第ニ十三話 自分自身
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「キタ!!!」
ゴロゴロ転がっていたライトニングが、飛び上がるように起き上がり、近くにいた出雲は驚き肩を震わせる。
「ぼくの使い魔が召喚された!これで位置が特定できる!」
「え!?」
「北極圏、上空だ。イルミナティが高いステルス技術を持っていた理由が判ったね」
「雲の上に要塞があったやなんて・・・!」
「文字通り、雲隠れしていたという訳か」
オセオラがスマホを持ったまま、ライトニングがアーサーに頼みを入れる。
「ぼくら用に、多用途ヘリ一機と、グリゴリには支援国への空軍出動要請をお願いしたい」
「判った。オレも聖天使團と共に出動する!」
「駄目だ。君は空軍が動かせた時の司令塔になる。團だけくれ」
「・・・・・・・判った」
「雲は晴れた。決戦だ!」
雪男が悪魔を召喚したことにより、実験に使われていたシステムが狂い始める。
「ッハハハ。本当に僕が仲間になると思ってたのか?くれるものを貰ったら、慎重に謀反の計画でも立てるたつもりだったんだ。
だが、思いもよらない"武器"を手に入れたんでね。ヴァユ!インドラ!徹底的に船を破壊しろ、僕に構うな!」
《変わった子だね。そんな事したら自分が危ういだろうに》
「フン。どうせ僕は死ねない。万が一殺せるなら、どうぞ殺してくれ」
ルシフェルと再び視線を合わせると、身体が裂けるような激しい痛みを伴う。
「ッ!う、あ・・・」
見えない重力の力が雪男を抑え込もうとしている。
「雪男!やめて!お願い!」
雪男に向け、視線をそらさないルシフェルに訴えかける。力の影響か、玲薇自身の体も熱をもつ。
周りにも影響を及ぼすルシフェルの力に構わず、苦しむ雪男の体にしがみつく。自分の力で、彼を守れないだろうかと。
「総帥!!」
だが、慌ててルシフェルを止めに入ったのは、誉だ。
「おやめ下さい!!奴にはサタンの加護が・・・!!」
だが、我を忘れているのだろうか、ルシフェルは止まらない。そんなルシフェルに、誉は頬を引っぱたく。
「自らドミナスリミニスを壊すおつもりか!」
攻撃されていた力はなくなり、ふと身体が軽くなる。
「「!」」
「ガッ、カハッ」
左目から溢れる青い炎を抑えながらひざまつく雪男。
「雪男、大丈夫・・・?」
遠のきそうだった意識を取り戻し、雪男を支えると、彼の手は探るように玲薇の腕を掴む。
「雪男」
「・・・ハハハ、やっぱり殺せないか、残念だ。玲薇、一緒にきてくれる?」
ルシフェルは力を使ったことで後をつけてくる気配はない。
「あんなとこに飛び込むなんて、どうかしてるよ」
技を食らっているところに。彼女自身の力があるといえど危なっかしい。
雪男に手を引かれながら走ってついていく玲薇ははにかむ。
「そりゃあ、心配だもん・・・雪男はいつも、一人でどこかに行っちゃうから」
「・・・玲薇に心配してもらえるのは、悪い気しないけど」
「もー・・・」
ふと雪男は、足を止めた。彼の背中にぶつかる前になんとか止まる。
「・・・雪男?」
首をかしげると、雪男は振り返り視線を合わせてきた。
「・・・玲薇を実験体にさせるつもりはないし、玲薇が兄さんを好きな気持ちも理解してる」
「っ・・・・・」
彼の真剣な表情に、何も言い返せない。
「これから僕がやろうとしてることに、二人は理解出来ないかもしれない。それでも一つだけお願いしたいことがある」
「なに?」
「もう一度最期に、ちゃんとしたキスを君に贈らせて。僕は君がずっと好きだった」
あのままのキスの終わり方は、心残りだ。本当に、これで最期。
何か言い返さないとなのに、時が止まったように目の前が、頭の中が真っ白になる。
雪男は何をいってるの、この言いようのない不安は、心のモヤモヤはなんだ。
何故だかもう雪男と会えない気がして押しつぶされる。
「な、なに言ってるの・・・?またいなくなっちゃうの・・・?」
ずっとずっと、三人一緒だと思ってた。当たり前だと思ってた。
「私が燐に告白したから・・・?怒ってるの・・・?私が迷うから、ずっと黙ってたの・・・?」
泣いたらダメ。泣くな。泣いたら困らせるだけなのはもうとっくに知っているのに。
「最期って、なに・・・?」
雪男は優しく、微笑み返す。
「ありがとう。ずっと兄さんと仲良くしてね」
否定しない身体を寄せ合って、優しいキスを贈る。彼女はそのまま受け入れてくれた。
言葉も何もいらない。騒音は掻き消され、二人だけの穏やかな時間が過ぎていく。
