第ニ十四話 青い夜
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第一子は威嚇し、身軽な素早い動きで獅郞を翻弄する。突進する度に獅郞はよけるが、第一子の口から放たれる光線に直撃した。
だが、最上級の防御のお陰で痛みは少ない。
『今だ』
体を張ってつくった隙に、部下たちに準備させていたオケアニデス・カルセスが発動。
攻撃中の第一子は、獅郞と共に巨大な水牢の中に閉じこめられた。
自由に動けなくなった第一子の悪魔の心臓に、降魔剣を突き立てる。
(死ね)
第一子が叫び声を上げる。同時に、内側から水牢は爆発し、浄化された。
『ボウヤはねんねしとけゴラァア!!』
心臓を突き立てた結果、グニャリとその心臓は形を変える。
『何だ!?心臓が、剣に・・・』
第一子から心臓は消えた。だが代わりに、降魔剣がドクンドクンと脈を打つ音がする。
すると、獅郞の手から降魔剣が消えた。いつの間にかメフィストの手の中にある。
『そう、この剣は一種の"異次元"ドアでしてね』
柄はゲヘナに通じ、鞘は扉となる。二つ揃う事で魔を封じる事が出来るという。
見ると、暴れていた赤子は大人しくなったかと思うと、人間の赤子のように産声を上げだした。
『・・・人間になったってことか?』
『いいえ。この赤子が人間でもあり、悪魔でもある事実は変わりません』
メフィストに拾われた赤子に、大人しくなった今の内にと獅郞は提案するが、殺したところで心臓が封印されたままならば蘇り続ける。
封印はあくまで封印。現状では半永久的に肉体を拘束し、破壊し続けるしかないという。
『しかし、人間でもあるのです。肉体を破壊し続けられる人間が、どんな人格に育つでしょう。
第二のサタンやルシフェルを、生みたいのですか?』
そのメフィストの問いかけに、皆が押し黙る。
『そうですね。そうならない為には少しでも、母親の腕の中に戻すのがいいでしょう』
散々暴れていた赤子は、メフィストによって母親であるユリの元に帰ってきた。
もう一人の新しい命に、母親としてやっと触れてあげられた。
『・・・フェレス卿、ありがとう・・・!!』
『私に感謝するのは、やめておいた方がいい。新手が来ますよ』
その瞬間だった。
うっと、聖騎士の部下の一人が、獅郞の後ろで声を出す。
『ガッ・・・お、ガアアアァァア!!』
悲鳴を上げたその者は、青い炎に焼かれた。
『青い炎・・・!!心臓は封印したんじゃねーのか!?』
『これは赤子の仕業ではありません』
そうなると、残りは一つ。
『ま、まさか』
獅郞は聖騎士に目を向ける。予想通り、彼は青い炎に耐えもがいていた。だが、それも束の間。
『・・・・・・あ?コレは、モツな・・・』
聖騎士の、目の色が変わった。
『みつけたぞ、ユリィイ!獅郞ォオ!!』
彼は、サタンに負けた。
『は、ハハハァアそぉかぁあ、やっぱりそういうことか、ええ?ユリ・・・このあばずれのウラギリモノめ!!!』
『ごめんね、一緒にいてあげられなくて・・・つらかったね・・・。でも、見て・・・あなたと私の赤ちゃんだよ。
あなた、お父さんになったんだよ』
通常であれば嬉しいことだろう。しかも、双子ともなれば尚更。だが、人間ではない悪魔のサタンに、喜びはない。
『・・・なんだ、その物質。ヒッ、ソレがオレのハラの足しになるのか?』
悲しい現実が、突き刺さりだす。サタンが欲しいのは、ユリだけなのだ。ユリしか受け入れられないのだ。
『オレが欲しいのはお前だ!獅郞ォオ!!!よこせ!!!』
『ッ!』
獅郞の体が痺れ出す。銃を構える手は激しく震え、狙いが定まらない。
