第ニ十三話 自分自身
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階段を登りきると、繋がった部屋の中には沢山のクローンがある。
「これって・・・ヒ!?なに・・・」
出雲の近くのクローンが、液体につけられた容器の中がボコボコと泡立ちされている。
「た、多分クローンや。アザゼル群とルシフェル群の」
「いいや、よく見て」
そう勝呂の言葉を否定するのはライトニングだ。
「物凄いスピードで細胞が増殖していく。人の胎内で造られ、兄弟レベルの個体差があった過去のクローンと違う」
「この培養液は恐らく、エリクサーを用いた特殊な培養基だ。エリクサー研究の果てに、ついに完成させていたか。
これはルシフェルやサタンの、完全な複製体」
ネイガウスのサタン発言に、出雲や勝呂は混乱する。
「サタン???ちょ、待ってよ。まだ理解が・・・。えーと、四大騎士のドラグレスクが裏切り者っていうのは判ったけど・・・まさか」
急ぎ足で前へ進むライトニングを、一行が追いかける。その前に、空っぽの水槽が一つ。
ルーシーが勝呂の頭の上から顔を前に出し、辺りを見回した。
「床が濡れてるね」
水槽の異変に、出雲が首をかしげた。
「この空っぽの水槽・・・他と違うわ。まるでついさっき、慌てて中身を運び出したような・・・」
「ライトニング・・・」
勝呂が呼びかけたライトニングは、呆然と立ち尽くしている。
「ドラグレスクは、馘首(くびきり)ののろいを他に逸らして"鈴"を外したらしい」
ライトニングの視線を辿るよう足元に目を向けると、そこには血を大量に流している腕が残されていた。
「見事に逃げおおせた、完敗だ・・・クソ!!!」
ドラグレスクが生き残ったとの連絡は、誉からルシフェルの耳に届いていた。
「総帥、ドラグレスク博士は無事、ルーマニアを出発したと報告が」
「何よりです」
「・・・・・恐れながら、奥村雪男と風美夜玲薇を実験棟に入れてよろしいのですか?」
「運命の日は、目前。その成り行きを彼に見てもらうのは、有意義かもしれない。
それに、彼女の方は我々にとって唯一無二の存在です。実験は、彼女にとって必要なのです」
ドラグレスクが裏切り者だったという事実を証明する為、オセオラとルーシーはスマホでアーサーと連絡をとっている。
だが、ドラグレスクが逃げた為に行方を追わなければならないが、ライトニングの"鈴"が外れた今、
彼らにはもうドラグレスクを追う手段はなくなってしまった。
やる気のなくなったライトニングは床に寝転がり、勝呂が他に方法はないか問いかけるが、
待つ他に何もないようだ。だが、待つといっても何を待つのか、勝呂には判らない。
ヴィジャグローブを弄びながら、ライトニングは念仏でも唱えるかのようにウダウダし始めた。
「あ~~カミサマホトケサマ、コックリサンコックリサン、ドウゾおいでください」
緊張感もないライトニングの姿に、出雲は呆れた。
「アンタ、この人の弟子なのよね」
「・・・・・・・」
勝呂に、返す言葉はない。
実験棟では、設備が整ったとのアナウンスが告げられている。
「幸せだ。生まれてからずっと、取るに足らなかったこの私が、まさかこんな偉業の一部となる日が来ようとは。
死んだ父さんと兄さん達にも、見せてあげたかったなぁ」
感動で涙を流す藤堂。実験の時間開始を告げられた彼は、最後ルシフェルと言葉を交わす。
「ありがとう、セイバー諸君、さようなら」
藤堂を含め他、数名も頭を下げた。藤堂の後ろにいる彼らも、実験体の人達なのだろう。
「は。新世界創造、必ず成し遂げられると信じております。あとはお前が見届けておくれ、誉」
「・・・私は、総帥を守護するのみです」
「相変わらずつまらない子だ」
二人の会話に、雪男は首をかしげ、志摩が察したよう言った。
「ああ~~あの二人、父娘(おやこ)らしいっすよ」
「え・・・」
驚く雪男の視線に、藤堂と目が合う。何か訴えるような藤堂の視線に、雪男は言葉を詰まらせた。
実験の運転準備も全行程完了し、とうとう実験が始まる。
ルシフェルの合図とともに、藤堂が入っているカプセルに向け、バーナーが点火された。
カプセルの中で激しく燃えるその姿に、玲薇は背筋に冷たいものを感じる。
(これが、実験・・・)
「あの火力でまだ生きてる・・・"選ばれし者(セイバー)"とは、一体何なんだ!?」
雪男の問いに答えたのは、実験の操縦を任されているエギュンが答える。
「彼らは、エリクサー実験で肉体強化に成功した実験体に、悪魔を強制憑依させて理性を保てた人の中から、
さらに究極の難行を積み、生き残った人達なんです!」
「難行?」
「はい!再生能力の高い悪魔から順に、ほぼ全種族の悪魔に強制憑依を繰り返し、最終的に究極の再生能力を持つ、
"ウロボロス""フェニックス""ヒュドラ"の憑依体にまで登りつめた、まさに"セイバー"の中の"セイバー"!!