どうして兄より早く告白できなかったのか、いままであんなずるい言い方しかできなかったのか。
窮地に立ってるいま、やっと素直な気持ちで伝えられた好きとさよなら。
君は殺させない。悪魔側の思いのまま動かさない。僕がそれを阻止してやる。
兄さんはなにも知らなくていい。知らないでいてくれた方がきっと、玲薇の気は晴れる。
長いようで短いキスを終え、二人の視線が交じり合う。
玲薇の瞳には、流すまいと堪えている涙が溢れていた。
少し困ったように腕をひろげれば、彼女は抵抗なく身を埋めてくれる。
「ありがとう、大好きだよ」
「わ、私も・・・!」
"大好き"という言葉は、雪男の人差し指に消された。
「その言葉を、僕には言わないで。玲薇はリニュウに乗って空を飛べる。ここでお別れだ」
「嫌だ!雪男も帰るのよ、一緒に!」
「ここから先は危険なんだ」
「だったら尚更一人にはさせないっ」
珍しくしがみついてくる彼女に、小さなため息が出てしまう。きっと、何を言っても聞いてくれないだろう。
「・・・助けてあげること、出来ないかもしれない」
「一緒に死のうって。最期まで皆一緒がいいの」
「はぁ・・・兄さんより頑固にならないでよ」
「わからず屋な雪男だからだよ」
「まぁいいや。知らないよ、どうなっても」
「・・・・・う、うん・・・」
「まったく・・・(君はどこまでも気が気じゃない)」
折れた降魔剣をもった子猫丸は無事、勝呂の父親である達磨の元に辿り着き打ち直しが可能か聞いていた。
だが、折れた刀は打ち直せば新しい刀となってしまうため、もとに戻すのは難しいと唸る達磨。
そもそも降魔剣の真髄は刀身ではなく、柄と鞘。拵が無事ならば元に戻せるかもしれないが、
一先ず降魔剣の拵はまだ燐の手元にあった方が良いと判断し、戻ろうとした子猫丸の前にメフィストが現れた。
「フェ、フェレス卿!?」
「残念ですが今、ファウスト邸に奥村くんはいませんよ。長くて短い旅に出てしまいました」
「旅!?えっ、どこに!?大丈夫なんですか?」
メフィストが指し示すのは、タンスの中。どうやら鍵で直接燐がいる場所へ導いてくれるようだ。
「奥村くんに会いたいならこちらへ。もしかしたら近道かもしれません」
「あ、ありがとうございます・・・!」
子猫丸が姿を消し、お茶を啜るメフィストに、達磨が聞く。
「フェレス卿」
「お久しぶりです、和尚」
「勝算は?」
「判りません。毎回そうなんですよ」
ゴロゴロ転がっていたライトニングが、飛び上がるように起き上がり、近くにいた出雲は驚き肩を震わせる。
「ぼくの使い魔が召喚された!これで位置が特定できる!」
「え!?」
「北極圏、上空だ。イルミナティが高いステルス技術を持っていた理由が判ったね」
「雲の上に要塞があったやなんて・・・!」
「文字通り、雲隠れしていたという訳か」
オセオラがスマホを持ったまま、ライトニングがアーサーに頼みを入れる。
「ぼくら用に、多用途ヘリ一機と、グリゴリには支援国への空軍出動要請をお願いしたい」
「判った。オレも聖天使團と共に出動する!」
「駄目だ。君は空軍が動かせた時の司令塔になる。團だけくれ」
「・・・・・・・判った」
「雲は晴れた。決戦だ!」
雪男が悪魔を召喚したことにより、実験に使われていたシステムが狂い始める。
「ッハハハ。本当に僕が仲間になると思ってたのか?くれるものを貰ったら、慎重に謀反の計画でも立てるたつもりだったんだ。
だが、思いもよらない"武器"を手に入れたんでね。ヴァユ!インドラ!徹底的に船を破壊しろ、僕に構うな!」
《変わった子だね。そんな事したら自分が危ういだろうに》
「フン。どうせ僕は死ねない。万が一殺せるなら、どうぞ殺してくれ」
ルシフェルと再び視線を合わせると、身体が裂けるような激しい痛みを伴う。
「ッ!う、あ・・・」
見えない重力の力が雪男を抑え込もうとしている。
「雪男!やめて!お願い!」
雪男に向け、視線をそらさないルシフェルに訴えかける。力の影響か、玲薇自身の体も熱をもつ。
周りにも影響を及ぼすルシフェルの力に構わず、苦しむ雪男の体にしがみつく。自分の力で、彼を守れないだろうかと。
「総帥!!」
だが、慌ててルシフェルを止めに入ったのは、誉だ。
「おやめ下さい!!奴にはサタンの加護が・・・!!」
だが、我を忘れているのだろうか、ルシフェルは止まらない。そんなルシフェルに、誉は頬を引っぱたく。
「自らドミナスリミニスを壊すおつもりか!」
攻撃されていた力はなくなり、ふと身体が軽くなる。
「「!」」
「ガッ、カハッ」
左目から溢れる青い炎を抑えながらひざまつく雪男。
「雪男、大丈夫・・・?」
