第四話 審議
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クラスメイトの八百万、芦戸、切島、障子がお見舞いに来てくれた。
「登坂も退院したから、てっきりこっちに来ると思ってたんだけど・・・」
顔をうつむかせながら、頬をかきながら切島が話を切り出す。
「・・・・・・(そっか、アイツは退院できたのか・・・)」
昨日の今日だ。会いづらいに決まってる。なんで、あんなに怒鳴ってしまったのだろう。
でも、あれは本音だし、敵に目をつけられたなら、離した方がいいのではないかと思ったから。
(・・・いつも、泣かせてるな・・・)
ボーッとしたまま窓の外を眺めれば、今日も懲りずに報道陣がおしかけていた。
「気にすんな」
「大丈夫だかんね・・・」
「轟さんの事・・・私たちは見てましたもの。大丈夫です」
皆が知った、ヴィラン連合荼毘とエンデヴァーの関係。
「焦凍」
皆に掛ける言葉もないままでいると、再び開いたドアからかけられた声。
見れば、心配そうな表情をした姉の冬美と、兄の夏雄がいた。
「ちゃす・・・!」
皆が慌てて挨拶をし、現状を説明していく。
「あーと・・・!轟のお兄さん、お姉さん!!轟、喉が火傷でまだ・・・」
二人の後ろから見えた、もう一つの人影。
(え・・・)
驚く轟の目に飛び込んだのは、母親の姿だ。
都市部は、パニックに陥っていた。二日前の被害状況も把握できぬまま、
大量の凶悪敵が解き放たれるという未曾有の事態に加え、脳無の存在が決定打となった。
全国に広がる真偽不明の脳無目撃談。人ならざる不気味な存在は、雄英高校に現れて以来、
深層下で人々の心を蝕み続けていた。
"噂"の浸透は人々の抱く情勢不安の表れであり、溜まり続けたフラストレーションが、ついに決壊する。
ヒーローを見限った人々が自衛の手段を求めた時、それらはもう市場に出回っていた。
対敵戦闘訓練を受けていない一般市民の武装戦闘は、周辺一帯を巻き込み、更なる被害を生んでいた。
僅か二日の間に、こうした事件が全国で頻発している。
ヒーローが減っていた。
緑谷とオールマイトが戻るまで、スマホでそんなネットニュースを見ていた。
人気No.9だったヨロイムシャも、職場体験でお世話になったデステゴロも、皆皆、ヒーローをやめている。
(・・・こんなニュースばかりじゃ、お母さんなんかも言ってくるよね・・・)
市民の安全も不安定となれば、お母さんとお父さんのことも心配だけど。
廊下で待っていると、轟の部屋にいた八百万たちから連絡が入る。
(・・・焦凍が、お姉さんたちと・・・?なんだろう・・・)
凄く、モヤモヤする。
「・・・皆、ごめん・・・やっぱり・・・」
隣で一緒にスマホを弄っていた耳郞と、会話をしていた飯田と麗日が顔を向けてくれた。
「緑谷くんまだ会えないから、焦凍のとこに行っていいかな?」
そう聞けば、ニヤリと笑う。
「ええよ」
「ああ、もちろん」
「ふふん、やっぱり?なんだって?」
「えっと・・・ヤオモモたちが・・・」
連絡を受けたことを報告して、轟の部屋に向かう。
「あれ・・・?いない・・・」
確相澤先生も入院している。だとすれば・・・。
「エンデヴァーのとこ・・・?」
でも、エンデヴァーの部屋の番号を知らない。"個性"の桜を使えばすぐ分かるけど。
「・・・なに、焦ってんのかな・・・」
そりゃ、あんな事が起こったのだ。家族だってお見舞いにくる。ドアを後ろ手で閉めながら、掴んでいるドアノブをギュッと握った。
「戻ろう・・・」
すると、耳に入ってきた声。いや、これは声というより機械から再生されたような独特な声。
「「「あ」」」
鉢合わせたプロヒーロー、ベストジーニスト。そして、隣にいるのは・・・全身包帯だらけのグルグル男。
自分の目を疑う。特徴的な前髪に、色。いつものヒーロースーツでもなく、大事な背中の羽根が一つもなく。
「・・・ホークス・・・?」
[あ、元気?]
