第十話 さよなら
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「おかえり、出雲・・・?」
目を覚ましたしえみと談笑していた玲薇は、雰囲気の違う出雲に首を傾げる。
「玲薇、あたし・・・ッ」
今にも壊れてしまいそうな出雲。そうだ、出雲はいままで一人で背負ってきたモノがあんなにも辛い出来事になってしまったのだ。
玲薇は優しく、出雲と抱き合う。お互いに嫌だと拒否する事なく受け入れ合う。
「生き別れた妹に会えたの、月雲に。この5年間、悪い想像ばっかりしてたのに・・・あの子、無事だった。
幸せそうだった。やさしそうなお父さんとお母さんがいて、女の子らしくなってて・・・ほんとに、ほんとによかった・・・!!」
けれど出雲はギュッと、玲薇を抱く手を強くしたかと思うと、溢れる涙をもうおさえる事は出来なかった。
「でも、もう覚えてないのあたしの事・・・!!別れた時、3歳だった。しょうがない・・・判ってるけど・・・!
5年間、あの子を救うために生きてきたのに・・・こんなのってない・・・!!あんまりよ・・・」
「出雲・・・」
玲薇はただただ、彼女の名前を呼ぶことしか出来ない。
「うん」
しえみが相槌を打ち返すと、出雲はカッと目を開いて玲薇を突き放し叫び散らす。
「あんたなんかに判るわけない!!あんたみたいに、幸せ家族に囲まれてぬくぬく育ってきたような奴には判らないわよ!!
こんな・・・惨めな気持ち・・・!」
「・・・うん」
「泣くな!!すぐそうやってメソメソする・・・!傷付いたなら言い返せばいいでしょ!?」
どうすればいいか判らない玲薇は、オロオロしてしまう。
微動だにしないしえみもしえみだけれど。
「怒鳴り散らしてるあたしが悪いんだから、そう言えばいい!あたしは・・・あんたのそういうところが」
出雲の言葉が止まる。涙を流すしえみは、一緒に出雲と泣いてくれているようで。
「よかった。朔ちゃんが・・・出発の見送りに来てくれた時にね」
そういえば、朴はしえみと玲薇に話してくれていた。
『出雲ちゃんをお願い・・・。出雲ちゃんね、二人が羨ましいって』
しえみと二人で、思わず驚き顔を見合わせる。
『奥村くんもだけど・・・あいつらは、泣いたり笑ったり怒ったり、自由で羨ましいって、
言ってたことがあるんだよ。助けてあげてね』
「だから・・・神木さんが、泣いたり・・・笑ったり、怒ったりしてくれて・・・よかった・・・!」
純粋な心でいるしえみだからこその、出雲との在り方がここにあるのだろう。
「ぱ、く・・・あのやろううぅう・・・!!なに、しゃべって・・・!
帰ったら・・・半殺しにしてやる!!てか、玲薇も・・・、何で泣き出すのよ・・・!!」
「えっ・・・二人に、連られて・・・?」
だって、こんな風にいれば自然と涙が出てくるではないか。我慢していたのにな。
ドアを背に、どこから話を聞いていたのか判らないが、様子を見に来ていた勝呂が中に入れず立っていた。
そこへ後から、花をもった子猫丸と飲み物を持っている燐が来た。
「お、勝呂はよー。出雲としえみと玲薇見に来たんだけど・・・」
これまでの女子部屋で何があったか知らない燐と子猫丸は、不思議に勝呂に問う。
「あー、今はアカン。出直せ」
そう言われると余計に気になる立ちで。
「え?え?なになに?何かあんの?」
「やっかましい!静かにせ・・・」
騒ぐ燐を、勝呂が止める間もなく、鬼のような顔をした出雲はドアを開けた。
そして、容赦なく彼らを攻撃したのは言うまでもない。
玲薇達とは別行動で、雪男は八百造と状況を報告し合っていた。
そこで勝呂と約束していた、八百造と話したいと伝えるがやはり八百造は忙しく。
勝呂には代わりに、柔造が会いに行くことになった。
その頃、出雲は母の墓参りにきていた。
すっかり皆の体調もよくなっている。
「母さん、あたし、もう自分を哀れむのはやめる。行ってきます」
皆が待つ階段を行けば、気配を感じた燐が振り返った。
「・・・終わったか?じゃあ、帰ろーぜ」
「朔ちゃんも待ってるよ」
もう、皆と距離を置く理由もなくなった。出雲は軽やかに、皆の輪に飛び込んでくれた。
「・・・しっかし、志摩はどーするよ!?俺、連れ戻すってメフィストに啖呵(たんか)切ったのに・・・!」
「・・・・・・・」
黙り何も答えない勝呂に、出雲は何か思い出したようにハッとした。
「そうだ!ウケ、ミケ!あんた達ピンク頭に消されたんじゃなかったの!?」
「!?」
《ああ》
《・・・おそらく、消滅せんように手加減されておったのだ》
《動けるようになるまでには、かなり時間がかかったけどね》
「・・・それって、どういう事・・・!?」
「坊!」
名前を呼ばれて振り向けば、そこには金造を連れた柔造がいた。
「柔造!」
「お父は今忙しないんで、俺達が代わりに参りました」
「お前達でもええんや!・・・何から話せばいいか・・・廉造が・・・」
焦る勝呂は裏腹に、柔造は態度が乱れない。
「・・・柔造?」
「・・・・・・・・」
子猫丸は、勝呂に寄り添うように隣で話を待つ。
「申し訳ありません、坊」
「ま、まさか・・・」
「子猫丸、廉造は俺達の密偵です」
そう淡々と、柔造から告げられた。
目を覚ましたしえみと談笑していた玲薇は、雰囲気の違う出雲に首を傾げる。
「玲薇、あたし・・・ッ」
今にも壊れてしまいそうな出雲。そうだ、出雲はいままで一人で背負ってきたモノがあんなにも辛い出来事になってしまったのだ。
玲薇は優しく、出雲と抱き合う。お互いに嫌だと拒否する事なく受け入れ合う。
「生き別れた妹に会えたの、月雲に。この5年間、悪い想像ばっかりしてたのに・・・あの子、無事だった。
幸せそうだった。やさしそうなお父さんとお母さんがいて、女の子らしくなってて・・・ほんとに、ほんとによかった・・・!!」
けれど出雲はギュッと、玲薇を抱く手を強くしたかと思うと、溢れる涙をもうおさえる事は出来なかった。
「でも、もう覚えてないのあたしの事・・・!!別れた時、3歳だった。しょうがない・・・判ってるけど・・・!