遠のきそうだった意識を取り戻し、雪男を支えると、彼の手は探るように玲薇の腕を掴む。
「雪男」
「・・・ハハハ、やっぱり殺せないか、残念だ。玲薇、一緒にきてくれる?」
ルシフェルは力を使ったことで後をつけてくる気配はない。
「あんなとこに飛び込むなんて、どうかしてるよ」
技を食らっているところに。彼女自身の力があるといえど危なっかしい。
雪男に手を引かれながら走ってついていく玲薇ははにかむ。
「そりゃあ、心配だもん・・・雪男はいつも、一人でどこかに行っちゃうから」
「・・・玲薇に心配してもらえるのは、悪い気しないけど」
「もー・・・」
ふと雪男は、足を止めた。彼の背中にぶつかる前になんとか止まる。
「・・・雪男?」
首をかしげると、雪男は振り返り視線を合わせてきた。
「・・・玲薇を実験体にさせるつもりはないし、玲薇が兄さんを好きな気持ちも理解してる」
「っ・・・・・」
彼の真剣な表情に、何も言い返せない。
「これから僕がやろうとしてることに、二人は理解出来ないかもしれない。それでも一つだけお願いしたいことがある」
「なに?」
「もう一度最期に、ちゃんとしたキスを君に贈らせて。僕は君がずっと好きだった」
あのままのキスの終わり方は、心残りだ。本当に、これで最期。
何か言い返さないとなのに、時が止まったように目の前が、頭の中が真っ白になる。
雪男は何をいってるの、この言いようのない不安は、心のモヤモヤはなんだ。
何故だかもう雪男と会えない気がして押しつぶされる。
「な、なに言ってるの・・・?またいなくなっちゃうの・・・?」
ずっとずっと、三人一緒だと思ってた。当たり前だと思ってた。
「私が燐に告白したから・・・?怒ってるの・・・?私が迷うから、ずっと黙ってたの・・・?」
泣いたらダメ。泣くな。泣いたら困らせるだけなのはもうとっくに知っているのに。
「最期って、なに・・・?」
雪男は優しく、微笑み返す。
「ありがとう。ずっと兄さんと仲良くしてね」
否定しない身体を寄せ合って、優しいキスを贈る。彼女はそのまま受け入れてくれた。
言葉も何もいらない。騒音は掻き消され、二人だけの穏やかな時間が過ぎていく。
どうして兄より早く告白できなかったのか、いままであんなずるい言い方しかできなかったのか。
窮地に立ってるいま、やっと素直な気持ちで伝えられた好きとさよなら。
君は殺させない。悪魔側の思いのまま動かさない。僕がそれを阻止してやる。
兄さんはなにも知らなくていい。知らないでいてくれた方がきっと、玲薇の気は晴れる。
長いようで短いキスを終え、二人の視線が交じり合う。
玲薇の瞳には、流すまいと堪えている涙が溢れていた。
少し困ったように腕をひろげれば、彼女は抵抗なく身を埋めてくれる。
「ありがとう、大好きだよ」
「わ、私も・・・!」
"大好き"という言葉は、雪男の人差し指に消された。
「その言葉を、僕には言わないで。玲薇はリニュウに乗って空を飛べる。ここでお別れだ」
「嫌だ!雪男も帰るのよ、一緒に!」
「ここから先は危険なんだ」
「だったら尚更一人にはさせないっ」
珍しくしがみついてくる彼女に、小さなため息が出てしまう。きっと、何を言っても聞いてくれないだろう。
「・・・助けてあげること、出来ないかもしれない」
「一緒に死のうって。最期まで皆一緒がいいの」
「はぁ・・・兄さんより頑固にならないでよ」
「わからず屋な雪男だからだよ」
「まぁいいや。知らないよ、どうなっても」
「・・・・・う、うん・・・」
「まったく・・・(君はどこまでも気が気じゃない)」
折れた降魔剣をもった子猫丸は無事、勝呂の父親である達磨の元に辿り着き打ち直しが可能か聞いていた。
だが、折れた刀は打ち直せば新しい刀となってしまうため、もとに戻すのは難しいと唸る達磨。
そもそも降魔剣の真髄は刀身ではなく、柄と鞘。拵が無事ならば元に戻せるかもしれないが、
一先ず降魔剣の拵はまだ燐の手元にあった方が良いと判断し、戻ろうとした子猫丸の前にメフィストが現れた。
「フェ、フェレス卿!?」
「残念ですが今、ファウスト邸に奥村くんはいませんよ。長くて短い旅に出てしまいました」
「旅!?えっ、どこに!?大丈夫なんですか?」
メフィストが指し示すのは、タンスの中。どうやら鍵で直接燐がいる場所へ導いてくれるようだ。
「奥村くんに会いたいならこちらへ。もしかしたら近道かもしれません」
「あ、ありがとうございます・・・!」
子猫丸が姿を消し、お茶を啜るメフィストに、達磨が聞く。
「フェレス卿」
「お久しぶりです、和尚」
「勝算は?」
「判りません。毎回そうなんですよ」