後ずさりながら問うホークス。ふつふつと沸き上がる怒り。気づけば、自分でも驚くくらいの大声を出していた。
「っ・・・私も!常闇くんもいたのに、なんでですか!?ずっと、そうやって一人で背負ってたんですか!?
私たちじゃ頼りないですか!?学生だから!?まだプロヒーローじゃないから・・・!みんなを、助けられないから!」
ミッドナイト先生も、マジェスティックも。たくさんの人が今回の戦いで命を落とした。傷付いた人もたくさん。
ヴィラン連合の話も聞けた。みんな、自分の中に秘めている気持ち。
その気持ちが、どうしてもすれ違ってしまうからうまれてしまうヴィランとヒーローという立場。
何が、誰が正しいのかなんてそんなのは決めつけるべきではない。でも、これだけはハッキリしてる。
誰も死んで欲しくない。
戦うことでしか解決方法がなくてどうしようもなくても。
「今まで一人で戦っていたのは知ってます」
心のどこかではずっと気にしていたホークスのこと。やっと、対面出来た喜びと冬のインターン、離されていた悔しさ。
まだ思い出すと、背筋に冷たいものが走る、館で見た恐怖。轟の事はもちろん一番大事だ、大切な人だ。
それでも、これは目の前のこの人に伝えたかった。自分たちが強くなりたかっただけだけど、それだけじゃなくなっていた。
「でも今は!」
まだ貴方の目には弱い奴らとしか思ってもらえてないかもしれなくても。
「私と常闇くんがいます!ホークスはいま、一人じゃないです!もっと、強くなります・・・!だから、いなくならないで下さい・・・!」
『いなくならないで下さい』
ヒーローになってそう言われるのは初めてじゃない。地元の人にファンサ贈れば黄色い声をくれるのはしょっちゅうだった。
でも、同じ言葉でも何故だか、目の前のこの子の言葉には重みを感じた。自分は、生きてていいんだと。
荼毘から漏れた自分の情報は、やはり母からだった。その母は家に姿はなく、出た後だった。
(俺は他人を助ける為に、家族を見限った)
公安で指示を受け、仕事をするのはいつも一人だったのに。気まぐれに受け入れたただのインターン生なのに。
二人がいるのが、いつの間にか当たり前になっていたんだ。力を借りていれば、こんなことにはなっていなかったのだろうか。
「そうか、君はホークスの所でインターンしていた子だったのか」
話の流れの状況を整理しようと、ベストジーニストが頷いている。
[ありがとう、歌恋ちゃん]
自分の声が出づらいせいで、機械越しの声にしかならないのが辛い。
それに、脳裏に浮かぶのはトゥワイスだ。
[だけど俺は人を殺してる。事態が事態じゃなかったらここにいられたか分からない]
公安での汚い仕事は、表に出ることはなく秘密裏に処理されることが当たり前だ。
だから真っ向から人を助けるヒーローになるのを目指してる彼らは知らないことが多い。
(俺はそんな綺麗な言葉を向けられていい人間じゃない。だけど・・・)
荼毘が流したことは正論だ。
公安は現在、実質機能停止。自分に指示を出す人間はいまはいない。
『俺が穢れて皆が安心できるようになるなら、喜んで引き受けますよ』
今回の任務だって、覚悟はしていた。もう既に穢れまくってるのに、目の前の女の子は自分の為に涙を流して訴えてくる。
(俺は・・・まだ生きてる・・・いていいのか)
公安にいた時とは違う。子供の頃、メチャクチャだった両親にさえそんな風に言ってもらったことなどなくて。
(俺も、そっちに行ってよかと・・・?)
一人じゃない。
でも、素直に喜ぶのはなんだか違くて。本当は、嬉しくて仕方ない。背中に羽根があったら、揺れていたとおもうほど。
[まぁ、公安もいまはないし、咎めようにもヒーローが減ってるから、下手に罰もないだろうけどさ]
そして、機械のマスクしてても分かるように、歌恋に笑顔を向けた。作る必要のない、素直な笑顔を。
[俺に頼って欲しいってのなら、もっと強くなってもらわなくちゃね!ヒーローが暇をもて余す世界、一緒に作ろうか!]
