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夢小説設定
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深夜、寮の自室に戻った雪男は、ドアの脇にあるスイッチを入れ、
中央で二つに区切った部屋の自分側にだけ薄い灯りを点けた。
"おかえり"
「!」
不意に聞こえた、玲薇の声。
「・・・・・・・」
振り返っても、彼女がここにいるわけでもない。
なにせ自分がここから隣の部屋へと移してしまったんだから。
どんなに遅くなっても、必ず聞いていた「おかえり」はない。
何を考えているんだろうと思いつつ、兄が寝ているベッドに視線を投げる。
口を開けて気持ちよさそうに寝ている燐の横で、何かがモゾモゾ動いた。
また、クロと寝ているのか、と思っていると、
布団の奥からひょこっと幼い少年の頭があらわれた。
むにゃむにゃと唇を動かしている。
「!?」
眉をひそめた雪男が、部屋の中央の檻に目を向ける。
悪魔を閉じこめておくための檻は空っぽだった。
「なんで、檻から・・・」
呆然とつぶやき、ふと、兄の机の上におかれた絵本に目をとめる。
それは、幼い頃、養父に読んでもらった絵本だった。
机に近づき、ボロボロの絵本を手に取る。
読むでもなく、ペラペラとページをめくっていると、兄の声がした。
「懐かしいだろ?ソレ」
いつの間にかベッドの上に起き上がり、こちらを見ている。
「すっかり忘れてたよ。あんなにジジイに読んでもらってたのにさ」
燐はそう言うと、布団を足ではいでしまった悪魔の少年に、
やさしい手つきで布団をかけ直してやっている。
まるで、昔、神父さんが自分たちにそうしてくれたように。
雪男の表情が自然と険しくなる。
「・・・何で檻から出したんだ」
自分でも声がピリピリと強張っているのがわかる。
兄が驚いたように顔を上げる。その顔に、また腹が立った。
「兄さんの任務は監視でしょ?」
できる限りの感情をそいだ声音で告げる。
「それに、今日の分の宿題は?ちゃんとやってあるの?」
「宿題?」
燐がきょとんとした顔で雪男を見る。
まさに寝耳に水といったその反応に、
雪男が苛立たしさを通り越して、いっそ呆れた表情になる。
やっぱり、と頭を抱えた。
「玲薇がいないと、何にも出来ないってこと?」
「は?」
「玲薇がいれば、絶対檻から出さない筈だ」
なんてたって、彼女は兄以上に物分かりがいい。
「なんだよ。帰ってきたと思ったら、いきなり説教かよ?
てか玲薇だって、檻から出したの知ってるつーの」
「なっ・・・」
まさかの兄の発言に、言葉がつまる。
「なんで・・・」
自分が知らない間に、二人で何かコソコソとやっているのか。
それが今はなぜか、非情に気にくわない。
「・・・やっぱり、玲薇は兄さんなんだ」
ポツリとつぶやいた言葉は、自分だけにしか聞こえなかったろう。
キッと、兄を見る目付きが変わるのが分かる。
「な、なんだよ?」
「自分の立場、わかってるの?兄さん」
それならこの檻は、玲薇の部屋に置くべきだった。
「監視も出来ない。宿題もできない。それだから、兄さんは」
そこで言葉を止め、重たいため息をつく。
ともかく今夜は、心底、疲れ果てていた。
これ以上、兄に文句を言ったところで何もならない。
無益なだけだ。懸命に苛立ちを抑える。
「とにかく、檻に戻して」
「うっせーな。わかったよ」
さすがに怒った顔つきになった燐が、寝ているうさ麻呂を抱きかかえると、
自分も一緒に檻の中へと入った。
「檻に入れりゃ、いいんだろ!?」
捨て台詞を吐き、檻の扉をガシャンと閉める。
その反抗的な態度に、再びカチンとくる。だが、なんとかそれを飲み下した。
疲労感と倦怠(けんたい)感が体中に満ちている。
