第五話 A組
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「あ、歌恋!」
「!」
たまたま芦戸と、部屋を開けるタイミングが重なった。
「偶然!下に行くでしょ?」
「うん」
行き先は同じなので一緒に向かう。あまり芦戸とは二人きりにならないなーなんて考えてると、彼女が話かけてきた。
「・・・歌恋さ、轟と話してないよね?」
ギクッと、体が揺れた。芦戸にはいつも、確信をつかれてる気がするのだ。
「え?あー・・・そう、かな?」
「他の野郎とは話してるのに、どうしたの?」
「三奈ちゃん、よく見てらっしゃる・・・」
「・・・もう、誰もいなくなんないで欲しいから」
脳裏に、ミッドナイト先生の笑顔が浮かぶ。あの明るい芦戸と一緒にいるのに、空気を自分で重たくしてしまう。
「昨日ちょっと話したけど、轟寂しそうだったなって」
「それは、だってさ」
轟から言ってきた。一人にさせてくれって。こっちは話したいよ、側にいたいよ。我慢してるのに。
「向こうから、言ってるのに・・・」
「ん?」
「私だって、話たいよ・・・」
我慢していた気持ちが、一気に溢れる。エレベーターで、共有スペースにつく。
ドアが開くと、麗日と八百万と話している轟の姿が見えた。それを見た途端、知らぬ間に涙が溜まる。
「歌恋・・・」
「ごめん、戻るね・・・」
涙を拭って、芦戸に笑いかける。悲しげな彼女をこれ以上心配かけたくなくて、逃げるように部屋に向かい直した。
「歌恋!」
二人との会話を受け流しつつ、轟の顔は歌恋が呼ばれた方にむけられた。
背中しか見えなかった。歌恋がどんな顔をしてるのか分からなかった。
「三人で何話してたの?」
少し怒った表情の芦戸が声をかけてくる。
「緑谷のことで少し。歌恋と来たのか?」
「歌恋の気持ちも、考えてよね」
「ど、どうしたの?」
轟に突っかかるような芦戸に、麗日が不思議そうに声をかけた。
「歌恋が、泣いてたから。話したいって。詳しくは聞かなかったけど、なんで?どうして?」
「っ・・・」
"話したい"。それはきっと、芦戸だから聞けた歌恋の本音だ。
荼毘の事を考えなくていいなら、もっと歌恋と一緒にいたい。
でも、仲良くいる姿を荼毘はどこでどうに見てるか知らないから怖いのだ。
顔を背け、芦戸と目を合わせないように呟く。
「・・・兄貴が、チラつくから」
「え?なに?」
「なんもねぇ」
「・・・チッ、イラつくな・・・」
スマホとにらめっこしながら彼らの話を耳に入れていた爆豪。
"泣かせるな"と、約束したはずなのに。疲れか、毎度の態度か、ソファーで伸びてる上鳴。
「・・・俺らって、やっぱあれね。恋愛ってほどとおーいのかね」
「んなことねーって!女子にモテる為にヒーロー目指してるのは、まだ諦めてねぇからんな!」
「轟とじゃ次元がちげーよ、峰田」
「ムキィッ!悩みの種がちげーよ!!」
「ま、峰田と轟じゃぁ、なー。比較できねーって」
「・・・爆豪の方も出ないか」
常闇が爆豪の後ろから声をかける。
「出ねぇよ、あのジーパン」
「そうか。手掛かりがつかめなくて切羽つまってるからな」
ふと何をおもったのか、常闇は立ち上がり芦戸の所へ行っていた。
「登坂の名前が出てたが、どこに行ったか分かるか?」
「エレベーター乗ってちゃったから、多分部屋じゃないかな」
「かたじけない」
「かたじけない」
常闇を見送りつつ、爆豪は呆れたように首をかしげながら轟に聞く。
「・・・いつまでそうやっとんだ」
「燈矢兄を止めるまで」
「またか、てめぇも」
「・・・・・・・」
『俺のモン』その言葉が離れない。
「・・・俺が燈矢兄に負けても、この状態なら歌恋の傷も浅くて済むだろ」
「最初から負ける思考か、ダセェな」
「そうならないように特訓して、俺自身の技を完成させる」
もう少しで掴めそうなんだ。形にはなりつつある。それをもって、燈矢を越える。
「そばにいて守るって選択肢も、あるんだと思う。だから、目の届く範囲にはいてもらうんだ。
例え隣にいなくても。緑谷だって言ってた、お前を連れ戻す時、手の届く距離ならどうにかできるって。
忘れてんなら、緑谷を見つけたら言ってやるさ。大事なもん守るために」