彼女は満面な笑みを向けてくれた。
「はい!」
(俺はこれで、君たちと同じ夢を見ていいのだろうか)
「登坂も退院したから、てっきりこっちに来ると思ってたんだけど・・・」
顔をうつむかせながら、頬をかきながら切島が話を切り出す。
「・・・・・・(そっか、アイツは退院できたのか・・・)」
昨日の今日だ。会いづらいに決まってる。なんで、あんなに怒鳴ってしまったのだろう。
でも、あれは本音だし、敵に目をつけられたなら、離した方がいいのではないかと思ったから。
(・・・いつも、泣かせてるな・・・)
ボーッとしたまま窓の外を眺めれば、今日も懲りずに報道陣がおしかけていた。
「気にすんな」
「大丈夫だかんね・・・」
「轟さんの事・・・私たちは見てましたもの。大丈夫です」
皆が知った、ヴィラン連合荼毘とエンデヴァーの関係。
「焦凍」
皆に掛ける言葉もないままでいると、再び開いたドアからかけられた声。
見れば、心配そうな表情をした姉の冬美と、兄の夏雄がいた。
「ちゃす・・・!」
皆が慌てて挨拶をし、現状を説明していく。
「あーと・・・!轟のお兄さん、お姉さん!!轟、喉が火傷でまだ・・・」
二人の後ろから見えた、もう一つの人影。
(え・・・)
驚く轟の目に飛び込んだのは、母親の姿だ。
都市部は、パニックに陥っていた。二日前の被害状況も把握できぬまま、
大量の凶悪敵が解き放たれるという未曾有の事態に加え、脳無の存在が決定打となった。
全国に広がる真偽不明の脳無目撃談。人ならざる不気味な存在は、雄英高校に現れて以来、
深層下で人々の心を蝕み続けていた。
"噂"の浸透は人々の抱く情勢不安の表れであり、溜まり続けたフラストレーションが、ついに決壊する。
ヒーローを見限った人々が自衛の手段を求めた時、それらはもう市場に出回っていた。
対敵戦闘訓練を受けていない一般市民の武装戦闘は、周辺一帯を巻き込み、更なる被害を生んでいた。
僅か二日の間に、こうした事件が全国で頻発している。
ヒーローが減っていた。
緑谷とオールマイトが戻るまで、スマホでそんなネットニュースを見ていた。
人気No.9だったヨロイムシャも、職場体験でお世話になったデステゴロも、皆皆、ヒーローをやめている。
(・・・こんなニュースばかりじゃ、お母さんなんかも言ってくるよね・・・)
市民の安全も不安定となれば、お母さんとお父さんのことも心配だけど。
廊下で待っていると、轟の部屋にいた八百万たちから連絡が入る。
(・・・焦凍が、お姉さんたちと・・・?なんだろう・・・)
凄く、モヤモヤする。
「・・・皆、ごめん・・・やっぱり・・・」
隣で一緒にスマホを弄っていた耳郞と、会話をしていた飯田と麗日が顔を向けてくれた。
「緑谷くんまだ会えないから、焦凍のとこに行っていいかな?」
そう聞けば、ニヤリと笑う。
「ええよ」
「ああ、もちろん」
「ふふん、やっぱり?なんだって?」
「えっと・・・ヤオモモたちが・・・」
連絡を受けたことを報告して、轟の部屋に向かう。
「あれ・・・?いない・・・」
確相澤先生も入院している。だとすれば・・・。
「エンデヴァーのとこ・・・?」
でも、エンデヴァーの部屋の番号を知らない。"個性"の桜を使えばすぐ分かるけど。
「・・・なに、焦ってんのかな・・・」
そりゃ、あんな事が起こったのだ。家族だってお見舞いにくる。ドアを後ろ手で閉めながら、掴んでいるドアノブをギュッと握った。
「戻ろう・・・」
すると、耳に入ってきた声。いや、これは声というより機械から再生されたような独特な声。
「「「あ」」」
鉢合わせたプロヒーロー、ベストジーニスト。そして、隣にいるのは・・・全身包帯だらけのグルグル男。
自分の目を疑う。特徴的な前髪に、色。いつものヒーロースーツでもなく、大事な背中の羽根が一つもなく。
「・・・ホークス・・・?」
[あ、元気?]
