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夢小説設定
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いよいよ今夜に迫った祭りに街中が沸き立つ中、
黒い制服に身を包んだ一団が高台の一軒家をとり囲んでいた。
昔ながらの平屋は、文字通りゴミに埋もれている。
今も住人がいるかどうかは不明だが、ドアの前だけはゴミがどかされ、
なんとか中に入れるようになっていた。
家のまわりを小バエに混じって大量のコールタールが飛んでいる。
「どなたかいませんかー?」
祓魔師の一人が前に進み出、建てつけの悪いドアをノックしている。
その光景を、右腕を吊ったままの雪男は平屋の上空に架かった鉄橋の上から眺めていた。
その脇にリュウもいる。
彼らは祭りの警備からはずれ、朝早くから逃走中の幽霊列車を追っていた。
討伐対象をとり逃した当事者である雪男はともかく、
リュウの方はたまたまその場に居合わせたということで、
雪男と組まされている。あくまで即席のチームだ。
同じく現場に居合わせたシュラは結界補強などの役目があるため、
追跡には加わっていない。
「アレは?」
リュウがゴミ屋敷に目を向け尋ねる。
「近隣住民から『ラップ現象あり』との報告が入ったそうです」
雪男の回答に、台湾から来た祓魔師は皮肉な口調でつぶやいた。
「呑気なもんだな。俺なら、建物ごと焼き払うぞ」
「そんな乱暴な・・・」
咎める眼差しを向ける雪男に、リュウはにこりともせず言う。
「冗談だよ」
「・・・・・・」
微妙に本気が混じっていそうで怖い。
腹の底の見えない男だと、雪男が自分のことを棚に上げて思っていると、
リュウがこちらを見やった。
「それより、幽霊列車の報告は?」
雪男が手の中のタブレットに視線を落とす。
薄型の液晶画面には、幽霊列車の現場映像とともに、
本部で解析されたデータが映り出されていた。
「幽霊列車のちぎれた頭部はプラント地帯高架下にて発見。
逃走した本体はゲヘナとアッシャーの境界を食い破りながら移動しつつ、
学園内に潜伏しているものと思われる」
「結界がゆがんでいる隙を突かれたわけだ」
今ならさぞや壁が食いやすかろう、とリュウが唇の端を吊り上げ、
鋭い刃のような視線を手前の線路へ向ける。
雪男もタブレットから顔を上げ、その視線を追う。
現場検証中のリュウの部下二人の足元には、
ゲル状になった幽霊列車の肉片が、瀕死の虫のように蠢いていた。
その脇の地面にかすかな亀裂が走り、周囲にコールタールが黒々とたかっている。
雪男が眼鏡の奥で眉をひそめる。
「あの程度の亀裂では、せいぜいコールタールぐらいしか入ってこれないだろうが、
これ以上広がればやっかいだぞ。なにせ、この"ふざけた祭り"の最中だ。
餌はごまんとある」
「・・・幽霊列車はなぜ、ゲヘナに戻らず、この街に潜伏しているんだと思いますか?」
「知るか」
雪男の問いにリュウは、すげなく答える。
「どの道、何らかの欲求によるものだろう。
アイツらはどこまでも欲望に忠実だ」
欲という言葉に、なぜか自分が玲薇に対する心中が浮かぶ。
・・・なぜ、素直になれないのか。なぜ、真っ向から向き合えないのか。
腹立つ自分を抑えつつ、幽霊列車の欲はなにか。
「あれか」
そして、しえみが抱えていた鬼灯が浮かぶ。
「奪われた霊を・・・取り返しに来たのか」
思わずつぶやくと、リュウに聞こえたらしい。
「なるほど。腹が減って我を忘れたか」
いまいましげな様子で、眉を寄せる。
「やっかいなヤツを取り逃がしたな」
「・・・・・・・・」
