第十二話 わだかまり
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「「いただきます」」
燐と一緒に手を合わせて夕食を食べ初める。
「雪男の奴、また出かけたんだな」
「うん・・・」
玲薇は自分の食事に目を向けながら頷く。
「何言われたんだ?」
「え?」
ギクッと、思わず手が止まる。
「雪男に。さっきっから、ずっと上の空だろ」
「そーかな・・・?」
おどけて振舞ってみるものの、燐には話をそらすことが出来ない。
「よく言われるだろ、お前は分かりやすいって。まぁ、雪男もなんか隠してるぐらい分かるけど。
ホント、お前ら二人会う度にぎこちなくならねー?」
「・・・確かに。けど、それは私の原因でもあるから仕方ないと思うけど」
「ん?」
(・・・そういえば、雪男も燐と同じように昔から私を好きだと言ってくれてたっけ。
けど私はどうしても、いつも燐ばかりに目がいってしまって。
周りからはケンカっ早くて口悪くて悪魔の子なんて呼ばれていた燐だけど、私と雪男には違った。
いつも助けてくれて、笑ってくれて。泣き虫な私達を引っ張ってくれる大切な人で・・・。
ほらね、考えればすぐ燐になっちゃうの)
「・・・お前、泣いてる・・・」
「え・・・?」
自分では気付かなかった。いつの間に涙が溢れていたのだろう。
「ヤダ・・・私・・・っ、なんで・・・っ」
「大丈夫か?」
心配で、席を立って近くに行って触れたかった。
「ごめん、燐・・・。今は一人になりたい・・・」
「おいっ・・・」
口には出さないけど、これ以上ついてくるなと、彼女に拒否られたように追いかける事が出来なかった。
どうしてこうもうまくいかないのだろう。
「雪男も、玲薇が好きだから・・・。俺が雪男に玲薇をやればいいのかな・・・」
玲薇はいつもの部屋に戻らず、たくさん空いている男子寮の一部屋に、一人佇む。
話したことはなかったのに、志摩が雪男に話してしまった。隠すつもりはなかったのに、また雪男と空回りしてしまって。
「っ・・・何なの・・・私はなんなのよっ・・・。みんなを傷付けて、突き放して・・・っサイッテー・・・。
消えちゃえ、消えちゃえ・・・っ。私なんて消えちゃえばいいのよっ・・・」
そうすれば燐も雪男もケンカしなくなる。しえみにも当て付けしてしまう相手もいなくなる。
「私は、何者なの・・・」
サタンの落胤で燐と同じように悪魔だとしても、この不思議な力は炎とは違う。光だ。
それでみんなを守れる訳では無い。守れるのは自分自身のみ。こんな力気持ち悪いだけで、
燐の青い炎よりもだいぶ使い勝手が悪いのに。そういえば、ルシフェルは何か知ってるのか。
『自分自身の事を知らなすぎる』って、確か言っていた。自分達の出生の秘密を、やはり知るべきなのだろうか。
けど、『組み込まれる』って、なんだ?私はいつか、サタンの一部に戻されるって事なのか?
「・・・・・・・・・人間じゃない、なにか・・・・・・・」
チラッと、部屋を見渡せば使い古された錆び付いた文房具が目に入った。
ふらっと出歩き、カッターを手に取ってみる。
「はァ・・・はァ・・・」
異様に湧き出てくる汗。大丈夫、少しの傷なら力で治るから。
「ごめん、燐・・・(もう、自分が怖い・・・っ)」
遠くで走ってくる音が聞こえる気がした。でも、その音は遠い気がする。
(お願い・・・もう、誰も傷付けたくないの・・・っ)
「クロ!!!」
「!!」
ドアが勢いよく開き、驚き振り返ると同時にクロが襲いかかってきた。
「ニャー!!《やめろー!!》」
クロがカッターを持ってる手首に、勢いよく噛み付いてきた。
「イタッ」
手の力が弱まり、カッターが床にけたたましく落ちる。クロは瞬時に手首から離れたと思うとカッターを口に加えた。
「クロ!何するっ」
「玲薇っ!!!」
間近に迫ってくる燐の恐怖に後ずさるも、足がもつれて床に座り込む。
「バカ野郎が!!」
悪魔の顔でではない、人の顔として燐は怒ってる。
こんなに燐に怒られたのは、初めてだ。
「なにしようとしてたんだよ!?何であんなモン持ってたんだよ!?
