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あれは、今から十一年前・・・。
幼い兄と自分が絵本を手に、玲薇と養父が座る椅子の前に立っている。
『これがはじまりなの?』
幼い雪男が尋ねると、養父はにっこり微笑んだ。
とてもやさしくて、でもどこか淋しげな笑顔。
雪男は養父が祓魔師だということを知らなかった。
もちろん、たった一人の兄がサタンの息子だなどとも、
玲薇と同じ血が流れてるとも、知るよしもない。
養父は一人でその重荷を背負っていたのだ。
祓魔師と悪魔が出てくるこの短い物語にすら、
養い仔の行く末を重ね、案じる気持ちがあったのではないだろうか・・・?
『ああ、千年前から伝わる話だそうだ』
養父は雪男の問いに応じた後で、逆に尋ねた。
『お前らだったらどうする?』
『え・・・?』
『もし、この絵本の悪魔に出会ったら・・・その時、お前らならどうする?』
養父の問いかけに、雪男は二人と顔を見合わせた。
パチパチと目を瞬かせる。
(ここにいるのが、ボクだったら・・・)
雪男は二人から目を逸らすと、絵本の中に描かれた祓魔師を見つめた。
色鮮やかなお面をつけ、真っ赤な棍を持った祓魔師は、とても強そうだった。
本音を言えば怖い。ただでさえ、雪男は変なものを見がちだ。
今よりもずっと幼い頃から、あの不気味なものたちにずっと苦しめられてきた。
玲薇も同じ立場だったけれど、それは兄が救ってみせた。
羨ましかった・・・。自分のことばかりで、玲薇の事を助けてられない。
だけど・・・。
(アレと・・・たたかうなんて)
おぞましさにぶるりと震える。考えただけで心が折れそうだった。
想像だけで逃げ出したくなる。
その一方で、強いところを養父や兄、玲薇に見せたい気持ちがあった。
いつまでも弱くて泣き虫な自分ではいたくない。
その気持ちがおびえる心をぐっと身体の奥へ押しやる。
『ぼく・・・がんばってヤッつける!!』
幼い雪男は、養父の顔をまっすぐ見返して、勇ましくそう答えた。
『そうか、すげーな。雪男』
養父はそう言って、雪男の頭をくしゃりとかきまわしてくれた。
褒めてもらえたことで思わず顔がほころぶ。
勇気を出してよかったと、胸の奥がほっこりした。
『燐、玲薇。お前らはどうだ?』
養父は今度は二人に尋ねた。
玲薇は首をかしげて、キッパリ言う。
『分かんない』
その答えに、兄はケラケラ笑った。
『なんだよ、それ』
『えー、だって・・・。じゃ、燐は?』
『俺?俺はね・・・』
あの時、兄はなんと答えたんだろうか?
『大ッ嫌い!!』
「・・・・・・くっ・・・」
泣きそうな顔で叫んだ玲薇。
なんで、なんでこうなるんだ・・・。こんなことになりたいわけじゃないのに。
自分が惨めで情けない。兄と比べようなんて、思ったから・・・。
強くあれば、どうとでもなると。
(なにが、『ぼく、がんばってヤッつける』だ・・・)
なのに全然ダメだ。過去の己が発した台詞に、皮肉な笑いが浮かんでくる。
あの頃の自分は、その言葉の重みをまったくといっていいほどわかっていなかった。
祓魔師として生きることはそれほど単純ではない。
常に厳しい選択を迫られる。何かを守るために何かを切り捨てる。
そんなことは日常茶飯事だ。
任務をまっとうするため、幽霊列車に喰われた霊を見捨てようとした自分。
なりふりかまわず助けようとした兄。人道的に見れば、兄の方に理があるだろう。
自分のとった行動は非道と罵られてもしかたない。
だが、生者と死者なら、生きている人間を選ぶのは当たり前だ。
常に後味のよい任務ばかりとは限らない。
だから、祓魔師としての自分の選択が間違ってるとは、決して思わない。
現に、兄のとった行動は幽霊列車を取り逃がし、
甚大な被害を出すという結果を招いた。
幼い兄と自分が絵本を手に、玲薇と養父が座る椅子の前に立っている。
『これがはじまりなの?』
幼い雪男が尋ねると、養父はにっこり微笑んだ。
とてもやさしくて、でもどこか淋しげな笑顔。
雪男は養父が祓魔師だということを知らなかった。
もちろん、たった一人の兄がサタンの息子だなどとも、
玲薇と同じ血が流れてるとも、知るよしもない。
養父は一人でその重荷を背負っていたのだ。
祓魔師と悪魔が出てくるこの短い物語にすら、
養い仔の行く末を重ね、案じる気持ちがあったのではないだろうか・・・?
