第四話 審議
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怒鳴られて、唖然とした。こんなに彼が怒るとは思ってなかった。
「なに、って・・・」
圧倒的な迫力に、押し負けそうなる。
「焦凍が心配だったから・・・私だって、ヒーロー志望だから・・・」
言葉にしながら、だんだんと現状を把握していく内に目の前がぼやけてきた。
ああ、自分はまた泣きそうなんだと溢れだしそうになるのを必死に堪える。
堪える度に、声が震えてしまう。
「焦凍の心配は・・・しちゃ、ダメなの・・・?私・・・」
何を言っていいのか、分からない。
泣きそうになってることぐらい、轟にだってわかってる。自分が彼女に対して酷いことをしてることも。
歌恋を自分の家族に紹介して、否定されると思ってた。父親には真っ正面から会わせてないけど、
もう感ずいてるはずだし、お母さんも、姉の冬美は喜んでくれて、兄の夏雄も嬉しそうだった。
何も怖がることはない、そう安心していた。
『大丈夫、彼女のことは俺に任せてよ』
ニヤリと笑う荼毘の顔。一番危険な奴に歌恋を近づけた。二度も奴の手の中に入って。
燈矢の炎は父親より強かった。強い、憎しみの炎だった。燈矢はずっと見てたんだ。神野で、歌恋を拐った日から。
"個性"を使った体力テスト、初めての授業で自分の"個性"を楽しそうに使ってるのを見て。
自分も、あんな風に"個性"を使えてたらって思って、声をかけたんだ。
(俺が、歌恋を好きになったから・・・)
関係ない、轟家の事情に巻き込んだ。
『俺のモン』
燈矢に、歌恋は渡したくない。けど、大事になってる分だけ彼女に近づいてはいけない気がした。
一緒にいたらその分だけ辛くなる、辛くさせてしまう。燈矢を、荼毘をどうにかするまでは。
父親を貶めるためだけに、その身を滅ぼしながらあらゆる人の人生を巻き込んでる。
だから燈矢は、歌恋を連れ出すのは簡単だろう。
(あいつは、俺だ)
あの日までの俺が、この身を焼いたんだ。歌恋を好きになるまでの。
(親父じゃやれねェ・・・燈矢兄は、俺がやらなきゃ)
それで自分がどうなろうとも。今、目の前のこの子は守りたい。自分を、轟焦凍という人間を見てくれた、受け止めてくれた。
最初はお互いのワガママだった。でも、知らなかった思い出をたくさんくれた。A組の皆も一緒に。
夜の・・・二人きりでじゃれあったのは一度だけ。まだ、男として女として繋がるには早くて。二人で笑った。
また、歌恋のことで頭の中がいっぱいになる。幸せになる。
荼毘と戦ってからは、荼毘の顔が脳裏にこびりついてしまった。素直に笑えない自分が、ここにいる。
「・・・わりぃ。いまは・・・いや、暫くは・・・一人にさせてくれ」
せめて頭の中の荼毘が消えるまで。ニヤリと笑う荼毘の顔を忘れるまで。
掴んでいた服を、胸ぐらを放し歌恋を解放する。顔を合わせられなくなり、
ベッドの布団に潜りこみながら顔を背けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙のあと、歌恋が言葉にする。
「・・・・・・・暫くって・・・」
「・・・・・・」
返事をしない。いや、出来なかった。答えなんてないから。
「焦凍」
名前を呼んでくれる声はかすれてて、それでも嬉しいのに、答えちゃいけないと意地を張る。情けない。
それから、パタンと、静かにドアの閉まる音がした。
確認する為に、轟は先ほどまで歌恋がいた場所に目を向ける。そこに、もう彼女はいない。
「・・・ごめんなさい・・・」
誰もいない一人の部屋。歌恋が掴んでいたいた柵の一部はほんのりと、まだ温もりがあった。
「っ~・・・!」
泣くな、泣くな、泣くな。今ここで泣いたら轟に聞こえてしまうじゃないか。
「止ま、らんない・・・うっ、ああ・・・」
溢れる涙は、止まることを知らない。だって、悲しいから。悲しくて悲しくてどうしようもできなくて。
なんであんなに拒絶されてしまったのだろう。怖かった。ヴィラン連合の彼らを心配したから?
