第十一話 ライトニング
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『廉造は、俺達の密偵です』
そう柔造から告げられ、驚き言葉が出ない。
「・・・・・・っ、つまり・・・二重スパイてことですか・・・!?」
「そうや」
子猫丸の言葉に、柔造はいたって冷静に頷く。
「今まで黙っとった事、申し開きも出来ませんが秘密は最小限にせなあかんかったんです。
廉造を守る為にも」
「・・・・・・守る?」
勝呂の低い、怒りを含んだ声が柔造に向けられる。
「お前ら、イルミナティを知っとるんか・・・!?俺は見た」
抑えられない怒りに、力任せに柔造の胸ぐらを摘む勝呂。
「人間を人間とも思わん連中や。バレたら殺されるだけや済まんのやぞ!!
何であいつを巻き込んだ!?」
「当然反対しました。しかし、廉造が強く望んだ事です」
「な・・・んやと・・・!?」
これ以上、何も聞き出す事も、起こってしまった出来事は、もうどうする事も出来ない。
-----
一行は正十字学園に戻る。志摩の事は今、どうしようも出来なかった。
けれど、学園で待つ朴の前には、無事に帰ってきた出雲がいる。
改札口を出た出雲と、朴は出雲を抱きしめた。おかえりと、よかったと、玲薇としえみにはありがとうと。
朴の優しい笑顔がまた見れる事が出来て本当によかった。
皆で一緒にそれぞれの寮に戻れば、また明日から普通の学園生活が待っている。
「おはよー、風美夜さん」
「杜山さん、おはよう」
1-Bで同じクラスの二人が、挨拶をすませる。
「神木さんを助けられて本当によかったよね」
しえみが嬉しそうに、しみじみ言う。
「そうだね」
また四人で、いつものように和気あいあいと出来る日が出来た。
思えば、候補生になってから常に危険な日々と隣合わせで覚悟して送ってきたけれど。
しえみと席が近いわけではない。玲薇はチラッと、彼女の様子を伺う。
燐には散々酷い事を自分はしていると思った。高校卒業までどうたら~とか。
学園祭が終わって、あのまま普通に夜を過ごしていたらどうなってたか分からなかったけど、
燐は稲生から帰ってきてから大人しくなっている気がする。志摩を助けられなかったからか、
はたまたあの戦いで何か考えさせられる事でもあったのか・・・。考えさせられる、そうだ。
(・・・ルシフェル・・・)
あのそれぞれ檻の中で戦わされた時、突如現れた存在。
ルシフェルに会った事を雪男にも、ましてや燐にも相談出来ないでいた。
(相談・・・するまでもないのかもしれないけど・・・)
余計心配させるだけだし、多分現状は変わらないだろうし。
(そもそも私・・・あの戦いで何も役に立ってない・・・!?)
簡単に言ってしまえば、ルシフェルに助けられた事になるのか。
サタンの中に必要だから、この不思議な力が必要だから。考えても答えは出ない。
「風美夜・・・!」
「ハッ」
頭を抱えて唸る玲薇を一喝したのは、言うまでもなく学園の先生である。
特進1-Aでは、雪男が勝呂を気にかけていた。いつも授業に集中する彼が、らしくなくボーッと窓の外を眺めている。
昨日柔造から言われた事の整理が、まだ出来ていない。話が頭の中をグチャグチャにしている。
『去年の今頃、廉造が一枚の名刺をもらってきました』
過去の話はここからで・・・。
『柔兄、"光明財団"て知ってる?』
『・・・・・・・・・』
柔造は黙ってその名刺を受け取り眺める。
『今日会ったカワイイ女の子に、バイトしたいならそこに連絡してってもらったんやけど~。
あからさまに怪しいやん?ちょっと連絡さしるか悩んでて~』
『これ預かるわ』
『へっ?』
『ええか、その女次見ても近寄るんやないで』
もともと騎士團員を勧誘する秘密結社や悪魔主義集団はごまんといるらしい。
そして團員は常々警戒し、勧誘されれば報告を義務づけられていたとか。
"光明財団"はその中でもここ数年よく耳にする名だったようで。
志摩の父である八百造が、短くため息をつく。
『廉造はまだ子供や。騎士團員でもない子供まで勧誘してくるやなんて・・・。
上層部は何か対策打っとるんですか』
目の前にいるメフィスト・フェレスに直接問いかける。
『当然、騎士團からもスパイを送り込んではいるのですか、かなり巨大な組織のようでしてね。
組織中枢が"イルミナティ"を名乗っている事以外は謎だらけ。そこまで辿りつけた者も一人もいません。
