第十三話 分岐点
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玲薇と勝呂が竜騎士の実戦から帰った後、燐と雪男は青森から帰り任務の報告を聞いた。
「え?」
玲薇が旧男子寮に帰っていない事を心配した燐から携帯に電話が入ったのだ。
その経由で、雪男が重体で病院に入院したことが報告される。あの強い雪男が、重症を負うなんて思わなかった。
電話を切り、勝呂と向き直る。
「勝呂くん、私、燐と雪男がいる病院にこれから行ってくるね」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ。勝呂くんはライトニングのトコに戻らないとなんでしょ。
そっちこそ頑張ってね」
「おう」
お互い、軽く手を振って別れる。
玲薇は燐が教えてくれた正十字総合病院に急いだ。
雪男が青森の任務で重症を負い、今手術の最中だと。今一人で帰ってもどうしようもない。
「燐・・・っ、雪男・・・!」
病院のドアを開き、受け付け前に急ぐ。その長椅子には、燐がいた。
「燐!」
病院にも関わらず、声を張り上げてしまう。
「玲薇!シー、落ち着け」
久しぶりに見た燐の顔を見て、安心感と緊張感と、不安を抱えていた全ての感情が溢れ出る。
泣き虫だって言われてもいい、どう思われてもいい。だって、会いたくても会えてなかったんだから。
「っ〜・・・うっ〜・・・」
焦っていた燐の表情が、いつもの玲薇を見て、安堵とため息が混ざる。
「ったく、泣くなよ」
柔らかい表情で頭を撫でてくれれば、もう玲薇の負けである。
燐の体にしがみつき、彼の胸板に顔を擦り合わせた。
「だって・・・会いたかった・・・燐は・・・?」
「うん」
静かに流れる二人の時間。
が、それも束の間に。もう一人の存在をすっかり忘れていた。
「ひゃっ」
「いっ」
玲薇と燐がそれぞれ、変な声を出してしまう。
「ったく・・・あたしの存在を忘れんな」
シュラが二人の頭の上に温かい缶ジュースを乗せたのだ。
「冷えただろ、飲め」
「あ、あぁ・・・」
面食らう燐に、対して玲薇は大好きなミルクティーを受け取る。
「ありがとうございます・・・先生、髪の毛切ったんですか?」
目を見開く玲薇に、燐が彼女の質問にギョッとした。
「あ、それはっ」
「いいよ、燐。気に止めることじゃない」
「?」
二人のやり取りに玲薇は首を傾げる。
「これは、ちょっと任務でな。けど、短くても似合うだろ?」
「はい。ショートでも先生のその髪色にとても似合います」
お世辞ではない。長い髪のシュラもよかったけど、いまの短い髪の毛のシュラもとても似合う。
「にゃはは、あんがとにゃ〜」
「そういえば、勝呂くんも髪の毛切ってたね」
「そうだな。あのトサカよりよくね?」
そういえば最初の頃、燐は勝呂の髪型を見てそんな事言ってたような。
「はは〜ん。これを機会に風美夜も切ってイメチェンしてみるか?」
「私は切りません」
「残念だにゃ〜」
「そだ、雪男は?」
オペ室前には、燐の代わりにシュラがいてくれたのだろう。
何せ燐は、玲薇が迷わないように受け付け前にいてくれてたのだから。
シュラは真面目な表情に戻り、言った。
「手術はさっき終わった。命に別状はない」
「そっか」
燐がホッと安心し、胸に手を当てている。
「なぁ、雪男が起きるまでここにいていいんだよな」
「あたしもそうするよ」
燐が青森土産のリンゴを剥きながら、玲薇も一緒に雪男のいる病室にいた。
麻酔がまだ効いているのか、雪男はいまもぐっすり眠っている。
「・・・雪男・・・」
玲薇が弱々しく呟く。そんな隣にいる彼女を盗み見る燐。
「・・・・・・青森いるとき、何やってたんだ?」
「え?」
