第三話 醜悪
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空中から落下する緑谷を、轟がギリギリでキャッチする。一人で三人を抱えるのは手一杯だ。
転げ落ちるよう地面に着地し、慌てて轟は起き上がる。
「爆豪!緑谷!エンデヴァー・・・ああ!生きてる!!頑張れ、すぐ処置するから」
パキッと、背後から音がする。
「・・・弔・・・っ、ダメだよ・・・退かナ--」
「あんた・・・の・・・い、い、言いっ~・・・なり・・・には・・・」
死柄木に向けられた攻撃。
「皆!!」
そこに、波動ねじれと、飯田天哉が駆けつけた。
「大型敵がここに向かってる!!向こうで脳無と戦ってるヒーローにも伝えてある!」
「飯田!!緑谷たちを運んでくれ!」
「・・・全く、どおりで帰ってこないわけだよ!!」
手当てをしてくれているマニュアルたちの方を見ると、ボロボロになってるリューキュウがいる。
波動は人知れず、ムスッと頬を膨らませた。
「僕は・・・死柄木と・・・いなきゃ・・・!!死柄木はまだ・・・僕を狙ってる・・・!かっちゃんと、エンデヴァーを」
言葉と行動が合わさらない。それだけ緑谷の体も限界なのだ。
「再生能力も牛歩・・・だいぶ弱ってる!波動先輩!」
背中から伸びる無数の触手に気配りつつ、轟と波動の二人で死柄木の相手をする。
それからいくらも時間が経っていない。飯田から伝えられた、大型敵がこちらに向かっているというもの。
辺りを破壊しながら近づいてる。
「主よおオォオオオ!!!」
(あの巨人と死柄木を同時に相手するのは無理だ!手負いの死柄木を先に倒す!!)
波動の"ねじれる洪水"と、轟の"噴流熾炎"が、死柄木に直撃する。その死柄木を、巨人の手が庇うように、
そして、振り払われる巨人の手は、突風のように波動と轟を吹き飛ばしていた。
「ネジレちゃん先輩!ショート君ん!!」
二人はそれぞれ、なんとか受け身の体制を取る。飯田に肩をかりていた爆豪が、額に大量の汗を流しながら言う。
「降ろせ・・・メガネアーマー」
きっと痛みを我慢している。彼は誰よりも勝ちに拘る執念があるからこそ、飯田は引き留める。
「気付いたか!!ダメだ君、内蔵がやられて」
「完全・・・勝利・・・しなきゃ・・・」
気を失っている死柄木を手のひらの上にのせ、巨人は元の姿に戻りながら声をかけていた。
「ハァ・・・ハァ、主よ!!来たぞ!!次の指示を!!あなたの望み通りに!!」
「おーう、いたいた」
この場に似つかわしくない態度に、晴れやかな表情をした荼毘が、巨人の背中から姿を見せる。
「こっから見ると、どいつも小っさくて!お!?んー、なんだ」
彼は遠くを見るよう目を細目、ニヤッと笑う。ポケットからビー玉を出し、わざと見せびらかすように唇を当てた。
「これ、なーんだ?返すぜ、焦凍」
「ああ?」
「Mr.戻せ」
投げ出しながら、告げられる。
「え、いまかよ」
空中で戻したらどうなるか。でも、あとで荼毘の仕返しが怖い。
「っ・・・!!」
ビー玉から戻った瞬間、駆け出していた。あともう少し距離があれば、落下する彼女を助けられなかったかもしれない。
スライディングするよう飛び込み、地面に激突するスレスレで抱き込むように転げまわる。
(なんで・・・)
あの嫌な胸騒ぎの正体。それが、今の状況の前触れだったとしたら。
「やっぱその子が大切か」
身体から力は抜け、まるで焼けたような肌をしている。顔に泥とか土なら払ってやれば綺麗になるのに、落ちない。
「歌恋!歌恋!」
荼毘はあのビー玉が彼女だと知ってるからあんな行動をしたんだ。怒りで、壊してしまいそうになる。
でも、どうして狙いが彼女だった?なんで『自分』に声がかかった。あんな、自分たちの心境を知ってる口ぶりだ。
「なんで・・・あいつ、前線じゃ・・・」
一部始終、唖然としていた爆豪が呟く。
「勝手に途中まで着いてきたのはそいつだからな。俺のモンにしてもいいけど、もっとしごかれてきてからでもいいなぁってな。
俺たちに、『大切』なモンはねぇのかって、戦闘中にバカみたいな話を振られたよ。
あると思ったか?ありゃこんなことはしないだろうよ。どうでもいいんだから。
大事なモンなんて、すぐ消える。しがらみがあるから弱くなる」
歌恋を腕に抱き、肩越しに顔を向ける轟。『俺のモン』。彼女は荼毘に何をした、何をされた。
自分の知らないところで・・・ヒーローを務めるうえで、楽なことはないのはわかってる。
一人の子を大事になりすぎた、存在を大きくし過ぎてしまった。自分を見てくれるのが嬉しくて。
誰にも譲りたくない、傷付いて欲しくないなんておもうのはただの欲でしかなくて。
ヒーローを目指さなくていいとか、戦わないでくれとか、願えど彼女は拒むだろう。
歌恋なりに悩んで決めて入学した雄英高校。"個性"の関係で存在意義を求めて。
普通の高校で、戦いのない生活が二人にあったなら。いや、そうじゃなかったら出逢ってすらなかったかもしれない。
彼女に執着するのは、早すぎた・・・?