『よこせそのカラダ!!』
『うっ』
頭を鷲掴みされサタンの方に引き寄せられるが、獅郞は意識を保ち続ける。
『は、ハハハさすがにスンナリいかないな』
『ほかのヤツラとは違う・・・』
だからあの場所から抜け出せた。だから自分でいられる。だから、ここにいられる。
『遠いムカシをおもいだすぜ・・・ジジィに首カッ切られて、すげェ衝撃だったぜ。何にも覚えちゃいねぇ』
それはサタンが始めてユリに出逢い、青い炎の燐火の時。人間に憑依しようと取り付きが失敗し、火災を起こした日。
『老いぼれジジィとババァに邪魔されて、力が戻るまでにしばらくかかった。ヒヒ、まァ最初っていうのはうまくいかないもんだよな?』
腕の中で眠る赤子を抱きしめ、唖然とした。それではまるで、大好きだった三人を、ユリから全てを奪っていたのは・・・。
『ニコちゃん、オババ・・・オクちゃん』
火災の原因は、自分たちの火の後始末が悪かったからと揶揄されていたが、違っていたのだ。
全ては、サタンから・・・。
『ハハハ!今思えばアレも必要な失敗だった。全ては本物の器に辿り着くため。
オレはお前になりたい。ユリが愛したお前に。お前が羨ましい、妬ましい、悔しい、ユリを取りやがって・・・!!』
『・・・は?』
サタンの言い種に、獅郞は疑問を持つ。ユリが愛していたのはサタンではないのか?
姿形がどうあれ、ユリはサタンに手を焼いていた。それをサタンは受け入れきれていないのか。
『・・・それはテメーだ』
『お前もそうだろ、クククオレとお前は、同じだ』
『あ!?』
『みとめろ。オレたちは、同じだ』
意思を保っていた獅郞だが、身体に青い炎を解き放しとうとうサタンに憑依されてしまった。
『獅郞!!!』
『あ~~ムカつくぜ』
だが、それも一瞬で。
『!?なっ』
獅郞に憑依したままのサタンは、驚愕する。己の体に、首筋に短剣を当てている。
『憑依したはず・・・やめろ!!』
『誰が、誰と同じだ悪魔野郎!!!』
『いやぁあああ!!』
自身の首を切り、ユリの目の前で倒れる。
『獅郞・・・!』
倒れた獅郞の体が起き上がったのは、憑依した状態のサタンだ。
呼吸も、身体もまともに動かせないサタンは、それでもユリに訴える。
『み、見ろ・・ヒヒ。オレ・・・おまえの好きな男になったんだ・・・!どうだ、ウレシィだろう。愛してるおまえのためだ!』
『嬉しくない』
涙は流れ続け、声も震えるユリだが、ハッキリ言葉を向ける。
『あなたはあなただよ。傷の痛みも死ぬ怖さも、独りの寂しさも知ってるでしょ。
なのにどうして人を傷つけるの?知ってるのに』
だが、叫ぶと共にユリの体に異変が起きていた。
『!?』
激しい息切れと動悸、発作的な症状だ。見かねたメフィストが、無理しないようにと声をかけるが。
『返せ!!!』
『きゃあッ!』
『イタイ』
ユリに向けられた攻撃を、メフィストがマントで守る。
『オレは愛したのに、何故返さない!』
『やめて・・・サタン』
『愛を返せ!!!』
『あなたのそれは、愛じゃない!』
サタンが怒りで暴れだす前に、渾身の力で自我を保った獅郞は、再び喉に刃を入れていた。
溢れ出す出血の量は半端ではないのに・・・。
『!?』
『・・・ユリは殺させねぇ・・・。奪うしか能がねぇのか・・・結局、それが悪魔の限界だ!失せろ!!!』
『獅郞!!!』
『大丈夫です』
第三者の声に、ユリは振り返る。
『彼より、貴女の方が危ない。今から私が産褥期を早めます。堪えなさい』
『え』
見慣れない、美しい老婆がそこにいた。彼女の指摘通り、獅郞はすぐ息を吹き返す。
