第ニ十話 生きる為に
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『胸ッックソ悪ィ』
穏やかだった場面に、そう口を挟むのは不機嫌そうな獅郎。
『胡散臭ェ偽善者が。調子に乗ってんじゃねぇ』
そんな態度の獅郎に、ルーシーは呆れている。
『・・・藤本、アタシの判断だ。文句あるってのかい?』
『たまたま上手くいっただけだ!!破壊するのが最善だったんだ・・・!』
どうして獅郎は、そんなに悪魔に対して敵意むき出しなのだろう。
獅郎が実験体である事を知らないユリは、そんな風に思ってるかもしれない。
一触即発な雰囲気に、場を和ませようとリックが飲み物を手に獅郎の元へ駆け寄る。
『ふ・・・藤本さんお疲れ様です!!コレどうぞ、冷えてまグッ』
けれど獅郎は受け取らない。リックの顔面を足蹴りしたのだ。
『リック!!』
『藤本!』
『話しかけてんじゃねぇ。下二級のカス共が』
どうしてこんなに獅郎は変わってしまったのだろう。
初めて会った時は冷たい態度なものの、寄り添った時の心は暖かかった筈なのに。
『弱虫!!!』
仲間を傷付けられ悪くいわれ、我慢ならなくなったユリはブチ切れ獅郎にビンタを食らわした。
人の心は、こんなに冷たいものに変わってしまうのだろうか。
『・・・・・・あァ?』
『貴方に、どんなつらい事があったの!?』
指摘され、思い出したくない過去が、獅郎の脳を支配していく。
それでも、ユリの怒りは収まらない。
『自分がつらいからって周りを傷つける人は弱い人だ!!!』
『・・・だ、このガキ!!』
女だろうが子供だろうがもう関係ない。あの似た顔の連中の中から唯一自分は生き残った。
メフィストにも、悪魔にひざまつかないと啖呵を切っている。祓魔師になったのも強く、自由を手に入れる為。
それを全て否定された。
『もっぺん言ってみろてめェ!!』
『ガキは貴方だよ!世界中敵みたいな顔して・・・今のままじゃ一人ぼっちになっちゃう・・・』
ユリはリックに、獅郎はオセオラに抑えつけられていたが、獅郎は振り切り手を挙げた。
『『『!!!』』』
が、ユリを守るように壁になった青い光。いや、炎。
『・・・ッ!!痛っ・・・』
獅郎の振り上げた手が、焼けた。周りが騒然とする。
『何だ、今のは!』
『鬼火か・・・!?』
『大丈夫か、藤本』
だが、一人ユリはその存在を知っていた。昔の遊び相手だったから。
『・・・燐火』
その呟きは、誰にも届かない。
『何でもいい!』
火傷になりかけた手に弱気になった獅郎を見かね、オセオラがかつぎ上げる。
ルーシーの命令だ。
『そいつら早くトラックに積み込みな!罰を覚悟するんだね!』
『は!?オセオラてめー、降ろせ!!』
一一一一一
数日後、獅郎はユリが働いている養魔場を訪れていた。ここはどこに目を向けても悪魔がいる。
『・・・この間はごめんなさい。貴方の事、何も知らないのに怒鳴り散らして・・・叩いた』
『別に』
ユリの謝罪に素っ気なく答える。その態度に、やはり疑問だ。
『・・・?何しに来たの??』
『初めて来たが、想像通りクソみてーな所だ。悪魔大好きの変態に、ピッタリの部署があってよかったな』
『うん!!それは本当に!!私も思ってる!』
眩しくキラキラ光るユリの瞳。
『毎日楽しいよ!』
『・・・・・・・・』
意気込む彼女に、獅郎は何も言えなくなる。
『見て!私のつくったゴーレム、カワイイでしょ』
『使い魔はペットじゃねぇぞ』
タバコを咥え、腰を降ろし獅郎はグリーンマンを持ち上げる。
『一瞬でも弱気を見せれば、主人を殺す。弱ければ生き残れない。利用されて道具にされて殺される』
