第ニ十二話 行先
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
場所はかわり、円卓会議堂。
「首をすげ換えているだなどと・・・!荒唐無稽も甚だしい・・・!」
怒りの声をあげているのは、アーサーだ。
「先程の失態を見ても・・・ライトニングは正気とは思えん!奴がつくったこの報告書がその証拠だ!
あろう事か・・・このオレを・・・!!」
宥めるよう声をかけるのはルーシーだが。
「あくまで可能性として指摘しているだけだろう」
「可能性すら有り得ないというんだ!」
「論点がズレてませんか~?議論すべきはドラグレスク博士の裏切りの真偽では?」
「その告発の信憑性を議論している!」
アーサーの耳には、メフィストの声も入らなくなっている。
「・・・グリゴリ方は、何もご存知ないのかね?」
「・・・我々も、先代からは何も聞かされていません。しかし、先代方は青い夜からほどなく退位の意をしめされました。
その宸意は"我らにグリゴリたる資格なし"。当時はただ、青い夜に責任を感じたものと思ってましたが」
「先程もお話ししましたが、この場で唯一全てを見てきたのは私です」
そう堂々と名乗るのは、やはりメフィストで。
「私が、ライトニングの提出した資料の信憑性を保証しますよ。エンジェル、当然貴方の件もです。
ドラグレスク博士が裏切り者か否かは、決定的な証拠がないので私にも判りませんが・・・。
おや、納得できませんか?何でしたら今度は私の信憑性について議論します?」
「悪魔の信憑性など、論ずるまでもない!!!」
バンッと、派手な音ともに開いたドアに、勝呂が気付く。
「あ、聖騎士!!待っ」
アーサーを呼び止めようとしたが、顔を見ることもなくさっさと行ってしまった。
「・・・・・はあぁ~、やっっぱアカンかったか~~!証拠としても弱いし・・・内容も内容やしな・・・」
出雲と電話が繋がったまま、彼女から言葉が返ってくる。
「詳しくは判らないけど、その内容は、あんたも妥当だと思うの?」
「・・・・・・・」
書類の内容を詳しく話すには、玲薇のことも話さなくてはならなくなる。
出雲にはいずれ話た方がいいのだろうが、いまがその時なのかも不安だ。
「そこの」
出雲以外の声にかけられた勝呂は、顔を上げる。
「ライトニングの弟子か?」
「!!ルーシー・陽大老師・・・!勝呂竜士といいます!」
「お前、あの資料をどう思うかね。いや、ライトニングをどう思ってる?」
直球な質問に、勝呂は戸惑う。
「・・・あ、あの資料を清書してまとめたのは、俺です」
だが、日頃溜まっていた鬱憤が、とうとう爆発した。
「・・・あの人、俺を"まともな判断基準"として弟子にしたはずやのに、結局勝手に一人で調査するわ、
エゲツない拷問やりまくっとるわ、挙句の果てには俺にバレんよう資料一部隠すわ、偽造するわ、
どう思うって、どうもこうもあるか!信用出来んわボケ、とんだ人でなしや!!!」
「人でなし・・・・・ねぇ」
「ハッ、すんません!!つい日頃のフラストレーションが・・・」
「フ、ハハハハハ、ガァーッハッハッハッ!!!」
「!!?」
突然の笑いに、勝呂は戸惑う。
「よく判ってるじゃないか、ハッハッハッ!!」
「いや、その。いざとなったら、俺はブレーキになる覚悟やったんで・・・肝心な時に側におらんかったんが悔しくて」
「・・・ずい分とまめやかな男を選んだもんだねぇ」
「・・・・・ただ、仲間に隠してしまってる事があります」
「ほう・・・?」
出雲に繋がったままの電話。
「ちょっと、勝呂竜士?もしもし?何がどうなってるの!?」
すると、出雲がいる場所に、ドアを開けた勝呂が顔を出す。
「え?急に何よ!?」
「・・・・・風美夜の事で、話ときたいことがある」
ふと思い出す、『作られた』って言葉。
「・・・玲薇の、事・・・?」
「それを承知した上で来れるなら」
第三者の声に、初めてみる姿に出雲は目を丸くした。
「!?」
「ついて来な」
それは勝呂の肩にちょこんと乗っかっているルーシーだった。
-----
「緑地まであるのか、まるで街だな」
「艇の上なのに、広いね」
「あ~、ハラ減った。食堂がこの先です、食べていきましょーよ!世界中の食べ物が食べられますよ」
雪男と玲薇はその種類豊富な食堂に驚きながら、三人はそれぞれ好きな食べ物を選ぶ。
一つのテーブルに、三人で仲良く座って食べ始めた。現状、知らない人との食事はいまは嫌だ。
