第ニ十四話 青い夜
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『その通りです』
『!?』
そう言葉を発した、ユリの側にいる老婆。メフィスト曰く、彼女はシェミハザだ。
『貴方、運がよかったですね。シェミハザの皇気は、細胞の活性化を促進する』
『もう傷が塞がってる・・・』
酷い首の傷の治りは、血が飛んだ形跡はあるものの、獅郞がおもっていた何倍もの速さだった。
シェミハザが言う。
『今夜、私以外のグリゴリは重傷を負い、聖騎士、四大騎士、多くの聖職者、祓魔師が青い炎にまかれ・・・亡くなりました。
ユリ・エギン。全てはサタンが貴女を求め、肉体を探し回った結果です。この甚大な被害を鑑み、
貴女には祓魔師として、サタンの執着を断つ為に殉じてもらいたいのです』
驚いたのは本人よりも獅郞の方で、ユリは両の腕の中にいる子供を抱き締める。
『・・・こ、子供達は・・・』
『サタンの執着を呼びかねない存在は、殺すことが最善でしょう。祓魔法を解明するまでは、保育するしかありませんが・・・。
丁重に、連れていきなさい』
『待て!!!』
『!?』
シェミハザ達とユリの間に入ったのは、獅郞だ。
『妨害する気か!?』
『こいつに罪はない!』
『罪の話ではありません。事実の話をしているのです』
確かに正しいのはグリゴリ、シェミハザ達の方かもしれない。自分たちは、大きな間違いをおかしているのかもしれない。
それでも、確信するのが遅れたけど、大事な人をぞんざいに扱われるのに我慢ならなかった。
散々我慢してきた、散々苦労してきた彼女を。
『・・・だめだ、そうはさせるか・・・!!』
ユリの腕をとり、シェミハザに銃を向ける。何をやっているのか判ってる。でも、獅郞の中で、動かずにはいられなかった。
『先生!?』
『・・・ユリ、立てるか。お前を死なせない』
ユリを立たせ、獅郞が銃で脅しながらドアの前まで歩み寄る。
『貴様、反逆罪に値するぞ!!』
何言われようが今は関係ない。ここから脱出出来ればなんだっていい。
ユリに鍵を渡し、別の場所へ。
静寂したその場をあとにするように、燐も二人の後を追った。
(めちゃめちゃ近い・・・!!)
狭い部屋に移動したせいで、燐と二人の距離は目と鼻の先。バレないように慎重に動く。
緊張が溶けたのか、一先ず安心出来たのか、ユリは肩で息をしながら座り込む。
『大丈夫か?』
『うん・・・』
息苦しい呼吸を落ち着かせ、雪の積もった厳しい寒さの中で辺りを見回す。
『ここは・・・?』
『かなり昔に閉鎖された騎士團の出張所だ。近くにイエティの見張り台があって、そこを改造して隠れ家にしてるんだ。
吹雪が弱まったら、移動しよう。秘密の場所だから、しばらくはバレない』
『・・・好きだね~隠れ家・・・』
『う、うるせーな。いいだろ、別に!!』
『ふっ、うふふ』
『?なんだよ』
『・・・なんでもない!』
少し気を緩められたのも束の間。
『あら?』
二人同時に泣き始めたのだ。火を用意してくれた獅郞は、他にも着替えや食べ物を探しに行ってくれた。
数分後、戻ってきた獅郞。
『おかえり』
『・・・何してんだ』
『おっぱい!今、服の中で吸ってるよ・・・!』
『おっぱ、まじか。じゃあ余計にくえ』
『私、この子達の名前考えた』
『ふーん』
『ハデに爆誕してきたこの子は、燐火から"燐"』
(まんま)
『まんまだな』
燐の心の声を発してくれるように、獅郞が言う。
『そして、小さいこの子は雪男から"雪男"・・・』
『なんでだ』
『えっ』
獅郞の呆れに、戸惑うユリ。
『"燐"はまだしも"雪男"って、どっから出てきたんだよ。あーあ、完全にフザケてんな?』
『フザケてないよ!雪男はあったかくて、強い人のことだもん』
『はぁ?そんな事より、全然喰ってねーじゃねぇか。このオレ様がゆずってやってんだぞ?』
『ほんとだね。獅郞、いつもはいじわるなのにね』
『そーだ。まあ、ひとつ貸しだがな』
『ふふ、いじわる』
いつものやり取り。いつもの会話。されど、ユリの笑顔は無理矢理で、顔色も心なしか青白い。
言いようのない不安が押し寄せるが、獅郞は外に視線を向けた。
