第十話 さよなら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝、病院の廊下で雪男と勝呂がすれ違う。いつものように雪男から挨拶してくると思ったが何もない。
「・・・・・・・」
不思議に思いつつも、勝呂から声をかけた。
「奥村先生、おはようございます」
「あっ」
雪男らしかぬ、ハッと顔を上げたのだ。
「勝呂くん、おはようございます!(気づかなかった)休めましたか」
「はぁ、何とか」
「他の人達は」
「男連中はまだ寝てます。女子は部屋違うんでよー知らんけど」
「・・・志摩くんの件、すみません。後回しにしてしまった」
「え・・・いえ」
志摩の事を気にしてくれている。
「それより、廉造の事家族に伝えてやりたいんです。志摩・・・所長と直接話せませんか」
「・・・・・・・・」
確かに親戚同士で顔のきく勝呂になら、すぐ連絡を通せるだろう。
だが雪男は少し考える素振りを見せてから答えた。
「今は難しいかもしれませんね・・・でも、僕は後でお会いするんで必ず伝えます」
「ほんまですか!ありがとうございます。あ、女子連中の様子、俺見てきます!」
「助かります。じゃあまた後で」
出雲、しえみ、玲薇がいる部屋では、出雲がゆっくりと目を開けていた。
「おはよう、出雲」
「!」
声のした方に振り向くと、玲薇は既に目が醒めていたようで。
病院着のままベッドの上でゴロゴロしていたのだろう。
「玲薇・・・。あたし・・・」
出雲はベッドの脇に置いてある手作りのキツネの人形に手が当たった。
「出雲、あのまま気を失って倒れちゃってここに来る時に診察の前にその人形を宝さんが持ってくれたの」
「宝・・・?」
「チッ、余計なことを」
「「!?」」
第三者の声に驚き、見れば宝がカーテンを開けて中に入ってきた。
「宝さん!?どうして・・・」
目を丸くする玲薇に、宝=うさぎのパペットが舌打ちする。
「出雲に渡す物がまだあるんだ」
「渡す物・・・?」
キツネの人形以外に、他に何があるのだろう。
「あと、報告だな。外道院は逃げたぜ。イルミナティの研究所は騎士團が制圧した。何もかも終わったよ」
だが出雲は悔しげに、顔を下に向ける。
「まだ何も終わってない・・・。月雲の行方が判らなくなってしまった・・・!!」
「チッ。五年前、お前と月雲を逃がす為にイルミナティを売った女が、
最終的に選んだ取り引き先はどこだったと思う。正十字騎士團だ」
「!!」
身近なところに、月雲は保護されていたというのか。ならどうして・・・。
「だが女は殺され、お前は監禁された。無事に保護できたのは月雲だけ」
「じゃあ、つくもは・・・生きてる・・・!?」
妹の、月雲の笑った顔が、出雲の脳裏に蘇る。
「どこにいるの!・・・どうして今まで教えてくれなかったのよ!?」
勢い余りにベッドから抜け出そうとする出雲の額に、何かがぶつかった。
慌てて拾えば、宝が投げたのは鍵だった。
「それは神木月雲につながる鍵。俺の雇い主からの見舞いの品だ、自分の目で確かめてみたらどうだ」
出雲は鍵と玲薇を交互に見る。
「あたし・・・」
「連れていけ、なんて言わない。私は、待ってるから」
せっかく二人で再開出来るかもしれないのだ。赤の他人が出る膜ではない。
ゴクリと出雲は生唾を飲み、緊張で震える手で病院のドアに鍵を差し込み勢いよくドアを開けた。
出雲の目に飛び込んできたのは、立派な豪邸がある場所。
「・・・!?」
かつで自分達が住んでいた土地とは全く雰囲気が違う。
「ここは」
「じゃあ、行ってきます」
声が聞こえ、バレないように慌てて茂みに隠れる。
「今日は早めに帰るよ」
「まぁ嬉しい!気をつけて行ってらしてね」
「うん」
優しそうな夫婦が、家の前でしている会話。そして、女の人の傍には小さな女の子。
「パパ、行ってらっしゃーい!」
「行ってきます」
男の人に頭を撫でてもらって嬉しそうに笑っている女の子。
見間違える訳が無い。長年、ずっと捜し続けていた実の妹である月雲だ。
(月雲・・・!)
