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夢小説設定
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雪男の言葉に元気よくうなずいたしえみが、列車に目を向ける。
すると、少し先にある窓の中から幼い女の子がこちらを見ていた。
しえみと目が合うと、ニッコリと屈託ない顔で笑う。
小さく手も、振ってきた。
「・・・・・・」
思わずしえみが彼女の方に歩み寄ると、
手前にあるドアが、きしんだ音を立てて開いた。
しえみが目を瞬かせ、そうっと車内をのぞきこむ。
車内にはたくさんの人がいた。普通の列車と変わらない。
少女がニコニコと笑いながら、手を振っている。
ふらふらっと、しえみが車内に足を踏み入れそうになったその時だった。
「しえみさん」
「キャッ!!」
驚いたしえみが振り返る。いつの間にか、背後に雪男が立っていた。
左手に、大きめのリモコンを持っている。
「気をつけてください。この悪魔はそうやって人を乗せ、
虚無界へと連れ去ってしまうんです」
「あっ・・・」
しえみが慌てて列車から離れる。それを見届けてから、
雪男が幽霊列車のやって来たレーンの先に視線を向けた。
「僕らが乗るのは、こっちです」
ほどなく、鈍い鉄の音が聞こえてきた。待つこと数十秒。
やって来たのは、古びたトロッコ車両だった。
雪男が手元のリモコンを操作しながら、そちらへ歩み寄っていく。
その背に続いたしえみが、途中、列車の窓の中にためらいがちな視線を送る。
「雪ちゃん・・・列車の中・・・」
「誤って列車に乗ってしまった人たちの霊です。
おそらく、自分が死んだことも自覚できていないでしょう」
「そんな!早く助けてあげないと・・・!」
しかし、雪男はすげなく頭を振った。
「無理です。幽霊列車を祓えば、中の霊も消滅してしまう。
冷たいようですが、今回は霊を助けている時間はありません」
淡々と告げる雪男に、しえみの顔が強張る。
だが、結局は何も言えず、肩を落として雪男の後に続いた。
減速しつつ駅構内に入ってきたトロッコ車両が、
金属特有の硬質な音を立て幽霊列車と連結する。
それを見はからい、まず雪男が軽やかな身のこなしでトロッコへ乗り移り、
ホームに残ったしえみをうながす。
雪男に支えられる形でしえみが乗り込むと同時に、
発車を知らせるベルが鳴り響いた。
しえみがはっと顔を上げる。
いまだホームに、燐と玲薇の姿はない。
ベルが鳴り終わり、一斉にドアが閉まる。
先頭車両のライトが赤々と灯り、車体が小さくきしむと、
ゆっくりと動き出した。
「燐と風美夜さん、まだ来てないよ?」
しえみが不安げな顔で雪男を見上げる。
険しい顔でホームを見すえていた雪男が、苦々しげな声で言った。
「しかたありません」
きっと、二人の遅刻に腹を立てているのだろう。
「今回の任務は、僕としえみさんの二人で・・・」
「来た!」
雪男の言葉の途中で、しえみが叫ぶ。
転がるようにホームに飛び込んだ二人に、大きく手を振った。
「燐、こっち!!」
「しえみ!!」
「あっ!もう出てる!」
仰天する間もなく、慌ててホームを駆ける二人。
「うおぉーい!その電車、ちょっと待ったあぁぁあ!!」
待てと言ったところで、どうにもならいだろうに。
「兄さん!玲薇!」
「早く、早く!」
玲薇は小さく舌打ちする。少なくとも燐は追い付けるだろう。
しかし、自分の足はそんな彼みたいに速くはない。
「こうなったら・・・」
走りながら、ポケットから一枚の魔法円を取り出した。
「燐!ちょっと止まって!」
「はぁ!?お前、何言って・・・」
「リニュウの背中に乗せる!」
「え?」
「"気高き気高き雄飛の眼前。我の血承け入れ、その力干渉せよ"!!」
トンネルに入った列車の後方、風の逃げ場がないその状況で、
突風が雪男としえみを襲う。
「キャッ」
「!(玲薇・・・!?)」
「おわあぁあー!!」
「ちょ、速すぎ!!」
どうやらこの作戦は、いまいちのようだった。