セイバーの細胞は、あらゆる悪魔の憑依に耐性があって、限りなく長大な細胞分裂可能回数"テロメア"を持っています。
この乾留炉でセイバーを悪魔と分離して、徹底的に炭化させれば・・・」
藤堂と繋がっていた悪魔、カルラに見覚えのある志摩は目を見開く。
焼かれたカルラの姿はあっという間にいなくなり、実験は順調に進む。
「・・・貴女に一番見てもらいたかったものです」
「!」
静かにルシフェルが隣に立ち、玲薇は肩を震わせる。
「サマエルのお陰で、貴女の細胞は生まれもって複数の悪魔の血が入っています。貴女は、私達の要です」
「・・・・・・・・・・」
そういう事か。この実験が失敗したとしても、サタンの血に耐え、ルシフェルの血に耐え、
メフィストの血に耐え、他の上級悪魔の血が入っている自分ならば、いくらでもすきにできると。
だからルシフェルはあの時必要だと、自分の過去を知らなすぎると話にきたのだ。
こんな最初から実験に成功して生かされていた人間を目に入れないわけがない。ましてメフィストらと同等の彼らに。
どうして人間の姿で生まれ育ったのだろう。
どうして自分の血は、悪魔の血なのだろう。
自分が人間なのか悪魔なのか判らない。
「あ・・・!」
驚くエギュンの声に我に返る。
「思ったより数が少ないです。二人分も創れないかも・・・」
「構いません。父上の分さえあればいい」
「兄様・・・」
「運命の時はすぐそこです。今暫くのご辛抱を・・・父上」
「!!?」
ドクンと、ルシフェルと視線があった瞬間、雪男の左目が激しく脈を打つ。
(なんだ・・・急に・・・!)
目の奥から聞こえる、不気味な声がザワつく。
「・・・父上?・・・そういえば、何故僕を仲間に引き入れたか明確な答えを聞いてなかったな」
「貴方なら、とうに判っているのでは?貴方は大切な父上との窓口。
運命の時には必ず、側にいて欲しい」
やはりコイツらが欲しいのは雪男や玲薇自身ではない。
「・・・・・・・・・」
ならばもう迷う必要はない。
「知っているか?去年僕は、ヴァチカン本部の上級対策会議に召喚された」
「うん?」
「内容は、今となっては何て事はない。イルミナティへの対策を話し合っていた。
僕はそこで、イルミナティの構成員と疑われる藤堂に関して質問を受けた。
最後には、会議内容を一切他言しないと約束させられ、モリナスの契約書にサインした」
雪男の左手首から、血文字が浮かび上がり、彼の周りに風が集まっていく。
「!」
吹き付ける激しい風を浮け、雪男は玲薇を庇うようにルシフェルから引き離す。
「ローカパーラの東と北西の守護天神、ヴァユとインドラ・・・!!」
二体の巨大な悪魔が召喚された。氣の王アザゼルの眷属でも、最上級に分類される悪魔だ。
「モリナスの契約書は本来、契約者が約束を破った場合悪魔が自動召喚され、主人の命令を行使する単純なシステム。
命令が「契約者を殺せ」か「契約者を守れ」かは、主人の采配によるものだ」
雪男の言葉に頷くのは、ヴァユ。
《まぁね。私達はルーインが任を解くまで、あんたの使い魔になる契約だよ》
「感謝する。では、この艦船を破壊しろ!!」
《じゃあ、小手調べにちょっとだけ♡魅せてやるよ!!》
「これって・・・ヒ!?なに・・・」
出雲の近くのクローンが、液体につけられた容器の中がボコボコと泡立ちされている。
「た、多分クローンや。アザゼル群とルシフェル群の」
「いいや、よく見て」
そう勝呂の言葉を否定するのはライトニングだ。
「物凄いスピードで細胞が増殖していく。人の胎内で造られ、兄弟レベルの個体差があった過去のクローンと違う」
「この培養液は恐らく、エリクサーを用いた特殊な培養基だ。エリクサー研究の果てに、ついに完成させていたか。
これはルシフェルやサタンの、完全な複製体」
ネイガウスのサタン発言に、出雲や勝呂は混乱する。
「サタン???ちょ、待ってよ。まだ理解が・・・。えーと、四大騎士のドラグレスクが裏切り者っていうのは判ったけど・・・まさか」