「クローンといい、肉体の急速再生といい
、この船といい、まるで魔法だ。理屈が判らない」
ハンバーガーを口に運びながら言う雪男。
(雪男でも判らない事あるんだな~)
玲薇は雪男の隣に座り、パスタを食べている。
意外とここの食事は美味しい。
「"魔法科学"って、結社はゆーてますけど、俺もサッパリ・・・ほら、きっとアレですよ。
"十分に発達した科学は魔法に見える"とかなんとかゆーやつ」
「クラーク三法則の三か。つまり魔法は、十分に発達した科学技術だともいえるのか」
二人の話を聞きながら食事していると、食堂がなにやらざわつく。
顔を上げると、そこには藤堂がいた。玲薇は初対面だが、雪男は僅かに眉を寄せる。
カルラを取り込んだ藤堂は、以前の人としての姿を少し変え、耳が鳥の羽のようになっていた。
「奥村くん!久しぶりだね。君と再会するのを楽しみにしていたよ。それから、初めまして風美夜玲薇ちゃん。
君の事は常々、総帥に話を聞いていてね。奥村くんと来てくれて嬉しいよ」
「は、初め、まして・・・」
玲薇はギクシャクしながらも、小さく頭をさげる。
「うん、思ったとおり可愛い子だ。隣の席、構わないかな?」
「・・・・・・・・・」
答えない雪男に、なにか威圧感を感じるが、気のせいにしておこう。
「皆さん、揃って昼食ですか?我々も御一緒して構いませんか?」
「総帥!!勿論です!」
「「・・・・・・・」」
元からいた三人は何も答えていない。それなのに、志摩の上司である誉がいることもあり、渋々承諾し席を代える。
目の前に座るのは、ルシフェルに藤堂、誉だ。雪男は一気に食欲が失せる。
(なんで、こんな状況に・・・)
「この食堂は、イルミナティに共鳴した三ツ星シェフや職人が、食事を提供してくれているんだ。美味いだろう?」
「あ・・・はい」
「ようこそ、イルミナティへ!」
(悪夢か・・・・・)
ウィンクして歓迎してくれる藤堂に、腹の底から思う雪男。
(そうか、イルミナティにいたから藤堂は玲薇の事を知っていたのか)
「奥村くんを紹介してくれたのは藤堂くんです」
牡蠣を食べるルシフェルに視線を向ける。なんてご立派に盛り付けられているのだろう。
「彼に教えてもらわなければ、私は君の価値に気付けなかったかもしれない。
創設当時から常に、結社の為に尽力してくれました」
「何の。楽しい十六年だった!総帥と出会わなければ、私はこんなにも刺激的で色鮮やかな世界を知らぬまま、
きっと今も貧しく単調な道を歩いていたでしょう。進まないようだね」
「え?」
不意に声をかけられ、雪男は顔を上げる。
「イルミナティの食事は、合わないかな?」
「・・・まさか、空腹じゃないだけです」
不穏な空気に、どうすればいいのか判らなくなる。
「うん、残念。君、まだ正直じゃないな」
「な!?なにを」
彼女がいる手前、変な誤解をされては困る。
「お得意の虐めですか?こう見えて僕は今、刺激的で色鮮やかな極上フルコースを堪能中ですよ」
「あっはっはっはっ!!やはり君は面白い!だが、そういう事じゃない。せっかく好きな子といるのだから」
「っ・・・」
「私は正直になって自由に人生を楽しむ君と再会したかったんだよ」
「どういう事ですか?」
雪男と藤堂の会話に、突っ込みたいところが山ほどある玲薇だが、雪男に阻止され知らぬ振りをする。
(好きな子・・・やっぱり雪男はまだ・・・)
自分を好きでいてくれているのか。
「僕は未だかつてない程自由ですよ」
その言葉を聞いて吹き出す志摩には目もくれず。
「選ばれし者(セイバー)、お時間が」
「!」
藤堂に声がかかり、彼は立ち上がる。
「総帥、名残惜しいですが実験準備がありますので、お先に失礼します」
「藤堂くん、貴方は結社の誇りです」
「勿体無いお言葉・・・!感謝します」
ルシフェルと握手を交わし、誉からも言葉が送られた。
「セイバー、この度はおめでとうございます。無事お役目果たされますよう」
「ありがとう。最後に皆さんと食事が出来て実に楽しかった!君には是非、我が実験を見て欲しい」
藤堂はにっこり微笑んでくれるが、玲薇にはその微笑みが冷たく、背筋が凍る。
(実験―・・・)
「それと奥村くん。君も正直になれば、きっと判るよ」
「首をすげ換えているだなどと・・・!荒唐無稽も甚だしい・・・!」
怒りの声をあげているのは、アーサーだ。
「先程の失態を見ても・・・ライトニングは正気とは思えん!奴がつくったこの報告書がその証拠だ!
