第ニ十二話 行先
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ユリの出産が始まった。外は激しい雨に雷が鳴っている。
陣痛が始まって18時間、子宮口がなかなか開かず母体の体力も限界だが、
悪魔の子供を宿した母親には、クレイドルバリアが発動され、下手に医師達も手出し出来ないでいた。
祓魔楽式が用意された部屋で、ユリの悲痛な叫びが響く。まだか、まだかと待ち構えていれば、
ユリを護るクレイドルバリアがより1層に激しく発動を始めた。子宮口も全開に開き、いよいよ本番だ。
青い稲妻作戦が始まる。
『よく聞くんだ!詛がはね返るから医療行為は出来ない!自力で産むんだ!
産んだ後、私達が臍帯(さいたい)を切って君を保護する。生まれた子供は、彼らが祓魔する。いいな!?』
『・・・・・や・・・ハァ、ハァッ』
なんて残酷な決断なのだろう。このまま産まなければ子供は護れるかもしれない。
いくら悪魔の子供といえど、自分の血の繋がった初めての子供なのに。
祓魔される予定で産むなんて考えたくないのに。
『さあ!!手を握って息むんだ!』
楽式を施している大勢の人の中心で、大量の涙を零しながら必死に力む。
『・・・ッ、い、あ・・・いや・・・ああぁっ』
『叫ぶな、息め!!目をしっかり開けて!!』
『・・・・・ッ、ぐ・・・・・』
正解なんて、なに一つなくて。ただひたすら、産むしかなくて。
『いいぞ、上手い!その調子だ!!もう1回!!!』
『ッ・・・!!!』
ユリの叫びと共に勢い良く飛び出した、青い炎を纏った男の子。
『フギャアアアァァアア!!!』
それと同時に消えるクレイドルバリア。やはり先に生まれる予定だったM胎がサタンの仔だった。
『オギャアア!!フギャアア!!』
泣き続ける赤子は、尻尾と炎が。そして中心部に見えだした悪魔の心臓。
ギョロと目を開き寝返りをうち起き上がった途端、青い炎は更に燃え上がる。
『オギャアアァ!!!』
『う、うわぁあ!』
『きゃああ!』
暴れる赤子の青い炎は、楽式を展開していた祓魔師たちに襲いかかり、人々を容赦なく燃やしていく。
その巨大な力を前に、聖騎士ですら歯が立たなく退避を試みるも炎が消えない。
「・・・・・あ・・・・・」
自分の荒々しい出生に、恐怖を覚えた燐は後ずさる。
『まずいぞ』
医師の声に、燐は恐る恐るユリに視線を向け直す。ユリの意識が、今まで以上に朦朧としていた。
『母体が危ない・・・!もう一人は産めないかもしれないぞ』
やめてくれ。これが怖かった。これを知るのが怖くて、俺はビビッてたんだ。
ブレたくなかった。前だけ向いていたかったのに。やっぱり、俺は生まれるべきじゃなかった。
炎で燃え上がる人々。皮膚がなくなり、骨だけになる人々。
(本当は、ずっと判ってたんだ。俺さえ、この世にいなければ。俺がいなければ)
親父も、母親も、みんなみんな生きていたかもしれないのに。
(生まれなきゃよかったんだ)
•••ククク、ヒヒヒ。や〜〜っと判ったか?
「・・・・・・!!」
押さえつけていたもう一人の自分が出てくる。
だから死ねよ、死ね、消えろ、死ね死ね死ね死ね死ね
「・・・やめろ」
ヒヒヒハハハハハ、とうとう俺の出番だ!ん?
「・・・・・はっ!!?」
ドクンと跳ねる心臓に戻る意識。
「全く」
メフィストがどうやら押さえつけてくれたらしい。
「世話の焼ける事だ」
「!!・・・あ、メフィスト・・・!」
「私のつくった異次元空間をこじ開けるとは、さすがサタンの落胤の心臓というべきか。
大騒ぎしてる時だったからよかったようなもののクヒヒ。しかし、漠然と恐怖していたものが眼前に現れ、
まるで霧が晴れたようではないですか?」
メフィストがパチンと指を鳴らすと、燐の意識が遠のいていく。
ふらりと倒れそうな燐を受け止め、メフィストは鍵を開けた。
「やれやれ、この一大事に貴方の面倒など誰も見てられないんですよ。
お行きなさい、少しは頭を冷やせる場所へ」
「・・・・・・・母ちゃん・・・・親父・・・・雪男・・・・玲薇・・・・」
ふと、玲薇は重たい瞼を持ち上げる。
「・・・・・・・・・」
ああ、今燐が名前を呼んでくれたような気がした。
「玲薇、起きてる?」
軽くトントンと、遠慮がちなノック音。そのドアの向こうには雪男の声。
(・・・なんだ、雪男か)
そうだ、燐がここにいるわけないじゃないか。ここは、イルミナティの本拠地なのだから。
「うん、着替えも終わってるよ。開けるね」
「ドーモ、オハヨーさん!」
「・・・・・・・・・」
なんて煌びやかな笑顔を見せつけてくるのだろう。いま、このテンションにはついていけない。
「相変わらずだね、志摩くん」
「落ちこんでてもしゃーないやん。それに今日も総帥に会わないとやし」
「僕らの検査結果が出たみたいだ」
「わかった」
陣痛が始まって18時間、子宮口がなかなか開かず母体の体力も限界だが、
悪魔の子供を宿した母親には、クレイドルバリアが発動され、下手に医師達も手出し出来ないでいた。
祓魔楽式が用意された部屋で、ユリの悲痛な叫びが響く。まだか、まだかと待ち構えていれば、
ユリを護るクレイドルバリアがより1層に激しく発動を始めた。子宮口も全開に開き、いよいよ本番だ。
青い稲妻作戦が始まる。
『よく聞くんだ!詛がはね返るから医療行為は出来ない!自力で産むんだ!
