第ニ十一話 ユリとサタン
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これ以上、いくら交渉しても無意味だ。自ら行動を起こしたユリは、夜中こっそり抜け出す。
『行く気か』
『!』
だが目の前に、獅郎が待ち伏せていた。きっと、行動を読み取られていたのだろう。
シュラを頼まれた時に、断る理由としてサタンの名が上がったのだから。
『・・・獅郎』
『どうやってセクションに侵入する気だ、鍵はもう返却して・・・』
獅郎に見せたのは、間違いなく鍵だ。
『セクションに返却したのは模造品、本物は隠し持ってたの。バレなかった!』
ユリの、大胆な行動に呆れる。
『お前・・・まァ、昔のよしみだ黙っててやるよ』
『へへ、私もすっかり悪党になっちゃった。それでも行かなきゃ・・・もしかして、見送りに来てくれたの?』
『別に、たまたまだ』
『もー、最後くらい素直になればいいのに』
・・・最後・・・。
『じゃあね!』
扉を開けるユリ。見送る背中、彼女の手首を捕まえていた。
『!』
ハッとユリは振り返る。いままでみせた事のない、悲しそうで寂しそうな獅郎のかお。
『・・・や、やっぱり・・・』
言葉が続かない。本当は、行ってほしくないんだと。
暴れ続ける悪魔たちが、邪魔をする。先生と、部下が自分を呼ぶ声が聞こえる。
獅郎の緩まった手の隙に、ユリは手首をはなして再び背を向けた。
『気をつけてね』
笑顔で。最後の最後まで、他人を心配して。
『神父(せんせい)?』
部下の声に我に返る。獅郎はユリを離した手を、握りしめた。
『さよなら、獅郎・・・!』
胸が、心臓がかなしいくらいドキドキしている。溢れそうな涙を、必死に耐える。
自ら選んだ道。
『ユリか』
『久しぶり、サタン』
『とっとと要件を言え』
獅郎のあの優しかった手を取っていれば、どんな今があったのだろう。
『・・・お願い、人と戦うのはやめて。セクションの人達も解放してあげて』
でも、サタンが必要としてくれるのも自分だけ、彼を止められるのも自分だと信じて。
『私と逃げよう、私は・・・今度こそ貴方から離れない!』
『ブッ、ヒヒハハハ、自分にそんな価値があると思ってんのか、とんだ自惚れ女だ、ヒャハハハ!』
『呼んでくれたでしよ』
『・・・・・・・』
『一緒にいさせて』
『お前がオレと一緒にいたいワケねぇ・・・!判ってんだよ、全部!
お前も所詮、凡愚な人間だ、オレを理解出来ない、理解を超える存在を認められず、忌み嫌ってんだろ!?バカだからな!』
『心配してるんだよ!!身体が長く持たないって聞いて・・・どんな怖い思いをしてるかって・・・一人じゃ』
『あーーッうるせぇええ!!!』
サタンが、ブチ切れた。
『ガキ扱いしてんじゃねぇ、オレは神だぞ、完璧なんだよ!何で判らない・・・ッグホッ、ガバッ。
何で判らない・・・ッ何で、完璧なオレがこんなめに・・・!!お前ェえ・・・マジで目障りだぜ~~!!消えろ!!!殺せ!!!』
『!!』
サタンの命令で動く悪魔は、容赦なくユリに襲いかかる。詠唱でどうにか対処していく。
『ハハハハハ!どれだけ持つかな』
見物だと余裕で高みの見物をしていたサタン。
だが、ユリの攻撃に隙が出来、悪魔が飛びかかろうとした。その悪魔を攻撃したのは、サタンだ。
『・・・ッ、ゲホッ、ゴホッ・・・めだ』
手を伸ばすサタンに、ユリは身構えたが、気付いた時にはサタンに抱きしめられていた。
『やっぱり、オレのそばにいてくれ。お前は、オレのものだ・・・!』
やっと受け入れてくれた。抱きしめてくれた。ユリは答えるように包み込む。
『・・・うん』
これで、全部終わる。そう願った。
『オレ達はこの城を捨てる。撤退だ』
『『『!!?』』』
サタンの変わり身に、全員が驚く。
『・・・は!?研究は!?エリクサーはどうするのです!』
『どーせすぐ死ぬんだ。だったら好きな所で、好きな女と・・・好きにする』
『そんな・・・!!』
『城を捨てる・・・!我々は、どうすれば!?』
『お前たちには悪ィな、気が変わったんだ。まァ、オレがいなくなっても、ココの連中は事実を隠してうまく研究を続けるだろうよ。
じゃあな』
『・・・父上は、折角手に入れられたお身体を、諦めてしまわれるのですか・・・?何故・・・?』