『あ、吹雪、だいぶ弱まったな。見張り台が見える』
早く。少しでも早く、ユリを安全な場所に移してやりたかった。今いる場所よりも、隠れ家には日常に必要な最低限のものは揃っている。
吹雪が弱まった今のうちに移動しようとユリに言うが、彼女は頷き立ち上がったかとおもうと、よろけた反動で獅郞の背中にぶつかってしまう。
『あ』
『!大丈夫か』
『ごめ・・・少し、立ちくらみ・・・早く行こう』
『・・・・・・・』
顔を上げたユリの表情は、さらに青ざめていた。どうしてやればいいのか、獅郞もわからなくなる。
『やっぱり、やめよう』
『どうして・・・?もう大丈夫だよ、行こう』
いつもの、ユリの優しい笑顔。
『そ、そうだよな』
何故か、いつものように軽くあしらうことが出来ない。踏みとどめられない。
『お前は歩くのに専念しろ』
二人の赤子は、獅郞に抱きかかえられて。
吹雪は思いの外つよかったのか、道には足首が埋まるほど積もっていて歩きにくい。
いつもの道ならば、15分くらいの距離なのに雪が邪魔をする。イエティは昔出現していたが絶滅したらしく、その為先程の出張所も閉鎖されたようだ。
隠れ家につけば、しばらく潜伏できる。様子みながら、次の事も考えられる。
『ごめんね、獅郞を逃亡者にしちゃったね』
一人だったら何も出来ないまま、騎士團の言う事を聞いていたかもしれない。
『フン、むしろせーせーしたぜ。俺はずっと、自由になりたかったからな・・・もっと、早くこうすりゃよかった・・・。
今度こそ、一緒に暮らそう。俺が父親役で、お前が母親役をやるんだ』
いつかユリが言っていた言葉。それが今、獅郞に伝わっている。
『楽しそうだろ』
もっと早く、それが聞きたかった・・・幸せな、言葉。
『うん、素敵・・・』
でも、もう足が動かない。力が、入らない。
『ユリ!!』
ドサリと背後で音を聞いた獅郞は、倒れたユリのそばに寄る。
『あれ、力が抜けちゃった・・・獅郞、おんぶして』
(あ・・・)
どこかで見たことあるやり取り。雪男を探し回ってた時、玲薇とバッタリあって。
あの時も、こうして雪がふっていたっけ。今頃二人は、何をしているのだろう。
『!?』
そう言葉を発した、ユリの側にいる老婆。メフィスト曰く、彼女はシェミハザだ。
『貴方、運がよかったですね。シェミハザの皇気は、細胞の活性化を促進する』
『もう傷が塞がってる・・・』
酷い首の傷の治りは、血が飛んだ形跡はあるものの、獅郞がおもっていた何倍もの速さだった。
シェミハザが言う。
『今夜、私以外のグリゴリは重傷を負い、聖騎士、四大騎士、多くの聖職者、祓魔師が青い炎にまかれ・・・亡くなりました。
ユリ・エギン。全てはサタンが貴女を求め、肉体を探し回った結果です。この甚大な被害を鑑み、
貴女には祓魔師として、サタンの執着を断つ為に殉じてもらいたいのです』
驚いたのは本人よりも獅郞の方で、ユリは両の腕の中にいる子供を抱き締める。
『・・・こ、子供達は・・・』
『サタンの執着を呼びかねない存在は、殺すことが最善でしょう。祓魔法を解明するまでは、保育するしかありませんが・・・。
丁重に、連れていきなさい』
『待て!!!』
『!?』
シェミハザ達とユリの間に入ったのは、獅郞だ。
『妨害する気か!?』
『こいつに罪はない!』
『罪の話ではありません。事実の話をしているのです』
確かに正しいのはグリゴリ、シェミハザ達の方かもしれない。自分たちは、大きな間違いをおかしているのかもしれない。
それでも、確信するのが遅れたけど、大事な人をぞんざいに扱われるのに我慢ならなかった。
散々我慢してきた、散々苦労してきた彼女を。
『・・・だめだ、そうはさせるか・・・!!』
ユリの腕をとり、シェミハザに銃を向ける。何をやっているのか判ってる。でも、獅郞の中で、動かずにはいられなかった。
『先生!?』
『・・・ユリ、立てるか。お前を死なせない』
ユリを立たせ、獅郞が銃で脅しながらドアの前まで歩み寄る。
『貴様、反逆罪に値するぞ!!』
何言われようが今は関係ない。ここから脱出出来ればなんだっていい。
ユリに鍵を渡し、別の場所へ。
静寂したその場をあとにするように、燐も二人の後を追った。
(めちゃめちゃ近い・・・!!)
