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夢小説設定

この小説の夢小説設定
玲薇
風美夜

玲薇と並んで料理出来ることが嬉しい。
彼女も、燐と料理が出来て嬉しいのだ。
まるで、端から見れば新婚夫婦のような・・・。

すると、燐は向かいでぽつんと椅子に座っている少年に気づくと、
出来たばかりのオムライスをひと匙、レンゲですくう。
ひと匙は、猫舌のクロのために、小皿の上にのせてやり、
もうひと匙を少年の前に差し出す。

「味見してみるか?」
「・・・・・・」
少年はしょんぼりとした顔のまま、差し出されたレンゲを見る。
そして、その視線を玲薇に向けた。
食べたら怒られるんじゃないか、なんで味見出来ないのに自分だけと。
でも、玲薇の顔はまるで疑いようのない優しい微笑みだった。

「食べてごらん?きっと、おいしいよ」
後押ししてくれる言葉までくれる。
《いっただきまーす》
先にクロが笑顔で、小皿によそわれたふわとろオムライスに、
ふーふーと息を吹きかけ、せっせと冷ましている。
そして、ハフハフと口に含んだ。

ゴクン、と小さな喉を鳴らす。
《トロトロ~》
あまりの美味さゆえか、二つの尻尾が雷に打たれたように痙攣している。
それを眺めていた少年が、自分に差し出されたレンゲをおずおずと受け取る。

先ほどのクロの真似をしてふーふーすると、
小さなレンゲにぱくっと食いついた。
熱い卵にハフハフとしつつ、ごくんと飲み込む。
「トロトロ~」
と、叫んだ。
レンゲを持つ手が、やはり雷に打たれたように痙攣している。

クロとまるっきり同じ仕草に、玲薇はクスッと笑った。
「な?そうだろ」
両手を腰に当てた燐が満足げにそれを眺める。
少年はこくこくうなずくと、食べ終えたレンゲを突き出す。
「トロトロッ!!」
お代わりを要求してるのだろう。

「よっぽど、気に入ったんだ」
早くしろとばかりに、少年は椅子の下で小さな両足をバタつかせる。
燐がまんざらでもなさそうな顔で笑いながら、少年をいさめた。

「まぁ、待てって。他のヤツも作っちゃうから、出来たら皆で食おーぜ?」

人数分のオムライスが出来上がると、燐はその上に、
すでに作っておいたデミグラスソースをふわっとまわしかけ、
アクセントに生バジルを散らした。つやつやに黄色く光った卵と、
茶色いデミグラスソース、ちょんとのった緑色のバジルのコントラストが、
実に食欲をそそる出来だった。

「いただきます!」

みんなで囲んだ食卓で、エプロンを脱いだ燐と玲薇が、
両手を合わせて言うと、少年が見よう見まねでそれを真似する。
そして、一生懸命ふーふーしてから、ぱくりと一口。

「《トロトロ~》」
少年とクロの声が合わさった。
「そういや、名前聞いてなかったな」
『うまい』とポテトサラダを口に入れてくれながら、燐が言う。
「確かに。紹介も、まだよね。私は玲薇
「俺は燐で、コイツはクロ。お前は?」

「なまえなどない」
口いっぱいにオムライスを頬張った少年が、偉そうに答える。
思わず顔を合わせる燐と玲薇
「そっか・・・」
「じゃあ、考えねーとな」

自分の顎に手をやり、燐がしばらく考えていたが、
ふと、その目が少年の大昔の貴族のような髪型で止まる。
「マロ・・・」
「え?」
「うさ麻呂・・・」
「うさ麻呂・・・?」

「トロトロッ!!」
早くも自分のぶんを食べ終えた少年が、お代わりとばかりに皿を差し出してきた。
マシュマロのようにふんわりとしたほっぺたには、
デミグラスソースがべったりとくっついている。
「早っ」
「もう、食っちまったのかよ!?」

さすがに驚いた顔になった燐が、
自分のオムライスをレンゲで半分に分けながら言う。
「ちゃんとよく噛んで食えよ?」
そして、少年の皿にのせてやる。
「ホレ、うさ麻呂」

「トロトロ~」
と、涎を流した少年・・・うさ麻呂は、勢いこんでそれを食べようとし、
はっと気づいたようにレンゲを止め、上目遣いに燐を見つめた。
「いいの?」

「いーって。ガキが遠慮すんな」
悪魔の少年は安心したようにレンゲを握り直すと、いただきます、
と、嬉しそうに叫んだ。

「じゃ、燐には私のを半分・・・」
「何だよ。せっかくなんだし、俺はコレもらう」
そう言うと、玲薇が作ってくれたのをガツガツと食べてくれた。
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