出雲の隣で、宝が説明する。
「今は"宝つきこ"。子供のいなかったタカラグループ系列会社、タカラコンピュータエンターテイメント社長の養女になった。
ねむとは、従妹になるな。タカラグループは支部長、メフィストフェレスの持ち物だ。
完全に隠され護られてきた。今も何不自由ない生活をしている」
(月雲・・・月雲・・・!大きくなったね・・・!)
「まぁ、その鍵はもうお前の物だ。あとは好きにすればいい」
女の人に、花に水をあげてきていいかと聞き了解を得ていた月雲は、いまは一人。
ふらりと、足取りは自然に月雲の方へ向かっていく。
(やっと、やっと会えた)
あの時、別れた頃よりも確実に背は伸び、髪の毛の長さも色も、やはり出雲と瓜二つだ。
「月雲」
そう名前を呼べば、女の子は振り向いた。
「・・・誰?」
だが、月雲から衝撃的な言葉が返された。『誰』とは、自分の事はもう覚えていないのだろうか。
言葉が出ない出雲に、首を傾げる月雲。そんな月雲に、出雲は震える手でキツネの人形を見せた。
「・・・このお人形、覚えてる・・・?」
「あ!!つきこの宝物!!なくしちゃったかと思ってた、よかったぁ!」
出雲が月雲の為に作ってあげた人形の事は覚えてくれていた。
「宝物・・・」
もしかしたら、説明すれば、自分を名乗れば少しは月雲は何か思い出すかもしれない。
でもどうしてだろう、その人形を『宝物』と言ってくれただけで満足してしまう自分がいるのは。
「うん、私、このお人形を握って生まれてきたんだって・・・だから、大切にしなさいってママが。
・・・ほんとかな?お姉ちゃん、ありがとう!」
「さようなら」
「・・・・・・・」
不思議に思いつつも、勝呂から声をかけた。
「奥村先生、おはようございます」
「あっ」
雪男らしかぬ、ハッと顔を上げたのだ。
「勝呂くん、おはようございます!(気づかなかった)休めましたか」
「はぁ、何とか」
「他の人達は」
「男連中はまだ寝てます。女子は部屋違うんでよー知らんけど」
「・・・志摩くんの件、すみません。後回しにしてしまった」
「え・・・いえ」
志摩の事を気にしてくれている。
「それより、廉造の事家族に伝えてやりたいんです。志摩・・・所長と直接話せませんか」
「・・・・・・・・」
確かに親戚同士で顔のきく勝呂になら、すぐ連絡を通せるだろう。
だが雪男は少し考える素振りを見せてから答えた。
「今は難しいかもしれませんね・・・でも、僕は後でお会いするんで必ず伝えます」
「ほんまですか!ありがとうございます。あ、女子連中の様子、俺見てきます!」
「助かります。じゃあまた後で」
出雲、しえみ、玲薇がいる部屋では、出雲がゆっくりと目を開けていた。
「おはよう、出雲」
「!」
声のした方に振り向くと、玲薇は既に目が醒めていたようで。
病院着のままベッドの上でゴロゴロしていたのだろう。
「玲薇・・・。あたし・・・」
出雲はベッドの脇に置いてある手作りのキツネの人形に手が当たった。
「出雲、あのまま気を失って倒れちゃってここに来る時に診察の前にその人形を宝さんが持ってくれたの」
「宝・・・?」
「チッ、余計なことを」
「「!?」」
第三者の声に驚き、見れば宝がカーテンを開けて中に入ってきた。
「宝さん!?どうして・・・」
目を丸くする玲薇に、宝=うさぎのパペットが舌打ちする。
「出雲に渡す物がまだあるんだ」
「渡す物・・・?」
キツネの人形以外に、他に何があるのだろう。
「あと、報告だな。外道院は逃げたぜ。イルミナティの研究所は騎士團が制圧した。何もかも終わったよ」
