第一話 暗雲
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「誰かが信じてあげねぇと、可哀想だって」
「ありがとう」
その一言は、酷く冷たく感じられて。全部嘘だった、ホークスが仲間のヒーローを守る為についた嘘だった。
それを疑いもなく、心優しく受け入れていたトゥワイス。
「あなたは運が悪かっただけだ。罪を償ってやり直そう。やり直せるように俺も手伝う。
あなたは、良い人だから」
トゥワイスからの返事は、数秒待っただけだろう。だがそれは、酷く長く感じた。
「うるせえ」
怒りに溢れたトゥワイスの声。
「これが、ヒーローか?何をやり直すってんだ」
「やめろ」
「なァ!?」
「分倍河原!」
「俺は俺のことなんか、とっくにどうでもいいんだよ!!!」
「あなたと戦いたくないんだ!分倍河原!」
「そりゃてめェの都合だろ!!」
増えていくトゥワイスに、オリジナルのトゥワイスに向けていたホークスの無数の羽根は無惨にも散乱する。
「俺の魂はただ、連合の幸せの為に」
トゥワイスの"個性"が、発動された。だが、彼自身どこまでも悲しい人だと、そう思わざるを得ない。
「生成速度は目を見張るものがありますが、倍々で増やしていくにつれ、耐久力が低くなってますね。
同じ大雨覆で攻撃して、解けるのとそうでないのとがいます」
ホークスのスピードに、トゥワイスは動けない。
「ここまでやってきて、絆されるようなミスはしない。おとなしく同行してくれれば、まだやりようはあったんだ。
俺はあなたの事好きでしたし」
「俺の仲間はこいつらだけだ!」
言うや、トゥワイスは死柄木やトガといった連合の仲間を作り出す。
「土足で入ってくんじゃねぇ!!」
だが、すべて一瞬で羽根でやられてしまう。
「無駄だ、屑が!!屑野郎が!!」
「高速化が進む敵退治、何でだと思いますか。諦めない人間が、ヒーローにとって最も恐ろしいからです。
経験上、意志の固い人間は、気絶してくれない」
「うる、せ」
立ち向かってくるトゥワイスに、容赦のないホークスの攻撃は、体制を崩したトゥワイスに、顔面に向け羽根を突き立てる。
「だから、どっちも諦めないから・・・殺すしかなくなる」
「おめェらは・・・ヒーローなんかじゃねえ。いつも、そうだ。誰も彼も!あぶれた人間は、切り捨てられる!
知らねェだろ・・・!トガちゃんなんか・・・俺をハンカチで優しく包んでくれるんだ。
なァ、知ってんのかよ・・・!?二度目だぜ?これで二度目だ、俺。また皆を陥れた。
トガちゃんは、もう俺を包んでくれないだろうな・・・でもいい・・・ただ皆の幸せを守るだけだ!!」
最後の最後の足掻き。
「連中に伝えとくよ」
「伝えなくていいぜ!聞こえてる」
「・・・!!」
言葉よりも速く背後から迫った青い炎。ギリギリでトゥワイスごと炎から逃れる。
「俺に気付いてなかったろ!?」
けれど、倒れた拍子に連合の荼毘が、足で顔を押さえつけさらに目の前が見えない程の炎をホークスにぶちこめた。
「ミスってんじゃんか、ヒーロー!」