『ああ、千年前から伝わる話だそうだ』
養父は雪男の問いに応じた後で、逆に尋ねた。
『お前らだったらどうする?』
『え・・・?』
『もし、この絵本の悪魔に出会ったら・・・その時、お前らならどうする?』
養父の問いかけに、雪男は二人と顔を見合わせた。
パチパチと目を瞬かせる。
(ここにいるのが、ボクだったら・・・)
雪男は二人から目を逸らすと、絵本の中に描かれた祓魔師を見つめた。
色鮮やかなお面をつけ、真っ赤な棍を持った祓魔師は、とても強そうだった。
本音を言えば怖い。ただでさえ、雪男は変なものを見がちだ。
今よりもずっと幼い頃から、あの不気味なものたちにずっと苦しめられてきた。
玲薇も同じ立場だったけれど、それは兄が救ってみせた。
羨ましかった・・・。自分のことばかりで、玲薇の事を助けてられない。
だけど・・・。
(アレと・・・たたかうなんて)
おぞましさにぶるりと震える。考えただけで心が折れそうだった。
想像だけで逃げ出したくなる。
その一方で、強いところを養父や兄、玲薇に見せたい気持ちがあった。
いつまでも弱くて泣き虫な自分ではいたくない。
その気持ちがおびえる心をぐっと身体の奥へ押しやる。
『ぼく・・・がんばってヤッつける!!』
幼い雪男は、養父の顔をまっすぐ見返して、勇ましくそう答えた。
『そうか、すげーな。雪男』
養父はそう言って、雪男の頭をくしゃりとかきまわしてくれた。
褒めてもらえたことで思わず顔がほころぶ。
勇気を出してよかったと、胸の奥がほっこりした。
『燐、玲薇。お前らはどうだ?』
養父は今度は二人に尋ねた。
玲薇は首をかしげて、キッパリ言う。
『分かんない』
その答えに、兄はケラケラ笑った。
『なんだよ、それ』
『えー、だって・・・。じゃ、燐は?』
『俺?俺はね・・・』
あの時、兄はなんと答えたんだろうか?
『大ッ嫌い!!』
「・・・・・・くっ・・・」
泣きそうな顔で叫んだ玲薇。
なんで、なんでこうなるんだ・・・。こんなことになりたいわけじゃないのに。
自分が惨めで情けない。兄と比べようなんて、思ったから・・・。
強くあれば、どうとでもなると。
(なにが、『ぼく、がんばってヤッつける』だ・・・)
なのに全然ダメだ。過去の己が発した台詞に、皮肉な笑いが浮かんでくる。
あの頃の自分は、その言葉の重みをまったくといっていいほどわかっていなかった。
祓魔師として生きることはそれほど単純ではない。
常に厳しい選択を迫られる。何かを守るために何かを切り捨てる。
そんなことは日常茶飯事だ。
任務をまっとうするため、幽霊列車に喰われた霊を見捨てようとした自分。
なりふりかまわず助けようとした兄。人道的に見れば、兄の方に理があるだろう。
自分のとった行動は非道と罵られてもしかたない。
だが、生者と死者なら、生きている人間を選ぶのは当たり前だ。
常に後味のよい任務ばかりとは限らない。
だから、祓魔師としての自分の選択が間違ってるとは、決して思わない。
現に、兄のとった行動は幽霊列車を取り逃がし、
甚大な被害を出すという結果を招いた。