第十九話 過去へ
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魔障を受けていたり、悪魔の血縁で身よりのない子供を収容し、祓魔師として養成していた。
しかし、青い夜以降解体される。
「何故だか判りますか?」
メフィストに聞かれ、首を傾げる燐。
「知るわけねーよ。何でだ?」
「クソみてーな所だったからですよ」
アサイラムはいわば表向きの顔。その深部には"十三號セクション"と呼ばれる研究施設を隠していた。
その研究内容は複雑で、端的に言えば王クラスの悪魔の憑依に耐える人体を造り出し、
悪魔の王のクローンを造り、憑依体となるよう育成する研究というもの。
「そう、藤本獅郎はここで生まれました。氣の王アザゼルのクローンとして」
燐の目の前に広がる異様な光景。それは似たつくりの顔をした人間が水槽の中で液体につけられていて。
雪男が言っていた言葉を思い出す。
(悪魔の器を造る為に、大勢の人命を実験に使っていたんだ。しかも神父さんは、その実験で生まれた実験体でー・・・)
玲薇も、そうだって•••
「・・・玲薇も、そうだって言ったよな・・・?」
震えそうになる声を、必死に抑える。いまなら怒り任せに攻撃出来るが、それはしてはならない。
「そうですね・・・後に見ることになるでしょうから、それは伝えておきます。暴れられても面倒なので。
風美夜さんはここのクローンとはまた別の存在。小さな無数の細胞に、様々な悪魔の血を入れています。
まぁ、一先ず風美夜さんの験体はここにはいません。そう、サタンが現れるまではね」
「サタン・・・」
いずれ組み込まれる彼女の身体・・・。
(何のために・・・っ)
悔しくて、いたたまれなくて、どうして彼女だけが、どうして彼女が。
『燐!』
笑顔で笑う彼女の顔が思い出す。
「力はないって、最初言ってたじゃねーか!何でだよ!?」
「元から秘めた力が起こされたのですからしょうがないでしょう。知ったこっちゃありません。
彼女が造られたのは、これからの過去の話を見ればわかる事です。見て、事実を知る覚悟はおありか?
ですから最初に言ったでしょう、貴方達が選ぶのは荊棘の道だと」
(・・・知って、俺はどうにかなるのか?)
燐はギリッと奥歯を噛み締め、拳をつくる。
「・・・お前はやっぱり、敵なのか?なんのためにこんな!」
「ルシフェルの為ですよ」
いつものようにおふざけ混じりの発言じゃない、メフィストの珍しくキッパリ言い放った言葉。
「実験体研究者、研究の全て。この施設の何もかもが、ルシフェルという強大な爆弾が爆発するのを、
ただひたすらに時間稼ぎする為に存在しているんです」
有無を言わさず、燐がメフィストに連れられた場所。そこにあるのは機械仕掛けの巨大なドアだ。
相当秘密がある場所なのだろう、先程の話の内容といい、言い様のない緊張が燐を襲っているようだ。
「この先、足は肩幅、後ろ手を組み私の後ろで一言も喋らぬように」
警護の者の手により、重たいそのドアが開いていく。その部屋は実験室のようで、
広い部屋に、中央には包帯だらけの血まみれの身体がベッドに横になっていた。
一人の研究者がメフィストに気付き声をかける。
『フェレス卿』
『遅くなってしまい申し訳ありません。もう実験は始められそうですか?エミネスクくん』
燐はメフィストに言われた通りにし、大人しく話を聞く。
『はい、今日はかなりお加減が優れませんが、実験には好条件です』
『では、始めて下さい』
メフィストの合図で、これから実験が始まる。
見届けようと席を移動した所、グリゴリの一人、シェミハザがグリゴルセデスを引き連れて来ていた。
なんでも、シェミハザは全てを見届けねばならないと言って。
そして、エミネスクが開発したとされる"エリクサー51"を紹介していた。
エリクサーは、肉体再生能力の優れた悪魔59体から抽出した血清を、マウスやヒトの死体などに注入。
壊死の阻止がみられた個体から、さらに血清を採り、ルシフェル群全験体で実験したところ、
11体に細胞再生能力の向上がみられたと言う。
『その11体の験体から細胞抽出し、特殊に精製したものがこのエリクサー51です。