「・・・・・なんか、こんがらがってんな」
「そうか?でも、爆豪はもっと歌恋に話すと思ってたよ」
「チッ、嫌味か。俺にァ眼中にねぇよ、あの葉っぱ女。だから、きの済むまですきにしろ」
「ああ。俺も死ぬ気はない」
「はぁ・・・最悪・・・」
涙をぬぐいながら、自分の部屋のベッドにダイブする歌恋。
自分が惨めで情けないのは理解している。こんなんでウジウジしてる場合じゃないってことも。
でも、心が悲しくて声をあらげて泣きはらしたい気分だ。
「登坂、いるか?」
「・・・!(この声・・・)」
轟じゃない。けど、出なくちゃと、のそのそ動き出す。ドアを開ければ、やっぱりおもった人がいた。
「常、闇くん・・・」
「気晴らしに空中散歩でもどうかとおもってな。もちろん、校外は危険だ、許可を必要としない校内の上空になるが」
常闇の隣で、ダークシャドウが親指を突き立てている。
「ソトハテンキダ!」
確かに、外は晴天。部屋に閉じこもってても気分が落ち込むだけだ。
歌恋はダークシャドウの頭を優しく撫でてあげる。
「ありがとう、二人とも。上着とってくるね」
コスチュームでない姿で三人?で空を飛ぶのは久しぶりだ。風が気持ちいい。
すぐ横で、ホークスが案内してくれる声が聞こえてきそうなほどだ。
「・・・何があったかは詳しく聞かないが、気分はどうだ?」
見晴らしのよい、屋根の上で一休みしながら常闇が聞いてくる。
「うん・・・スッキリしたよ。空はいいって、本当だね」
いつかいっていたホークスの言葉を思い出す。
「そのホークスからも連絡ないし・・・。私、緑谷くんに個人的に連絡してみたけど、それもダメだった」
「・・・!緑谷にか」
「あ、でもこれは他の人には内緒ね。きっとややこしくなるし、爆豪くんに絶対睨まれる」
「そうか・・・。緑谷もこの辺りに戻っていればとおもったが、そううまくいかないな。
爆豪と轟と話したんだ。そろそろ皆に話す頃合いだと。エンデヴァーもベストジーニストも出ないと言っていた」
「そろそろクラスで動かないとなんだね」
緑谷を連れ戻すために、彼にも安心できる場所は必要だ。
『歌恋が、泣いてたから。話したいって。詳しくは聞かなかったけど、なんで?どうして?』
疑問を投げ掛けられた芦戸の言葉が、轟の脳裏を支配していた。
自分の部屋に戻り、後ろ手でドアを閉めてギリッと歯を食い縛る。
『話したい』。その気持ちは多分、言われなくても気付いていた。近くにいてもお互い話さない。
話さないように自分は心掛けていた。爆豪にだって、泣かせるなと言われていたのに。
泣きそうな顔を上げて薄暗い天井を睨む。幸せな瞬間なんて、いつも一瞬で、その瞬間はずっと一緒にいれると思うのに。
辛い思いをさせてる時間の方がずっと頭に残って長く感じる。
でも、あれは本気で恐ろしく怖かった。
ビー玉の姿の歌恋に、みせびらかすように荼毘が・・・燈矢がキスをする行動。
そのまま放り投げた、意識のないまま地面に落ちてればただじゃすまなかった筈で。
ニヤリと怪しく嗤った顔。何を考えているのか、全く予想がつかなくて。
『大事なモンなんて、すぐ消える。しがらみがあるから弱くなる』
(そんなことねぇ・・・そんなこと・・・)
エンデヴァーを恨んでいたかつての自分のようには戻れない。たくさんの大事なことをA組から歌恋から教わった。
『俺のモン』
荼毘のその言葉を思い出す度に吐き気を覚える。歌恋と二人で立つ姿が、当たり前のように映される。
歌恋の隣が、俺・・・轟焦凍じゃなくなっている。俺とだと、泣いてる彼女の姿しかなくなっていた。
気持ちがごちゃごちゃしている。どうしていいのか、わからなくなってる。考えすぎなのかもしれない。
けど、笑顔が・・・あんなに好きだった笑顔が、思い出せなくなっていた。しばらく見てないから、遠ざけているから。
「はぁー・・・・・・」
息を大きく吐き、気持ちを落ち着かせる。緑谷もいなくて、相談できそうな人もいなくて。
爆豪は気にかけてくれてるけど、少し違う気がする。しゃがみこんで、うずくまる。
「俺も話してぇ・・・」
好きって気持ちを知った。恋ってなんなのか、なんとなくわかってきていたのに。