なにか話題を入れようと、燐が聞く。明るい雰囲気にしようとおもわないけど、重たい空気をどうにかしたかった。
「・・・・・竜騎士の特別訓練をしてた。認定試験も近いから、自分の実力を知る機会があってよかったよ」
「えっ、一人で参加したの!?」
驚く燐に、玲薇はすぐ首を横に振った。
「違うよ!他の祓魔師と一緒だったし、勝呂くんもいたし」
「勝呂?」
「勝呂くんも同じ竜騎士受けるし、心配だからって一緒に」
「・・・・・・ふーん・・・・・」
「燐?」
「いや、別に」
フイッと顔をそらされる。
「何か言ってくれないと分からないよ」
隣にいるのに、隣いるような気がしなくて、寂しくて燐の裾を引っ張る。
「久しぶりに会えたのに・・・」
「・・・じゃあ、一つだけ」
「うん?」
「他の男にホイホイついていくなよ」
「なっ・・・それは燐だって一緒でしょ!?」
「お、俺は任務だって言っただろ!?」
「私だって同じようなものよ!」
お互い同じ嫉妬を抱いて口喧嘩になるのだから、似たもの同士なのだ。
「最近だって、燐と雪男と同じ任務に行けてないんだもん。寮に居たって、帰って来ないじゃない。
やっぱり、私なんてどうでもいいんでしょ」
「お前なぁ・・・!」
お互い考えて、気持ちがチグハグして。
心が通じた時はなんだっていいと思ってた。
でも、それじゃダメだった。
自分が何者なのか、どうして自分たちが生かされてきたのか。
修道院にいた頃、獅郎がいたあの頃、何も知らなかった頃。
不浄王戦が終わって、いつもの日常に戻って、燐と一緒になっても大人しく過ごせればいいと思ってたけど。
事態はどんどん、どんどん、最悪な方に向いてる気がしていて。
燐に胸ぐらを引っ張られ、丸椅子が無造作に転がる。
お互いにお互いが、イライラしてるのは分かってる。
人を好きになるのって、こんなに難しかったっけ?
いや、人だったら今の悩みなんてどれも当てはまらないだろう。
けど、人であろうがなかろうが、きっと皆それぞれ悩みはあるだろう。
雪男が目を覚ましたのは、その後すぐだった。
「え?」
玲薇が旧男子寮に帰っていない事を心配した燐から携帯に電話が入ったのだ。
その経由で、雪男が重体で病院に入院したことが報告される。あの強い雪男が、重症を負うなんて思わなかった。
電話を切り、勝呂と向き直る。
「勝呂くん、私、燐と雪男がいる病院にこれから行ってくるね」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ。勝呂くんはライトニングのトコに戻らないとなんでしょ。
そっちこそ頑張ってね」
「おう」
お互い、軽く手を振って別れる。
玲薇は燐が教えてくれた正十字総合病院に急いだ。
雪男が青森の任務で重症を負い、今手術の最中だと。今一人で帰ってもどうしようもない。
「燐・・・っ、雪男・・・!」
病院のドアを開き、受け付け前に急ぐ。その長椅子には、燐がいた。
「燐!」
病院にも関わらず、声を張り上げてしまう。
「玲薇!シー、落ち着け」
久しぶりに見た燐の顔を見て、安心感と緊張感と、不安を抱えていた全ての感情が溢れ出る。
泣き虫だって言われてもいい、どう思われてもいい。だって、会いたくても会えてなかったんだから。
「っ〜・・・うっ〜・・・」
焦っていた燐の表情が、いつもの玲薇を見て、安堵とため息が混ざる。
「ったく、泣くなよ」
柔らかい表情で頭を撫でてくれれば、もう玲薇の負けである。
燐の体にしがみつき、彼の胸板に顔を擦り合わせた。
「だって・・・会いたかった・・・燐は・・・?」
「うん」
静かに流れる二人の時間。
が、それも束の間に。もう一人の存在をすっかり忘れていた。
「ひゃっ」
「いっ」
玲薇と燐がそれぞれ、変な声を出してしまう。
「ったく・・・あたしの存在を忘れんな」