あんなに動揺する息子を、エンデヴァーは久方ぶりにみた気がした。
いつの間にか自分に反抗するようになって、冷たく、あしらってきた自分の息子が。
親の知らないところで、子供は大人になっていく。
『好きな子がいます』
一度家に帰ってきた時に告げられた言葉。相手の子に会わせてもらったことはない。
いままでのやらかしてきたことを見れば、紹介したくないと思われていたのかもしれない。
このまま放っておけない。父親として、この国のトップヒーローとして。
「荼毘!!!」
歌恋を放りなげてからシャカシャカ染髪料のボトルを振っている。
「酷えなァ・・・そんな名前で呼ばないでよ・・・」
そしてその液体を、頭から派手にぶちまけた。髪の毛の色が黒から白へ、変わっていく。
「燈矢って立派な名前が、あるんだから。顔はこんななっちまったが・・・身内なら気付いてくれると思ったんだけどなぁ」
(・・・え?燈矢って、轟くんの)
以前インターンで、轟の実家に寄らせてもらった時に聞いていた緑谷。
その名前は確か、轟の失くなったという一番上の兄と同じ名前。
転げ落ちるよう地面に着地し、慌てて轟は起き上がる。
「爆豪!緑谷!エンデヴァー・・・ああ!生きてる!!頑張れ、すぐ処置するから」
パキッと、背後から音がする。
「・・・弔・・・っ、ダメだよ・・・退かナ--」
「あんた・・・の・・・い、い、言いっ~・・・なり・・・には・・・」
死柄木に向けられた攻撃。
「皆!!」
そこに、波動ねじれと、飯田天哉が駆けつけた。
「大型敵がここに向かってる!!向こうで脳無と戦ってるヒーローにも伝えてある!」
「飯田!!緑谷たちを運んでくれ!」
「・・・全く、どおりで帰ってこないわけだよ!!」
手当てをしてくれているマニュアルたちの方を見ると、ボロボロになってるリューキュウがいる。
波動は人知れず、ムスッと頬を膨らませた。
「僕は・・・死柄木と・・・いなきゃ・・・!!死柄木はまだ・・・僕を狙ってる・・・!かっちゃんと、エンデヴァーを」
言葉と行動が合わさらない。それだけ緑谷の体も限界なのだ。
「再生能力も牛歩・・・だいぶ弱ってる!波動先輩!」
背中から伸びる無数の触手に気配りつつ、轟と波動の二人で死柄木の相手をする。
それからいくらも時間が経っていない。飯田から伝えられた、大型敵がこちらに向かっているというもの。
辺りを破壊しながら近づいてる。
「主よおオォオオオ!!!」
(あの巨人と死柄木を同時に相手するのは無理だ!手負いの死柄木を先に倒す!!)