いまだ身体に恵まれないルシフェルにとって、理解し難い事かもしれない。
『・・・身体より、大事なものを見つけたんだ。お前も、お前の大事なものが見つかるといいな』
『・・・大事なもの、私の?』
『兄上!父上はあの女にすっかり惑わされておいでです。私が女を殺せば・・・』
『おやめなさい』
サタンの力を肌で感じて判るから、無闇な同胞の殺し合いは意味をなさない。
『父上の力を侮ってはなりません。言う通りに』
これを機に、サタンが連れた悪魔たちは撤退していった。
サタンとユリは、二人で静かに暮らしていく。
『ユリ、死ぬまでオレのそばにいてくれ』
『うん。海辺に住むのはどう?サタン、焼き魚が好きだったでしょ?』
『寿司がいい』
『!?いつの間にお寿司の味なんて覚えたの!?貴方の着る物を用意しなきゃ。その髪も髭も切った方が・・・わっ』
サタンに後ろから抱かれ、思わず声が出てしまう。ビックリしたが、嬉しいのに変わりなくて。
『あー・・・いい匂いだな』
『ふふ・・・安心する?』
『ん?』
だが、いつになく犬のように匂いを一生懸命確認してくる。
『えっ、何!?くさいの!?』
『・・・匂いが違う?』
『え?』
ユリがサタンの服を探しに赴いたのは、子供達がいる実験体の保護施設。
そこでずっと会えていなかったジェニが働いていたのだ。ジェニの仕事はクローンの世話。
モリナスの契約書のせいで、誰にも相談することが出来なかったけれど、久しぶり見た親友の姿に涙を覚える。
ジェニの近況を聞き、ユリの近況を聞き。サタンの現状を知ったジェニは、施設を公にしたいと訴えた。
だが後日、ジェニのその訴えを他の施設の人間が聞き、エミネクスらに漏らしたその言葉により、彼女は死を遂げる。
ユリの知らない場所で。
ユリもまた、準備を万端にし、いよいよサタンと脱出しようと試みていた。
『さあ、行こう!!脱出するのに一つだけ外に出られそうなルートがここなの。鍵は私しか使えないから』
『ゴフッ、ゴホッゲホッ』
『!?大丈夫?』
『平気だ』
地下水を通り、マンホールから外に出た。
辺りは、厳重警備されて。どこからどう情報が漏れたのだろう。
『行く気か』
『!』
だが目の前に、獅郎が待ち伏せていた。きっと、行動を読み取られていたのだろう。
シュラを頼まれた時に、断る理由としてサタンの名が上がったのだから。
『・・・獅郎』
『どうやってセクションに侵入する気だ、鍵はもう返却して・・・』
獅郎に見せたのは、間違いなく鍵だ。
『セクションに返却したのは模造品、本物は隠し持ってたの。バレなかった!』
ユリの、大胆な行動に呆れる。
『お前・・・まァ、昔のよしみだ黙っててやるよ』
『へへ、私もすっかり悪党になっちゃった。それでも行かなきゃ・・・もしかして、見送りに来てくれたの?』
『別に、たまたまだ』
『もー、最後くらい素直になればいいのに』
・・・最後・・・。
『じゃあね!』
扉を開けるユリ。見送る背中、彼女の手首を捕まえていた。
『!』
ハッとユリは振り返る。いままでみせた事のない、悲しそうで寂しそうな獅郎のかお。
『・・・や、やっぱり・・・』
言葉が続かない。本当は、行ってほしくないんだと。
暴れ続ける悪魔たちが、邪魔をする。先生と、部下が自分を呼ぶ声が聞こえる。
獅郎の緩まった手の隙に、ユリは手首をはなして再び背を向けた。
『気をつけてね』
笑顔で。最後の最後まで、他人を心配して。
『神父(せんせい)?』
部下の声に我に返る。獅郎はユリを離した手を、握りしめた。
『さよなら、獅郎・・・!』
胸が、心臓がかなしいくらいドキドキしている。溢れそうな涙を、必死に耐える。
自ら選んだ道。
『ユリか』
『久しぶり、サタン』
『とっとと要件を言え』
獅郎のあの優しかった手を取っていれば、どんな今があったのだろう。
『・・・お願い、人と戦うのはやめて。セクションの人達も解放してあげて』
でも、サタンが必要としてくれるのも自分だけ、彼を止められるのも自分だと信じて。
『私と逃げよう、私は・・・今度こそ貴方から離れない!』
『ブッ、ヒヒハハハ、自分にそんな価値があると思ってんのか、とんだ自惚れ女だ、ヒャハハハ!』
『呼んでくれたでしよ』
『・・・・・・・』
『一緒にいさせて』
『お前がオレと一緒にいたいワケねぇ・・・!判ってんだよ、全部!
