第八話 あたしの一番大切なもの
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「アンタは・・・あたしの事、どこまで知ってるわけ・・・?」
イルミナティに捕まってしまった出雲が、スパイである志摩に問い出す。
こちらは真剣な質問なのに、志摩は変わらずヘラヘラと笑っていた。
「いやぁ何も?俺は最初、結社にとって重要な娘やって写真見してもろてただけやし、
出雲ちゃんかわいかったしィ、監視も楽しかったわ♪」
「・・・ちょっと待ってよ・・・アンタ、いつからイルミナティだったの!?」
「えっと、正十字学園に入学するちょい前?藤堂さんに声かけられて、
入学するなら生徒やりながら出雲ちゃんや他の塾生監視して、何かあったら報告しろて、そんだけ?」
「・・・・・・!!」
そんな、まさかずっと前から志摩は敵だったというのか・・・。
詫びれる様子など、彼から一切ない。
「不浄王ん時は内心ハラハラしたわーっ。でも、そっちの件は俺完全にノータッチやったし、
役割演じろてゆわれてそうしてたんやけど」
「どうして・・・!?」
こんなこと、出来る程の奴だとはおもってもいなかったのに。
「何もかも嫌で!」
その表情に、嘘も偽りもなくて。
「坊も子猫さんも、兄貴達も家族も明陀も、何もかも面倒臭くて、
ぜーんぶ捨ててしまいたくなってもーてん。ま、女の子にはそーはいかへんのやけどぉ」
出雲は黙ったまま、何も言わない。
「れれ?いーずーもちゃんっ?」
その瞬間、頬に痛みが走る。
出雲からの平手打ちを、食らったのだ。彼女は相当怒っている。
「・・・騙される方がバカだって・・・知ってる。でも、あたしはアンタ達を・・・。
仲間同士なんだって思ってたのに、裏切者!!」
まさか、彼女が怒るとは思ってなくて。思わず、笑が出る。
「怒るんや!?意外やなぁ!
出雲ちゃんは俺と、似たもん同士やと思てたのに。
あ、せや忘れてた。これ!」
志摩が取り出したのは、出雲にとって大事なキツネの人形。
「出雲ちゃんが着てたメイド服ん中入ってたの、預かってたんや。
お守りやろ?ほなな」
志摩が去った後、頭がボーッとする。
(そう、ピンク頭の言う通り。あたしは自分の大事な部分を、朴にだって晒してない)
誰も信用してない。
「裏切者は、あたしの方ね・・・!」
宝が購入したキツネの人形が、淡々と語り出す。
《なに、昔々というほどは遡らぬ。事の始まりは五年前・・・!
ほんの五年前までは、ここ稲生は清浄の地であったのだ!
十一歳の神木家の娘出雲と、この地に起きた話なり》
稲生大社は、五穀豊穣。商売繁盛などを司る、トヨウケビメを主祭神とし、
古代から稲生周辺の国々を鎮護(ちんご)してきた。祭祀(さいし)を担うのは、
ウカノミタマノカミの神使を祖とする稲神家、神木家はその分家。
つまり、狐神と交わって神通力を得た一族なのだ。
《そこの神の炎を纏う小僧と同じだな》
玲薇はキツネと一緒に燐を見る。
《汝らのいうところの悪魔と血縁を持つ人間ということになる》
そういえば以前、出雲が言っていたっけ。
(あんた達は知らないんでしょーけど、この世界に悪魔と人間の血縁者はざらにいるの!)
《・・・とはいっても、すでに本家筋の血は薄まり俗人となんら変わらぬがな。
しかし、神木家はそのつとめの質ゆえに、未だに血の強い神通力を備えておった・・・》
神木家・・・大社の側近くに、ひっそりと社を構えていた。神木出雲は、ここで生まれた。
母は、神木家六十四代目宮司-神木玉雲・・・。
『うええ~~ん!!いずも、だずけでぇ!みんな、玉ちゃんにつめたぁ~い!!
ああぁん、みんなみんな、玉ちゃんが一人で悪いみたいにゆうの、ひどくな~~い!?』
泣きながら、娘の出雲に抱きつく玉雲。
『・・・しょうがないでしょ、世間体の悪い事してるんだから!』
『そんな事ないもん!宗さまと私は、相思相愛!誰に恥じる事もありません!!』
『もうっ、いい加減にしてよ!!