知らない内に自分は何か、轟の気のさわるようなことをしてしまったのか。
生きてるって分かって安心して、抱き合いたかっただけなのに。
走って、自分が入院していた部屋に戻る。声を押し殺すように、枕に顔を押しつけた。
気付いたら、看護師さんに夕飯を手渡されていた。それを食べて、あとはもう布団の中でゴロゴロする。
他にも、プロヒーローも含めてここ、セントラル病院に入院していると聞いたがフラフラ歩く気にもなれなかった。
そのまま寝てしまい、また朝が来る。
「歌恋」
「響香ちゃん」
耳郞と一緒に、退院手続きをする。一足先に二人で退院出来てよかった。あれからお母さんから、連絡がひっきりなしだ。
「ずっと鳴ってるけど、いいの?」
「いいの。どうせヒーロー目指すなとか、否定的な事しか言ってくれないから。
心配してくれてるのは嬉しいけど、学校やせっかく出来た仲間を裏切りたくない。
"個性"を使わない日常に戻って、また人の優劣に押し潰されるくらいなら・・・私は、今が生きてるって、実感できるから」
電話が夜鳴って出てみれば、泣いてるお母さんの声だった。ヒーローになってどうする。
あなたが死んでしまったら私たちはどうすればいい。幸せになって欲しいだけだ。
明日迎えに行くから家に帰ろうって。
「え・・・」
病院の廊下を、隣を歩いていた耳郞の足が止まった。
「歌恋、帰っちゃうの・・・?」
「帰らないよ!」
止まった拍子に少し後ろにいる耳郞に、歌恋は笑顔で言った。
「全力で言ったよ!嫌だって。A組の皆と離れるのは嫌だって。私だけ、まだ幸せになれない」
皆が、笑えてない。
「・・・そっか」
「うん」
耳郞が、ポンッと、優しく歌恋の頭を叩く。
「とりあえず、休もう」
病院のエントランスにいると、昨日よりも報道陣が沢山いる。外に出るのは危ない状態だ。
「皆、無事に来れるかな?」
「ヤオモモ達が迎えに来てくれるって話だけど・・・」
二人で会話をしていると、A組の面々が駆け寄ってくれた。芦戸や葉隠は抱いてワンワン泣いてくれて。
それに紛れこもうとした峰田を瀬呂が止めたり。いつもの、賑やかなA組。
委員長の飯田が、皆が静かになるように止めている。
話を聞けば、これから別々に緑谷と爆豪と轟の重傷者の様子を見に行こうと話していたらしい。
一緒に入院していた常闇も上鳴も、もう退院出来そうだと話は聞いていて。
「歌恋はー?轟んとこ行くでしょ?」
轟の部屋に行く、芦戸の言葉に、八百万、切島、障子もうなずいている。
「あ・・・」
一足早くあって、昨日あんな風に怒らせたばかりだ。
「私、緑谷くん心配だから、緑谷くんのところに行くよ。焦凍とは、もう会えてるから」
「・・・?」
歌恋の返答に、首をかしげる切島と障子。
「なんで?」
「いいの」
いまは、会わない方がいい。
「歌恋ちゃん、よかったの?」
緑谷の病室に向かう麗日と飯田と蛙吹と耳郞と。麗日に聞かれ、歌恋は頷く。
「うん。焦凍はもう会えて話せてるし、死柄木と戦って、いま一番辛い思いしてるのは、緑谷くんだとおもうから・・・」
それを聞いて、飯田と蛙吹は顔を合わせる。様子が少し変だ。
「あれ、オールマイト?」
緑谷の病室のドアの前で二の足を踏んでいるオールマイトがいる。
「どうしたのですか?」
さすが委員長、ここは躊躇いなく話かけにいってくれた。
「緑谷くんのお見舞いですか」
「ああ、君たちか。いま診察中でね、待っていたんだ。すまないが、緑谷少年と二人にしてくれるかい?」
「「・・・?」」
「なに、って・・・」
圧倒的な迫力に、押し負けそうなる。
「焦凍が心配だったから・・・私だって、ヒーロー志望だから・・・」