自分が憎んでいた自分の"個性"の力で、初めて守りたいって思った人。何より大切な人。
「!」
たまたま芦戸と、部屋を開けるタイミングが重なった。
「偶然!下に行くでしょ?」
「うん」
行き先は同じなので一緒に向かう。あまり芦戸とは二人きりにならないなーなんて考えてると、彼女が話かけてきた。
「・・・歌恋さ、轟と話してないよね?」
ギクッと、体が揺れた。芦戸にはいつも、確信をつかれてる気がするのだ。
「え?あー・・・そう、かな?」
「他の野郎とは話してるのに、どうしたの?」
「三奈ちゃん、よく見てらっしゃる・・・」
「・・・もう、誰もいなくなんないで欲しいから」
脳裏に、ミッドナイト先生の笑顔が浮かぶ。あの明るい芦戸と一緒にいるのに、空気を自分で重たくしてしまう。
「昨日ちょっと話したけど、轟寂しそうだったなって」
「それは、だってさ」
轟から言ってきた。一人にさせてくれって。こっちは話したいよ、側にいたいよ。我慢してるのに。
「向こうから、言ってるのに・・・」
「ん?」
「私だって、話たいよ・・・」
我慢していた気持ちが、一気に溢れる。エレベーターで、共有スペースにつく。
ドアが開くと、麗日と八百万と話している轟の姿が見えた。それを見た途端、知らぬ間に涙が溜まる。
「歌恋・・・」
「ごめん、戻るね・・・」
涙を拭って、芦戸に笑いかける。悲しげな彼女をこれ以上心配かけたくなくて、逃げるように部屋に向かい直した。
「歌恋!」
二人との会話を受け流しつつ、轟の顔は歌恋が呼ばれた方にむけられた。
背中しか見えなかった。歌恋がどんな顔をしてるのか分からなかった。
「三人で何話してたの?」
少し怒った表情の芦戸が声をかけてくる。
「緑谷のことで少し。歌恋と来たのか?」
「歌恋の気持ちも、考えてよね」
「ど、どうしたの?」
轟に突っかかるような芦戸に、麗日が不思議そうに声をかけた。
「歌恋が、泣いてたから。話したいって。詳しくは聞かなかったけど、なんで?どうして?」
「っ・・・」
"話したい"。それはきっと、芦戸だから聞けた歌恋の本音だ。
荼毘の事を考えなくていいなら、もっと歌恋と一緒にいたい。
でも、仲良くいる姿を荼毘はどこでどうに見てるか知らないから怖いのだ。
顔を背け、芦戸と目を合わせないように呟く。
「・・・兄貴が、チラつくから」
「え?なに?」
「なんもねぇ」
「・・・チッ、イラつくな・・・」
スマホとにらめっこしながら彼らの話を耳に入れていた爆豪。
"泣かせるな"と、約束したはずなのに。疲れか、毎度の態度か、ソファーで伸びてる上鳴。
「・・・俺らって、やっぱあれね。恋愛ってほどとおーいのかね」
「んなことねーって!女子にモテる為にヒーロー目指してるのは、まだ諦めてねぇからんな!」
「轟とじゃ次元がちげーよ、峰田」
「ムキィッ!悩みの種がちげーよ!!」
「ま、峰田と轟じゃぁ、なー。比較できねーって」
「・・・爆豪の方も出ないか」
常闇が爆豪の後ろから声をかける。
「出ねぇよ、あのジーパン」
「そうか。手掛かりがつかめなくて切羽つまってるからな」
ふと何をおもったのか、常闇は立ち上がり芦戸の所へ行っていた。
「登坂の名前が出てたが、どこに行ったか分かるか?」
「エレベーター乗ってちゃったから、多分部屋じゃないかな」
「かたじけない」
「かたじけない」
常闇を見送りつつ、爆豪は呆れたように首をかしげながら轟に聞く。
「・・・いつまでそうやっとんだ」
「燈矢兄を止めるまで」
「またか、てめぇも」
「・・・・・・・」
『俺のモン』その言葉が離れない。
「・・・俺が燈矢兄に負けても、この状態なら歌恋の傷も浅くて済むだろ」
「最初から負ける思考か、ダセェな」
「そうならないように特訓して、俺自身の技を完成させる」
もう少しで掴めそうなんだ。形にはなりつつある。それをもって、燈矢を越える。
「そばにいて守るって選択肢も、あるんだと思う。だから、目の届く範囲にはいてもらうんだ。
例え隣にいなくても。緑谷だって言ってた、お前を連れ戻す時、手の届く距離ならどうにかできるって。
忘れてんなら、緑谷を見つけたら言ってやるさ。大事なもん守るために」
「・・・・・なんか、こんがらがってんな」