お前も所詮、凡愚な人間だ、オレを理解出来ない、理解を超える存在を認められず、忌み嫌ってんだろ!?バカだからな!』
『心配してるんだよ!!身体が長く持たないって聞いて・・・どんな怖い思いをしてるかって・・・一人じゃ』
『あーーッうるせぇええ!!!』
サタンが、ブチ切れた。
『ガキ扱いしてんじゃねぇ、オレは神だぞ、完璧なんだよ!何で判らない・・・ッグホッ、ガバッ。
何で判らない・・・ッ何で、完璧なオレがこんなめに・・・!!お前ェえ・・・マジで目障りだぜ~~!!消えろ!!!殺せ!!!』
『!!』
サタンの命令で動く悪魔は、容赦なくユリに襲いかかる。詠唱でどうにか対処していく。
『ハハハハハ!どれだけ持つかな』
見物だと余裕で高みの見物をしていたサタン。
だが、ユリの攻撃に隙が出来、悪魔が飛びかかろうとした。その悪魔を攻撃したのは、サタンだ。
『・・・ッ、ゲホッ、ゴホッ・・・めだ』
手を伸ばすサタンに、ユリは身構えたが、気付いた時にはサタンに抱きしめられていた。
『やっぱり、オレのそばにいてくれ。お前は、オレのものだ・・・!』
やっと受け入れてくれた。抱きしめてくれた。ユリは答えるように包み込む。
『・・・うん』
これで、全部終わる。そう願った。
『オレ達はこの城を捨てる。撤退だ』
『『『!!?』』』
サタンの変わり身に、全員が驚く。
『・・・は!?研究は!?エリクサーはどうするのです!』
『どーせすぐ死ぬんだ。だったら好きな所で、好きな女と・・・好きにする』
『そんな・・・!!』
『城を捨てる・・・!我々は、どうすれば!?』
『お前たちには悪ィな、気が変わったんだ。まァ、オレがいなくなっても、ココの連中は事実を隠してうまく研究を続けるだろうよ。
じゃあな』
『・・・父上は、折角手に入れられたお身体を、諦めてしまわれるのですか・・・?何故・・・?』
いまだ身体に恵まれないルシフェルにとって、理解し難い事かもしれない。
『・・・身体より、大事なものを見つけたんだ。お前も、お前の大事なものが見つかるといいな』
『・・・大事なもの、私の?』
『兄上!父上はあの女にすっかり惑わされておいでです。私が女を殺せば・・・』
『おやめなさい』
サタンの力を肌で感じて判るから、無闇な同胞の殺し合いは意味をなさない。
『父上の力を侮ってはなりません。言う通りに』
これを機に、サタンが連れた悪魔たちは撤退していった。
サタンとユリは、二人で静かに暮らしていく。
『ユリ、死ぬまでオレのそばにいてくれ』
『うん。海辺に住むのはどう?サタン、焼き魚が好きだったでしょ?』
『寿司がいい』
『!?いつの間にお寿司の味なんて覚えたの!?貴方の着る物を用意しなきゃ。その髪も髭も切った方が・・・わっ』
サタンに後ろから抱かれ、思わず声が出てしまう。ビックリしたが、嬉しいのに変わりなくて。
『あー・・・いい匂いだな』
『ふふ・・・安心する?』
『ん?』
だが、いつになく犬のように匂いを一生懸命確認してくる。
『えっ、何!?くさいの!?』
『・・・匂いが違う?』
『え?』
ユリがサタンの服を探しに赴いたのは、子供達がいる実験体の保護施設。
そこでずっと会えていなかったジェニが働いていたのだ。ジェニの仕事はクローンの世話。
モリナスの契約書のせいで、誰にも相談することが出来なかったけれど、久しぶり見た親友の姿に涙を覚える。
ジェニの近況を聞き、ユリの近況を聞き。サタンの現状を知ったジェニは、施設を公にしたいと訴えた。
だが後日、ジェニのその訴えを他の施設の人間が聞き、エミネクスらに漏らしたその言葉により、彼女は死を遂げる。
ユリの知らない場所で。
ユリもまた、準備を万端にし、いよいよサタンと脱出しようと試みていた。
『さあ、行こう!!脱出するのに一つだけ外に出られそうなルートがここなの。鍵は私しか使えないから』
『ゴフッ、ゴホッゲホッ』
『!?大丈夫?』
『平気だ』
地下水を通り、マンホールから外に出た。
辺りは、厳重警備されて。どこからどう情報が漏れたのだろう。