第三話 醜悪
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「・・・・・・・・・」
重たい瞼を持ち上げる。太陽の明るい日差しが、直接刺激される。
体に力が入らない。目が光に慣れ、視界がぼんやり見えてきて無意識に言葉が出た。
「・・・しょ・・・と・・・」
[僕、轟燈矢は、エンデヴァー家の長男として生まれました。今まで30人以上の、罪なき人々を殺しました。
僕が何故、このような醜穢な所業に至ったか、皆に知ってもらいたい。エンデヴァーかつて、力に焦がれていました。
そしてオールマイトを越えられない絶望から、より強い"個性"を持った子をつくる為、無理矢理妻を娶りました。
僕は父の利己的な夢の為につくられた。しかし、どうやら僕は失敗作だったようで、程なくして見限られ、
捨てられ、忘れられました]
「でも、俺は忘れなかった。言われなくても、ずうっとおまえを見ていた。皆が皆、清廉潔白であれとは言わない。
おまえだけだ。事前に録画しておいた俺の身の上話が今、全国の電波とネットを走ってる!
いけねえ、なんだか愉しくなってきた!どうしたらおまえが苦しむか、人生を踏みにじれるか、あの日以来ずううううっと考えた!
自分が何故存在するのか分からなくて、毎日夏くんに泣いてすがってた事知らねえだろ。
最初は、おまえの人形の焦凍が大成した頃に、焦凍を殺そうと思ってた!」
意識の戻ってきた歌恋は、たまらず轟の服を掴み、ぎゅっと顔を彼の胸板に埋める。
(歌恋)
自分の腕の中で動いた彼女を確認し、そのまま身を任せながら抱き留め直す。
「でも、期せずしておまえがNo.1に繰り上がって俺は!おまえを幸せにしてやりたくなった。
九州では死んじまわねえか肝を冷やした!「星のしもべ」や「エンディング」を誘導して、次々おまえにあてがった!!
念願のNo.1はさぞや気分が重かったろ!?世間からの賞賛に、心が洗われたろう!?
子どもたちに向き合う時間は、"家族の絆"を感じさせただろう!?
未来に目を向けていれば正しくあれると思っただろう!?知らねえようだから教えてやるよ!!
過去は、消えない。ザ!!自業自得だぜ。さァ、一緒に堕ちよう轟炎司!!地獄で俺と、踊ろうぜ!!」
『自分を見て欲しいから』
『焦凍を殺そうと思ってた』
あの時、荼毘に・・・いや、燈矢に・・・一番辛い質問を知らないで投げ掛けてしまった。
大切な人はいないのか。彼にも・・・彼らにも大切なもんはいくらでもあったのだ。
どれだけ彼らが苦しんでいたのか、さ迷い続けていたのか。
あの日は、木枯らしが吹き荒んで空気が乾燥していた。
(昔、俺がトレーニングによく使っていた瀬古杜岳で、燈矢は焼けて死んだ。
炎は2000℃を越えていたらしく、遺体は残らなかった。火災の上昇気流で炭化した骨も粉となって散ったそうだ。
辛うじて見つかったのは、下顎部の骨が一部。それでも当時俺は――)
「燈矢は死んだ、許されない嘘だ」
「俺は生きてる。許されない真実だ、お父さん!炎熱系の"個性"なんざ事務所にもいるしで、俺が何者かなんて考えなかったろ」
荼毘の正体、それはヴィラン連合の仲間も知られていなくて。
「荼毘、それ初耳だわ・・・」
「俺らにも隠してたのか・・・」
「なんだよ・・・おまえも血筋か・・・」
「疑ってんなら血でも皮でも提供するぜ、DNA鑑定すりゃいい。まァこっちはとっくに済まして公表中だけどな」
[九州の戦いで、残されたエンデヴァーの血と99.99%一致してます。それでも捏造を疑われるでしょう。
僕は信じてもらえるよう話すしかありません。エンデヴァーはその後も母に子を産ませ、
四人目にして皆さんご存知の方もいるでしょう。成功作の焦凍が産まれました。そして待望の傑作にさえ、
手を上げています。僕は何度も見てきました。エンデヴァーは他者を思いやる心なんて持ち合わせてない。
自己顕示に溺れた、矮小で独りよがりの精神。そんな人間がヒーローを名乗っていいと思いますか。
エンデヴァーに連なる者も同様です。No.2ヒーローのホークス]
流れ続ける音声から、ホークスという名前に歌恋は顔を上げる。
ホークスが何だというのだろう。流れる音声とともに、轟の腕から少しだけ離れる。
映像は、歌恋たちには見えない。画面から聞こえる声は、泣き叫ぶトゥワイスの声。
[ただ、皆の幸せを守るだけだ]
[皆が待ってるぜ]
[ああ、ああ!]
