第ニ十話 生きる為に
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ここで見たのは、先程とほぼ同時刻のセクションらしい。
薬づけにされている獅郎に似ている実験体に、燐は心を痛める。
「!!?」
だが、その実験体に見てしまった。目を薄らと開けた瞬間、除いた揺らめく目を。
「(この目・・・!)サタン!!?」
けれどそれは一瞬で、瞳を閉じてまた開いた時には普通の目になっていた。
「・・・あ、あれ?見間違いか・・・?」
「間違いではありません。サタンはこの時、初めて受肉した」
しかし、うまく憑依定着ができず研究員も悪魔も誰一人気付かなかったとメフィストが説明する。
サタンは自我がなく、初めての受肉で憑依の"作法"が判らなかったのだろう。
すでに受肉して何千年と経つ悪魔も、太古の昔はそうだったらしい。
「と、いうワケで、サタンが完全に受肉するまで9年かかります。とっとと先に進みましょう」
「9年!?」
「そうです」
ここからサタンは、9年にわたって同じ験体に幾度も受肉を試みて、繰り返しエリクサー実験を受け、
少しずつ少しずつ、繰り返しサタンが出入りした事でその験体は強化されていった。
9年の年月は、人間にとって大きなもの。時は、何もかも変えていく。
たった一人、ルシフェルの性根を除いて。
「あの丸くて白いやつ、この間も見たな・・・」
ルシフェルがいる研究室に、少しドアを開けて様子を伺いながら燐が言う。
「騎士團最高顧問の一人、シェミハザです。つまり、騎士團で一番エライ人です。ただの丸くて白いやつではありませんよ」
「あ、あれが!?」
「セクションの責任者でもあるので、よく視察にいらっしゃっているのです」
『・・・ルシフェル。先日、アマイモンが二百年使った肉体を離れ、ゲヘナへ還りました。
ルシフェル・・・!この施設も研究も、もう限界です。私はもう、続けられない・・・!!
お願いです!どうか・・・物質への執着を捨てて下さい!!』
ルシフェルの手を優しく握り、ただただ願う。だが、ルシフェルは怒りにその手の拳を握る。
『!!』
『賢聖!』
『ヒルキヤ!全員この部屋から出るのです』
『しかし』
『いい!行け!』
ここで全員殺られては、意味が無い。
『御意に』
二人で残った部屋は、ルシフェルの力によって機械が破壊されていく。
『ひ・・・どい・・・』
その力に、シェミハザは逃げることなく誰よりもルシフェルに寄り添い受け止める。
『よくも、そんなことを・・・!私はただ、やさしい光に満ちた世界をつくりたい。
全ての者が平等で、公平な世界。持つ者には判らぬ。持たざる者の気持ちが、私には判る。
私は、弱き者の希望の光になりたい。たったそれだけの、ささやかな望みなのに。何故、ゴホッゴホッ。
お願いです、シェミハザ・・・!身体が・・・動く体がいる。私にも、希望の光を・・・!』
『いいえ、ルシフェル。世界の理を変えてはならない』
『貴女はそれでも人間か・・・?』
『人間の情けは、この席を継いだ時捨てている』
その時、ドクンとルシフェルは気配を察知した。
『どうしたのです・・・!?』
『・・・アマイモンが、次の憑依体を見つけたようです。この施設内に』
『・・・え!?こんな急に』
焦るシェミハザの姿に、燐が疑問を持つ。メフィストと共に、鍵で次の場所へ向かう。
そこは実験体の学習施設といってもいいだろう場所だ。大人は子供を避難させ、その中の一人の子供は呻き苦しんでいる。
悪魔の憑依体として選ばれた子供―・・・浮かびでる悪魔の心臓に、片鱗を見せたのはアマイモンだ。
「まじか」
憑依を目のあたりにした燐は、思わず声が出る。
「アマイモンの今の身体は、私のクローンなのです。ちょっと顔似てるでしょ」
完全に、燐が知る今の姿のアマイモンになった。覚醒したアマイモンは息を荒くするも、違和感ない身体に驚いている。
『おめでとうアマイモン』
『あ・・・にうえ?この身体、兄上のクローンですか。痛くないです。よい身体をありがとうございます』
『なァに。この施設が少しでも役にたったならよい、タイミングも絶妙だったしな、ククク』
アマイモンの姿を確認し、燐は自由に動けるメフィストをおいて、先程の場所、ルシフェルとシェミハザのやり取りを見る。
『アマイモンの憑依体が見つかったということは・・・まだこの施設にも研究にも、価値があるということだ・・・。
施設閉鎖は、考え直して・・・くださいますね』
『・・・・・・!!』
シェミハザの、食いつく言葉がこれでなくなってしまう。
『次は、次こそは私の番です。そうでなければおかしい・・・』
ルシフェルは、決して諦めなかった。その間にも験体は、サタンによって強化されていった。
"偏に風の前の塵に同じ"永遠に同じものはない。9年の年をかけて、サタンは受肉していく。
「そして、この頃からもう一つの実験が始まりました」
涼しい顔をしたまま、メフィストはえげつない言葉を繰り返す。
「母体から取り出した細胞に、悪魔の血を入れて育てる実験が。クローンとは別に、血の繋がりから考えた。
先ずは一番にルシフェルの血を、私の血を、アマイモンの血を。サタンの血を。
それがゆくゆく出来上がったのが、小さな小さな風美夜さんの一部。ですから、キョウダイなのです」
「っ・・・!」
それが、彼女が作られた理由。キョウダイと呼ばれる理由。
アザゼル群からの験体、SO-005からこの当時は未知の悪魔として、受肉に成功する。
研究室で暴れたその未知の悪魔を魔除けで拘束し、急遽メフィストを含め会議が始まった。
『何の悪魔か、まだ判明しないのか?』
『は・・・心臓・角・尾の形状は未知のものです。もともと精神退行のみられる個体で会話もままならず・・・。
な、何にしても・・・こうなった以上SO-005は、実験体から外し特別な経過観察が必要では・・・』
『いや!験体から外しては・・・あの験体は素晴らしい可能性を秘めた個体だ・・・!