そう、ほんの昔の自分はそうだった。
『お気楽能天気なお前には、判んねーだろうな』
持ち上げていたグリーンマンを仲間の元に軽く放り込めば、見事仲間のグリーンマンがキャッチしている。
どうしていまここで過去を語ろうと思ったのか。
『俺は、生まれて気づいたら閉じ込められて薬づけだった。兄弟はほとんど疑問も持たず、
おかしくなって死んだ。守ってくれる"親"も、いなかったんでな。俺は強いから生き残れたんだ。
だから、弱いって言われるのは、我慢ならねぇ・・・!!二度と言うな!!』
虚しそうな、悲しそうな、ユリの複雑な表情。
『・・・なんだ、その顔?』
『ひどいめに、あったんだね』
『・・・ひどい?バーカ、普通だ!こんなのは・・・』
『御両親がいない』
獅郎の顔から、作り笑いが消える。
『兄弟もつらいめにあってる。怖い思いをしてきた』
『ただの、クソの話だろ』
思考が止まった。ユリに優しく頬を両手で包まれ顔を寄せられた時には、彼女から触れるだけのキスがおくられる。
『私、獅郎のこと好きだよ』
真っ直ぐで迷いのない瞳は、嘘だと思えなくて。照れる自分を必死に抑え込む。
『・・・お、まえ・・・いくつだ』
お互い見つめ合う顔は真っ赤だ。
『16』
『・・・ガキだな、有り得ねぇ』
そのまま、獅郎は立ち去ってしまった。
一人ポツンと残ったユリは、揺らめく青い炎を見つける。
『貴方・・・』
声をかけ、近寄った。
『私を見守ってくれてるの?なんてね』
青い炎は口なんてないから喋りかけてこないけれど、ただただ話相手になってくれるだけでよかったのだ。
『私、フラれちゃった』
二人の様子を見ていた燐は、仰け反っていた。
「ちょっと・・・大丈夫ですか?」
そんな燐を、一応心配するメフィスト。
「もおおお恥ずかしすぎて見ていらんねぇ~~~!!(てか俺、玲薇に同じ事やってんだよなぁ!!!)
まさか、こんな事に・・・親父と母ちゃんどうなっちまうんだ・・・」
「さぁて、どうなってしまうんでしょうねぇ?」
ここまで、楽しい展開が続いている。けれどメフィストは言っていた。悲劇の旅になると。
悲劇はこれからゆっくりゆっくりやってくるのだろうか・・・。
二人の行く先を追いかける燐とメフィスト。たまたま獅郎の背後のドアに出て、二人は慌てて曲がり角に身を隠す。
『ゲッ』
獅郎の目の前に現れたリックとユリに、嫌に声が出た。
『しろう!!』
『クソッ、(なんでコイツ昨日の今日でフツーに話しかけてきてんだよ、この変態女・・・)』
ブツブツ文句言う獅郎に、たまらずユリは表情が歪む。
『・・・き、気まずいよね。へへ』
『判ってんなら話しかけんなよ!』
『そんな・・・嫌だ。違うの、昨日は・・・あんなふうになりたかったんじゃなくて・・・』
モゴモゴするユリに苛立ちを覚えるが、必死に冷静を保つ。
『友達ならいいぞ』
『・・・えっ』
『考えたんだ。一人より、味方が多い方がいざって時"得"だってな』
理由はどうであれ、獅郎の視界に入れることが何より嬉しかった。
『うん!!』
満面の笑みで、獅郎に頷くユリ。
『あッ、じゃあ!!まず、リックに謝って!!私、その件については一切許してないから!』
『『はぁ!?』』
『さっ、さあ!さあ!』
獅郎がリックを足蹴りしたこと、渋る獅郎の顔が怖く謝らなくていいと否定するが、ユリがそれを許せなかった。
リックがどんなに人に恵まれているか、獅郎と違って"得"だと。得を得で返され意地になるが。
『俺が悪かったよ、これで仲直りだ』
渋々手を差し出す獅郎に驚くリックに、無理矢理手を握る。
『い・・・いや、もういいよ別に。気にしてない』
『よし!これでいいな』
