第ニ十三話 自分自身
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その頃、しえみは。
亜熱帯植物と高山植物が同じ場所に自生するグリゴリの一、創造皇シェミハザの結晶が鎮座する聖域、
シェミハザの結晶が周辺の大地に多様な生態系を齎す、今はエルと呼ばれ古にはエデン・アヴァロン・桃源郷。
日本ではタカマガハラ、若しくはアマハラと呼ばれた場所にいた。
「アマハラ」
かつて祖母に言われた。
『"アマハラの庭"って、知ってるかい?しえみが大きくなったら探しに行っといで』
「ここが・・・」
ずっと、小さい頃からの夢だった場所。
「こちらがシエミ様の住まわれる斎宮です」
「「「お帰りなさいませ」」」
何人かの使いの人に挨拶される。
(このお屋敷、知ってる気がする。怖い・・・)
「シエミ様を然るべきお姿に」
「畏まりました。シエミ様、こちらへ」
「さぁ、お禊のお手伝いを」
「ええ!?一人で入れます!!」
しえみは否定するも、受け入れる他なさそうで。
「そうは参りません。仕来りでございますので」
中に通されたしえみは着替え終えると、エルで育ったアルテミスを身に纏う。
他は女の人ばかりなのに、ただ一人この男の人を不思議に思う。
「すみません、貴方はどういう方ですか?」
「これは申し遅れました。私はグリゴルセデス長官エレミヤ・ウザイと申します。
"グリゴルセデス"とはグリゴリとその"結晶聖域"を保全管理する組織です」
「エレミヤさん・・・母にはいつ会えますか?」
「お母さまは世界情勢が不安定な今、ご多忙です。貴女に少しでもお手伝いをしていただけるとよいのですが・・・、
儀式作法何か一つでも覚えていらっしゃいますか?」
問い出され考えるが、覚えていない。
「すみません、何も・・・(思い出せない・・・)」
「では、明日は基礎から勉強しましょう」
「はい、頑張ります(何か思い出せそうなのに)」
「フフフ・・・可哀想に」
両肩に手を置かれ、しえみはビクッと肩を震わせる。
「貴女は、お小さい頃と何も変わらない」
「?」
「記憶がないのですから、出来ないのは当たり前です。どうかご安心を。私達が、何もかもして差し上げます」
怖い
沢山の軽食も用意され、皆さんもどうかとしえみが気遣うも、誰も何の反応もない。
(私、一人だ。もしかしたらもう一生みんなに会えない所に来ちゃったんだな)
寂しさと悲しさで、涙が溢れそうになる。
(だめだ!もう心細くなってる。みんなならこんな時すぐ泣いたりしないよ・・・!!)
自分を落ち着かせる為、トイレの中で落ち着こうと案内してもらい閉じこもる。
「う〜〜(雪ちゃんならどうするのかな、燐なら)」
落ち込んでいた顔をあげると、ここにいないはずの燐が、床に大の字になって寝ているではないか。
「ブーッ痛!!」
驚きのあまり吹き出し、しまいにはドアに後頭部をぶつける。
騒ぎをききつけた使いの人が、ドア越しに声をかけた。
「!?シエミ様?どう致しました?」
「な、なんでもありません!(な、なななななんでここに燐が!!??
神木さんは、燐はフェレス卿が監禁してるって・・・この姿、どういうことなんだろう、何かあった・・・!?)」
燐に近寄り、屈んで小さく声をかける。
「燐・・・燐・・・!大丈夫!?怪我してるの・・・?」
「グウ」
返事のかわりに返ってきたのは、酷い寝息。
「スーッンゴ、グウ、スーッ」
「ブフッ目開けてる・・・ふ、フフ・・・なんなの、ククバレちゃう〜〜ッ(顔を見ただけで・・・)
凄いね・・・私、もう元気になっちゃった。すごいな、燐は」
「ンゴ、母ちゃん、ごめん」
フイに呟くように、燐が寝言を言う。
「んにゃ、ジジィ、ごめん」
「・・・・・・・・」
「雪男、玲薇・・・」
「燐」
ごめん、ごめんみんな。俺のせいだ、あれが本当の俺だ。本当の俺は悪いものだと押さえつけられた。
今の俺は16年かけてつくった外面だ!そうだ、炎を思い切り放つのは気持ちいい。ありのままって最高だ。
母ちゃんも親父も、俺のせいで死んだ。みんな俺が元凶だと思ってる。人にやさしくする意味なんて、
そもそもなかったんだ、どーでもいい。弟も玲薇も、俺を憎んで行っちまった!!