この9年でエリクサー研究は飛躍的に進んだ。全てあの験体のお陰です。
それに今は、細胞と血の研究も進んでいます。クローンに憑依する前に強い血を提供できれば、
ルシフェルの肉体回復の心配もなく、事スムーズに憑依出来る身体になれるはずです』
『あの別枠で研究している生贄達ですか・・・』
『もう少し、あと少しだけでもいいのです!人の形に成長できれば、液体でどうとでも出来る。
その未知の悪魔の血でも研究できます』
『・・・禁忌な部分の研究ではあるが、既にクローンとて同じこと。
決定は、理事であるフェレス卿に』
『そうですね-・・・では、折衷案でいきましょう』
燐はギリッと歯ぎしりし、拳を握った。今すぐにでもぶん殴りたい。ここにいる全て-・・・。
エリクサー研究、あの外道院とまるっきり同じ。人間の血。まずその"生贄"として成功するのが、
人の姿にも満たない玲薇の、悪魔の血を複雑に作り出された細胞の集まり。
外道院が玲薇の存在を知らず出雲を使おうとしたのは、玲薇の事は知らなかったから。
メフィストはここだけの研究員たちの秘密にしたのだろう。
薬づけにされている獅郎に似ている実験体に、燐は心を痛める。
「!!?」
だが、その実験体に見てしまった。目を薄らと開けた瞬間、除いた揺らめく目を。
「(この目・・・!)サタン!!?」
けれどそれは一瞬で、瞳を閉じてまた開いた時には普通の目になっていた。
「・・・あ、あれ?見間違いか・・・?」
「間違いではありません。サタンはこの時、初めて受肉した」
しかし、うまく憑依定着ができず研究員も悪魔も誰一人気付かなかったとメフィストが説明する。
サタンは自我がなく、初めての受肉で憑依の"作法"が判らなかったのだろう。
すでに受肉して何千年と経つ悪魔も、太古の昔はそうだったらしい。
「と、いうワケで、サタンが完全に受肉するまで9年かかります。とっとと先に進みましょう」
「9年!?」
「そうです」
ここからサタンは、9年にわたって同じ験体に幾度も受肉を試みて、繰り返しエリクサー実験を受け、
少しずつ少しずつ、繰り返しサタンが出入りした事でその験体は強化されていった。
9年の年月は、人間にとって大きなもの。時は、何もかも変えていく。
たった一人、ルシフェルの性根を除いて。
「あの丸くて白いやつ、この間も見たな・・・」
ルシフェルがいる研究室に、少しドアを開けて様子を伺いながら燐が言う。
「騎士團最高顧問の一人、シェミハザです。つまり、騎士團で一番エライ人です。ただの丸くて白いやつではありませんよ」
「あ、あれが!?」
「セクションの責任者でもあるので、よく視察にいらっしゃっているのです」
『・・・ルシフェル。先日、アマイモンが二百年使った肉体を離れ、ゲヘナへ還りました。
ルシフェル・・・!この施設も研究も、もう限界です。私はもう、続けられない・・・!!
