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夢小説設定
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「なかなかの盛り上がりですねぇ」
その様子を、上空に浮かぶ兎の形を模したアドバルーンの上から眺めていたメフィストが、
愉しげにつぶやく。そして、思いついたようによく通る声音で一句詠んだ。
「懐かしき、祭囃子の面影に、想いめぐらす白雪のころ」
一人悦に入るメフィストの手のひらの上で、
眼下に広がる街の様子を眺めていたハムスターが、小さな鼻をひくつかせた。
「兄上。僕もお祭り行きたいです」
と、ねだる。
「ヨーヨー釣りに、わたあめ!!」
「しかたないですねぇ・・・」
独り言のようにつぶやくメフィスト。
そして、ハムスターの姿をした弟に釘を刺す。
「おとなしくしているんだぞ?アマイモン」
「ワーイ」
ハムスターは喜ぶと、小さな硝子玉のような二つの瞳に、
ネオンにキラキラと彩られた街を映した・・・。
「伝令、三百メートル南に標的、出現。囮を使用し、こちらに誘導中」
「了解。第一班は、このままこの場にて待機します」
北町の一画に駆り出されたエクスワイアたちは、
祓魔師の指示で廃屋の屋根の上に集まっていた。
作戦についての会話が飛び交う中、渋い顔をしていたはずの志摩が、
何やらうっとりと明後日の方向を眺めていることに気づいた勝呂が、
友の肩をそっとこづく。
「志摩、お前、何しとんのや。ちゃんと聞いとかな、あかんやろ」
「坊、見ました?」
志摩はといえば、勝呂の注意など耳に入っていない様子で、
となりの家の屋根にたたずむ女祓魔師を眺めている。
その口元はだらしなくゆるみ、両目はすっかりハート形になっている。
おそらくその頭の中は、髪と同じピンク色に染まっているはずだ。
「ジャカルタから来てはるリーナさん。いやぁ~、めっちゃ好みやわ~」
「お前は、ホンマに・・・」
げんなり顔の勝呂が不真面目な態度を叱りつけようとした矢先、緊迫した声が響いた。
「来るぞ!!モルブだ!!」
勝呂をはじめ、一気に真面目な顔になったエクスワイアの面々が、
さっと身構える。出雲はすでに使い魔の稲荷神・ミケツとウケモチを足下に出している。
ジャカルタ支部から来た祓魔師たちが控えている、
アパートらしきモルタルの建物のさらに奥にあるビルの屋上に、
囮役の小柄な男が跳び移ってくる。
その背後から巨大なモルブが、ぶよぶよと重たげな頭部をのぞかせた。
囮役がビルからアパートの屋根に跳び移ると、
リーナが胸元から取り出した色鮮やかなカードを三枚、宙に放った。
肉感的な唇で素早く呪文を唱える。呪文を受け、カードが巨大なナナフシに変化した。
虫嫌いの志摩が、ぎゃあ、と尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げる。
まがまがしい緑色をしたナナフシは、身体に似合わぬ可愛らしい小さな羽を羽ばたかせ、
長い節くれだった脚をモルブの肢体に絡ませた。
そのまま、葉っぱでも食べるかのように悪魔を食らっていく・・・。
「アカン・・・あれはアカン・・・いくらなんでも、アレは・・・」
真っ青になった志摩がその場にヘナヘナと腰を抜かす。
「志摩さん!?」
「っ!この忙しい時に!!」
子猫丸と勝呂が左右から声をかけ、大きくゆさぶるが、
小刻みに震えたまま声もない。そんな三人を嘲笑うように、
先ほどよりもやや小ぶりなモルブが、ぶよぶよの腕をアパートの屋根にかけ、
こちらに近づいてきた。
「来たぞ!」
祓魔師の一人が声を張る。
「エクスワイア、詠唱開始!!」
だが、志摩に気を取られていたせいで、おのおの反応が遅れる。
「どうした!?急げ!!」
焦れたように叫んだ祓魔師が、すぐそばまで迫りくる悪魔に、
くっと、喉の奥でうめき、詠唱を待たず銃弾を放つ。
純銀製の弾丸をその身に受けたモルブは、不気味にゆらめくと、
ぶくぶくと膨らんでいった。その表皮は、
それこそ水を入れすぎた水風船のように薄く伸びている。
今にも内側から弾け飛びそうなほどに。
「総員、退避!!」
顔をしかめた祓魔師が叫ぶ。だが、時すでに遅く、
凄まじい音を立ててモルブが破裂した。
黄緑色のドロドロとした液体が周囲に飛び散る。
「ちょっとアンタたち、何やってんのよ!?」
すかさず白狐に自身を守らせた出雲が、
黄緑色に染まった三人にまなじりを吊り上げる。
その後ろで、やはり難を逃れたエクスワイアの宝が、
利き手にはめた兎のパペットの口をパクパクさせた。
[ちんたらやってんじゃねぇぞ、このバカ餓鬼どもが]
なまじ本人が茫洋とした無表情を決めこんでいるだけに、
驚くほど腹立たしい。
「はあぁ・・・」
