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きっと雪男は、まだ幽霊列車の時のことを認めたわけじゃない。
でも、今度の悪魔はまた別の悪魔なんだ。
と、階段の下で物音がした。続いて、しえみが顔をのぞかせる。
三人は言い争いをやめ、そちらに目を向けた。
「あ」
「しえみ?」
「しえみさん」
しえみは階段の手すりに手をかけ、こちらを仰ぎ見るような姿勢で立っていた。
三人の言い争いを聞いていたのか、ちょっぴりうろたえたような表情になったが、
燐に視線を向けると遠慮がちに告げた。
「燐・・・ちょっといいかな?」
「?」
しえみが燐を連れ出したのは、正十字学園の高台にある薄暗い野球場だった。
長かった夜が明け、東の空がうっすらと白み始めている。
しえみが肩の上の二ーちゃんを、野球場の土の上にそっと下ろす。
天に向け、ぐぐっと伸ばされた二ーちゃんの両腕から、
昨夜の鬼灯が生まれた。
燐が、あっ、という顔になる。
鬼灯の束を受け取ったしえみが胸に抱えて立ち上がる。
まるで薄い硝子細工のように透明になった鬼灯のふくらみの奥で、
霊の淡い光がぼんやりとゆらめいている。
しえみが鬼灯をすっと掲げると、そのふくらみがゆっくりと開き、
中から霊が出てきた。まるで蛍のようなその小さな光が、
幾重にも連なって空高く上っていく。
それは静謐(せいひつ)で、胸がしめつけられるように美しい光景だった。
燐が食い入るようにその光景を眺めていると、
しえみがささやくように言った。
「・・・燐のおかげで、助けられたんだよ」
「・・・・・・」
「ありがとう」
そのやさしい笑顔に、燐の顔がくしゃりと歪む。
(でも、俺は・・・)
そのために、生きている人間を・・・しえみを、
雪男を傷つけてしまった。今回は無かったけれど、
玲薇とも限らず、もっと大勢の人を傷つけてしまったかもしれない。
そう思うと、ひどく怖かった。
『いつまでもエクスワイアではいられないんだ。
このまま祓魔師になっても、兄さんのやり方は通用しないよ』
弟の言葉が脳裏に蘇る。雪男の言っていることは間違っていない。
(それでも・・・それでも、俺は・・・)
どこか泣き出しそうな表情になってしまった顔を天に向け、
空高く上っていく光の葬列を見上げる。
となりで、しえみが霊たちに向け小さく手を振っている。
野球場の片隅にたたずんだ雪男が、どこか淋しげな顔で、
そんな二人を見つめていた。
でも、今度の悪魔はまた別の悪魔なんだ。
と、階段の下で物音がした。続いて、しえみが顔をのぞかせる。
三人は言い争いをやめ、そちらに目を向けた。
「あ」
「しえみ?」
「しえみさん」
しえみは階段の手すりに手をかけ、こちらを仰ぎ見るような姿勢で立っていた。
三人の言い争いを聞いていたのか、ちょっぴりうろたえたような表情になったが、
燐に視線を向けると遠慮がちに告げた。
「燐・・・ちょっといいかな?」
「?」
しえみが燐を連れ出したのは、正十字学園の高台にある薄暗い野球場だった。
長かった夜が明け、東の空がうっすらと白み始めている。
しえみが肩の上の二ーちゃんを、野球場の土の上にそっと下ろす。
天に向け、ぐぐっと伸ばされた二ーちゃんの両腕から、
昨夜の鬼灯が生まれた。
燐が、あっ、という顔になる。
鬼灯の束を受け取ったしえみが胸に抱えて立ち上がる。
まるで薄い硝子細工のように透明になった鬼灯のふくらみの奥で、
霊の淡い光がぼんやりとゆらめいている。
しえみが鬼灯をすっと掲げると、そのふくらみがゆっくりと開き、
中から霊が出てきた。まるで蛍のようなその小さな光が、
幾重にも連なって空高く上っていく。
それは静謐(せいひつ)で、胸がしめつけられるように美しい光景だった。
燐が食い入るようにその光景を眺めていると、
しえみがささやくように言った。
「・・・燐のおかげで、助けられたんだよ」
「・・・・・・」
「ありがとう」
そのやさしい笑顔に、燐の顔がくしゃりと歪む。
(でも、俺は・・・)
そのために、生きている人間を・・・しえみを、
雪男を傷つけてしまった。今回は無かったけれど、
玲薇とも限らず、もっと大勢の人を傷つけてしまったかもしれない。
そう思うと、ひどく怖かった。
『いつまでもエクスワイアではいられないんだ。
このまま祓魔師になっても、兄さんのやり方は通用しないよ』
弟の言葉が脳裏に蘇る。雪男の言っていることは間違っていない。
(それでも・・・それでも、俺は・・・)
どこか泣き出しそうな表情になってしまった顔を天に向け、
空高く上っていく光の葬列を見上げる。
となりで、しえみが霊たちに向け小さく手を振っている。
野球場の片隅にたたずんだ雪男が、どこか淋しげな顔で、
そんな二人を見つめていた。