言葉にしながら、だんだんと現状を把握していく内に目の前がぼやけてきた。
ああ、自分はまた泣きそうなんだと溢れだしそうになるのを必死に堪える。
堪える度に、声が震えてしまう。
「焦凍の心配は・・・しちゃ、ダメなの・・・?私・・・」
何を言っていいのか、分からない。
泣きそうになってることぐらい、轟にだってわかってる。自分が彼女に対して酷いことをしてることも。
歌恋を自分の家族に紹介して、否定されると思ってた。父親には真っ正面から会わせてないけど、
もう感ずいてるはずだし、お母さんも、姉の冬美は喜んでくれて、兄の夏雄も嬉しそうだった。
何も怖がることはない、そう安心していた。
『大丈夫、彼女のことは俺に任せてよ』
ニヤリと笑う荼毘の顔。一番危険な奴に歌恋を近づけた。二度も奴の手の中に入って。
燈矢の炎は父親より強かった。強い、憎しみの炎だった。燈矢はずっと見てたんだ。神野で、歌恋を拐った日から。
"個性"を使った体力テスト、初めての授業で自分の"個性"を楽しそうに使ってるのを見て。
自分も、あんな風に"個性"を使えてたらって思って、声をかけたんだ。
(俺が、歌恋を好きになったから・・・)
関係ない、轟家の事情に巻き込んだ。
『俺のモン』
燈矢に、歌恋は渡したくない。けど、大事になってる分だけ彼女に近づいてはいけない気がした。
一緒にいたらその分だけ辛くなる、辛くさせてしまう。燈矢を、荼毘をどうにかするまでは。
父親を貶めるためだけに、その身を滅ぼしながらあらゆる人の人生を巻き込んでる。
だから燈矢は、歌恋を連れ出すのは簡単だろう。
(あいつは、俺だ)
あの日までの俺が、この身を焼いたんだ。歌恋を好きになるまでの。
(親父じゃやれねェ・・・燈矢兄は、俺がやらなきゃ)
それで自分がどうなろうとも。今、目の前のこの子は守りたい。自分を、轟焦凍という人間を見てくれた、受け止めてくれた。
最初はお互いのワガママだった。でも、知らなかった思い出をたくさんくれた。A組の皆も一緒に。
夜の・・・二人きりでじゃれあったのは一度だけ。まだ、男として女として繋がるには早くて。二人で笑った。
また、歌恋のことで頭の中がいっぱいになる。幸せになる。
荼毘と戦ってからは、荼毘の顔が脳裏にこびりついてしまった。素直に笑えない自分が、ここにいる。
「・・・わりぃ。いまは・・・いや、暫くは・・・一人にさせてくれ」
せめて頭の中の荼毘が消えるまで。ニヤリと笑う荼毘の顔を忘れるまで。
掴んでいた服を、胸ぐらを放し歌恋を解放する。顔を合わせられなくなり、
ベッドの布団に潜りこみながら顔を背けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙のあと、歌恋が言葉にする。
「・・・・・・・暫くって・・・」
「・・・・・・」
返事をしない。いや、出来なかった。答えなんてないから。
「焦凍」
名前を呼んでくれる声はかすれてて、それでも嬉しいのに、答えちゃいけないと意地を張る。情けない。
それから、パタンと、静かにドアの閉まる音がした。
確認する為に、轟は先ほどまで歌恋がいた場所に目を向ける。そこに、もう彼女はいない。
「・・・ごめんなさい・・・」
誰もいない一人の部屋。歌恋が掴んでいたいた柵の一部はほんのりと、まだ温もりがあった。
「っ~・・・!」
泣くな、泣くな、泣くな。今ここで泣いたら轟に聞こえてしまうじゃないか。
「止ま、らんない・・・うっ、ああ・・・」
溢れる涙は、止まることを知らない。だって、悲しいから。悲しくて悲しくてどうしようもできなくて。
なんであんなに拒絶されてしまったのだろう。怖かった。ヴィラン連合の彼らを心配したから?