この創薬こそ、ルシフェル陛下のお苦しみを少しでも和らげると確信しております』
燐は無い脳を使ってグルグル必死に頭をフル回転させる。
(えっと、つまり。エゲツねー実験?をしまくってつくった薬で、それが全部ルシフェルの体のため・・・?なんで・・・)
エリクサー51の液体を、床に伏せるルシフェルの体に入れていく。
しかし、30分経過するがルシフェルの血まみれの体には何の変化も訪れない。
状況を見かね、燐に動かぬよう一言告げメフィストがルシフェルの元に寄った。
『兄上、私の声が聞こえますか。お加減は如何です?』
喋ろうとしたのか、しかしそれもままらなく酸素ボンベが入っている口から血が溢れるほどの咳をするルシフェル。
どうやら、実験は失敗のようだ。ルシフェルの体は一向によくならない。
『兄上、その肉体を捨てれば痛みの苦しみから解放されるのです。これ以上、アッシャーを巻き込まず、
静かにゲヘナへお帰りなさい。いずれ新たな受肉も叶いましょう』
酸素ボンベを外してもらったルシフェルが、ゆっくり静かに口を開く。
『はッ、サマエル。ゲボ・・・お前は、残酷・・・ッグホ、ゴホッゴホッ、で、す。
私は、い・・・つか・・・ッ報われ・・・る、ッ信じています』
閉ざされていたルシフェルの瞳が開かれると、燐はゾワリと全身で恐怖を感じた。
それはまた、メフィストも同様のようで、彼は物珍しく舌打ちする。
『これ以上は兄上のお身体に障る。今日はこれで解散としましょう。
残念でしたが、エリクサー実験の成功、期待していますよ、エミネスクくん』
『申し訳ありませんでした』
燐も最後尾で、皆と一緒に部屋を出ていく。その時、チラリと視線をルシフェルに向ける。
動けないルシフェルの身体。何をするわけでもないが、禍々しく、恐ろしいその眼は、破壊を恐れる。
ドアが完全に閉ざされたのを確認してから、燐は崩れるように地面に手をつけた。
吐く息が荒々しい。知らずのうちに身体は強ばっていたのだろう。
「・・・ッ、ルシフェル・・・前に一度みたけど・・・」
宣戦布告しに来たあの時とは、訳が違う。
「肌で感じましたか?ルシフェルがブチ切れたらどうなるか」
(そうか、だからなのか)
メフィストがルシフェルを恐れる理由。
しかし、青い夜以降解体される。
「何故だか判りますか?」
メフィストに聞かれ、首を傾げる燐。
「知るわけねーよ。何でだ?」
「クソみてーな所だったからですよ」
アサイラムはいわば表向きの顔。その深部には"十三號セクション"と呼ばれる研究施設を隠していた。
その研究内容は複雑で、端的に言えば王クラスの悪魔の憑依に耐える人体を造り出し、
悪魔の王のクローンを造り、憑依体となるよう育成する研究というもの。
「そう、藤本獅郎はここで生まれました。氣の王アザゼルのクローンとして」
燐の目の前に広がる異様な光景。それは似たつくりの顔をした人間が水槽の中で液体につけられていて。
雪男が言っていた言葉を思い出す。
(悪魔の器を造る為に、大勢の人命を実験に使っていたんだ。しかも神父さんは、その実験で生まれた実験体でー・・・)
玲薇も、そうだって•••
「・・・玲薇も、そうだって言ったよな・・・?」
震えそうになる声を、必死に抑える。いまなら怒り任せに攻撃出来るが、それはしてはならない。
「そうですね・・・後に見ることになるでしょうから、それは伝えておきます。暴れられても面倒なので。
風美夜さんはここのクローンとはまた別の存在。小さな無数の細胞に、様々な悪魔の血を入れています。
まぁ、一先ず風美夜さんの験体はここにはいません。そう、サタンが現れるまではね」
「サタン・・・」
いずれ組み込まれる彼女の身体・・・。
(何のために・・・っ)
悔しくて、いたたまれなくて、どうして彼女だけが、どうして彼女が。
『燐!』
笑顔で笑う彼女の顔が思い出す。
「力はないって、最初言ってたじゃねーか!何でだよ!?」
「元から秘めた力が起こされたのですからしょうがないでしょう。知ったこっちゃありません。
彼女が造られたのは、これからの過去の話を見ればわかる事です。見て、事実を知る覚悟はおありか?
ですから最初に言ったでしょう、貴方達が選ぶのは荊棘の道だと」
(・・・知って、俺はどうにかなるのか?)