エリクサー実験の実験体だった彼は、常人より回復が早いらしい。けれど、ここまでやってもサタンは祓えていないだろう。
遅かれ早かれ戻ってくるにちがいない。
だが、最上級の防御のお陰で痛みは少ない。
『今だ』
体を張ってつくった隙に、部下たちに準備させていたオケアニデス・カルセスが発動。
攻撃中の第一子は、獅郞と共に巨大な水牢の中に閉じこめられた。
自由に動けなくなった第一子の悪魔の心臓に、降魔剣を突き立てる。
(死ね)
第一子が叫び声を上げる。同時に、内側から水牢は爆発し、浄化された。
『ボウヤはねんねしとけゴラァア!!』
心臓を突き立てた結果、グニャリとその心臓は形を変える。
『何だ!?心臓が、剣に・・・』
第一子から心臓は消えた。だが代わりに、降魔剣がドクンドクンと脈を打つ音がする。
すると、獅郞の手から降魔剣が消えた。いつの間にかメフィストの手の中にある。
『そう、この剣は一種の"異次元"ドアでしてね』
柄はゲヘナに通じ、鞘は扉となる。二つ揃う事で魔を封じる事が出来るという。
見ると、暴れていた赤子は大人しくなったかと思うと、人間の赤子のように産声を上げだした。
『・・・人間になったってことか?』
『いいえ。この赤子が人間でもあり、悪魔でもある事実は変わりません』
メフィストに拾われた赤子に、大人しくなった今の内にと獅郞は提案するが、殺したところで心臓が封印されたままならば蘇り続ける。
封印はあくまで封印。現状では半永久的に肉体を拘束し、破壊し続けるしかないという。
『しかし、人間でもあるのです。肉体を破壊し続けられる人間が、どんな人格に育つでしょう。
第二のサタンやルシフェルを、生みたいのですか?』
そのメフィストの問いかけに、皆が押し黙る。
『そうですね。そうならない為には少しでも、母親の腕の中に戻すのがいいでしょう』
散々暴れていた赤子は、メフィストによって母親であるユリの元に帰ってきた。
もう一人の新しい命に、母親としてやっと触れてあげられた。
『・・・フェレス卿、ありがとう・・・!!』
『私に感謝するのは、やめておいた方がいい。新手が来ますよ』
その瞬間だった。
うっと、聖騎士の部下の一人が、獅郞の後ろで声を出す。
『ガッ・・・お、ガアアアァァア!!』
悲鳴を上げたその者は、青い炎に焼かれた。
『青い炎・・・!!心臓は封印したんじゃねーのか!?』
『これは赤子の仕業ではありません』
そうなると、残りは一つ。
『ま、まさか』
獅郞は聖騎士に目を向ける。予想通り、彼は青い炎に耐えもがいていた。だが、それも束の間。
『・・・・・・あ?コレは、モツな・・・』
聖騎士の、目の色が変わった。
『みつけたぞ、ユリィイ!獅郞ォオ!!』
彼は、サタンに負けた。
『は、ハハハァアそぉかぁあ、やっぱりそういうことか、ええ?ユリ・・・このあばずれのウラギリモノめ!!!』
『ごめんね、一緒にいてあげられなくて・・・つらかったね・・・。でも、見て・・・あなたと私の赤ちゃんだよ。
あなた、お父さんになったんだよ』
通常であれば嬉しいことだろう。しかも、双子ともなれば尚更。だが、人間ではない悪魔のサタンに、喜びはない。
『・・・なんだ、その物質。ヒッ、ソレがオレのハラの足しになるのか?』
悲しい現実が、突き刺さりだす。サタンが欲しいのは、ユリだけなのだ。ユリしか受け入れられないのだ。
『オレが欲しいのはお前だ!獅郞ォオ!!!よこせ!!!』
『ッ!』
獅郞の体が痺れ出す。銃を構える手は激しく震え、狙いが定まらない。
『よこせそのカラダ!!』
『うっ』
頭を鷲掴みされサタンの方に引き寄せられるが、獅郞は意識を保ち続ける。