急ぎ足で前へ進むライトニングを、一行が追いかける。その前に、空っぽの水槽が一つ。
ルーシーが勝呂の頭の上から顔を前に出し、辺りを見回した。
「床が濡れてるね」
水槽の異変に、出雲が首をかしげた。
「この空っぽの水槽・・・他と違うわ。まるでついさっき、慌てて中身を運び出したような・・・」
「ライトニング・・・」
勝呂が呼びかけたライトニングは、呆然と立ち尽くしている。
「ドラグレスクは、馘首(くびきり)ののろいを他に逸らして"鈴"を外したらしい」
ライトニングの視線を辿るよう足元に目を向けると、そこには血を大量に流している腕が残されていた。
「見事に逃げおおせた、完敗だ・・・クソ!!!」
ドラグレスクが生き残ったとの連絡は、誉からルシフェルの耳に届いていた。
「総帥、ドラグレスク博士は無事、ルーマニアを出発したと報告が」
「何よりです」
「・・・・・恐れながら、奥村雪男と風美夜玲薇を実験棟に入れてよろしいのですか?」
「運命の日は、目前。その成り行きを彼に見てもらうのは、有意義かもしれない。
それに、彼女の方は我々にとって唯一無二の存在です。実験は、彼女にとって必要なのです」
ドラグレスクが裏切り者だったという事実を証明する為、オセオラとルーシーはスマホでアーサーと連絡をとっている。
だが、ドラグレスクが逃げた為に行方を追わなければならないが、ライトニングの"鈴"が外れた今、
彼らにはもうドラグレスクを追う手段はなくなってしまった。
やる気のなくなったライトニングは床に寝転がり、勝呂が他に方法はないか問いかけるが、
待つ他に何もないようだ。だが、待つといっても何を待つのか、勝呂には判らない。
ヴィジャグローブを弄びながら、ライトニングは念仏でも唱えるかのようにウダウダし始めた。
「あ~~カミサマホトケサマ、コックリサンコックリサン、ドウゾおいでください」
緊張感もないライトニングの姿に、出雲は呆れた。
「アンタ、この人の弟子なのよね」
「・・・・・・・」
勝呂に、返す言葉はない。
実験棟では、設備が整ったとのアナウンスが告げられている。
「幸せだ。生まれてからずっと、取るに足らなかったこの私が、まさかこんな偉業の一部となる日が来ようとは。
死んだ父さんと兄さん達にも、見せてあげたかったなぁ」
感動で涙を流す藤堂。実験の時間開始を告げられた彼は、最後ルシフェルと言葉を交わす。
「ありがとう、セイバー諸君、さようなら」
藤堂を含め他、数名も頭を下げた。藤堂の後ろにいる彼らも、実験体の人達なのだろう。
「は。新世界創造、必ず成し遂げられると信じております。あとはお前が見届けておくれ、誉」
「・・・私は、総帥を守護するのみです」
「相変わらずつまらない子だ」
二人の会話に、雪男は首をかしげ、志摩が察したよう言った。
「ああ~~あの二人、父娘(おやこ)らしいっすよ」
「え・・・」
驚く雪男の視線に、藤堂と目が合う。何か訴えるような藤堂の視線に、雪男は言葉を詰まらせた。
実験の運転準備も全行程完了し、とうとう実験が始まる。
ルシフェルの合図とともに、藤堂が入っているカプセルに向け、バーナーが点火された。
カプセルの中で激しく燃えるその姿に、玲薇は背筋に冷たいものを感じる。
(これが、実験・・・)
「あの火力でまだ生きてる・・・"選ばれし者(セイバー)"とは、一体何なんだ!?」
雪男の問いに答えたのは、実験の操縦を任されているエギュンが答える。
「彼らは、エリクサー実験で肉体強化に成功した実験体に、悪魔を強制憑依させて理性を保てた人の中から、
さらに究極の難行を積み、生き残った人達なんです!」
「難行?」
「はい!再生能力の高い悪魔から順に、ほぼ全種族の悪魔に強制憑依を繰り返し、最終的に究極の再生能力を持つ、
"ウロボロス""フェニックス""ヒュドラ"の憑依体にまで登りつめた、まさに"セイバー"の中の"セイバー"!!