5年間、あの子を救うために生きてきたのに・・・こんなのってない・・・!!あんまりよ・・・」
「出雲・・・」
玲薇はただただ、彼女の名前を呼ぶことしか出来ない。
「うん」
しえみが相槌を打ち返すと、出雲はカッと目を開いて玲薇を突き放し叫び散らす。
「あんたなんかに判るわけない!!あんたみたいに、幸せ家族に囲まれてぬくぬく育ってきたような奴には判らないわよ!!
こんな・・・惨めな気持ち・・・!」
「・・・うん」
「泣くな!!すぐそうやってメソメソする・・・!傷付いたなら言い返せばいいでしょ!?」
どうすればいいか判らない玲薇は、オロオロしてしまう。
微動だにしないしえみもしえみだけれど。
「怒鳴り散らしてるあたしが悪いんだから、そう言えばいい!あたしは・・・あんたのそういうところが」
出雲の言葉が止まる。涙を流すしえみは、一緒に出雲と泣いてくれているようで。
「よかった。朔ちゃんが・・・出発の見送りに来てくれた時にね」
そういえば、朴はしえみと玲薇に話してくれていた。
『出雲ちゃんをお願い・・・。出雲ちゃんね、二人が羨ましいって』
しえみと二人で、思わず驚き顔を見合わせる。
『奥村くんもだけど・・・あいつらは、泣いたり笑ったり怒ったり、自由で羨ましいって、
言ってたことがあるんだよ。助けてあげてね』
「だから・・・神木さんが、泣いたり・・・笑ったり、怒ったりしてくれて・・・よかった・・・!」
純粋な心でいるしえみだからこその、出雲との在り方がここにあるのだろう。
「ぱ、く・・・あのやろううぅう・・・!!なに、しゃべって・・・!
帰ったら・・・半殺しにしてやる!!てか、玲薇も・・・、何で泣き出すのよ・・・!!」
「えっ・・・二人に、連られて・・・?」
だって、こんな風にいれば自然と涙が出てくるではないか。我慢していたのにな。
ドアを背に、どこから話を聞いていたのか判らないが、様子を見に来ていた勝呂が中に入れず立っていた。
そこへ後から、花をもった子猫丸と飲み物を持っている燐が来た。
「お、勝呂はよー。出雲としえみと玲薇見に来たんだけど・・・」
これまでの女子部屋で何があったか知らない燐と子猫丸は、不思議に勝呂に問う。
「あー、今はアカン。出直せ」
そう言われると余計に気になる立ちで。
「え?え?なになに?何かあんの?」
「やっかましい!静かにせ・・・」
騒ぐ燐を、勝呂が止める間もなく、鬼のような顔をした出雲はドアを開けた。
そして、容赦なく彼らを攻撃したのは言うまでもない。
玲薇達とは別行動で、雪男は八百造と状況を報告し合っていた。
そこで勝呂と約束していた、八百造と話したいと伝えるがやはり八百造は忙しく。
勝呂には代わりに、柔造が会いに行くことになった。
その頃、出雲は母の墓参りにきていた。
すっかり皆の体調もよくなっている。
「母さん、あたし、もう自分を哀れむのはやめる。行ってきます」
皆が待つ階段を行けば、気配を感じた燐が振り返った。
「・・・終わったか?じゃあ、帰ろーぜ」
「朔ちゃんも待ってるよ」
もう、皆と距離を置く理由もなくなった。出雲は軽やかに、皆の輪に飛び込んでくれた。
「・・・しっかし、志摩はどーするよ!?俺、連れ戻すってメフィストに啖呵(たんか)切ったのに・・・!」
「・・・・・・・」
黙り何も答えない勝呂に、出雲は何か思い出したようにハッとした。
「そうだ!ウケ、ミケ!あんた達ピンク頭に消されたんじゃなかったの!?」
「!?」
《ああ》
《・・・おそらく、消滅せんように手加減されておったのだ》
《動けるようになるまでには、かなり時間がかかったけどね》
「・・・それって、どういう事・・・!?」
「坊!」
名前を呼ばれて振り向けば、そこには金造を連れた柔造がいた。
「柔造!」
「お父は今忙しないんで、俺達が代わりに参りました」
「お前達でもええんや!・・・何から話せばいいか・・・廉造が・・・」
焦る勝呂は裏腹に、柔造は態度が乱れない。
「・・・柔造?」
「・・・・・・・・」
子猫丸は、勝呂に寄り添うように隣で話を待つ。
「申し訳ありません、坊」
「ま、まさか・・・」
「子猫丸、廉造は俺達の密偵です」
そう淡々と、柔造から告げられた。