何か仕掛けてくる前に、手を打ちたいところです。そこで本題です!志摩所長!京都まで足を運んだのも、
実は折り入って所長にお願いがあって参った次第でしてね』
『は、なんなりと・・・』
『所長の御子息・・・志摩廉造くんを、私直属のスパイとして雇いたい!』
メフィストのお願いに、話を聞きに居た柔造、金造、そして何より八百造は目を見開く。
『!?』
『・・・は!?』
メフィストは今までの話を聞いていたのだろうか。
驚く彼らを他所に、メフィストは続ける。
『恐らく、イルミナティが彼を勧誘したのには理由がある。
廉造くんは、志摩家の本尊・・・ヤマンタカに選ばれし黒い炎の使い手。
黒い炎は青い炎に次いで貴重だ。その上、祓魔塾への入塾も決まっており、
祓魔師となればスムーズに騎士團へ入り込める。まだ若く、疑われにくい。
今のうちに手に入れる事ができれば、イルミナティにとって、
大変使い勝手のいい手駒となるでしょうからね。裏を返せばそれは騎士團にとっても同じ事。
彼ならばゆくゆく、イルミナティ中枢に入り込める可能性があるという事です。スパイとして、これ以上ない手駒だ』
『お断りさせてください・・・!!支部長命令でも、さすがにそれは。
まだ素人の子供です』
八百造は必死に頭を下げ、撤回を申し出るも、メフィストも引く事を知らない。
『もちろん、そのまま放り込んだりしませんよ?スパイ教育は施します』
『いや、そーゆう問題やない・・・スパイには、親兄弟友人捨て去る非情さが必要や。
そんな事を十五の子供にさせられますか!?』
『十五歳といえば若いが、十分成年だと思いますがね・・・。すみません、私、子思う親の気持ちには疎くて・・・』
『俺、やってもえーよ?』
そう柔造から告げられ、驚き言葉が出ない。
「・・・・・・っ、つまり・・・二重スパイてことですか・・・!?」
「そうや」
子猫丸の言葉に、柔造はいたって冷静に頷く。
「今まで黙っとった事、申し開きも出来ませんが秘密は最小限にせなあかんかったんです。
廉造を守る為にも」
「・・・・・・守る?」
勝呂の低い、怒りを含んだ声が柔造に向けられる。
「お前ら、イルミナティを知っとるんか・・・!?俺は見た」
抑えられない怒りに、力任せに柔造の胸ぐらを摘む勝呂。
「人間を人間とも思わん連中や。バレたら殺されるだけや済まんのやぞ!!
何であいつを巻き込んだ!?」
「当然反対しました。しかし、廉造が強く望んだ事です」
「な・・・んやと・・・!?」
これ以上、何も聞き出す事も、起こってしまった出来事は、もうどうする事も出来ない。
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一行は正十字学園に戻る。志摩の事は今、どうしようも出来なかった。
けれど、学園で待つ朴の前には、無事に帰ってきた出雲がいる。
改札口を出た出雲と、朴は出雲を抱きしめた。おかえりと、よかったと、玲薇としえみにはありがとうと。
朴の優しい笑顔がまた見れる事が出来て本当によかった。
皆で一緒にそれぞれの寮に戻れば、また明日から普通の学園生活が待っている。
「おはよー、風美夜さん」
「杜山さん、おはよう」
1-Bで同じクラスの二人が、挨拶をすませる。
「神木さんを助けられて本当によかったよね」
しえみが嬉しそうに、しみじみ言う。
「そうだね」
また四人で、いつものように和気あいあいと出来る日が出来た。
思えば、候補生になってから常に危険な日々と隣合わせで覚悟して送ってきたけれど。
しえみと席が近いわけではない。玲薇はチラッと、彼女の様子を伺う。
燐には散々酷い事を自分はしていると思った。高校卒業までどうたら~とか。
学園祭が終わって、あのまま普通に夜を過ごしていたらどうなってたか分からなかったけど、
燐は稲生から帰ってきてから大人しくなっている気がする。志摩を助けられなかったからか、
はたまたあの戦いで何か考えさせられる事でもあったのか・・・。考えさせられる、そうだ。
(・・・ルシフェル・・・)
あのそれぞれ檻の中で戦わされた時、突如現れた存在。
ルシフェルに会った事を雪男にも、ましてや燐にも相談出来ないでいた。
(相談・・・するまでもないのかもしれないけど・・・)
余計心配させるだけだし、多分現状は変わらないだろうし。
(そもそも私・・・あの戦いで何も役に立ってない・・・!?)