セイバーの細胞は、あらゆる悪魔の憑依に耐性があって、限りなく長大な細胞分裂可能回数"テロメア"を持っています。
この乾留炉でセイバーを悪魔と分離して、徹底的に炭化させれば・・・」
藤堂と繋がっていた悪魔、カルラに見覚えのある志摩は目を見開く。
焼かれたカルラの姿はあっという間にいなくなり、実験は順調に進む。
「・・・貴女に一番見てもらいたかったものです」
「!」
静かにルシフェルが隣に立ち、玲薇は肩を震わせる。
「サマエルのお陰で、貴女の細胞は生まれもって複数の悪魔の血が入っています。貴女は、私達の要です」
「・・・・・・・・・・」
そういう事か。この実験が失敗したとしても、サタンの血に耐え、ルシフェルの血に耐え、
メフィストの血に耐え、他の上級悪魔の血が入っている自分ならば、いくらでもすきにできると。
だからルシフェルはあの時必要だと、自分の過去を知らなすぎると話にきたのだ。
こんな最初から実験に成功して生かされていた人間を目に入れないわけがない。ましてメフィストらと同等の彼らに。
どうして人間の姿で生まれ育ったのだろう。
どうして自分の血は、悪魔の血なのだろう。
自分が人間なのか悪魔なのか判らない。
「あ・・・!」
驚くエギュンの声に我に返る。
「思ったより数が少ないです。二人分も創れないかも・・・」
「構いません。父上の分さえあればいい」
「兄様・・・」
「運命の時はすぐそこです。今暫くのご辛抱を・・・父上」
「!!?」
ドクンと、ルシフェルと視線があった瞬間、雪男の左目が激しく脈を打つ。
(なんだ・・・急に・・・!)
目の奥から聞こえる、不気味な声がザワつく。
「・・・父上?・・・そういえば、何故僕を仲間に引き入れたか明確な答えを聞いてなかったな」
「貴方なら、とうに判っているのでは?貴方は大切な父上との窓口。
運命の時には必ず、側にいて欲しい」
やはりコイツらが欲しいのは雪男や玲薇自身ではない。
「・・・・・・・・・」
ならばもう迷う必要はない。
「知っているか?去年僕は、ヴァチカン本部の上級対策会議に召喚された」
「うん?」
「内容は、今となっては何て事はない。イルミナティへの対策を話し合っていた。
僕はそこで、イルミナティの構成員と疑われる藤堂に関して質問を受けた。
最後には、会議内容を一切他言しないと約束させられ、モリナスの契約書にサインした」
雪男の左手首から、血文字が浮かび上がり、彼の周りに風が集まっていく。
「!」
吹き付ける激しい風を浮け、雪男は玲薇を庇うようにルシフェルから引き離す。
「ローカパーラの東と北西の守護天神、ヴァユとインドラ・・・!!」
二体の巨大な悪魔が召喚された。氣の王アザゼルの眷属でも、最上級に分類される悪魔だ。
「モリナスの契約書は本来、契約者が約束を破った場合悪魔が自動召喚され、主人の命令を行使する単純なシステム。
命令が「契約者を殺せ」か「契約者を守れ」かは、主人の采配によるものだ」
雪男の言葉に頷くのは、ヴァユ。
《まぁね。私達はルーインが任を解くまで、あんたの使い魔になる契約だよ》
「感謝する。では、この艦船を破壊しろ!!」
《じゃあ、小手調べにちょっとだけ♡魅せてやるよ!!》