燐はギリッと奥歯を噛み締め、拳をつくる。
「・・・お前はやっぱり、敵なのか?なんのためにこんな!」
「ルシフェルの為ですよ」
いつものようにおふざけ混じりの発言じゃない、メフィストの珍しくキッパリ言い放った言葉。
「実験体研究者、研究の全て。この施設の何もかもが、ルシフェルという強大な爆弾が爆発するのを、
ただひたすらに時間稼ぎする為に存在しているんです」
有無を言わさず、燐がメフィストに連れられた場所。そこにあるのは機械仕掛けの巨大なドアだ。
相当秘密がある場所なのだろう、先程の話の内容といい、言い様のない緊張が燐を襲っているようだ。
「この先、足は肩幅、後ろ手を組み私の後ろで一言も喋らぬように」
警護の者の手により、重たいそのドアが開いていく。その部屋は実験室のようで、
広い部屋に、中央には包帯だらけの血まみれの身体がベッドに横になっていた。
一人の研究者がメフィストに気付き声をかける。
『フェレス卿』
『遅くなってしまい申し訳ありません。もう実験は始められそうですか?エミネスクくん』
燐はメフィストに言われた通りにし、大人しく話を聞く。
『はい、今日はかなりお加減が優れませんが、実験には好条件です』
『では、始めて下さい』
メフィストの合図で、これから実験が始まる。
見届けようと席を移動した所、グリゴリの一人、シェミハザがグリゴルセデスを引き連れて来ていた。
なんでも、シェミハザは全てを見届けねばならないと言って。
そして、エミネスクが開発したとされる"エリクサー51"を紹介していた。
エリクサーは、肉体再生能力の優れた悪魔59体から抽出した血清を、マウスやヒトの死体などに注入。
壊死の阻止がみられた個体から、さらに血清を採り、ルシフェル群全験体で実験したところ、
11体に細胞再生能力の向上がみられたと言う。
『その11体の験体から細胞抽出し、特殊に精製したものがこのエリクサー51です。
この創薬こそ、ルシフェル陛下のお苦しみを少しでも和らげると確信しております』
燐は無い脳を使ってグルグル必死に頭をフル回転させる。
(えっと、つまり。エゲツねー実験?をしまくってつくった薬で、それが全部ルシフェルの体のため・・・?なんで・・・)
エリクサー51の液体を、床に伏せるルシフェルの体に入れていく。
しかし、30分経過するがルシフェルの血まみれの体には何の変化も訪れない。
状況を見かね、燐に動かぬよう一言告げメフィストがルシフェルの元に寄った。
『兄上、私の声が聞こえますか。お加減は如何です?』
喋ろうとしたのか、しかしそれもままらなく酸素ボンベが入っている口から血が溢れるほどの咳をするルシフェル。
どうやら、実験は失敗のようだ。ルシフェルの体は一向によくならない。
『兄上、その肉体を捨てれば痛みの苦しみから解放されるのです。これ以上、アッシャーを巻き込まず、
静かにゲヘナへお帰りなさい。いずれ新たな受肉も叶いましょう』
酸素ボンベを外してもらったルシフェルが、ゆっくり静かに口を開く。
『はッ、サマエル。ゲボ・・・お前は、残酷・・・ッグホ、ゴホッゴホッ、で、す。
私は、い・・・つか・・・ッ報われ・・・る、ッ信じています』
閉ざされていたルシフェルの瞳が開かれると、燐はゾワリと全身で恐怖を感じた。
それはまた、メフィストも同様のようで、彼は物珍しく舌打ちする。
『これ以上は兄上のお身体に障る。今日はこれで解散としましょう。
残念でしたが、エリクサー実験の成功、期待していますよ、エミネスクくん』
『申し訳ありませんでした』
燐も最後尾で、皆と一緒に部屋を出ていく。その時、チラリと視線をルシフェルに向ける。
動けないルシフェルの身体。何をするわけでもないが、禍々しく、恐ろしいその眼は、破壊を恐れる。
ドアが完全に閉ざされたのを確認してから、燐は崩れるように地面に手をつけた。
吐く息が荒々しい。知らずのうちに身体は強ばっていたのだろう。
「・・・ッ、ルシフェル・・・前に一度みたけど・・・」
宣戦布告しに来たあの時とは、訳が違う。
「肌で感じましたか?ルシフェルがブチ切れたらどうなるか」
(そうか、だからなのか)
メフィストがルシフェルを恐れる理由。