波動の"ねじれる洪水"と、轟の"噴流熾炎"が、死柄木に直撃する。その死柄木を、巨人の手が庇うように、
そして、振り払われる巨人の手は、突風のように波動と轟を吹き飛ばしていた。
「ネジレちゃん先輩!ショート君ん!!」
二人はそれぞれ、なんとか受け身の体制を取る。飯田に肩をかりていた爆豪が、額に大量の汗を流しながら言う。
「降ろせ・・・メガネアーマー」
きっと痛みを我慢している。彼は誰よりも勝ちに拘る執念があるからこそ、飯田は引き留める。
「気付いたか!!ダメだ君、内蔵がやられて」
「完全・・・勝利・・・しなきゃ・・・」
気を失っている死柄木を手のひらの上にのせ、巨人は元の姿に戻りながら声をかけていた。
「ハァ・・・ハァ、主よ!!来たぞ!!次の指示を!!あなたの望み通りに!!」
「おーう、いたいた」
この場に似つかわしくない態度に、晴れやかな表情をした荼毘が、巨人の背中から姿を見せる。
「こっから見ると、どいつも小っさくて!お!?んー、なんだ」
彼は遠くを見るよう目を細目、ニヤッと笑う。ポケットからビー玉を出し、わざと見せびらかすように唇を当てた。
「これ、なーんだ?返すぜ、焦凍」
「ああ?」
「Mr.戻せ」
投げ出しながら、告げられる。
「え、いまかよ」
空中で戻したらどうなるか。でも、あとで荼毘の仕返しが怖い。
「っ・・・!!」
ビー玉から戻った瞬間、駆け出していた。あともう少し距離があれば、落下する彼女を助けられなかったかもしれない。
スライディングするよう飛び込み、地面に激突するスレスレで抱き込むように転げまわる。
(なんで・・・)
あの嫌な胸騒ぎの正体。それが、今の状況の前触れだったとしたら。
「やっぱその子が大切か」
身体から力は抜け、まるで焼けたような肌をしている。顔に泥とか土なら払ってやれば綺麗になるのに、落ちない。
「歌恋!歌恋!」
荼毘はあのビー玉が彼女だと知ってるからあんな行動をしたんだ。怒りで、壊してしまいそうになる。
でも、どうして狙いが彼女だった?なんで『自分』に声がかかった。あんな、自分たちの心境を知ってる口ぶりだ。
「なんで・・・あいつ、前線じゃ・・・」
一部始終、唖然としていた爆豪が呟く。
「勝手に途中まで着いてきたのはそいつだからな。俺のモンにしてもいいけど、もっとしごかれてきてからでもいいなぁってな。
俺たちに、『大切』なモンはねぇのかって、戦闘中にバカみたいな話を振られたよ。
あると思ったか?ありゃこんなことはしないだろうよ。どうでもいいんだから。
大事なモンなんて、すぐ消える。しがらみがあるから弱くなる」
歌恋を腕に抱き、肩越しに顔を向ける轟。『俺のモン』。彼女は荼毘に何をした、何をされた。
自分の知らないところで・・・ヒーローを務めるうえで、楽なことはないのはわかってる。
一人の子を大事になりすぎた、存在を大きくし過ぎてしまった。自分を見てくれるのが嬉しくて。
誰にも譲りたくない、傷付いて欲しくないなんておもうのはただの欲でしかなくて。
ヒーローを目指さなくていいとか、戦わないでくれとか、願えど彼女は拒むだろう。
歌恋なりに悩んで決めて入学した雄英高校。"個性"の関係で存在意義を求めて。
普通の高校で、戦いのない生活が二人にあったなら。いや、そうじゃなかったら出逢ってすらなかったかもしれない。
彼女に執着するのは、早すぎた・・・?
あんなに動揺する息子を、エンデヴァーは久方ぶりにみた気がした。
いつの間にか自分に反抗するようになって、冷たく、あしらってきた自分の息子が。
親の知らないところで、子供は大人になっていく。
『好きな子がいます』
一度家に帰ってきた時に告げられた言葉。相手の子に会わせてもらったことはない。
いままでのやらかしてきたことを見れば、紹介したくないと思われていたのかもしれない。
このまま放っておけない。父親として、この国のトップヒーローとして。
「荼毘!!!」
歌恋を放りなげてからシャカシャカ染髪料のボトルを振っている。
「酷えなァ・・・そんな名前で呼ばないでよ・・・」
そしてその液体を、頭から派手にぶちまけた。髪の毛の色が黒から白へ、変わっていく。
「燈矢って立派な名前が、あるんだから。顔はこんななっちまったが・・・身内なら気付いてくれると思ったんだけどなぁ」
(・・・え?燈矢って、轟くんの)
以前インターンで、轟の実家に寄らせてもらった時に聞いていた緑谷。
その名前は確か、轟の失くなったという一番上の兄と同じ名前。