「そうか?でも、爆豪はもっと歌恋に話すと思ってたよ」
「チッ、嫌味か。俺にァ眼中にねぇよ、あの葉っぱ女。だから、きの済むまですきにしろ」
「ああ。俺も死ぬ気はない」
「はぁ・・・最悪・・・」
涙をぬぐいながら、自分の部屋のベッドにダイブする歌恋。
自分が惨めで情けないのは理解している。こんなんでウジウジしてる場合じゃないってことも。
でも、心が悲しくて声をあらげて泣きはらしたい気分だ。
「登坂、いるか?」
「・・・!(この声・・・)」
轟じゃない。けど、出なくちゃと、のそのそ動き出す。ドアを開ければ、やっぱりおもった人がいた。
「常、闇くん・・・」
「気晴らしに空中散歩でもどうかとおもってな。もちろん、校外は危険だ、許可を必要としない校内の上空になるが」
常闇の隣で、ダークシャドウが親指を突き立てている。
「ソトハテンキダ!」
確かに、外は晴天。部屋に閉じこもってても気分が落ち込むだけだ。
歌恋はダークシャドウの頭を優しく撫でてあげる。
「ありがとう、二人とも。上着とってくるね」
コスチュームでない姿で三人?で空を飛ぶのは久しぶりだ。風が気持ちいい。
すぐ横で、ホークスが案内してくれる声が聞こえてきそうなほどだ。
「・・・何があったかは詳しく聞かないが、気分はどうだ?」
見晴らしのよい、屋根の上で一休みしながら常闇が聞いてくる。
「うん・・・スッキリしたよ。空はいいって、本当だね」
いつかいっていたホークスの言葉を思い出す。
「そのホークスからも連絡ないし・・・。私、緑谷くんに個人的に連絡してみたけど、それもダメだった」
「・・・!緑谷にか」
「あ、でもこれは他の人には内緒ね。きっとややこしくなるし、爆豪くんに絶対睨まれる」
「そうか・・・。緑谷もこの辺りに戻っていればとおもったが、そううまくいかないな。
爆豪と轟と話したんだ。そろそろ皆に話す頃合いだと。エンデヴァーもベストジーニストも出ないと言っていた」
「そろそろクラスで動かないとなんだね」
緑谷を連れ戻すために、彼にも安心できる場所は必要だ。
『歌恋が、泣いてたから。話したいって。詳しくは聞かなかったけど、なんで?どうして?』
疑問を投げ掛けられた芦戸の言葉が、轟の脳裏を支配していた。
自分の部屋に戻り、後ろ手でドアを閉めてギリッと歯を食い縛る。
『話したい』。その気持ちは多分、言われなくても気付いていた。近くにいてもお互い話さない。
話さないように自分は心掛けていた。爆豪にだって、泣かせるなと言われていたのに。
泣きそうな顔を上げて薄暗い天井を睨む。幸せな瞬間なんて、いつも一瞬で、その瞬間はずっと一緒にいれると思うのに。
辛い思いをさせてる時間の方がずっと頭に残って長く感じる。
でも、あれは本気で恐ろしく怖かった。
ビー玉の姿の歌恋に、みせびらかすように荼毘が・・・燈矢がキスをする行動。
そのまま放り投げた、意識のないまま地面に落ちてればただじゃすまなかった筈で。
ニヤリと怪しく嗤った顔。何を考えているのか、全く予想がつかなくて。
『大事なモンなんて、すぐ消える。しがらみがあるから弱くなる』
(そんなことねぇ・・・そんなこと・・・)
エンデヴァーを恨んでいたかつての自分のようには戻れない。たくさんの大事なことをA組から歌恋から教わった。
『俺のモン』
荼毘のその言葉を思い出す度に吐き気を覚える。歌恋と二人で立つ姿が、当たり前のように映される。
歌恋の隣が、俺・・・轟焦凍じゃなくなっている。俺とだと、泣いてる彼女の姿しかなくなっていた。
気持ちがごちゃごちゃしている。どうしていいのか、わからなくなってる。考えすぎなのかもしれない。
けど、笑顔が・・・あんなに好きだった笑顔が、思い出せなくなっていた。しばらく見てないから、遠ざけているから。
「はぁー・・・・・・」
息を大きく吐き、気持ちを落ち着かせる。緑谷もいなくて、相談できそうな人もいなくて。
爆豪は気にかけてくれてるけど、少し違う気がする。しゃがみこんで、うずくまる。
「俺も話してぇ・・・」
好きって気持ちを知った。恋ってなんなのか、なんとなくわかってきていたのに。
自分が憎んでいた自分の"個性"の力で、初めて守りたいって思った人。何より大切な人。