『は、ハハハさすがにスンナリいかないな』
『ほかのヤツラとは違う・・・』
だからあの場所から抜け出せた。だから自分でいられる。だから、ここにいられる。
『遠いムカシをおもいだすぜ・・・ジジィに首カッ切られて、すげェ衝撃だったぜ。何にも覚えちゃいねぇ』
それはサタンが始めてユリに出逢い、青い炎の燐火の時。人間に憑依しようと取り付きが失敗し、火災を起こした日。
『老いぼれジジィとババァに邪魔されて、力が戻るまでにしばらくかかった。ヒヒ、まァ最初っていうのはうまくいかないもんだよな?』
腕の中で眠る赤子を抱きしめ、唖然とした。それではまるで、大好きだった三人を、ユリから全てを奪っていたのは・・・。
『ニコちゃん、オババ・・・オクちゃん』
火災の原因は、自分たちの火の後始末が悪かったからと揶揄されていたが、違っていたのだ。
全ては、サタンから・・・。
『ハハハ!今思えばアレも必要な失敗だった。全ては本物の器に辿り着くため。
オレはお前になりたい。ユリが愛したお前に。お前が羨ましい、妬ましい、悔しい、ユリを取りやがって・・・!!』
『・・・は?』
サタンの言い種に、獅郞は疑問を持つ。ユリが愛していたのはサタンではないのか?
姿形がどうあれ、ユリはサタンに手を焼いていた。それをサタンは受け入れきれていないのか。
『・・・それはテメーだ』
『お前もそうだろ、クククオレとお前は、同じだ』
『あ!?』
『みとめろ。オレたちは、同じだ』
意思を保っていた獅郞だが、身体に青い炎を解き放しとうとうサタンに憑依されてしまった。
『獅郞!!!』
『あ~~ムカつくぜ』
だが、それも一瞬で。
『!?なっ』
獅郞に憑依したままのサタンは、驚愕する。己の体に、首筋に短剣を当てている。
『憑依したはず・・・やめろ!!』
『誰が、誰と同じだ悪魔野郎!!!』
『いやぁあああ!!』
自身の首を切り、ユリの目の前で倒れる。
『獅郞・・・!』
倒れた獅郞の体が起き上がったのは、憑依した状態のサタンだ。
呼吸も、身体もまともに動かせないサタンは、それでもユリに訴える。
『み、見ろ・・ヒヒ。オレ・・・おまえの好きな男になったんだ・・・!どうだ、ウレシィだろう。愛してるおまえのためだ!』
『嬉しくない』
涙は流れ続け、声も震えるユリだが、ハッキリ言葉を向ける。
『あなたはあなただよ。傷の痛みも死ぬ怖さも、独りの寂しさも知ってるでしょ。
なのにどうして人を傷つけるの?知ってるのに』
だが、叫ぶと共にユリの体に異変が起きていた。
『!?』
激しい息切れと動悸、発作的な症状だ。見かねたメフィストが、無理しないようにと声をかけるが。
『返せ!!!』
『きゃあッ!』
『イタイ』
ユリに向けられた攻撃を、メフィストがマントで守る。
『オレは愛したのに、何故返さない!』
『やめて・・・サタン』
『愛を返せ!!!』
『あなたのそれは、愛じゃない!』
サタンが怒りで暴れだす前に、渾身の力で自我を保った獅郞は、再び喉に刃を入れていた。
溢れ出す出血の量は半端ではないのに・・・。
『!?』
『・・・ユリは殺させねぇ・・・。奪うしか能がねぇのか・・・結局、それが悪魔の限界だ!失せろ!!!』
『獅郞!!!』
『大丈夫です』
第三者の声に、ユリは振り返る。
『彼より、貴女の方が危ない。今から私が産褥期を早めます。堪えなさい』
『え』
見慣れない、美しい老婆がそこにいた。彼女の指摘通り、獅郞はすぐ息を吹き返す。
エリクサー実験の実験体だった彼は、常人より回復が早いらしい。けれど、ここまでやってもサタンは祓えていないだろう。
遅かれ早かれ戻ってくるにちがいない。