[ホークスは、泣いて逃げるヴィランを、躊躇なくその刃で貫いた。僕が守ろうとした目の前で]
「・・・・・・(悔しい・・・!)」
やっぱり、あの館でみえた光景は、ホークスが戦っていたのでよかったんだ。
ホークスも常闇も、きっと無事だ。ただ、どちらかが助かればどちらかが命を落とす。
どうしてこんな戦いのやり方しかないのだろう。同じ幸せを願っていたのに。
「エンデヴァー、こっちは俺からのプレゼントだ。スパイ野郎のホークスの事も、調べて回った」
(スパイ・・・?)
そんな事、インターンに行ってる間一度もホークスは知らせてくれなかった。
留守にしてる間、事務所のことはよろしくと頼まれ、冬休みは再び常闇とホークス事務所を訪れたけれど。
[彼は僕らに取り入る為に、あろうことかヒーローを殺しています・・・。休養中だったNo.3ベストジーニストを]
歌恋は目を見開く。
(あのホークスが・・・?そんな、そんなことない・・・!)
[暴力が生活の一部になってしまっているから、平然と実行できてしまう。それもそのハズ。
彼の父親は、連続強盗殺人犯・・・ヴィランだった。彼が経歴も本名も隠していたのは、その為でした。
彼の父は、エンデヴァーに捕まっています。何の因果か・・・そういう性を持った人間ばかりが寄って集まる。
僕は許せなかった!後ろ暗い人間性に、正義という名の蓋をして!!あまつさえ"ヒーロー"を名乗り!!
人々を欺き続けている!よく考えてほしい!彼らが守っているのは自分だ!
醜い人間の保身と、自己肯定の道具にされているだけだ!]
事実かどうかは、後回しでいい。これが彼らが考えていた事。思っていたこと。
彼らはただ、ヒーローと戦ってるわけじゃない。心が、揺れる。
「今日まで元気でいてくれてありがとう、エンデヴァー!!」
巨人の背中から降りながら、荼毘・・・燈矢の身体が燃え上がる。
立ちすくんで動けない歌恋の腕を掴み、後ろに下がらせる。
「・・・・・・」
何がどうなってるのか、頭が追い付かない。衝動で尻餅をつきながら、轟の背中を見つめて。
「乱暴で悪ぃ!逃げてくれ!」
(逃げ、る・・・?)
「親父!!来るぞ!!親父!!」
聞かされた言葉に動けないのは、エンデヴァーもそうだ。
守らなきゃなのに。いま、ここで一番辛いのは彼らなのに。
「緑谷たちを守ってくれ!!歌恋を守ってくれ!!俺と先輩で戦う!!
頼む動け!!守ってくれ!!おい!!後にしてくれ!!」
「赫灼熱拳」
身体から燃え上がる荼毘の青い炎。それに向かって走り出す轟。
(行っちゃ嫌だ・・・!)