動きを止めていた。だが、ホークスは羽根を使い炎の渦からなんとか逃げ切る。
「ウソだろ!?」
けど、もうホークスの背中の羽根も、攻撃用の長い羽根も燃えてしまった。
その様子に、荼毘はせせら笑う。
「でもまァ、"武器"がだいぶ減っちまったな」
「仲間も燃えるとこだったぞ・・・」
足止めで、ゴーグルが割れた拍子で左目には血だまりが出来た。血を脱ぐっても、薄目しか開い。
「大丈夫。ヒーローってのァ・・・咄嗟に人命救助しちまうもんだ」
「皮肉が冴えてるね。わかってたかのような勢いだったけど・・・バレてた?」
「バレるも何も、ハナから何も信じちゃいねぇ」
「そ」
どうしたものかと、次の手を考える。
(焦げた羽根じゃ、威力減。相性最悪の上に狭所・・・役満だな。目的を最優先。
分倍河原は弱らせた。内蔵を避けて、骨と肉を斬った。暴れられるダメージじゃない。運び出・・・)
「燃やせェ!!」
一人、トゥワイスは増やし落としたハンカチを拾い出口に向かう。
「動くなって!」
もう一人のトゥワイスが、ホークスの動きを止めたまま、荼毘の炎が襲いかかる。
「おまえ一人いれば、ヒーローなんざ蹴散らせる!暴れろ、皆が待ってるぜ!」
「ああ」
もがいて、あがいて。仲間の荼毘と、手を叩きあって。
「ああ!」
いつの間にか、開いていたままの出口の前に、トゥワイスの前に、炎の中にいた筈のホークスがいる。
「(炎と共に外へ出て・・・周り込んだのか!?)速すぎだ」
「どけやああ!!」
このままでは、トゥワイスはまた捕まってしまう。
「鷹見、啓悟!!」
ホークスは目を見開き、一瞬動きが躊躇う。荼毘の炎を、すれすれで避けるけれど、心臓が、五月蝿い。
(何故、俺の名を知・・・)
世間一般的に、知らない筈。その名は、公安に入った時に捨てた。
(何だ、こいつ)
何でいま、あの時のことを思い出したのだろう。
一役割かった歌恋たちは、ファットガムに連れられ後衛に回るところだ。
『弱点?』
それはホークス事務所でインターンをしていた時。
『そうだなぁ・・・強いて言えば火だね』
『あ!それ、私もです。火が一番怖い』
『でも、焦凍くんのは平気でしょ』
『そ、それは・・・』
『あは、ごめんごめん』
二人の会話に、眉間にシワを寄せた常闇が話を戻す。
『して・・・対策は?』
『出される前に討つ』
その答えに、歌恋と常闇は顔を合わせた。それはホークスが速いから言えることで。
そう、ホークスは誰よりも速いのは、後ろを追っているからよく知っていることで・・・。
ファットガムのお腹から見えてしまった。崩れてる館の一部の窓から突き破る、青い炎と共に見覚えのある羽根の色が。
「殺しやがったな、よくも!」
炎の温度が、どんどん上がっていく。
「よくも!」
飛ぶ為の背中の羽根が、燃え貸す同然だ。
「トゥワイスを殺しやがったな!!」
怒りに身を任せた荼毘が、何度も足で踏んでくる。避ける気力と体力が、限界に近い。
喉も焼かれ、声ががらがらになりながらも醜く笑った表情の荼毘にいい放つ。
「それが・・・仲間を殺された奴の表情か・・・!?」
「なんって言い草だ!!ひどい!涙腺が焼けて、泣けねえんだよ俺ァよ!