産んだ後、私達が臍帯(さいたい)を切って君を保護する。生まれた子供は、彼らが祓魔する。いいな!?』
『・・・・・や・・・ハァ、ハァッ』
なんて残酷な決断なのだろう。このまま産まなければ子供は護れるかもしれない。
いくら悪魔の子供といえど、自分の血の繋がった初めての子供なのに。
祓魔される予定で産むなんて考えたくないのに。
『さあ!!手を握って息むんだ!』
楽式を施している大勢の人の中心で、大量の涙を零しながら必死に力む。
『・・・ッ、い、あ・・・いや・・・ああぁっ』
『叫ぶな、息め!!目をしっかり開けて!!』
『・・・・・ッ、ぐ・・・・・』
正解なんて、なに一つなくて。ただひたすら、産むしかなくて。
『いいぞ、上手い!その調子だ!!もう1回!!!』
『ッ・・・!!!』
ユリの叫びと共に勢い良く飛び出した、青い炎を纏った男の子。
『フギャアアアァァアア!!!』
それと同時に消えるクレイドルバリア。やはり先に生まれる予定だったM胎がサタンの仔だった。
『オギャアア!!フギャアア!!』
泣き続ける赤子は、尻尾と炎が。そして中心部に見えだした悪魔の心臓。
ギョロと目を開き寝返りをうち起き上がった途端、青い炎は更に燃え上がる。
『オギャアアァ!!!』
『う、うわぁあ!』
『きゃああ!』
暴れる赤子の青い炎は、楽式を展開していた祓魔師たちに襲いかかり、人々を容赦なく燃やしていく。
その巨大な力を前に、聖騎士ですら歯が立たなく退避を試みるも炎が消えない。
「・・・・・あ・・・・・」
自分の荒々しい出生に、恐怖を覚えた燐は後ずさる。
『まずいぞ』
医師の声に、燐は恐る恐るユリに視線を向け直す。ユリの意識が、今まで以上に朦朧としていた。
『母体が危ない・・・!もう一人は産めないかもしれないぞ』
やめてくれ。これが怖かった。これを知るのが怖くて、俺はビビッてたんだ。
ブレたくなかった。前だけ向いていたかったのに。やっぱり、俺は生まれるべきじゃなかった。
炎で燃え上がる人々。皮膚がなくなり、骨だけになる人々。
(本当は、ずっと判ってたんだ。俺さえ、この世にいなければ。俺がいなければ)
親父も、母親も、みんなみんな生きていたかもしれないのに。
(生まれなきゃよかったんだ)
•••ククク、ヒヒヒ。や〜〜っと判ったか?
「・・・・・・!!」
押さえつけていたもう一人の自分が出てくる。
だから死ねよ、死ね、消えろ、死ね死ね死ね死ね死ね
「・・・やめろ」
ヒヒヒハハハハハ、とうとう俺の出番だ!ん?
「・・・・・はっ!!?」
ドクンと跳ねる心臓に戻る意識。
「全く」
メフィストがどうやら押さえつけてくれたらしい。
「世話の焼ける事だ」
「!!・・・あ、メフィスト・・・!」
「私のつくった異次元空間をこじ開けるとは、さすがサタンの落胤の心臓というべきか。
大騒ぎしてる時だったからよかったようなもののクヒヒ。しかし、漠然と恐怖していたものが眼前に現れ、
まるで霧が晴れたようではないですか?」
メフィストがパチンと指を鳴らすと、燐の意識が遠のいていく。
ふらりと倒れそうな燐を受け止め、メフィストは鍵を開けた。
「やれやれ、この一大事に貴方の面倒など誰も見てられないんですよ。
お行きなさい、少しは頭を冷やせる場所へ」
「・・・・・・・母ちゃん・・・・親父・・・・雪男・・・・玲薇・・・・」
ふと、玲薇は重たい瞼を持ち上げる。
「・・・・・・・・・」
ああ、今燐が名前を呼んでくれたような気がした。
「玲薇、起きてる?」
軽くトントンと、遠慮がちなノック音。そのドアの向こうには雪男の声。
(・・・なんだ、雪男か)
そうだ、燐がここにいるわけないじゃないか。ここは、イルミナティの本拠地なのだから。
「うん、着替えも終わってるよ。開けるね」
「ドーモ、オハヨーさん!」
「・・・・・・・・・」
なんて煌びやかな笑顔を見せつけてくるのだろう。いま、このテンションにはついていけない。
「相変わらずだね、志摩くん」
「落ちこんでてもしゃーないやん。それに今日も総帥に会わないとやし」
「僕らの検査結果が出たみたいだ」
「わかった」