シュラが二人の頭の上に温かい缶ジュースを乗せたのだ。
「冷えただろ、飲め」
「あ、あぁ・・・」
面食らう燐に、対して玲薇は大好きなミルクティーを受け取る。
「ありがとうございます・・・先生、髪の毛切ったんですか?」
目を見開く玲薇に、燐が彼女の質問にギョッとした。
「あ、それはっ」
「いいよ、燐。気に止めることじゃない」
「?」
二人のやり取りに玲薇は首を傾げる。
「これは、ちょっと任務でな。けど、短くても似合うだろ?」
「はい。ショートでも先生のその髪色にとても似合います」
お世辞ではない。長い髪のシュラもよかったけど、いまの短い髪の毛のシュラもとても似合う。
「にゃはは、あんがとにゃ〜」
「そういえば、勝呂くんも髪の毛切ってたね」
「そうだな。あのトサカよりよくね?」
そういえば最初の頃、燐は勝呂の髪型を見てそんな事言ってたような。
「はは〜ん。これを機会に風美夜も切ってイメチェンしてみるか?」
「私は切りません」
「残念だにゃ〜」
「そだ、雪男は?」
オペ室前には、燐の代わりにシュラがいてくれたのだろう。
何せ燐は、玲薇が迷わないように受け付け前にいてくれてたのだから。
シュラは真面目な表情に戻り、言った。
「手術はさっき終わった。命に別状はない」
「そっか」
燐がホッと安心し、胸に手を当てている。
「なぁ、雪男が起きるまでここにいていいんだよな」
「あたしもそうするよ」
燐が青森土産のリンゴを剥きながら、玲薇も一緒に雪男のいる病室にいた。
麻酔がまだ効いているのか、雪男はいまもぐっすり眠っている。
「・・・雪男・・・」
玲薇が弱々しく呟く。そんな隣にいる彼女を盗み見る燐。
「・・・・・・青森いるとき、何やってたんだ?」
「え?」
なにか話題を入れようと、燐が聞く。明るい雰囲気にしようとおもわないけど、重たい空気をどうにかしたかった。
「・・・・・竜騎士の特別訓練をしてた。認定試験も近いから、自分の実力を知る機会があってよかったよ」
「えっ、一人で参加したの!?」
驚く燐に、玲薇はすぐ首を横に振った。
「違うよ!他の祓魔師と一緒だったし、勝呂くんもいたし」
「勝呂?」
「勝呂くんも同じ竜騎士受けるし、心配だからって一緒に」
「・・・・・・ふーん・・・・・」
「燐?」
「いや、別に」
フイッと顔をそらされる。
「何か言ってくれないと分からないよ」
隣にいるのに、隣いるような気がしなくて、寂しくて燐の裾を引っ張る。
「久しぶりに会えたのに・・・」
「・・・じゃあ、一つだけ」
「うん?」
「他の男にホイホイついていくなよ」
「なっ・・・それは燐だって一緒でしょ!?」
「お、俺は任務だって言っただろ!?」
「私だって同じようなものよ!」
お互い同じ嫉妬を抱いて口喧嘩になるのだから、似たもの同士なのだ。
「最近だって、燐と雪男と同じ任務に行けてないんだもん。寮に居たって、帰って来ないじゃない。
やっぱり、私なんてどうでもいいんでしょ」
「お前なぁ・・・!」
お互い考えて、気持ちがチグハグして。
心が通じた時はなんだっていいと思ってた。
でも、それじゃダメだった。
自分が何者なのか、どうして自分たちが生かされてきたのか。
修道院にいた頃、獅郎がいたあの頃、何も知らなかった頃。
不浄王戦が終わって、いつもの日常に戻って、燐と一緒になっても大人しく過ごせればいいと思ってたけど。
事態はどんどん、どんどん、最悪な方に向いてる気がしていて。
燐に胸ぐらを引っ張られ、丸椅子が無造作に転がる。
お互いにお互いが、イライラしてるのは分かってる。
人を好きになるのって、こんなに難しかったっけ?
いや、人だったら今の悩みなんてどれも当てはまらないだろう。
けど、人であろうがなかろうが、きっと皆それぞれ悩みはあるだろう。
雪男が目を覚ましたのは、その後すぐだった。