知らない内に自分は何か、轟の気のさわるようなことをしてしまったのか。
生きてるって分かって安心して、抱き合いたかっただけなのに。
走って、自分が入院していた部屋に戻る。声を押し殺すように、枕に顔を押しつけた。
気付いたら、看護師さんに夕飯を手渡されていた。それを食べて、あとはもう布団の中でゴロゴロする。
他にも、プロヒーローも含めてここ、セントラル病院に入院していると聞いたがフラフラ歩く気にもなれなかった。
そのまま寝てしまい、また朝が来る。
「歌恋」
「響香ちゃん」
耳郞と一緒に、退院手続きをする。一足先に二人で退院出来てよかった。あれからお母さんから、連絡がひっきりなしだ。
「ずっと鳴ってるけど、いいの?」
「いいの。どうせヒーロー目指すなとか、否定的な事しか言ってくれないから。
心配してくれてるのは嬉しいけど、学校やせっかく出来た仲間を裏切りたくない。
"個性"を使わない日常に戻って、また人の優劣に押し潰されるくらいなら・・・私は、今が生きてるって、実感できるから」
電話が夜鳴って出てみれば、泣いてるお母さんの声だった。ヒーローになってどうする。
あなたが死んでしまったら私たちはどうすればいい。幸せになって欲しいだけだ。
明日迎えに行くから家に帰ろうって。
「え・・・」
病院の廊下を、隣を歩いていた耳郞の足が止まった。
「歌恋、帰っちゃうの・・・?」
「帰らないよ!」
止まった拍子に少し後ろにいる耳郞に、歌恋は笑顔で言った。
「全力で言ったよ!嫌だって。A組の皆と離れるのは嫌だって。私だけ、まだ幸せになれない」
皆が、笑えてない。
「・・・そっか」
「うん」
耳郞が、ポンッと、優しく歌恋の頭を叩く。
「とりあえず、休もう」
病院のエントランスにいると、昨日よりも報道陣が沢山いる。外に出るのは危ない状態だ。
「皆、無事に来れるかな?」
「ヤオモモ達が迎えに来てくれるって話だけど・・・」
二人で会話をしていると、A組の面々が駆け寄ってくれた。芦戸や葉隠は抱いてワンワン泣いてくれて。
それに紛れこもうとした峰田を瀬呂が止めたり。いつもの、賑やかなA組。
委員長の飯田が、皆が静かになるように止めている。
話を聞けば、これから別々に緑谷と爆豪と轟の重傷者の様子を見に行こうと話していたらしい。
一緒に入院していた常闇も上鳴も、もう退院出来そうだと話は聞いていて。
「歌恋はー?轟んとこ行くでしょ?」
轟の部屋に行く、芦戸の言葉に、八百万、切島、障子もうなずいている。
「あ・・・」
一足早くあって、昨日あんな風に怒らせたばかりだ。
「私、緑谷くん心配だから、緑谷くんのところに行くよ。焦凍とは、もう会えてるから」
「・・・?」
歌恋の返答に、首をかしげる切島と障子。
「なんで?」
「いいの」
いまは、会わない方がいい。
「歌恋ちゃん、よかったの?」
緑谷の病室に向かう麗日と飯田と蛙吹と耳郞と。麗日に聞かれ、歌恋は頷く。
「うん。焦凍はもう会えて話せてるし、死柄木と戦って、いま一番辛い思いしてるのは、緑谷くんだとおもうから・・・」
それを聞いて、飯田と蛙吹は顔を合わせる。様子が少し変だ。
「あれ、オールマイト?」
緑谷の病室のドアの前で二の足を踏んでいるオールマイトがいる。
「どうしたのですか?」
さすが委員長、ここは躊躇いなく話かけにいってくれた。
「緑谷くんのお見舞いですか」
「ああ、君たちか。いま診察中でね、待っていたんだ。すまないが、緑谷少年と二人にしてくれるかい?」
「「・・・?」」