トゥワイスがいりゃあ、俺の夢はより確実に叶ってたんだ!悲しいに決まってる!すげえ悲しいよ」
酷く、憎しみの詰まった青い炎。
「~~~!」
声にならない程の炎の威力に、押し負けそうになる。威力が一休み入ったところで、ホークスが問いかける。
聞かなければ。聞かなきゃならないことは山ほどある。
「連合の・・・っ、素性を調べたっ!おまえと・・・死柄木だけだ!!何も出なかった人間は・・・!!誰だ・・・」
『鷹見啓悟くん』
それは、公安に入ったあの日。
『この名前とは今日限りでさよならだ』
『今日から君には、ここで特別なヒーローとなる為の専用プログラムをこなしてもらう』
『厳しい訓練になるけど・・・大丈夫かい?』
その頃、買ってもらったエンデヴァー人形を両腕に優しくギュッと握りしめ、幼き日のホークスはコクリと首を縦にふる。
そして、目の前にいるスーツを着た大人に、エンデヴァー人形を見せながら聞いた。
『俺も、この人みたく悪い奴をやっつけるヒーローになれますか。俺をすくってくれたみたく、
みんなを明るく照らせますか』
「ありがとう」
その一言は、酷く冷たく感じられて。全部嘘だった、ホークスが仲間のヒーローを守る為についた嘘だった。
それを疑いもなく、心優しく受け入れていたトゥワイス。
「あなたは運が悪かっただけだ。罪を償ってやり直そう。やり直せるように俺も手伝う。
あなたは、良い人だから」
トゥワイスからの返事は、数秒待っただけだろう。だがそれは、酷く長く感じた。
「うるせえ」
怒りに溢れたトゥワイスの声。
「これが、ヒーローか?何をやり直すってんだ」
「やめろ」
「なァ!?」
「分倍河原!」
「俺は俺のことなんか、とっくにどうでもいいんだよ!!!」
「あなたと戦いたくないんだ!分倍河原!」
「そりゃてめェの都合だろ!!」
増えていくトゥワイスに、オリジナルのトゥワイスに向けていたホークスの無数の羽根は無惨にも散乱する。
「俺の魂はただ、連合の幸せの為に」
トゥワイスの"個性"が、発動された。だが、彼自身どこまでも悲しい人だと、そう思わざるを得ない。
「生成速度は目を見張るものがありますが、倍々で増やしていくにつれ、耐久力が低くなってますね。
同じ大雨覆で攻撃して、解けるのとそうでないのとがいます」
ホークスのスピードに、トゥワイスは動けない。
「ここまでやってきて、絆されるようなミスはしない。おとなしく同行してくれれば、まだやりようはあったんだ。
俺はあなたの事好きでしたし」
「俺の仲間はこいつらだけだ!」
言うや、トゥワイスは死柄木やトガといった連合の仲間を作り出す。
「土足で入ってくんじゃねぇ!!」
だが、すべて一瞬で羽根でやられてしまう。
「無駄だ、屑が!!屑野郎が!!」
「高速化が進む敵退治、何でだと思いますか。諦めない人間が、ヒーローにとって最も恐ろしいからです。
経験上、意志の固い人間は、気絶してくれない」
「うる、せ」
立ち向かってくるトゥワイスに、容赦のないホークスの攻撃は、体制を崩したトゥワイスに、顔面に向け羽根を突き立てる。
「だから、どっちも諦めないから・・・殺すしかなくなる」
「おめェらは・・・ヒーローなんかじゃねえ。いつも、そうだ。誰も彼も!あぶれた人間は、切り捨てられる!
知らねェだろ・・・!トガちゃんなんか・・・俺をハンカチで優しく包んでくれるんだ。
なァ、知ってんのかよ・・・!?二度目だぜ?これで二度目だ、俺。また皆を陥れた。
トガちゃんは、もう俺を包んでくれないだろうな・・・でもいい・・・ただ皆の幸せを守るだけだ!!」
最後の最後の足掻き。
「連中に伝えとくよ」
「伝えなくていいぜ!聞こえてる」
「・・・!!」
言葉よりも速く背後から迫った青い炎。ギリギリでトゥワイスごと炎から逃れる。
「俺に気付いてなかったろ!?」
けれど、倒れた拍子に連合の荼毘が、足で顔を押さえつけさらに目の前が見えない程の炎をホークスにぶちこめた。
「ミスってんじゃんか、ヒーロー!」
動きを止めていた。だが、ホークスは羽根を使い炎の渦からなんとか逃げ切る。
「ウソだろ!?」