重い息を吐き出した勝呂が、屋根の上で腰を抜かしたままの志摩に、
ボソリとつぶやいた。
「・・・お前、ホンマ、いい加減虫ギライ治せや」
その様子を、上空に浮かぶ兎の形を模したアドバルーンの上から眺めていたメフィストが、
愉しげにつぶやく。そして、思いついたようによく通る声音で一句詠んだ。
「懐かしき、祭囃子の面影に、想いめぐらす白雪のころ」
一人悦に入るメフィストの手のひらの上で、
眼下に広がる街の様子を眺めていたハムスターが、小さな鼻をひくつかせた。
「兄上。僕もお祭り行きたいです」
と、ねだる。
「ヨーヨー釣りに、わたあめ!!」
「しかたないですねぇ・・・」
独り言のようにつぶやくメフィスト。
そして、ハムスターの姿をした弟に釘を刺す。
「おとなしくしているんだぞ?アマイモン」
「ワーイ」
ハムスターは喜ぶと、小さな硝子玉のような二つの瞳に、
ネオンにキラキラと彩られた街を映した・・・。
「伝令、三百メートル南に標的、出現。囮を使用し、こちらに誘導中」
「了解。第一班は、このままこの場にて待機します」
北町の一画に駆り出されたエクスワイアたちは、
祓魔師の指示で廃屋の屋根の上に集まっていた。
作戦についての会話が飛び交う中、渋い顔をしていたはずの志摩が、
何やらうっとりと明後日の方向を眺めていることに気づいた勝呂が、
友の肩をそっとこづく。
「志摩、お前、何しとんのや。ちゃんと聞いとかな、あかんやろ」
「坊、見ました?」
志摩はといえば、勝呂の注意など耳に入っていない様子で、
となりの家の屋根にたたずむ女祓魔師を眺めている。
その口元はだらしなくゆるみ、両目はすっかりハート形になっている。
おそらくその頭の中は、髪と同じピンク色に染まっているはずだ。
「ジャカルタから来てはるリーナさん。いやぁ~、めっちゃ好みやわ~」
「お前は、ホンマに・・・」
げんなり顔の勝呂が不真面目な態度を叱りつけようとした矢先、緊迫した声が響いた。
「来るぞ!!モルブだ!!」
勝呂をはじめ、一気に真面目な顔になったエクスワイアの面々が、
さっと身構える。出雲はすでに使い魔の稲荷神・ミケツとウケモチを足下に出している。
ジャカルタ支部から来た祓魔師たちが控えている、
アパートらしきモルタルの建物のさらに奥にあるビルの屋上に、
囮役の小柄な男が跳び移ってくる。
その背後から巨大なモルブが、ぶよぶよと重たげな頭部をのぞかせた。
囮役がビルからアパートの屋根に跳び移ると、
リーナが胸元から取り出した色鮮やかなカードを三枚、宙に放った。
肉感的な唇で素早く呪文を唱える。呪文を受け、カードが巨大なナナフシに変化した。
虫嫌いの志摩が、ぎゃあ、と尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げる。
まがまがしい緑色をしたナナフシは、身体に似合わぬ可愛らしい小さな羽を羽ばたかせ、
長い節くれだった脚をモルブの肢体に絡ませた。
そのまま、葉っぱでも食べるかのように悪魔を食らっていく・・・。
「アカン・・・あれはアカン・・・いくらなんでも、アレは・・・」
真っ青になった志摩がその場にヘナヘナと腰を抜かす。
「志摩さん!?」
「っ!この忙しい時に!!」
子猫丸と勝呂が左右から声をかけ、大きくゆさぶるが、
小刻みに震えたまま声もない。そんな三人を嘲笑うように、
先ほどよりもやや小ぶりなモルブが、ぶよぶよの腕をアパートの屋根にかけ、
こちらに近づいてきた。
「来たぞ!」
祓魔師の一人が声を張る。
「エクスワイア、詠唱開始!!」
だが、志摩に気を取られていたせいで、おのおの反応が遅れる。
「どうした!?急げ!!」
焦れたように叫んだ祓魔師が、すぐそばまで迫りくる悪魔に、
くっと、喉の奥でうめき、詠唱を待たず銃弾を放つ。
純銀製の弾丸をその身に受けたモルブは、不気味にゆらめくと、
ぶくぶくと膨らんでいった。その表皮は、
それこそ水を入れすぎた水風船のように薄く伸びている。
今にも内側から弾け飛びそうなほどに。
「総員、退避!!」
顔をしかめた祓魔師が叫ぶ。だが、時すでに遅く、
凄まじい音を立ててモルブが破裂した。
黄緑色のドロドロとした液体が周囲に飛び散る。
「ちょっとアンタたち、何やってんのよ!?」
すかさず白狐に自身を守らせた出雲が、
黄緑色に染まった三人にまなじりを吊り上げる。
その後ろで、やはり難を逃れたエクスワイアの宝が、
利き手にはめた兎のパペットの口をパクパクさせた。
[ちんたらやってんじゃねぇぞ、このバカ餓鬼どもが]
なまじ本人が茫洋とした無表情を決めこんでいるだけに、
驚くほど腹立たしい。
「はあぁ・・・」
重い息を吐き出した勝呂が、屋根の上で腰を抜かしたままの志摩に、
ボソリとつぶやいた。
「・・・お前、ホンマ、いい加減虫ギライ治せや」