『うん!!リックがいいならいい』
一先ず、皆仲直り出来た事を見守れた燐は、先へと進む。
穏やかだった場面に、そう口を挟むのは不機嫌そうな獅郎。
『胡散臭ェ偽善者が。調子に乗ってんじゃねぇ』
そんな態度の獅郎に、ルーシーは呆れている。
『・・・藤本、アタシの判断だ。文句あるってのかい?』
『たまたま上手くいっただけだ!!破壊するのが最善だったんだ・・・!』
どうして獅郎は、そんなに悪魔に対して敵意むき出しなのだろう。
獅郎が実験体である事を知らないユリは、そんな風に思ってるかもしれない。
一触即発な雰囲気に、場を和ませようとリックが飲み物を手に獅郎の元へ駆け寄る。
『ふ・・・藤本さんお疲れ様です!!コレどうぞ、冷えてまグッ』
けれど獅郎は受け取らない。リックの顔面を足蹴りしたのだ。
『リック!!』
『藤本!』
『話しかけてんじゃねぇ。下二級のカス共が』
どうしてこんなに獅郎は変わってしまったのだろう。
初めて会った時は冷たい態度なものの、寄り添った時の心は暖かかった筈なのに。
『弱虫!!!』
仲間を傷付けられ悪くいわれ、我慢ならなくなったユリはブチ切れ獅郎にビンタを食らわした。
人の心は、こんなに冷たいものに変わってしまうのだろうか。
『・・・・・・あァ?』
『貴方に、どんなつらい事があったの!?』
指摘され、思い出したくない過去が、獅郎の脳を支配していく。
それでも、ユリの怒りは収まらない。
『自分がつらいからって周りを傷つける人は弱い人だ!!!』
『・・・だ、このガキ!!』
女だろうが子供だろうがもう関係ない。あの似た顔の連中の中から唯一自分は生き残った。
メフィストにも、悪魔にひざまつかないと啖呵を切っている。祓魔師になったのも強く、自由を手に入れる為。
それを全て否定された。
『もっぺん言ってみろてめェ!!』
『ガキは貴方だよ!世界中敵みたいな顔して・・・今のままじゃ一人ぼっちになっちゃう・・・』
ユリはリックに、獅郎はオセオラに抑えつけられていたが、獅郎は振り切り手を挙げた。
『『『!!!』』』
が、ユリを守るように壁になった青い光。いや、炎。
『・・・ッ!!痛っ・・・』
獅郎の振り上げた手が、焼けた。周りが騒然とする。
『何だ、今のは!』
『鬼火か・・・!?』
『大丈夫か、藤本』
だが、一人ユリはその存在を知っていた。昔の遊び相手だったから。
『・・・燐火』
その呟きは、誰にも届かない。
『何でもいい!』
火傷になりかけた手に弱気になった獅郎を見かね、オセオラがかつぎ上げる。
ルーシーの命令だ。
『そいつら早くトラックに積み込みな!罰を覚悟するんだね!』
『は!?オセオラてめー、降ろせ!!』
一一一一一
数日後、獅郎はユリが働いている養魔場を訪れていた。ここはどこに目を向けても悪魔がいる。
『・・・この間はごめんなさい。貴方の事、何も知らないのに怒鳴り散らして・・・叩いた』
『別に』
ユリの謝罪に素っ気なく答える。その態度に、やはり疑問だ。
『・・・?何しに来たの??』
『初めて来たが、想像通りクソみてーな所だ。悪魔大好きの変態に、ピッタリの部署があってよかったな』
『うん!!それは本当に!!私も思ってる!』
眩しくキラキラ光るユリの瞳。
『毎日楽しいよ!』
『・・・・・・・・』
意気込む彼女に、獅郎は何も言えなくなる。
『見て!私のつくったゴーレム、カワイイでしょ』
『使い魔はペットじゃねぇぞ』
タバコを咥え、腰を降ろし獅郎はグリーンマンを持ち上げる。
『一瞬でも弱気を見せれば、主人を殺す。弱ければ生き残れない。利用されて道具にされて殺される』
そう、ほんの昔の自分はそうだった。
『お気楽能天気なお前には、判んねーだろうな』
