第十三話 分岐点
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勝呂から聞けば、普段休み時間になると彼は図書室に逃げるようにいなくなるとか。
あそこなら自然と静かになるので、女子からの追いかけもすくないみたいで。
「あ・・・」
雪男は一人で、静かに勉強している。それと同時に、彼からただならぬオーラさえ感じてしまった。
話かけるかどうか迷っていると、ノートから視線を外した雪男と目が合う。
そりゃあそうだ。本棚に隠れて観察していたワケでもないので、真横に突っ立ってしまっていたんだから。
「玲薇・・・!?」
まさかここに来るとは思っていない。
「あ、あの・・・えーと・・・」
やっぱり、雪男と二人になるのは変に緊張してしまう。でも、雪男には用事があってなのだ。
「認定試験の用紙、渡そうと思って・・・この時間でごめんね」
「あ・・・ううん、そっか・・・」
二人してお互いに、あの時から無意識にさけていた。
雪男は玲薇の用紙を見て、口元を歪めた。
「玲薇は変わらず、手騎士と竜騎士でいいんだね」
「うん。それで大丈夫、かな」
手騎士の素質はもとからあったのかもしれないけど、今までの戦いの経験から、それだけで戦えないのを知った。
「雪男、竜騎士を教えてくれてありがとう」
「そんなことないよ。それより、後悔してないの?」
「うん」
「わかった」
あっさりと、会話が終わった。これ以上の追求も何もない。
「「・・・・・・・・・・・・」」
沈黙が、妙に苦しい。今までそんなことなかったのに。
「・・・・・雪男」
本当はこのまま、自分の教室にさっさと戻ってしまえばよかったんだと思う。
でも、それが出来なくて・・・。
「なに」
ノートに視線を向けたまま、ぶっきらぼうに返される返事にもめげずに聞いた。
「雪男は今日、帰ってくるの?」
「帰らないよ」
心無い返答に、何故か胸が痛む。
「兄さんがいるじゃない」
「・・・・・・うん・・・・・・」
でも・・・・・でもね・・・・・。
「でも、今日は杜山さんと任務任されたから、どうなるか分からないって」
ピクっと、雪男の手が止まる。
「あ・・・・・・・今日、だっけ・・・・・」
その内容を、少し他の團員から聞いていた。
「だから?」
「あ、アハハそうだよね!わかった、ごめん、ごめん、雪男も頑張ってね!」
玲薇は逃げるように図書室を出ていく。
「・・・・・・・うん」
彼女には聞こえない、返事を残して。
「何だよ・・・兄さんがいない時ばっかりじゃないか・・・っ」
静かな怒りの中、グシャリとノートを握った。
「はぁ、はぁ・・・」
廊下に出て、壁に手をつき玲薇は息を整える。
「バカだ、私・・・っ」
燐もいないと分かってる今日の夜、心細くて雪男にしがみつこうとした。
だからダメだと分かっているのに・・・どうしようもない。
これ以上、友達だからといって毎回出雲のいる寮に押しかけるのも迷惑だ。
なんとか一夜は過ごしたものの・・・それもつかの間だった。
「え、青森・・・?」
「あぁ、シュラを捜しに、雪男と行ってこいってメフィストが」
「・・・・・・っ・・・・・」
準備をする燐に、玲薇は堪らずしがみつく。
「!?」
突然の行動に驚く燐。
「一緒にいたい・・・」
「すぐ帰ってくるって!青森土産、持って帰るから!」
と・・・。
玲薇は勝呂と、竜騎士の特別訓練の一環で他の祓魔師と共に悪魔退治に赴く。
銃の種類もいくつかあり、認定試験にはそれぞれの質もためされるのだろう。
筆記試験はともかく、実戦が少ない玲薇にとって、竜騎士だけの力で乗り越えようとしていた。
少なからず、この場所に塾生の仲間である勝呂がいてくれる事に感謝している。
「・・・勝呂くんも大変だね」
わざわざ実戦を拒否らなかったのは、旧館に一人でいるよりはずっとマシだと思ったから。
「風美夜かて、ムチャしてへんか」
「大丈夫。今は竜騎士の実戦試験みたいなもんだから、リニュウには頼らない。
・・・今は、何も考えたくないの」
自分自身の事も、燐の事も、雪男の事も、しえみの事も。
リニュウを呼ばないのは、この心のアンバランスな故で。
「・・・・・風美夜」
無意識に駆け出そうと飛び出す玲薇の手首を掴む勝呂。
「!?」
突然の事に転びそうになるも、なんとか体制を崩さないようにした玲薇。
妙に緊張するこの空気。妙にドキドキするこの空気。
志摩の言葉が、今更ながら脳裏を激しく刺激していた。
『好きやったの、気付いてたんやろ』
(なんで・・・なんで今意識するの・・・っ)
その複雑な自分の心境と、勝呂の何とも言い難い心配するような、切なげな瞳に体が強ばる。
「いや、その・・・」
ハッと我に返ったような彼は、力なしに玲薇の手首を離した。
「・・・奥村みたいに、一人で勝手に突っ走るな。危ないやろ」
「あ・・・うん・・・」
彼の、いつもの優しい言葉だけだった。何を期待しようとしてたのだろう。