やっぱ心配で部屋戻ってもいなくて、屋上にもいなくて、部屋片っ端から探して、
クロが先に見つけてくれるのがもう少し遅かったらどうなって・・・」
肩を掴む燐の手に力が込められる。そして、ギュッーと、抱きしめてくれて。
それなのに、それが嫌な自分がいて。
「ゃ・・・いゃ・・・私はもう、いいの・・・もう、疲れたの・・・」
「誰に何言われた?雪男か?雪男なのか?」
雪男ではない。雪男に聞かれたあの時の質問ぐらい大したことなかった、それは今まで何度もぶつかった経験から。
だから、ルシフェルだ。ルシフェルに言われた不思議な言葉の数々に、もう頭がついていかない。
容量オーバーだ。でも、これを燐に言ってはいけない気がする。言ったら・・・。
「雪、男じゃ、ない・・・」
でも、これだけは伝えなくてはならなくて。
「じゃあ、誰なんだよ・・・教えてくれよ・・・」
消え入りそうな、願わずにはいられないと言わんばかりのすがるような燐の声。
「私・・・人じゃない、かもしれないって・・・」
「俺だって、半分悪魔だろ」
「私は・・・自分が分からない・・・。燐みたいに、ハッキリした立場ならよかった・・・」
玲薇が何を伝えたいのか、いまいち分からない。
燐は首をかしげながら言う。
「ハハ・・・雪男には前に、俺の立場なら発狂してるって言われたぞ」
「そっか・・・」
「てか、そもそも玲薇は人間だ。誰だよ、人間じゃないって言ったやつ」
ブスくれる燐を見ればいつもはもうどうでもよくなってしまうのに。
いまは視線を逸らしてクロを探した。クロは距離を置き、シャーッと唸りカッターを警備している。
この姿勢では、さすがに腕を伸ばしてもクロには届かない。
「よくやったぞ、クロ」
クロは燐に褒められ嬉しそうにニャーと鳴く。
「ちょっ・・・!」
燐が突然、力で横向きにして玲薇を抱き上げる。
「首に捕まってねーと落ちるぞ」
「じ、自分で歩ける!」
誰もいないとはいえ、さすがに姫抱っこは恥ずかしい。
「そういうなよ。またどっかに隠れられても困るだろ。まぁ、今度はクロじゃなくて俺が見つけるけど・・・」
カァーッと玲薇が顔を真っ赤にすれば、燐もつられて真っ赤になる。
「っ・・・」
これ以上、まともに顔を見れなくて観念して燐に従う。
燐と共にキッチンに戻るとき、燐のポケットに入っているスマホが鳴る。
「ん?」
玲薇をおろし、スマホを確認する。
「シュラからだ」
燐と一緒に手を合わせて夕食を食べ初める。
「雪男の奴、また出かけたんだな」
「うん・・・」
玲薇は自分の食事に目を向けながら頷く。
「何言われたんだ?」
「え?」
ギクッと、思わず手が止まる。
「雪男に。さっきっから、ずっと上の空だろ」
「そーかな・・・?」
おどけて振舞ってみるものの、燐には話をそらすことが出来ない。
「よく言われるだろ、お前は分かりやすいって。まぁ、雪男もなんか隠してるぐらい分かるけど。
ホント、お前ら二人会う度にぎこちなくならねー?」
「・・・確かに。けど、それは私の原因でもあるから仕方ないと思うけど」
「ん?」
(・・・そういえば、雪男も燐と同じように昔から私を好きだと言ってくれてたっけ。
けど私はどうしても、いつも燐ばかりに目がいってしまって。
周りからはケンカっ早くて口悪くて悪魔の子なんて呼ばれていた燐だけど、私と雪男には違った。
いつも助けてくれて、笑ってくれて。泣き虫な私達を引っ張ってくれる大切な人で・・・。
ほらね、考えればすぐ燐になっちゃうの)
「・・・お前、泣いてる・・・」
「え・・・?」
自分では気付かなかった。いつの間に涙が溢れていたのだろう。
「ヤダ・・・私・・・っ、なんで・・・っ」
「大丈夫か?」
心配で、席を立って近くに行って触れたかった。
「ごめん、燐・・・。今は一人になりたい・・・」
「おいっ・・・」
口には出さないけど、これ以上ついてくるなと、彼女に拒否られたように追いかける事が出来なかった。
どうしてこうもうまくいかないのだろう。
「雪男も、玲薇が好きだから・・・。俺が雪男に玲薇をやればいいのかな・・・」
玲薇はいつもの部屋に戻らず、たくさん空いている男子寮の一部屋に、一人佇む。
話したことはなかったのに、志摩が雪男に話してしまった。隠すつもりはなかったのに、また雪男と空回りしてしまって。
「っ・・・何なの・・・私はなんなのよっ・・・。みんなを傷付けて、突き放して・・・っサイッテー・・・。
消えちゃえ、消えちゃえ・・・っ。私なんて消えちゃえばいいのよっ・・・」
そうすれば燐も雪男もケンカしなくなる。しえみにも当て付けしてしまう相手もいなくなる。
「私は、何者なの・・・」
サタンの落胤で燐と同じように悪魔だとしても、この不思議な力は炎とは違う。光だ。
それでみんなを守れる訳では無い。守れるのは自分自身のみ。こんな力気持ち悪いだけで、
燐の青い炎よりもだいぶ使い勝手が悪いのに。そういえば、ルシフェルは何か知ってるのか。
『自分自身の事を知らなすぎる』って、確か言っていた。自分達の出生の秘密を、やはり知るべきなのだろうか。
けど、『組み込まれる』って、なんだ?私はいつか、サタンの一部に戻されるって事なのか?