届きそうで、届かない伸ばした歌恋の手。
その時、空から降ってきた無数のワイヤーが、荼毘を縛り上げた。
「遅れてすまない!!ベストジーニスト、今日より活動復帰する!!」
重たい瞼を持ち上げる。太陽の明るい日差しが、直接刺激される。
体に力が入らない。目が光に慣れ、視界がぼんやり見えてきて無意識に言葉が出た。
「・・・しょ・・・と・・・」
[僕、轟燈矢は、エンデヴァー家の長男として生まれました。今まで30人以上の、罪なき人々を殺しました。
僕が何故、このような醜穢な所業に至ったか、皆に知ってもらいたい。エンデヴァーかつて、力に焦がれていました。
そしてオールマイトを越えられない絶望から、より強い"個性"を持った子をつくる為、無理矢理妻を娶りました。
僕は父の利己的な夢の為につくられた。しかし、どうやら僕は失敗作だったようで、程なくして見限られ、
捨てられ、忘れられました]
「でも、俺は忘れなかった。言われなくても、ずうっとおまえを見ていた。皆が皆、清廉潔白であれとは言わない。
おまえだけだ。事前に録画しておいた俺の身の上話が今、全国の電波とネットを走ってる!
いけねえ、なんだか愉しくなってきた!どうしたらおまえが苦しむか、人生を踏みにじれるか、あの日以来ずううううっと考えた!
自分が何故存在するのか分からなくて、毎日夏くんに泣いてすがってた事知らねえだろ。
最初は、おまえの人形の焦凍が大成した頃に、焦凍を殺そうと思ってた!」
意識の戻ってきた歌恋は、たまらず轟の服を掴み、ぎゅっと顔を彼の胸板に埋める。
(歌恋)
自分の腕の中で動いた彼女を確認し、そのまま身を任せながら抱き留め直す。
「でも、期せずしておまえがNo.1に繰り上がって俺は!おまえを幸せにしてやりたくなった。
九州では死んじまわねえか肝を冷やした!「星のしもべ」や「エンディング」を誘導して、次々おまえにあてがった!!
念願のNo.1はさぞや気分が重かったろ!?世間からの賞賛に、心が洗われたろう!?
子どもたちに向き合う時間は、"家族の絆"を感じさせただろう!?
未来に目を向けていれば正しくあれると思っただろう!?知らねえようだから教えてやるよ!!
過去は、消えない。ザ!!自業自得だぜ。さァ、一緒に堕ちよう轟炎司!!地獄で俺と、踊ろうぜ!!」
『自分を見て欲しいから』
『焦凍を殺そうと思ってた』
あの時、荼毘に・・・いや、燈矢に・・・一番辛い質問を知らないで投げ掛けてしまった。
大切な人はいないのか。彼にも・・・彼らにも大切なもんはいくらでもあったのだ。
どれだけ彼らが苦しんでいたのか、さ迷い続けていたのか。
あの日は、木枯らしが吹き荒んで空気が乾燥していた。
(昔、俺がトレーニングによく使っていた瀬古杜岳で、燈矢は焼けて死んだ。
炎は2000℃を越えていたらしく、遺体は残らなかった。火災の上昇気流で炭化した骨も粉となって散ったそうだ。
辛うじて見つかったのは、下顎部の骨が一部。それでも当時俺は――)
「燈矢は死んだ、許されない嘘だ」
「俺は生きてる。許されない真実だ、お父さん!炎熱系の"個性"なんざ事務所にもいるしで、俺が何者かなんて考えなかったろ」
荼毘の正体、それはヴィラン連合の仲間も知られていなくて。
「荼毘、それ初耳だわ・・・」
「俺らにも隠してたのか・・・」
「なんだよ・・・おまえも血筋か・・・」
「疑ってんなら血でも皮でも提供するぜ、DNA鑑定すりゃいい。まァこっちはとっくに済まして公表中だけどな」
[九州の戦いで、残されたエンデヴァーの血と99.99%一致してます。それでも捏造を疑われるでしょう。
僕は信じてもらえるよう話すしかありません。エンデヴァーはその後も母に子を産ませ、
四人目にして皆さんご存知の方もいるでしょう。成功作の焦凍が産まれました。そして待望の傑作にさえ、
手を上げています。僕は何度も見てきました。エンデヴァーは他者を思いやる心なんて持ち合わせてない。
自己顕示に溺れた、矮小で独りよがりの精神。そんな人間がヒーローを名乗っていいと思いますか。
エンデヴァーに連なる者も同様です。No.2ヒーローのホークス]
流れ続ける音声から、ホークスという名前に歌恋は顔を上げる。
ホークスが何だというのだろう。流れる音声とともに、轟の腕から少しだけ離れる。
映像は、歌恋たちには見えない。画面から聞こえる声は、泣き叫ぶトゥワイスの声。
[ただ、皆の幸せを守るだけだ]
[皆が待ってるぜ]
[ああ、ああ!]