燐のこと、裏切るような事は考えたくないのに。
「ありがとう」
それだけを言った。
あそこなら自然と静かになるので、女子からの追いかけもすくないみたいで。
「あ・・・」
雪男は一人で、静かに勉強している。それと同時に、彼からただならぬオーラさえ感じてしまった。
話かけるかどうか迷っていると、ノートから視線を外した雪男と目が合う。
そりゃあそうだ。本棚に隠れて観察していたワケでもないので、真横に突っ立ってしまっていたんだから。
「玲薇・・・!?」
まさかここに来るとは思っていない。
「あ、あの・・・えーと・・・」
やっぱり、雪男と二人になるのは変に緊張してしまう。でも、雪男には用事があってなのだ。
「認定試験の用紙、渡そうと思って・・・この時間でごめんね」
「あ・・・ううん、そっか・・・」
二人してお互いに、あの時から無意識にさけていた。
雪男は玲薇の用紙を見て、口元を歪めた。
「玲薇は変わらず、手騎士と竜騎士でいいんだね」
「うん。それで大丈夫、かな」
手騎士の素質はもとからあったのかもしれないけど、今までの戦いの経験から、それだけで戦えないのを知った。
「雪男、竜騎士を教えてくれてありがとう」
「そんなことないよ。それより、後悔してないの?」
「うん」
「わかった」
あっさりと、会話が終わった。これ以上の追求も何もない。
「「・・・・・・・・・・・・」」
沈黙が、妙に苦しい。今までそんなことなかったのに。
「・・・・・雪男」
本当はこのまま、自分の教室にさっさと戻ってしまえばよかったんだと思う。
でも、それが出来なくて・・・。
「なに」
ノートに視線を向けたまま、ぶっきらぼうに返される返事にもめげずに聞いた。
「雪男は今日、帰ってくるの?」
「帰らないよ」
心無い返答に、何故か胸が痛む。
「兄さんがいるじゃない」
「・・・・・・うん・・・・・・」
でも・・・・・でもね・・・・・。
「でも、今日は杜山さんと任務任されたから、どうなるか分からないって」
ピクっと、雪男の手が止まる。
「あ・・・・・・・今日、だっけ・・・・・」
その内容を、少し他の團員から聞いていた。
「だから?」
「あ、アハハそうだよね!わかった、ごめん、ごめん、雪男も頑張ってね!」
玲薇は逃げるように図書室を出ていく。
「・・・・・・・うん」
彼女には聞こえない、返事を残して。
「何だよ・・・兄さんがいない時ばっかりじゃないか・・・っ」
静かな怒りの中、グシャリとノートを握った。
「はぁ、はぁ・・・」
廊下に出て、壁に手をつき玲薇は息を整える。
「バカだ、私・・・っ」
燐もいないと分かってる今日の夜、心細くて雪男にしがみつこうとした。
だからダメだと分かっているのに・・・どうしようもない。
これ以上、友達だからといって毎回出雲のいる寮に押しかけるのも迷惑だ。
なんとか一夜は過ごしたものの・・・それもつかの間だった。
「え、青森・・・?」
「あぁ、シュラを捜しに、雪男と行ってこいってメフィストが」
「・・・・・・っ・・・・・」
準備をする燐に、玲薇は堪らずしがみつく。
「!?」
突然の行動に驚く燐。
「一緒にいたい・・・」
「すぐ帰ってくるって!青森土産、持って帰るから!」
と・・・。
玲薇は勝呂と、竜騎士の特別訓練の一環で他の祓魔師と共に悪魔退治に赴く。
銃の種類もいくつかあり、認定試験にはそれぞれの質もためされるのだろう。
筆記試験はともかく、実戦が少ない玲薇にとって、竜騎士だけの力で乗り越えようとしていた。
少なからず、この場所に塾生の仲間である勝呂がいてくれる事に感謝している。
「・・・勝呂くんも大変だね」
わざわざ実戦を拒否らなかったのは、旧館に一人でいるよりはずっとマシだと思ったから。
「風美夜かて、ムチャしてへんか」
「大丈夫。今は竜騎士の実戦試験みたいなもんだから、リニュウには頼らない。
・・・今は、何も考えたくないの」
自分自身の事も、燐の事も、雪男の事も、しえみの事も。
リニュウを呼ばないのは、この心のアンバランスな故で。
「・・・・・風美夜」
無意識に駆け出そうと飛び出す玲薇の手首を掴む勝呂。
「!?」
突然の事に転びそうになるも、なんとか体制を崩さないようにした玲薇。
妙に緊張するこの空気。妙にドキドキするこの空気。
志摩の言葉が、今更ながら脳裏を激しく刺激していた。
『好きやったの、気付いてたんやろ』
(なんで・・・なんで今意識するの・・・っ)
その複雑な自分の心境と、勝呂の何とも言い難い心配するような、切なげな瞳に体が強ばる。
「いや、その・・・」
ハッと我に返ったような彼は、力なしに玲薇の手首を離した。
「・・・奥村みたいに、一人で勝手に突っ走るな。危ないやろ」
「あ・・・うん・・・」
彼の、いつもの優しい言葉だけだった。何を期待しようとしてたのだろう。
燐のこと、裏切るような事は考えたくないのに。
「ありがとう」
それだけを言った。