けど、もうホークスの背中の羽根も、攻撃用の長い羽根も燃えてしまった。
その様子に、荼毘はせせら笑う。
「でもまァ、"武器"がだいぶ減っちまったな」
「仲間も燃えるとこだったぞ・・・」
足止めで、ゴーグルが割れた拍子で左目には血だまりが出来た。血を脱ぐっても、薄目しか開い。
「大丈夫。ヒーローってのァ・・・咄嗟に人命救助しちまうもんだ」
「皮肉が冴えてるね。わかってたかのような勢いだったけど・・・バレてた?」
「バレるも何も、ハナから何も信じちゃいねぇ」
「そ」
どうしたものかと、次の手を考える。
(焦げた羽根じゃ、威力減。相性最悪の上に狭所・・・役満だな。目的を最優先。
分倍河原は弱らせた。内蔵を避けて、骨と肉を斬った。暴れられるダメージじゃない。運び出・・・)
「燃やせェ!!」
一人、トゥワイスは増やし落としたハンカチを拾い出口に向かう。
「動くなって!」
もう一人のトゥワイスが、ホークスの動きを止めたまま、荼毘の炎が襲いかかる。
「おまえ一人いれば、ヒーローなんざ蹴散らせる!暴れろ、皆が待ってるぜ!」
「ああ」
もがいて、あがいて。仲間の荼毘と、手を叩きあって。
「ああ!」
いつの間にか、開いていたままの出口の前に、トゥワイスの前に、炎の中にいた筈のホークスがいる。
「(炎と共に外へ出て・・・周り込んだのか!?)速すぎだ」
「どけやああ!!」
このままでは、トゥワイスはまた捕まってしまう。
「鷹見、啓悟!!」
ホークスは目を見開き、一瞬動きが躊躇う。荼毘の炎を、すれすれで避けるけれど、心臓が、五月蝿い。
(何故、俺の名を知・・・)
世間一般的に、知らない筈。その名は、公安に入った時に捨てた。
(何だ、こいつ)
何でいま、あの時のことを思い出したのだろう。
一役割かった歌恋たちは、ファットガムに連れられ後衛に回るところだ。
『弱点?』
それはホークス事務所でインターンをしていた時。
『そうだなぁ・・・強いて言えば火だね』
『あ!それ、私もです。火が一番怖い』
『でも、焦凍くんのは平気でしょ』
『そ、それは・・・』
『あは、ごめんごめん』
二人の会話に、眉間にシワを寄せた常闇が話を戻す。
『して・・・対策は?』
『出される前に討つ』
その答えに、歌恋と常闇は顔を合わせた。それはホークスが速いから言えることで。
そう、ホークスは誰よりも速いのは、後ろを追っているからよく知っていることで・・・。
ファットガムのお腹から見えてしまった。崩れてる館の一部の窓から突き破る、青い炎と共に見覚えのある羽根の色が。
「殺しやがったな、よくも!」
炎の温度が、どんどん上がっていく。
「よくも!」
飛ぶ為の背中の羽根が、燃え貸す同然だ。
「トゥワイスを殺しやがったな!!」
怒りに身を任せた荼毘が、何度も足で踏んでくる。避ける気力と体力が、限界に近い。
喉も焼かれ、声ががらがらになりながらも醜く笑った表情の荼毘にいい放つ。
「それが・・・仲間を殺された奴の表情か・・・!?」
「なんって言い草だ!!ひどい!涙腺が焼けて、泣けねえんだよ俺ァよ!
トゥワイスがいりゃあ、俺の夢はより確実に叶ってたんだ!悲しいに決まってる!すげえ悲しいよ」
酷く、憎しみの詰まった青い炎。
「~~~!」
声にならない程の炎の威力に、押し負けそうになる。威力が一休み入ったところで、ホークスが問いかける。
聞かなければ。聞かなきゃならないことは山ほどある。
「連合の・・・っ、素性を調べたっ!おまえと・・・死柄木だけだ!!何も出なかった人間は・・・!!誰だ・・・」
『鷹見啓悟くん』
それは、公安に入ったあの日。
『この名前とは今日限りでさよならだ』
『今日から君には、ここで特別なヒーローとなる為の専用プログラムをこなしてもらう』
『厳しい訓練になるけど・・・大丈夫かい?』
その頃、買ってもらったエンデヴァー人形を両腕に優しくギュッと握りしめ、幼き日のホークスはコクリと首を縦にふる。
そして、目の前にいるスーツを着た大人に、エンデヴァー人形を見せながら聞いた。
『俺も、この人みたく悪い奴をやっつけるヒーローになれますか。俺をすくってくれたみたく、
みんなを明るく照らせますか』