[ホークスは、泣いて逃げるヴィランを、躊躇なくその刃で貫いた。僕が守ろうとした目の前で]
「・・・・・・(悔しい・・・!)」
やっぱり、あの館でみえた光景は、ホークスが戦っていたのでよかったんだ。
ホークスも常闇も、きっと無事だ。ただ、どちらかが助かればどちらかが命を落とす。
どうしてこんな戦いのやり方しかないのだろう。同じ幸せを願っていたのに。
「エンデヴァー、こっちは俺からのプレゼントだ。スパイ野郎のホークスの事も、調べて回った」
(スパイ・・・?)
そんな事、インターンに行ってる間一度もホークスは知らせてくれなかった。
留守にしてる間、事務所のことはよろしくと頼まれ、冬休みは再び常闇とホークス事務所を訪れたけれど。
[彼は僕らに取り入る為に、あろうことかヒーローを殺しています・・・。休養中だったNo.3ベストジーニストを]
歌恋は目を見開く。
(あのホークスが・・・?そんな、そんなことない・・・!)
[暴力が生活の一部になってしまっているから、平然と実行できてしまう。それもそのハズ。
彼の父親は、連続強盗殺人犯・・・ヴィランだった。彼が経歴も本名も隠していたのは、その為でした。
彼の父は、エンデヴァーに捕まっています。何の因果か・・・そういう性を持った人間ばかりが寄って集まる。
僕は許せなかった!後ろ暗い人間性に、正義という名の蓋をして!!あまつさえ"ヒーロー"を名乗り!!
人々を欺き続けている!よく考えてほしい!彼らが守っているのは自分だ!
醜い人間の保身と、自己肯定の道具にされているだけだ!]
事実かどうかは、後回しでいい。これが彼らが考えていた事。思っていたこと。
彼らはただ、ヒーローと戦ってるわけじゃない。心が、揺れる。
「今日まで元気でいてくれてありがとう、エンデヴァー!!」
巨人の背中から降りながら、荼毘・・・燈矢の身体が燃え上がる。
立ちすくんで動けない歌恋の腕を掴み、後ろに下がらせる。
「・・・・・・」
何がどうなってるのか、頭が追い付かない。衝動で尻餅をつきながら、轟の背中を見つめて。
「乱暴で悪ぃ!逃げてくれ!」
(逃げ、る・・・?)
「親父!!来るぞ!!親父!!」
聞かされた言葉に動けないのは、エンデヴァーもそうだ。
守らなきゃなのに。いま、ここで一番辛いのは彼らなのに。
「緑谷たちを守ってくれ!!歌恋を守ってくれ!!俺と先輩で戦う!!
頼む動け!!守ってくれ!!おい!!後にしてくれ!!」
「赫灼熱拳」
身体から燃え上がる荼毘の青い炎。それに向かって走り出す轟。
(行っちゃ嫌だ・・・!)
届きそうで、届かない伸ばした歌恋の手。
その時、空から降ってきた無数のワイヤーが、荼毘を縛り上げた。
「遅れてすまない!!ベストジーニスト、今日より活動復帰する!!」