「二人のとこに行きたい?」
《あんなやつら、しったことか・・・!!》
「行きたいよね。二人は自分で決めて行ってしまったけど、苦しんでた。助けたかったよね」
《俺も勝手にやってやる》
「私も・・・助けたかった。いっつも肝心な所でやくたたず。でも、こんな私でもみんなの役に立てるかもしれなくて、
私、たくさんたくさん貰ったから返したい。こんな気持ちになれたのも実はね・・・燐と雪ちゃんのお陰なんだよ。
燐と雪ちゃんに会えてなかったら、私きっと今でも人や外が怖いままだった。人も世界も広くて素晴らしいって、
知るきっかけをくれた。私にとって二人は、おひさまなの。一生懸命追いかけるね」
ドンドンドンと激しくドアを叩く音とともに、燐はハッと目を見開く。
「シエミ様!ずい分長くかかっていらっしゃるようですが」
「あ、あの、その、おっ大きいうんこをしています!」
「???大きいうんこ??その大便検めさせていただきます。万が一病気でしたら大事です!」
「えーッ、駄目です!!」
慌ててトイレから飛び出すしえみ。
「う・・・」
燐は寝ぼけたまま寝返りをうってから、むくりと上半身を起こす。
「ん~・・・しえみ・・・?・・・・・・て、何やってんだ俺は!!ウダウダいってる場合じゃねー!!早く過去に戻んねーと!!」
鍵を使い、再び燐は過去に戻る。
「失礼します!」
「あ~~!!!」
しえみを押し退け、強引に使いの人がトイレの中を確認しに来てしまう。
「大便はどこに?」
「え!?」
しえみが振り返ると、先程までいた燐の姿はもうない。
(あれ、燐??幻だった!?)
「・・・お疲れのようですね、しっかり休息を取っていただかねば。明日は忙しくなります」
「(幻でも、元気もらった!!)はい!」
燐の気配を感じたメフィストが、声をかける。
「お帰りなさい。少しは休めましたか?」
「ああ・・・なんかわかんねーけど、元気でた!!休みはもういらねー!」
勢いよく両頬を叩く燐。
「流石奥村くん。安心しましたよ」
「安心・・・俺は、生まれない方がよかった。だからって、すんなり死ぬわけにいかねー。
・・・これからどうするかは、全部見てから決める」
「ははぁ・・・」
元に戻った燐の場所は、いままさにユリは瀕死の状態だった。帝王切開も難しいが放っておけば死んでしまいかねない。
ドクンと、大きく脈打つ気配に、燐は辺りを見回す。
「何だ!?」
「気づきましたか」
ルシフェルの気配でもない。だとすれば他、唯一の気配はサタンのもの。
混乱している人々が走る廊下に出ると、サタンが復活したと言葉がかかる。
警告音が響く中、真っ黒に焦げた身体を、青い炎に纏われたサタンが歩いていた。
『ユリ・・・どこだ・・・どこへいく・・・!!』
憑依体の脳の劣化は進行し、ユリへの思慕は焦がれ妄執(もうしゅう)へと変わっていく。
サタンは、壊れ始めたのだ。
「青い夜が始まる」
亜熱帯植物と高山植物が同じ場所に自生するグリゴリの一、創造皇シェミハザの結晶が鎮座する聖域、
シェミハザの結晶が周辺の大地に多様な生態系を齎す、今はエルと呼ばれ古にはエデン・アヴァロン・桃源郷。
日本ではタカマガハラ、若しくはアマハラと呼ばれた場所にいた。
「アマハラ」
かつて祖母に言われた。
『"アマハラの庭"って、知ってるかい?しえみが大きくなったら探しに行っといで』
「ここが・・・」
ずっと、小さい頃からの夢だった場所。
「こちらがシエミ様の住まわれる斎宮です」
「「「お帰りなさいませ」」」
何人かの使いの人に挨拶される。
(このお屋敷、知ってる気がする。怖い・・・)
「シエミ様を然るべきお姿に」
「畏まりました。シエミ様、こちらへ」
「さぁ、お禊のお手伝いを」
「ええ!?一人で入れます!!」
しえみは否定するも、受け入れる他なさそうで。
「そうは参りません。仕来りでございますので」
中に通されたしえみは着替え終えると、エルで育ったアルテミスを身に纏う。
他は女の人ばかりなのに、ただ一人この男の人を不思議に思う。
「すみません、貴方はどういう方ですか?」
「これは申し遅れました。私はグリゴルセデス長官エレミヤ・ウザイと申します。
"グリゴルセデス"とはグリゴリとその"結晶聖域"を保全管理する組織です」
「エレミヤさん・・・母にはいつ会えますか?」
「お母さまは世界情勢が不安定な今、ご多忙です。貴女に少しでもお手伝いをしていただけるとよいのですが・・・、
儀式作法何か一つでも覚えていらっしゃいますか?」
問い出され考えるが、覚えていない。
「すみません、何も・・・(思い出せない・・・)」
「では、明日は基礎から勉強しましょう」
「はい、頑張ります(何か思い出せそうなのに)」
「フフフ・・・可哀想に」
両肩に手を置かれ、しえみはビクッと肩を震わせる。
「貴女は、お小さい頃と何も変わらない」
「?」
「記憶がないのですから、出来ないのは当たり前です。どうかご安心を。私達が、何もかもして差し上げます」
怖い
沢山の軽食も用意され、皆さんもどうかとしえみが気遣うも、誰も何の反応もない。
(私、一人だ。もしかしたらもう一生みんなに会えない所に来ちゃったんだな)
寂しさと悲しさで、涙が溢れそうになる。
(だめだ!もう心細くなってる。みんなならこんな時すぐ泣いたりしないよ・・・!!)