後ずさりながら問うホークス。ふつふつと沸き上がる怒り。気づけば、自分でも驚くくらいの大声を出していた。
「っ・・・私も!常闇くんもいたのに、なんでですか!?ずっと、そうやって一人で背負ってたんですか!?
私たちじゃ頼りないですか!?学生だから!?まだプロヒーローじゃないから・・・!みんなを、助けられないから!」
ミッドナイト先生も、マジェスティックも。たくさんの人が今回の戦いで命を落とした。傷付いた人もたくさん。
ヴィラン連合の話も聞けた。みんな、自分の中に秘めている気持ち。
その気持ちが、どうしてもすれ違ってしまうからうまれてしまうヴィランとヒーローという立場。
何が、誰が正しいのかなんてそんなのは決めつけるべきではない。でも、これだけはハッキリしてる。
誰も死んで欲しくない。
戦うことでしか解決方法がなくてどうしようもなくても。
「今まで一人で戦っていたのは知ってます」
心のどこかではずっと気にしていたホークスのこと。やっと、対面出来た喜びと冬のインターン、離されていた悔しさ。
まだ思い出すと、背筋に冷たいものが走る、館で見た恐怖。轟の事はもちろん一番大事だ、大切な人だ。
それでも、これは目の前のこの人に伝えたかった。自分たちが強くなりたかっただけだけど、それだけじゃなくなっていた。
「でも今は!」
まだ貴方の目には弱い奴らとしか思ってもらえてないかもしれなくても。
「私と常闇くんがいます!ホークスはいま、一人じゃないです!もっと、強くなります・・・!だから、いなくならないで下さい・・・!」
『いなくならないで下さい』
ヒーローになってそう言われるのは初めてじゃない。地元の人にファンサ贈れば黄色い声をくれるのはしょっちゅうだった。
でも、同じ言葉でも何故だか、目の前のこの子の言葉には重みを感じた。自分は、生きてていいんだと。
荼毘から漏れた自分の情報は、やはり母からだった。その母は家に姿はなく、出た後だった。
(俺は他人を助ける為に、家族を見限った)
公安で指示を受け、仕事をするのはいつも一人だったのに。気まぐれに受け入れたただのインターン生なのに。
二人がいるのが、いつの間にか当たり前になっていたんだ。力を借りていれば、こんなことにはなっていなかったのだろうか。
「そうか、君はホークスの所でインターンしていた子だったのか」
話の流れの状況を整理しようと、ベストジーニストが頷いている。
[ありがとう、歌恋ちゃん]
自分の声が出づらいせいで、機械越しの声にしかならないのが辛い。
それに、脳裏に浮かぶのはトゥワイスだ。
[だけど俺は人を殺してる。事態が事態じゃなかったらここにいられたか分からない]
公安での汚い仕事は、表に出ることはなく秘密裏に処理されることが当たり前だ。
だから真っ向から人を助けるヒーローになるのを目指してる彼らは知らないことが多い。
(俺はそんな綺麗な言葉を向けられていい人間じゃない。だけど・・・)
荼毘が流したことは正論だ。
公安は現在、実質機能停止。自分に指示を出す人間はいまはいない。
『俺が穢れて皆が安心できるようになるなら、喜んで引き受けますよ』
今回の任務だって、覚悟はしていた。もう既に穢れまくってるのに、目の前の女の子は自分の為に涙を流して訴えてくる。
(俺は・・・まだ生きてる・・・いていいのか)
公安にいた時とは違う。子供の頃、メチャクチャだった両親にさえそんな風に言ってもらったことなどなくて。
(俺も、そっちに行ってよかと・・・?)
一人じゃない。
でも、素直に喜ぶのはなんだか違くて。本当は、嬉しくて仕方ない。背中に羽根があったら、揺れていたとおもうほど。
[まぁ、公安もいまはないし、咎めようにもヒーローが減ってるから、下手に罰もないだろうけどさ]
そして、機械のマスクしてても分かるように、歌恋に笑顔を向けた。作る必要のない、素直な笑顔を。
[俺に頼って欲しいってのなら、もっと強くなってもらわなくちゃね!ヒーローが暇をもて余す世界、一緒に作ろうか!]
彼女は満面な笑みを向けてくれた。
「はい!」
(俺はこれで、君たちと同じ夢を見ていいのだろうか)