背を低くして飛ぶリニュウは、何の抵抗もなく一直線。
しかし、トロッコの目の前に行けば一度羽を羽ばたかせてから、
その上にゆっくりと着地したのだった。
すると、少し先にある窓の中から幼い女の子がこちらを見ていた。
しえみと目が合うと、ニッコリと屈託ない顔で笑う。
小さく手も、振ってきた。
「・・・・・・」
思わずしえみが彼女の方に歩み寄ると、
手前にあるドアが、きしんだ音を立てて開いた。
しえみが目を瞬かせ、そうっと車内をのぞきこむ。
車内にはたくさんの人がいた。普通の列車と変わらない。
少女がニコニコと笑いながら、手を振っている。
ふらふらっと、しえみが車内に足を踏み入れそうになったその時だった。
「しえみさん」
「キャッ!!」
驚いたしえみが振り返る。いつの間にか、背後に雪男が立っていた。
左手に、大きめのリモコンを持っている。
「気をつけてください。この悪魔はそうやって人を乗せ、
虚無界へと連れ去ってしまうんです」
「あっ・・・」
しえみが慌てて列車から離れる。それを見届けてから、
雪男が幽霊列車のやって来たレーンの先に視線を向けた。
「僕らが乗るのは、こっちです」
ほどなく、鈍い鉄の音が聞こえてきた。待つこと数十秒。
やって来たのは、古びたトロッコ車両だった。
雪男が手元のリモコンを操作しながら、そちらへ歩み寄っていく。
その背に続いたしえみが、途中、列車の窓の中にためらいがちな視線を送る。
「雪ちゃん・・・列車の中・・・」
「誤って列車に乗ってしまった人たちの霊です。
おそらく、自分が死んだことも自覚できていないでしょう」
「そんな!早く助けてあげないと・・・!」
しかし、雪男はすげなく頭を振った。
「無理です。幽霊列車を祓えば、中の霊も消滅してしまう。
冷たいようですが、今回は霊を助けている時間はありません」
淡々と告げる雪男に、しえみの顔が強張る。
だが、結局は何も言えず、肩を落として雪男の後に続いた。
減速しつつ駅構内に入ってきたトロッコ車両が、
金属特有の硬質な音を立て幽霊列車と連結する。
それを見はからい、まず雪男が軽やかな身のこなしでトロッコへ乗り移り、
ホームに残ったしえみをうながす。
雪男に支えられる形でしえみが乗り込むと同時に、
発車を知らせるベルが鳴り響いた。
しえみがはっと顔を上げる。
いまだホームに、燐と玲薇の姿はない。
ベルが鳴り終わり、一斉にドアが閉まる。
先頭車両のライトが赤々と灯り、車体が小さくきしむと、
ゆっくりと動き出した。
「燐と風美夜さん、まだ来てないよ?」
しえみが不安げな顔で雪男を見上げる。
険しい顔でホームを見すえていた雪男が、苦々しげな声で言った。
「しかたありません」
きっと、二人の遅刻に腹を立てているのだろう。
「今回の任務は、僕としえみさんの二人で・・・」
「来た!」
雪男の言葉の途中で、しえみが叫ぶ。
転がるようにホームに飛び込んだ二人に、大きく手を振った。
「燐、こっち!!」
「しえみ!!」
「あっ!もう出てる!」
仰天する間もなく、慌ててホームを駆ける二人。
「うおぉーい!その電車、ちょっと待ったあぁぁあ!!」
待てと言ったところで、どうにもならいだろうに。
「兄さん!玲薇!」
「早く、早く!」
玲薇は小さく舌打ちする。少なくとも燐は追い付けるだろう。
しかし、自分の足はそんな彼みたいに速くはない。
「こうなったら・・・」
走りながら、ポケットから一枚の魔法円を取り出した。
「燐!ちょっと止まって!」
「はぁ!?お前、何言って・・・」
「リニュウの背中に乗せる!」
「え?」
「"気高き気高き雄飛の眼前。我の血承け入れ、その力干渉せよ"!!」
トンネルに入った列車の後方、風の逃げ場がないその状況で、
突風が雪男としえみを襲う。
「キャッ」
「!(玲薇・・・!?)」
「おわあぁあー!!」
「ちょ、速すぎ!!」
どうやらこの作戦は、いまいちのようだった。
背を低くして飛ぶリニュウは、何の抵抗もなく一直線。
しかし、トロッコの目の前に行けば一度羽を羽ばたかせてから、
その上にゆっくりと着地したのだった。