フツーのお母さんは娘に助けられたりしないの!!』
『どーして!?つめたーい!出雲は玉ちゃんの娘なんだから、玉ちゃんを助けるのは当たり前でしょ!?
それに宗さまは、あなた達のお父さまなのよ?もっと真剣に考えてよぉ!』
『はっ、一度も会いに来ないお父さんなんて、いないも同じよ!』
『宗さまは今、おつとめが忙しいだけなの!』
会話は終わらないだろうと、ウケは口を挟む。
《はい、玉ちゃんの朝餉だよ》
『ありがとうウケちゃん!』
お礼はしつつ、玉雲の出雲への説得は続く。
『いつか家族いっしょになって、玉ちゃん素敵な奥さまになるんだもん!!』
《玉雲、洗濯物干したぞ》
今度はミケが顔を出す。
『ありがと、ミケ!!』
そんな異様な風景に、出雲は幼いながらもため息が出た。
『・・・狐神に家事全部まかせてるくせに、なにが素敵な奥さまよ』
『あらー!いーじゃない、これも玉ちゃんの才能だもん!
ねーっ、みんな♡』
《ねーっ》
《きつねのアイドル!!》
《人形に化けるのは疲れるが、玉雲がかわいいから仕方ない》
『あんたらがそーやって甘やかすから!!』
どっちが立派な大人だかわからない。
玉雲は頼りなくだらしない女だが、宮司としては強力な神通力を持っていた。
神木家は"魔"を鎮めるつとめを負っていた。"殺生石"。
近付く生者を殺し、死者を蘇らせる魔石。殺生石はかつて、
陰陽師によって討ち滅ぼされた。白面金毛、九尾の狐の結晶である。
神木は九尾の呪いを鎮めるため、稲神から分かれ、
件の陰陽師との間に設けられた血統。代々宮司となる巫女は、
"玉雲"を名乗って"神降ろし"という神楽を舞い、九尾になりきり同化する事で、
九尾を鎮める。当代の玉雲は、歴代のどの巫女よりも力強く、美しく舞った。
イルミナティに捕まってしまった出雲が、スパイである志摩に問い出す。
こちらは真剣な質問なのに、志摩は変わらずヘラヘラと笑っていた。
「いやぁ何も?俺は最初、結社にとって重要な娘やって写真見してもろてただけやし、
出雲ちゃんかわいかったしィ、監視も楽しかったわ♪」
「・・・ちょっと待ってよ・・・アンタ、いつからイルミナティだったの!?」
「えっと、正十字学園に入学するちょい前?藤堂さんに声かけられて、
入学するなら生徒やりながら出雲ちゃんや他の塾生監視して、何かあったら報告しろて、そんだけ?」
「・・・・・・!!」
そんな、まさかずっと前から志摩は敵だったというのか・・・。
詫びれる様子など、彼から一切ない。
「不浄王ん時は内心ハラハラしたわーっ。でも、そっちの件は俺完全にノータッチやったし、
役割演じろてゆわれてそうしてたんやけど」
「どうして・・・!?」
こんなこと、出来る程の奴だとはおもってもいなかったのに。
「何もかも嫌で!」
その表情に、嘘も偽りもなくて。
「坊も子猫さんも、兄貴達も家族も明陀も、何もかも面倒臭くて、
ぜーんぶ捨ててしまいたくなってもーてん。ま、女の子にはそーはいかへんのやけどぉ」
出雲は黙ったまま、何も言わない。
「れれ?いーずーもちゃんっ?」
その瞬間、頬に痛みが走る。
出雲からの平手打ちを、食らったのだ。彼女は相当怒っている。
「・・・騙される方がバカだって・・・知ってる。でも、あたしはアンタ達を・・・。
仲間同士なんだって思ってたのに、裏切者!!」
まさか、彼女が怒るとは思ってなくて。思わず、笑が出る。
「怒るんや!?意外やなぁ!