あろう事か・・・このオレを・・・!!」
宥めるよう声をかけるのはルーシーだが。
「あくまで可能性として指摘しているだけだろう」
「可能性すら有り得ないというんだ!」
「論点がズレてませんか~?議論すべきはドラグレスク博士の裏切りの真偽では?」
「その告発の信憑性を議論している!」
アーサーの耳には、メフィストの声も入らなくなっている。
「・・・グリゴリ方は、何もご存知ないのかね?」
「・・・我々も、先代からは何も聞かされていません。しかし、先代方は青い夜からほどなく退位の意をしめされました。
その宸意は"我らにグリゴリたる資格なし"。当時はただ、青い夜に責任を感じたものと思ってましたが」
「先程もお話ししましたが、この場で唯一全てを見てきたのは私です」
そう堂々と名乗るのは、やはりメフィストで。
「私が、ライトニングの提出した資料の信憑性を保証しますよ。エンジェル、当然貴方の件もです。
ドラグレスク博士が裏切り者か否かは、決定的な証拠がないので私にも判りませんが・・・。
おや、納得できませんか?何でしたら今度は私の信憑性について議論します?」
「悪魔の信憑性など、論ずるまでもない!!!」
バンッと、派手な音ともに開いたドアに、勝呂が気付く。
「あ、聖騎士!!待っ」
アーサーを呼び止めようとしたが、顔を見ることもなくさっさと行ってしまった。
「・・・・・はあぁ~、やっっぱアカンかったか~~!証拠としても弱いし・・・内容も内容やしな・・・」
出雲と電話が繋がったまま、彼女から言葉が返ってくる。
「詳しくは判らないけど、その内容は、あんたも妥当だと思うの?」
「・・・・・・・」
書類の内容を詳しく話すには、玲薇のことも話さなくてはならなくなる。
出雲にはいずれ話た方がいいのだろうが、いまがその時なのかも不安だ。
「そこの」
出雲以外の声にかけられた勝呂は、顔を上げる。
「ライトニングの弟子か?」
「!!ルーシー・陽大老師・・・!勝呂竜士といいます!」
「お前、あの資料をどう思うかね。いや、ライトニングをどう思ってる?」
直球な質問に、勝呂は戸惑う。
「・・・あ、あの資料を清書してまとめたのは、俺です」
だが、日頃溜まっていた鬱憤が、とうとう爆発した。
「・・・あの人、俺を"まともな判断基準"として弟子にしたはずやのに、結局勝手に一人で調査するわ、
エゲツない拷問やりまくっとるわ、挙句の果てには俺にバレんよう資料一部隠すわ、偽造するわ、
どう思うって、どうもこうもあるか!信用出来んわボケ、とんだ人でなしや!!!」
「人でなし・・・・・ねぇ」
「ハッ、すんません!!つい日頃のフラストレーションが・・・」
「フ、ハハハハハ、ガァーッハッハッハッ!!!」
「!!?」
突然の笑いに、勝呂は戸惑う。
「よく判ってるじゃないか、ハッハッハッ!!」
「いや、その。いざとなったら、俺はブレーキになる覚悟やったんで・・・肝心な時に側におらんかったんが悔しくて」
「・・・ずい分とまめやかな男を選んだもんだねぇ」
「・・・・・ただ、仲間に隠してしまってる事があります」
「ほう・・・?」
出雲に繋がったままの電話。
「ちょっと、勝呂竜士?もしもし?何がどうなってるの!?」
すると、出雲がいる場所に、ドアを開けた勝呂が顔を出す。
「え?急に何よ!?」
「・・・・・風美夜の事で、話ときたいことがある」
ふと思い出す、『作られた』って言葉。
「・・・玲薇の、事・・・?」
「それを承知した上で来れるなら」
第三者の声に、初めてみる姿に出雲は目を丸くした。
「!?」
「ついて来な」
それは勝呂の肩にちょこんと乗っかっているルーシーだった。
-----
「緑地まであるのか、まるで街だな」
「艇の上なのに、広いね」
「あ~、ハラ減った。食堂がこの先です、食べていきましょーよ!世界中の食べ物が食べられますよ」
雪男と玲薇はその種類豊富な食堂に驚きながら、三人はそれぞれ好きな食べ物を選ぶ。
一つのテーブルに、三人で仲良く座って食べ始めた。現状、知らない人との食事はいまは嫌だ。
「クローンといい、肉体の急速再生といい
、この船といい、まるで魔法だ。理屈が判らない」