「・・・・・・・・・人間じゃない、なにか・・・・・・・」
チラッと、部屋を見渡せば使い古された錆び付いた文房具が目に入った。
ふらっと出歩き、カッターを手に取ってみる。
「はァ・・・はァ・・・」
異様に湧き出てくる汗。大丈夫、少しの傷なら力で治るから。
「ごめん、燐・・・(もう、自分が怖い・・・っ)」
遠くで走ってくる音が聞こえる気がした。でも、その音は遠い気がする。
(お願い・・・もう、誰も傷付けたくないの・・・っ)
「クロ!!!」
「!!」
ドアが勢いよく開き、驚き振り返ると同時にクロが襲いかかってきた。
「ニャー!!《やめろー!!》」
クロがカッターを持ってる手首に、勢いよく噛み付いてきた。
「イタッ」
手の力が弱まり、カッターが床にけたたましく落ちる。クロは瞬時に手首から離れたと思うとカッターを口に加えた。
「クロ!何するっ」
「玲薇っ!!!」
間近に迫ってくる燐の恐怖に後ずさるも、足がもつれて床に座り込む。
「バカ野郎が!!」
悪魔の顔でではない、人の顔として燐は怒ってる。
こんなに燐に怒られたのは、初めてだ。
「なにしようとしてたんだよ!?何であんなモン持ってたんだよ!?
やっぱ心配で部屋戻ってもいなくて、屋上にもいなくて、部屋片っ端から探して、
クロが先に見つけてくれるのがもう少し遅かったらどうなって・・・」
肩を掴む燐の手に力が込められる。そして、ギュッーと、抱きしめてくれて。
それなのに、それが嫌な自分がいて。
「ゃ・・・いゃ・・・私はもう、いいの・・・もう、疲れたの・・・」
「誰に何言われた?雪男か?雪男なのか?」
雪男ではない。雪男に聞かれたあの時の質問ぐらい大したことなかった、それは今まで何度もぶつかった経験から。
だから、ルシフェルだ。ルシフェルに言われた不思議な言葉の数々に、もう頭がついていかない。
容量オーバーだ。でも、これを燐に言ってはいけない気がする。言ったら・・・。
「雪、男じゃ、ない・・・」
でも、これだけは伝えなくてはならなくて。
「じゃあ、誰なんだよ・・・教えてくれよ・・・」
消え入りそうな、願わずにはいられないと言わんばかりのすがるような燐の声。
「私・・・人じゃない、かもしれないって・・・」
「俺だって、半分悪魔だろ」
「私は・・・自分が分からない・・・。燐みたいに、ハッキリした立場ならよかった・・・」
玲薇が何を伝えたいのか、いまいち分からない。
燐は首をかしげながら言う。
「ハハ・・・雪男には前に、俺の立場なら発狂してるって言われたぞ」
「そっか・・・」
「てか、そもそも玲薇は人間だ。誰だよ、人間じゃないって言ったやつ」
ブスくれる燐を見ればいつもはもうどうでもよくなってしまうのに。
いまは視線を逸らしてクロを探した。クロは距離を置き、シャーッと唸りカッターを警備している。
この姿勢では、さすがに腕を伸ばしてもクロには届かない。
「よくやったぞ、クロ」
クロは燐に褒められ嬉しそうにニャーと鳴く。
「ちょっ・・・!」
燐が突然、力で横向きにして玲薇を抱き上げる。
「首に捕まってねーと落ちるぞ」
「じ、自分で歩ける!」
誰もいないとはいえ、さすがに姫抱っこは恥ずかしい。
「そういうなよ。またどっかに隠れられても困るだろ。まぁ、今度はクロじゃなくて俺が見つけるけど・・・」
カァーッと玲薇が顔を真っ赤にすれば、燐もつられて真っ赤になる。
「っ・・・」
これ以上、まともに顔を見れなくて観念して燐に従う。
燐と共にキッチンに戻るとき、燐のポケットに入っているスマホが鳴る。
「ん?」
玲薇をおろし、スマホを確認する。
「シュラからだ」