨夜からの疲れなど微塵も見えない。
その端整な横顔は、無駄な馴れ合いを拒絶するようですらあった。
悪い人間ではないのだろうが、言葉尻がいちいちきつく、
冷静沈着、抜き身の刃物のような目つきのせいか、
氷のような印象を受ける。
一方で、悪魔と対峙する時の彼は、別人のように猛々しく、まるで炎のようだ。
雪男はそこに、彼の悪魔を祓うことへの執念のようなものを感じ取っていた。
祓魔の名門の血がそうさせるのか・・・。それとも、何か他に理由があるのだろうか。
「そういえば、シュラさんに聞いたんですが、
リュウさんはこのお祭りで称えられている祓魔師の末裔だそうですね」
黙っているのも気づまりなので、何気なく話を振っただけだが、
そのとたん、リュウの顔が目に見えて不機嫌になった。
雪男の問いには答えない。
「さっさと向かうぞ」
そう言い捨て歩調を早める。明らかにこの話題を避けていた。
その強張った横顔に、雪男が眉をひそめる。
一体、何が気にさわったのかと測りかねる雪男の視線の先で、
異国からの祓魔師は、何かとてつもなく苦いものを飲み下すような顔で、
薄暗い虚空を睨んでいた。
男子寮旧館の自分の部屋で、玲薇はベッドに潜ったままだった。
「・・・・・・・」
昨日の夜の出来事が、脳裏に焼き付き離れない。
それでいて、顔を合わせるなんてとんでもないことだ。
なんで、こんなことになるのか・・・。
大っ嫌いとも、言ってしまった・・・。
「・・・・・・・」
あれから、一言も言葉をかわしていない。
「りん」
「んー?」
窓の外をボーッと眺めていた燐は、うさ麻呂の顔を見る。
「今日は、なにもせんのか?」
「・・・なんもやる気が出ねーというか・・・」
「?」
でも、ずっと部屋にいるわけにもいかないか。
「外に行くか?」
「いく!」
キラキラなその笑顔は、まるで本当の無邪気な子供のよう。
一緒に部屋を出れば、うさ麻呂は隣の部屋を見た。
「一緒に、行かぬのか?」
「玲薇のことか・・・?」
声をかけても、部屋からは出てこないだろう。
「あ、うさ麻呂?」
うさ麻呂は小さな足を懸命に走らせて、
玲薇の部屋のドアノブに必死に手を伸ばす。
「んー、届かぬ・・・!」
燐の寂しい顔なんて、見たくない。
「しょうがねぇな」
その一生懸命な姿が、微笑ましく思う。
ドアノブを手にして、扉を開けた。
「!」
ハッとし、玲薇はベッドから上半身を起こす。
「あそぼ!」
「キャッ」
胸元に飛び込んできたうさ麻呂に、驚きを隠せない。
「な、なに・・・?」
「お姉ちゃん!」
「?」
「一緒に外で遊ぼうってさ」
「燐!」
申し訳ないのか、照れ臭いのか、燐は髪の毛をかきながら入ってくる。
「な?」
な、と言われても・・・。
「あのことは俺、気にしてねぇからさ」
「・・・・・・」
「なにか、あったのか?」
「ううん、何もない」
うさ麻呂を抱き上げて、燐の方へと行く。
「ごめんね、燐」
一人で感情をぶつけ、イライラして。
「大嫌いなんて、そんなことないから。雪男のことも・・・」
嫌われるのが怖くて、直接謝れないと思っていた。
でも、うさ麻呂がいてくれたからかな。素直になれる・・・。
うじうじしても、仕方ない。
すると、うさ麻呂を抱いた玲薇を、燐はそのまま優しく抱いた。
トクンと、小さく心臓が鳴るのが聞こえる。
「あんなん本気で言ったなんて、俺思ってなかったからな。ぜってー、違うって」
嫌いなんて、嘘だって。
「うん」
よかった・・・ありがとう、燐。
「苦しい」
二人の間にいたうさ麻呂が、小さくうめく。
「あ、ごめんね」
離れて、腕の中から解放してあげるように下ろしてやった。
「そと、行くのじゃろ?」
首をかしげるうさ麻呂の視線に合わせるよう、燐はしゃがんで頭をなでる。
「おう。悪いけど、先に行けるか?」
「わかった」
子供は素直なんて聞くけど、本当なんだと実感させられる。
「燐?」
うさ麻呂の背中を見守りつつ、声をかける。
「!」
ふと、振り返ったと思うと、触れるだけの優しいキス・・・。
唇が離れた瞬間に、きつく抱き締められた。
「燐」
「雪男の奴に、見せつけられたからな。俺も負けねー」
「もー。別に三人でいられればいいのに」
「俺はイヤだね」
キミの隣は、俺だ。