お願いです!どうか・・・物質への執着を捨てて下さい!!』
ルシフェルの手を優しく握り、ただただ願う。だが、ルシフェルは怒りにその手の拳を握る。
『!!』
『賢聖!』
『ヒルキヤ!全員この部屋から出るのです』
『しかし』
『いい!行け!』
ここで全員殺られては、意味が無い。
『御意に』
二人で残った部屋は、ルシフェルの力によって機械が破壊されていく。
『ひ・・・どい・・・』
その力に、シェミハザは逃げることなく誰よりもルシフェルに寄り添い受け止める。
『よくも、そんなことを・・・!私はただ、やさしい光に満ちた世界をつくりたい。
全ての者が平等で、公平な世界。持つ者には判らぬ。持たざる者の気持ちが、私には判る。
私は、弱き者の希望の光になりたい。たったそれだけの、ささやかな望みなのに。何故、ゴホッゴホッ。
お願いです、シェミハザ・・・!身体が・・・動く体がいる。私にも、希望の光を・・・!』
『いいえ、ルシフェル。世界の理を変えてはならない』
『貴女はそれでも人間か・・・?』
『人間の情けは、この席を継いだ時捨てている』
その時、ドクンとルシフェルは気配を察知した。
『どうしたのです・・・!?』
『・・・アマイモンが、次の憑依体を見つけたようです。この施設内に』
『・・・え!?こんな急に』
焦るシェミハザの姿に、燐が疑問を持つ。メフィストと共に、鍵で次の場所へ向かう。
そこは実験体の学習施設といってもいいだろう場所だ。大人は子供を避難させ、その中の一人の子供は呻き苦しんでいる。
悪魔の憑依体として選ばれた子供―・・・浮かびでる悪魔の心臓に、片鱗を見せたのはアマイモンだ。
「まじか」
憑依を目のあたりにした燐は、思わず声が出る。
「アマイモンの今の身体は、私のクローンなのです。ちょっと顔似てるでしょ」
完全に、燐が知る今の姿のアマイモンになった。覚醒したアマイモンは息を荒くするも、違和感ない身体に驚いている。
『おめでとうアマイモン』
『あ・・・にうえ?この身体、兄上のクローンですか。痛くないです。よい身体をありがとうございます』
『なァに。この施設が少しでも役にたったならよい、タイミングも絶妙だったしな、ククク』
アマイモンの姿を確認し、燐は自由に動けるメフィストをおいて、先程の場所、ルシフェルとシェミハザのやり取りを見る。
『アマイモンの憑依体が見つかったということは・・・まだこの施設にも研究にも、価値があるということだ・・・。
施設閉鎖は、考え直して・・・くださいますね』
『・・・・・・!!』
シェミハザの、食いつく言葉がこれでなくなってしまう。
『次は、次こそは私の番です。そうでなければおかしい・・・』
ルシフェルは、決して諦めなかった。その間にも験体は、サタンによって強化されていった。
"偏に風の前の塵に同じ"永遠に同じものはない。9年の年をかけて、サタンは受肉していく。
「そして、この頃からもう一つの実験が始まりました」
涼しい顔をしたまま、メフィストはえげつない言葉を繰り返す。
「母体から取り出した細胞に、悪魔の血を入れて育てる実験が。クローンとは別に、血の繋がりから考えた。
先ずは一番にルシフェルの血を、私の血を、アマイモンの血を。サタンの血を。
それがゆくゆく出来上がったのが、小さな小さな風美夜さんの一部。ですから、キョウダイなのです」
「っ・・・!」
それが、彼女が作られた理由。キョウダイと呼ばれる理由。
アザゼル群からの験体、SO-005からこの当時は未知の悪魔として、受肉に成功する。
研究室で暴れたその未知の悪魔を魔除けで拘束し、急遽メフィストを含め会議が始まった。
『何の悪魔か、まだ判明しないのか?』
『は・・・心臓・角・尾の形状は未知のものです。もともと精神退行のみられる個体で会話もままならず・・・。
な、何にしても・・・こうなった以上SO-005は、実験体から外し特別な経過観察が必要では・・・』
『いや!験体から外しては・・・あの験体は素晴らしい可能性を秘めた個体だ・・・!
この9年でエリクサー研究は飛躍的に進んだ。全てあの験体のお陰です。
それに今は、細胞と血の研究も進んでいます。クローンに憑依する前に強い血を提供できれば、
ルシフェルの肉体回復の心配もなく、事スムーズに憑依出来る身体になれるはずです』
『あの別枠で研究している生贄達ですか・・・』
『もう少し、あと少しだけでもいいのです!人の形に成長できれば、液体でどうとでも出来る。
その未知の悪魔の血でも研究できます』
『・・・禁忌な部分の研究ではあるが、既にクローンとて同じこと。
決定は、理事であるフェレス卿に』
『そうですね-・・・では、折衷案でいきましょう』
燐はギリッと歯ぎしりし、拳を握った。今すぐにでもぶん殴りたい。ここにいる全て-・・・。
エリクサー研究、あの外道院とまるっきり同じ。人間の血。まずその"生贄"として成功するのが、
人の姿にも満たない玲薇の、悪魔の血を複雑に作り出された細胞の集まり。
外道院が玲薇の存在を知らず出雲を使おうとしたのは、玲薇の事は知らなかったから。
メフィストはここだけの研究員たちの秘密にしたのだろう。