このうえ、言い争いを続ける精神的余裕は一ミリたりともなかった。
重たい足取りで、ドアを開ける。
「どこ行くだよ!?」
「兄さんには関係ない」
中央で二つに区切った部屋の自分側にだけ薄い灯りを点けた。
"おかえり"
「!」
不意に聞こえた、玲薇の声。
「・・・・・・・」
振り返っても、彼女がここにいるわけでもない。
なにせ自分がここから隣の部屋へと移してしまったんだから。
どんなに遅くなっても、必ず聞いていた「おかえり」はない。
何を考えているんだろうと思いつつ、兄が寝ているベッドに視線を投げる。
口を開けて気持ちよさそうに寝ている燐の横で、何かがモゾモゾ動いた。
また、クロと寝ているのか、と思っていると、
布団の奥からひょこっと幼い少年の頭があらわれた。
むにゃむにゃと唇を動かしている。
「!?」
眉をひそめた雪男が、部屋の中央の檻に目を向ける。
悪魔を閉じこめておくための檻は空っぽだった。
「なんで、檻から・・・」
呆然とつぶやき、ふと、兄の机の上におかれた絵本に目をとめる。
それは、幼い頃、養父に読んでもらった絵本だった。
机に近づき、ボロボロの絵本を手に取る。
読むでもなく、ペラペラとページをめくっていると、兄の声がした。
「懐かしいだろ?ソレ」
いつの間にかベッドの上に起き上がり、こちらを見ている。
「すっかり忘れてたよ。あんなにジジイに読んでもらってたのにさ」
燐はそう言うと、布団を足ではいでしまった悪魔の少年に、
やさしい手つきで布団をかけ直してやっている。
まるで、昔、神父さんが自分たちにそうしてくれたように。
雪男の表情が自然と険しくなる。
「・・・何で檻から出したんだ」
自分でも声がピリピリと強張っているのがわかる。
兄が驚いたように顔を上げる。その顔に、また腹が立った。
「兄さんの任務は監視でしょ?」
できる限りの感情をそいだ声音で告げる。
「それに、今日の分の宿題は?ちゃんとやってあるの?」
「宿題?」
燐がきょとんとした顔で雪男を見る。
まさに寝耳に水といったその反応に、
雪男が苛立たしさを通り越して、いっそ呆れた表情になる。
やっぱり、と頭を抱えた。
「玲薇がいないと、何にも出来ないってこと?」
「は?」
「玲薇がいれば、絶対檻から出さない筈だ」
なんてたって、彼女は兄以上に物分かりがいい。
「なんだよ。帰ってきたと思ったら、いきなり説教かよ?
てか玲薇だって、檻から出したの知ってるつーの」
「なっ・・・」
まさかの兄の発言に、言葉がつまる。
「なんで・・・」
自分が知らない間に、二人で何かコソコソとやっているのか。
それが今はなぜか、非情に気にくわない。
「・・・やっぱり、玲薇は兄さんなんだ」
ポツリとつぶやいた言葉は、自分だけにしか聞こえなかったろう。
キッと、兄を見る目付きが変わるのが分かる。
「な、なんだよ?」
「自分の立場、わかってるの?兄さん」
それならこの檻は、玲薇の部屋に置くべきだった。
「監視も出来ない。宿題もできない。それだから、兄さんは」
そこで言葉を止め、重たいため息をつく。
ともかく今夜は、心底、疲れ果てていた。
これ以上、兄に文句を言ったところで何もならない。
無益なだけだ。懸命に苛立ちを抑える。
「とにかく、檻に戻して」
「うっせーな。わかったよ」
さすがに怒った顔つきになった燐が、寝ているうさ麻呂を抱きかかえると、
自分も一緒に檻の中へと入った。
「檻に入れりゃ、いいんだろ!?」
捨て台詞を吐き、檻の扉をガシャンと閉める。
その反抗的な態度に、再びカチンとくる。だが、なんとかそれを飲み下した。
疲労感と倦怠(けんたい)感が体中に満ちている。
このうえ、言い争いを続ける精神的余裕は一ミリたりともなかった。
重たい足取りで、ドアを開ける。
「どこ行くだよ!?」
「兄さんには関係ない」