持ち上げていたグリーンマンを仲間の元に軽く放り込めば、見事仲間のグリーンマンがキャッチしている。
どうしていまここで過去を語ろうと思ったのか。
『俺は、生まれて気づいたら閉じ込められて薬づけだった。兄弟はほとんど疑問も持たず、
おかしくなって死んだ。守ってくれる"親"も、いなかったんでな。俺は強いから生き残れたんだ。
だから、弱いって言われるのは、我慢ならねぇ・・・!!二度と言うな!!』
虚しそうな、悲しそうな、ユリの複雑な表情。
『・・・なんだ、その顔?』
『ひどいめに、あったんだね』
『・・・ひどい?バーカ、普通だ!こんなのは・・・』
『御両親がいない』
獅郎の顔から、作り笑いが消える。
『兄弟もつらいめにあってる。怖い思いをしてきた』
『ただの、クソの話だろ』
思考が止まった。ユリに優しく頬を両手で包まれ顔を寄せられた時には、彼女から触れるだけのキスがおくられる。
『私、獅郎のこと好きだよ』
真っ直ぐで迷いのない瞳は、嘘だと思えなくて。照れる自分を必死に抑え込む。
『・・・お、まえ・・・いくつだ』
お互い見つめ合う顔は真っ赤だ。
『16』
『・・・ガキだな、有り得ねぇ』
そのまま、獅郎は立ち去ってしまった。
一人ポツンと残ったユリは、揺らめく青い炎を見つける。
『貴方・・・』
声をかけ、近寄った。
『私を見守ってくれてるの?なんてね』
青い炎は口なんてないから喋りかけてこないけれど、ただただ話相手になってくれるだけでよかったのだ。
『私、フラれちゃった』
二人の様子を見ていた燐は、仰け反っていた。
「ちょっと・・・大丈夫ですか?」
そんな燐を、一応心配するメフィスト。
「もおおお恥ずかしすぎて見ていらんねぇ~~~!!(てか俺、玲薇に同じ事やってんだよなぁ!!!)
まさか、こんな事に・・・親父と母ちゃんどうなっちまうんだ・・・」
「さぁて、どうなってしまうんでしょうねぇ?」
ここまで、楽しい展開が続いている。けれどメフィストは言っていた。悲劇の旅になると。
悲劇はこれからゆっくりゆっくりやってくるのだろうか・・・。
二人の行く先を追いかける燐とメフィスト。たまたま獅郎の背後のドアに出て、二人は慌てて曲がり角に身を隠す。
『ゲッ』
獅郎の目の前に現れたリックとユリに、嫌に声が出た。
『しろう!!』
『クソッ、(なんでコイツ昨日の今日でフツーに話しかけてきてんだよ、この変態女・・・)』
ブツブツ文句言う獅郎に、たまらずユリは表情が歪む。
『・・・き、気まずいよね。へへ』
『判ってんなら話しかけんなよ!』
『そんな・・・嫌だ。違うの、昨日は・・・あんなふうになりたかったんじゃなくて・・・』
モゴモゴするユリに苛立ちを覚えるが、必死に冷静を保つ。
『友達ならいいぞ』
『・・・えっ』
『考えたんだ。一人より、味方が多い方がいざって時"得"だってな』
理由はどうであれ、獅郎の視界に入れることが何より嬉しかった。
『うん!!』
満面の笑みで、獅郎に頷くユリ。
『あッ、じゃあ!!まず、リックに謝って!!私、その件については一切許してないから!』
『『はぁ!?』』
『さっ、さあ!さあ!』
獅郎がリックを足蹴りしたこと、渋る獅郎の顔が怖く謝らなくていいと否定するが、ユリがそれを許せなかった。
リックがどんなに人に恵まれているか、獅郎と違って"得"だと。得を得で返され意地になるが。
『俺が悪かったよ、これで仲直りだ』
渋々手を差し出す獅郎に驚くリックに、無理矢理手を握る。
『い・・・いや、もういいよ別に。気にしてない』
『よし!これでいいな』
『うん!!リックがいいならいい』
一先ず、皆仲直り出来た事を見守れた燐は、先へと進む。