簡単に言ってしまえば、ルシフェルに助けられた事になるのか。
サタンの中に必要だから、この不思議な力が必要だから。考えても答えは出ない。
「風美夜・・・!」
「ハッ」
頭を抱えて唸る玲薇を一喝したのは、言うまでもなく学園の先生である。
特進1-Aでは、雪男が勝呂を気にかけていた。いつも授業に集中する彼が、らしくなくボーッと窓の外を眺めている。
昨日柔造から言われた事の整理が、まだ出来ていない。話が頭の中をグチャグチャにしている。
『去年の今頃、廉造が一枚の名刺をもらってきました』
過去の話はここからで・・・。
『柔兄、"光明財団"て知ってる?』
『・・・・・・・・・』
柔造は黙ってその名刺を受け取り眺める。
『今日会ったカワイイ女の子に、バイトしたいならそこに連絡してってもらったんやけど~。
あからさまに怪しいやん?ちょっと連絡さしるか悩んでて~』
『これ預かるわ』
『へっ?』
『ええか、その女次見ても近寄るんやないで』
もともと騎士團員を勧誘する秘密結社や悪魔主義集団はごまんといるらしい。
そして團員は常々警戒し、勧誘されれば報告を義務づけられていたとか。
"光明財団"はその中でもここ数年よく耳にする名だったようで。
志摩の父である八百造が、短くため息をつく。
『廉造はまだ子供や。騎士團員でもない子供まで勧誘してくるやなんて・・・。
上層部は何か対策打っとるんですか』
目の前にいるメフィスト・フェレスに直接問いかける。
『当然、騎士團からもスパイを送り込んではいるのですか、かなり巨大な組織のようでしてね。
組織中枢が"イルミナティ"を名乗っている事以外は謎だらけ。そこまで辿りつけた者も一人もいません。
何か仕掛けてくる前に、手を打ちたいところです。そこで本題です!志摩所長!京都まで足を運んだのも、
実は折り入って所長にお願いがあって参った次第でしてね』
『は、なんなりと・・・』
『所長の御子息・・・志摩廉造くんを、私直属のスパイとして雇いたい!』
メフィストのお願いに、話を聞きに居た柔造、金造、そして何より八百造は目を見開く。
『!?』
『・・・は!?』
メフィストは今までの話を聞いていたのだろうか。
驚く彼らを他所に、メフィストは続ける。
『恐らく、イルミナティが彼を勧誘したのには理由がある。
廉造くんは、志摩家の本尊・・・ヤマンタカに選ばれし黒い炎の使い手。
黒い炎は青い炎に次いで貴重だ。その上、祓魔塾への入塾も決まっており、
祓魔師となればスムーズに騎士團へ入り込める。まだ若く、疑われにくい。
今のうちに手に入れる事ができれば、イルミナティにとって、
大変使い勝手のいい手駒となるでしょうからね。裏を返せばそれは騎士團にとっても同じ事。
彼ならばゆくゆく、イルミナティ中枢に入り込める可能性があるという事です。スパイとして、これ以上ない手駒だ』
『お断りさせてください・・・!!支部長命令でも、さすがにそれは。
まだ素人の子供です』
八百造は必死に頭を下げ、撤回を申し出るも、メフィストも引く事を知らない。
『もちろん、そのまま放り込んだりしませんよ?スパイ教育は施します』
『いや、そーゆう問題やない・・・スパイには、親兄弟友人捨て去る非情さが必要や。
そんな事を十五の子供にさせられますか!?』
『十五歳といえば若いが、十分成年だと思いますがね・・・。すみません、私、子思う親の気持ちには疎くて・・・』
『俺、やってもえーよ?』