出雲ちゃんは俺と、似たもん同士やと思てたのに。
あ、せや忘れてた。これ!」
志摩が取り出したのは、出雲にとって大事なキツネの人形。
「出雲ちゃんが着てたメイド服ん中入ってたの、預かってたんや。
お守りやろ?ほなな」
志摩が去った後、頭がボーッとする。
(そう、ピンク頭の言う通り。あたしは自分の大事な部分を、朴にだって晒してない)
誰も信用してない。
「裏切者は、あたしの方ね・・・!」
宝が購入したキツネの人形が、淡々と語り出す。
《なに、昔々というほどは遡らぬ。事の始まりは五年前・・・!
ほんの五年前までは、ここ稲生は清浄の地であったのだ!
十一歳の神木家の娘出雲と、この地に起きた話なり》
稲生大社は、五穀豊穣。商売繁盛などを司る、トヨウケビメを主祭神とし、
古代から稲生周辺の国々を鎮護(ちんご)してきた。祭祀(さいし)を担うのは、
ウカノミタマノカミの神使を祖とする稲神家、神木家はその分家。
つまり、狐神と交わって神通力を得た一族なのだ。
《そこの神の炎を纏う小僧と同じだな》
玲薇はキツネと一緒に燐を見る。
《汝らのいうところの悪魔と血縁を持つ人間ということになる》
そういえば以前、出雲が言っていたっけ。
(あんた達は知らないんでしょーけど、この世界に悪魔と人間の血縁者はざらにいるの!)
《・・・とはいっても、すでに本家筋の血は薄まり俗人となんら変わらぬがな。
しかし、神木家はそのつとめの質ゆえに、未だに血の強い神通力を備えておった・・・》
神木家・・・大社の側近くに、ひっそりと社を構えていた。神木出雲は、ここで生まれた。
母は、神木家六十四代目宮司-神木玉雲・・・。
『うええ~~ん!!いずも、だずけでぇ!みんな、玉ちゃんにつめたぁ~い!!
ああぁん、みんなみんな、玉ちゃんが一人で悪いみたいにゆうの、ひどくな~~い!?』
泣きながら、娘の出雲に抱きつく玉雲。
『・・・しょうがないでしょ、世間体の悪い事してるんだから!』
『そんな事ないもん!宗さまと私は、相思相愛!誰に恥じる事もありません!!』
『もうっ、いい加減にしてよ!!
フツーのお母さんは娘に助けられたりしないの!!』
『どーして!?つめたーい!出雲は玉ちゃんの娘なんだから、玉ちゃんを助けるのは当たり前でしょ!?
それに宗さまは、あなた達のお父さまなのよ?もっと真剣に考えてよぉ!』
『はっ、一度も会いに来ないお父さんなんて、いないも同じよ!』
『宗さまは今、おつとめが忙しいだけなの!』
会話は終わらないだろうと、ウケは口を挟む。
《はい、玉ちゃんの朝餉だよ》
『ありがとうウケちゃん!』
お礼はしつつ、玉雲の出雲への説得は続く。
『いつか家族いっしょになって、玉ちゃん素敵な奥さまになるんだもん!!』
《玉雲、洗濯物干したぞ》
今度はミケが顔を出す。
『ありがと、ミケ!!』
そんな異様な風景に、出雲は幼いながらもため息が出た。
『・・・狐神に家事全部まかせてるくせに、なにが素敵な奥さまよ』
『あらー!いーじゃない、これも玉ちゃんの才能だもん!
ねーっ、みんな♡』
《ねーっ》
《きつねのアイドル!!》
《人形に化けるのは疲れるが、玉雲がかわいいから仕方ない》
『あんたらがそーやって甘やかすから!!』
どっちが立派な大人だかわからない。
玉雲は頼りなくだらしない女だが、宮司としては強力な神通力を持っていた。
神木家は"魔"を鎮めるつとめを負っていた。"殺生石"。
近付く生者を殺し、死者を蘇らせる魔石。殺生石はかつて、
陰陽師によって討ち滅ぼされた。白面金毛、九尾の狐の結晶である。
神木は九尾の呪いを鎮めるため、稲神から分かれ、
件の陰陽師との間に設けられた血統。代々宮司となる巫女は、
"玉雲"を名乗って"神降ろし"という神楽を舞い、九尾になりきり同化する事で、
九尾を鎮める。当代の玉雲は、歴代のどの巫女よりも力強く、美しく舞った。