「腹の減った手負いの獣ほど、面倒なものはないぞ」
嫌みな物言いに、雪男の表情が曇る。
その時、下から小さな爆発音が聞こえた。
「!?」
「何事だ」
黒い制服に身を包んだ一団が高台の一軒家をとり囲んでいた。
昔ながらの平屋は、文字通りゴミに埋もれている。
今も住人がいるかどうかは不明だが、ドアの前だけはゴミがどかされ、
なんとか中に入れるようになっていた。
家のまわりを小バエに混じって大量のコールタールが飛んでいる。
「どなたかいませんかー?」
祓魔師の一人が前に進み出、建てつけの悪いドアをノックしている。
その光景を、右腕を吊ったままの雪男は平屋の上空に架かった鉄橋の上から眺めていた。
その脇にリュウもいる。
彼らは祭りの警備からはずれ、朝早くから逃走中の幽霊列車を追っていた。
討伐対象をとり逃した当事者である雪男はともかく、
リュウの方はたまたまその場に居合わせたということで、
雪男と組まされている。あくまで即席のチームだ。
同じく現場に居合わせたシュラは結界補強などの役目があるため、
追跡には加わっていない。
「アレは?」
リュウがゴミ屋敷に目を向け尋ねる。
「近隣住民から『ラップ現象あり』との報告が入ったそうです」
雪男の回答に、台湾から来た祓魔師は皮肉な口調でつぶやいた。
「呑気なもんだな。俺なら、建物ごと焼き払うぞ」
「そんな乱暴な・・・」
咎める眼差しを向ける雪男に、リュウはにこりともせず言う。
「冗談だよ」
「・・・・・・」
微妙に本気が混じっていそうで怖い。
腹の底の見えない男だと、雪男が自分のことを棚に上げて思っていると、
リュウがこちらを見やった。
「それより、幽霊列車の報告は?」
雪男が手の中のタブレットに視線を落とす。
薄型の液晶画面には、幽霊列車の現場映像とともに、
本部で解析されたデータが映り出されていた。
「幽霊列車のちぎれた頭部はプラント地帯高架下にて発見。
逃走した本体はゲヘナとアッシャーの境界を食い破りながら移動しつつ、
学園内に潜伏しているものと思われる」
「結界がゆがんでいる隙を突かれたわけだ」
今ならさぞや壁が食いやすかろう、とリュウが唇の端を吊り上げ、
鋭い刃のような視線を手前の線路へ向ける。
雪男もタブレットから顔を上げ、その視線を追う。
現場検証中のリュウの部下二人の足元には、
ゲル状になった幽霊列車の肉片が、瀕死の虫のように蠢いていた。
その脇の地面にかすかな亀裂が走り、周囲にコールタールが黒々とたかっている。
雪男が眼鏡の奥で眉をひそめる。
「あの程度の亀裂では、せいぜいコールタールぐらいしか入ってこれないだろうが、
これ以上広がればやっかいだぞ。なにせ、この"ふざけた祭り"の最中だ。
餌はごまんとある」
「・・・幽霊列車はなぜ、ゲヘナに戻らず、この街に潜伏しているんだと思いますか?」
「知るか」
雪男の問いにリュウは、すげなく答える。
「どの道、何らかの欲求によるものだろう。
アイツらはどこまでも欲望に忠実だ」
欲という言葉に、なぜか自分が玲薇に対する心中が浮かぶ。
・・・なぜ、素直になれないのか。なぜ、真っ向から向き合えないのか。
腹立つ自分を抑えつつ、幽霊列車の欲はなにか。
「あれか」
そして、しえみが抱えていた鬼灯が浮かぶ。
「奪われた霊を・・・取り返しに来たのか」
思わずつぶやくと、リュウに聞こえたらしい。
「なるほど。腹が減って我を忘れたか」
いまいましげな様子で、眉を寄せる。
「やっかいなヤツを取り逃がしたな」
「・・・・・・・・」
「腹の減った手負いの獣ほど、面倒なものはないぞ」
嫌みな物言いに、雪男の表情が曇る。
その時、下から小さな爆発音が聞こえた。
「!?」
「何事だ」