ハンバーガーを口に運びながら言う雪男。
(雪男でも判らない事あるんだな~)
玲薇は雪男の隣に座り、パスタを食べている。
意外とここの食事は美味しい。
「"魔法科学"って、結社はゆーてますけど、俺もサッパリ・・・ほら、きっとアレですよ。
"十分に発達した科学は魔法に見える"とかなんとかゆーやつ」
「クラーク三法則の三か。つまり魔法は、十分に発達した科学技術だともいえるのか」
二人の話を聞きながら食事していると、食堂がなにやらざわつく。
顔を上げると、そこには藤堂がいた。玲薇は初対面だが、雪男は僅かに眉を寄せる。
カルラを取り込んだ藤堂は、以前の人としての姿を少し変え、耳が鳥の羽のようになっていた。
「奥村くん!久しぶりだね。君と再会するのを楽しみにしていたよ。それから、初めまして風美夜玲薇ちゃん。
君の事は常々、総帥に話を聞いていてね。奥村くんと来てくれて嬉しいよ」
「は、初め、まして・・・」
玲薇はギクシャクしながらも、小さく頭をさげる。
「うん、思ったとおり可愛い子だ。隣の席、構わないかな?」
「・・・・・・・・・」
答えない雪男に、なにか威圧感を感じるが、気のせいにしておこう。
「皆さん、揃って昼食ですか?我々も御一緒して構いませんか?」
「総帥!!勿論です!」
「「・・・・・・・」」
元からいた三人は何も答えていない。それなのに、志摩の上司である誉がいることもあり、渋々承諾し席を代える。
目の前に座るのは、ルシフェルに藤堂、誉だ。雪男は一気に食欲が失せる。
(なんで、こんな状況に・・・)
「この食堂は、イルミナティに共鳴した三ツ星シェフや職人が、食事を提供してくれているんだ。美味いだろう?」
「あ・・・はい」
「ようこそ、イルミナティへ!」
(悪夢か・・・・・)
ウィンクして歓迎してくれる藤堂に、腹の底から思う雪男。
(そうか、イルミナティにいたから藤堂は玲薇の事を知っていたのか)
「奥村くんを紹介してくれたのは藤堂くんです」
牡蠣を食べるルシフェルに視線を向ける。なんてご立派に盛り付けられているのだろう。
「彼に教えてもらわなければ、私は君の価値に気付けなかったかもしれない。
創設当時から常に、結社の為に尽力してくれました」
「何の。楽しい十六年だった!総帥と出会わなければ、私はこんなにも刺激的で色鮮やかな世界を知らぬまま、
きっと今も貧しく単調な道を歩いていたでしょう。進まないようだね」
「え?」
不意に声をかけられ、雪男は顔を上げる。
「イルミナティの食事は、合わないかな?」
「・・・まさか、空腹じゃないだけです」
不穏な空気に、どうすればいいのか判らなくなる。
「うん、残念。君、まだ正直じゃないな」
「な!?なにを」
彼女がいる手前、変な誤解をされては困る。
「お得意の虐めですか?こう見えて僕は今、刺激的で色鮮やかな極上フルコースを堪能中ですよ」
「あっはっはっはっ!!やはり君は面白い!だが、そういう事じゃない。せっかく好きな子といるのだから」
「っ・・・」
「私は正直になって自由に人生を楽しむ君と再会したかったんだよ」
「どういう事ですか?」
雪男と藤堂の会話に、突っ込みたいところが山ほどある玲薇だが、雪男に阻止され知らぬ振りをする。
(好きな子・・・やっぱり雪男はまだ・・・)
自分を好きでいてくれているのか。
「僕は未だかつてない程自由ですよ」
その言葉を聞いて吹き出す志摩には目もくれず。
「選ばれし者(セイバー)、お時間が」
「!」
藤堂に声がかかり、彼は立ち上がる。
「総帥、名残惜しいですが実験準備がありますので、お先に失礼します」
「藤堂くん、貴方は結社の誇りです」
「勿体無いお言葉・・・!感謝します」
ルシフェルと握手を交わし、誉からも言葉が送られた。
「セイバー、この度はおめでとうございます。無事お役目果たされますよう」
「ありがとう。最後に皆さんと食事が出来て実に楽しかった!君には是非、我が実験を見て欲しい」
藤堂はにっこり微笑んでくれるが、玲薇にはその微笑みが冷たく、背筋が凍る。
(実験―・・・)
「それと奥村くん。君も正直になれば、きっと判るよ」