だが出雲は悔しげに、顔を下に向ける。
「まだ何も終わってない・・・。月雲の行方が判らなくなってしまった・・・!!」
「チッ。五年前、お前と月雲を逃がす為にイルミナティを売った女が、
最終的に選んだ取り引き先はどこだったと思う。正十字騎士團だ」
「!!」
身近なところに、月雲は保護されていたというのか。ならどうして・・・。
「だが女は殺され、お前は監禁された。無事に保護できたのは月雲だけ」
「じゃあ、つくもは・・・生きてる・・・!?」
妹の、月雲の笑った顔が、出雲の脳裏に蘇る。
「どこにいるの!・・・どうして今まで教えてくれなかったのよ!?」
勢い余りにベッドから抜け出そうとする出雲の額に、何かがぶつかった。
慌てて拾えば、宝が投げたのは鍵だった。
「それは神木月雲につながる鍵。俺の雇い主からの見舞いの品だ、自分の目で確かめてみたらどうだ」
出雲は鍵と玲薇を交互に見る。
「あたし・・・」
「連れていけ、なんて言わない。私は、待ってるから」
せっかく二人で再開出来るかもしれないのだ。赤の他人が出る膜ではない。
ゴクリと出雲は生唾を飲み、緊張で震える手で病院のドアに鍵を差し込み勢いよくドアを開けた。
出雲の目に飛び込んできたのは、立派な豪邸がある場所。
「・・・!?」
かつで自分達が住んでいた土地とは全く雰囲気が違う。
「ここは」
「じゃあ、行ってきます」
声が聞こえ、バレないように慌てて茂みに隠れる。
「今日は早めに帰るよ」
「まぁ嬉しい!気をつけて行ってらしてね」
「うん」
優しそうな夫婦が、家の前でしている会話。そして、女の人の傍には小さな女の子。
「パパ、行ってらっしゃーい!」
「行ってきます」
男の人に頭を撫でてもらって嬉しそうに笑っている女の子。
見間違える訳が無い。長年、ずっと捜し続けていた実の妹である月雲だ。
(月雲・・・!)
出雲の隣で、宝が説明する。
「今は"宝つきこ"。子供のいなかったタカラグループ系列会社、タカラコンピュータエンターテイメント社長の養女になった。
ねむとは、従妹になるな。タカラグループは支部長、メフィストフェレスの持ち物だ。
完全に隠され護られてきた。今も何不自由ない生活をしている」
(月雲・・・月雲・・・!大きくなったね・・・!)
「まぁ、その鍵はもうお前の物だ。あとは好きにすればいい」
女の人に、花に水をあげてきていいかと聞き了解を得ていた月雲は、いまは一人。
ふらりと、足取りは自然に月雲の方へ向かっていく。
(やっと、やっと会えた)
あの時、別れた頃よりも確実に背は伸び、髪の毛の長さも色も、やはり出雲と瓜二つだ。
「月雲」
そう名前を呼べば、女の子は振り向いた。
「・・・誰?」
だが、月雲から衝撃的な言葉が返された。『誰』とは、自分の事はもう覚えていないのだろうか。
言葉が出ない出雲に、首を傾げる月雲。そんな月雲に、出雲は震える手でキツネの人形を見せた。
「・・・このお人形、覚えてる・・・?」
「あ!!つきこの宝物!!なくしちゃったかと思ってた、よかったぁ!」
出雲が月雲の為に作ってあげた人形の事は覚えてくれていた。
「宝物・・・」
もしかしたら、説明すれば、自分を名乗れば少しは月雲は何か思い出すかもしれない。
でもどうしてだろう、その人形を『宝物』と言ってくれただけで満足してしまう自分がいるのは。
「うん、私、このお人形を握って生まれてきたんだって・・・だから、大切にしなさいってママが。
・・・ほんとかな?お姉ちゃん、ありがとう!」
「さようなら」