自分を落ち着かせる為、トイレの中で落ち着こうと案内してもらい閉じこもる。
「う〜〜(雪ちゃんならどうするのかな、燐なら)」
落ち込んでいた顔をあげると、ここにいないはずの燐が、床に大の字になって寝ているではないか。
「ブーッ痛!!」
驚きのあまり吹き出し、しまいにはドアに後頭部をぶつける。
騒ぎをききつけた使いの人が、ドア越しに声をかけた。
「!?シエミ様?どう致しました?」
「な、なんでもありません!(な、なななななんでここに燐が!!??
神木さんは、燐はフェレス卿が監禁してるって・・・この姿、どういうことなんだろう、何かあった・・・!?)」
燐に近寄り、屈んで小さく声をかける。
「燐・・・燐・・・!大丈夫!?怪我してるの・・・?」
「グウ」
返事のかわりに返ってきたのは、酷い寝息。
「スーッンゴ、グウ、スーッ」
「ブフッ目開けてる・・・ふ、フフ・・・なんなの、ククバレちゃう〜〜ッ(顔を見ただけで・・・)
凄いね・・・私、もう元気になっちゃった。すごいな、燐は」
「ンゴ、母ちゃん、ごめん」
フイに呟くように、燐が寝言を言う。
「んにゃ、ジジィ、ごめん」
「・・・・・・・・」
「雪男、玲薇・・・」
「燐」
ごめん、ごめんみんな。俺のせいだ、あれが本当の俺だ。本当の俺は悪いものだと押さえつけられた。
今の俺は16年かけてつくった外面だ!そうだ、炎を思い切り放つのは気持ちいい。ありのままって最高だ。
母ちゃんも親父も、俺のせいで死んだ。みんな俺が元凶だと思ってる。人にやさしくする意味なんて、
そもそもなかったんだ、どーでもいい。弟も玲薇も、俺を憎んで行っちまった!!
「二人のとこに行きたい?」
《あんなやつら、しったことか・・・!!》
「行きたいよね。二人は自分で決めて行ってしまったけど、苦しんでた。助けたかったよね」
《俺も勝手にやってやる》
「私も・・・助けたかった。いっつも肝心な所でやくたたず。でも、こんな私でもみんなの役に立てるかもしれなくて、
私、たくさんたくさん貰ったから返したい。こんな気持ちになれたのも実はね・・・燐と雪ちゃんのお陰なんだよ。
燐と雪ちゃんに会えてなかったら、私きっと今でも人や外が怖いままだった。人も世界も広くて素晴らしいって、
知るきっかけをくれた。私にとって二人は、おひさまなの。一生懸命追いかけるね」
ドンドンドンと激しくドアを叩く音とともに、燐はハッと目を見開く。
「シエミ様!ずい分長くかかっていらっしゃるようですが」
「あ、あの、その、おっ大きいうんこをしています!」
「???大きいうんこ??その大便検めさせていただきます。万が一病気でしたら大事です!」
「えーッ、駄目です!!」
慌ててトイレから飛び出すしえみ。
「う・・・」
燐は寝ぼけたまま寝返りをうってから、むくりと上半身を起こす。
「ん~・・・しえみ・・・?・・・・・・て、何やってんだ俺は!!ウダウダいってる場合じゃねー!!早く過去に戻んねーと!!」
鍵を使い、再び燐は過去に戻る。
「失礼します!」
「あ~~!!!」
しえみを押し退け、強引に使いの人がトイレの中を確認しに来てしまう。
「大便はどこに?」
「え!?」
しえみが振り返ると、先程までいた燐の姿はもうない。
(あれ、燐??幻だった!?)
「・・・お疲れのようですね、しっかり休息を取っていただかねば。明日は忙しくなります」
「(幻でも、元気もらった!!)はい!」
燐の気配を感じたメフィストが、声をかける。
「お帰りなさい。少しは休めましたか?」
「ああ・・・なんかわかんねーけど、元気でた!!休みはもういらねー!」
勢いよく両頬を叩く燐。
「流石奥村くん。安心しましたよ」
「安心・・・俺は、生まれない方がよかった。だからって、すんなり死ぬわけにいかねー。
・・・これからどうするかは、全部見てから決める」
「ははぁ・・・」
元に戻った燐の場所は、いままさにユリは瀕死の状態だった。帝王切開も難しいが放っておけば死んでしまいかねない。
ドクンと、大きく脈打つ気配に、燐は辺りを見回す。
「何だ!?」
「気づきましたか」
ルシフェルの気配でもない。だとすれば他、唯一の気配はサタンのもの。
混乱している人々が走る廊下に出ると、サタンが復活したと言葉がかかる。
警告音が響く中、真っ黒に焦げた身体を、青い炎に纏われたサタンが歩いていた。
『ユリ・・・どこだ・・・どこへいく・・・!!』
憑依体の脳の劣化は進行し、ユリへの思慕は焦がれ妄執(もうしゅう)へと変わっていく。
サタンは、壊れ始めたのだ。
「青い夜が始まる」