狭い部屋に移動したせいで、燐と二人の距離は目と鼻の先。バレないように慎重に動く。
緊張が溶けたのか、一先ず安心出来たのか、ユリは肩で息をしながら座り込む。
『大丈夫か?』
『うん・・・』
息苦しい呼吸を落ち着かせ、雪の積もった厳しい寒さの中で辺りを見回す。
『ここは・・・?』
『かなり昔に閉鎖された騎士團の出張所だ。近くにイエティの見張り台があって、そこを改造して隠れ家にしてるんだ。
吹雪が弱まったら、移動しよう。秘密の場所だから、しばらくはバレない』
『・・・好きだね~隠れ家・・・』
『う、うるせーな。いいだろ、別に!!』
『ふっ、うふふ』
『?なんだよ』
『・・・なんでもない!』
少し気を緩められたのも束の間。
『あら?』
二人同時に泣き始めたのだ。火を用意してくれた獅郞は、他にも着替えや食べ物を探しに行ってくれた。
数分後、戻ってきた獅郞。
『おかえり』
『・・・何してんだ』
『おっぱい!今、服の中で吸ってるよ・・・!』
『おっぱ、まじか。じゃあ余計にくえ』
『私、この子達の名前考えた』
『ふーん』
『ハデに爆誕してきたこの子は、燐火から"燐"』
(まんま)
『まんまだな』
燐の心の声を発してくれるように、獅郞が言う。
『そして、小さいこの子は雪男から"雪男"・・・』
『なんでだ』
『えっ』
獅郞の呆れに、戸惑うユリ。
『"燐"はまだしも"雪男"って、どっから出てきたんだよ。あーあ、完全にフザケてんな?』
『フザケてないよ!雪男はあったかくて、強い人のことだもん』
『はぁ?そんな事より、全然喰ってねーじゃねぇか。このオレ様がゆずってやってんだぞ?』
『ほんとだね。獅郞、いつもはいじわるなのにね』
『そーだ。まあ、ひとつ貸しだがな』
『ふふ、いじわる』
いつものやり取り。いつもの会話。されど、ユリの笑顔は無理矢理で、顔色も心なしか青白い。
言いようのない不安が押し寄せるが、獅郞は外に視線を向けた。
『あ、吹雪、だいぶ弱まったな。見張り台が見える』
早く。少しでも早く、ユリを安全な場所に移してやりたかった。今いる場所よりも、隠れ家には日常に必要な最低限のものは揃っている。
吹雪が弱まった今のうちに移動しようとユリに言うが、彼女は頷き立ち上がったかとおもうと、よろけた反動で獅郞の背中にぶつかってしまう。
『あ』
『!大丈夫か』
『ごめ・・・少し、立ちくらみ・・・早く行こう』
『・・・・・・・』
顔を上げたユリの表情は、さらに青ざめていた。どうしてやればいいのか、獅郞もわからなくなる。
『やっぱり、やめよう』
『どうして・・・?もう大丈夫だよ、行こう』
いつもの、ユリの優しい笑顔。
『そ、そうだよな』
何故か、いつものように軽くあしらうことが出来ない。踏みとどめられない。
『お前は歩くのに専念しろ』
二人の赤子は、獅郞に抱きかかえられて。
吹雪は思いの外つよかったのか、道には足首が埋まるほど積もっていて歩きにくい。
いつもの道ならば、15分くらいの距離なのに雪が邪魔をする。イエティは昔出現していたが絶滅したらしく、その為先程の出張所も閉鎖されたようだ。
隠れ家につけば、しばらく潜伏できる。様子みながら、次の事も考えられる。
『ごめんね、獅郞を逃亡者にしちゃったね』
一人だったら何も出来ないまま、騎士團の言う事を聞いていたかもしれない。
『フン、むしろせーせーしたぜ。俺はずっと、自由になりたかったからな・・・もっと、早くこうすりゃよかった・・・。
今度こそ、一緒に暮らそう。俺が父親役で、お前が母親役をやるんだ』
いつかユリが言っていた言葉。それが今、獅郞に伝わっている。
『楽しそうだろ』
もっと早く、それが聞きたかった・・・幸せな、言葉。
『うん、素敵・・・』
でも、もう足が動かない。力が、入らない。
『ユリ!!』
ドサリと背後で音を聞いた獅郞は、倒れたユリのそばに寄る。
『あれ、力が抜けちゃった・・・獅郞、おんぶして』
(あ・・・)
どこかで見たことあるやり取り。雪男を探し回ってた時、玲薇とバッタリあって。
あの時も、こうして雪がふっていたっけ。今頃二人は、何をしているのだろう。