第十九話 過去へ
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だが、獅郎の隠れ家は見つかってしまう。
『見つけたぞ、いい加減観念しろ、獅郎!』
『・・・判ったよ』
『・・・立派な隠れ家だ。今まで抜け出してはここに隠れてたのか。アザゼル群でも、こんな事をするのはお前くらいだよ』
『・・・・・・・』
不幸中の幸いか、獅郎を捜しに来た大人はユリも見つける。
子供に話を聞かれてまずいと判断し、何かと処理しようと考えられたが、彼らが引き連れていた黒いイヌをユリが見つめていた。
そのイヌは悪魔の一種で、"黒妖犬"(ブラックドッグ)。悪魔が見えれば話は別だと、ユリは一旦アサイラムで保護されることになる。
獅郎共々ユリも車に乗り、まだ知らぬアサイラムまで一緒に行く。
初めて見る風景に、ユリは瞳を輝かせた。
『わぁ・・・』
小さい頃、俺は孤立していた。
気持ちや力の我慢の仕方が判らなくて、よく人に大怪我をさせて、気付いた時にはすっかりビビられてた。
でも、俺には雪男がいたし、玲薇もいてくれて。親父は、俺に帰る場所をつくってくれた。
それって、本当に幸せなことだったんだ。俺は本当の孤独は知らない。だから、この時の母ちゃんの孤独がどんだけか。
どんだけ心細いのか、俺には想像もつかない
『わ・・・』
大きな建物に、広い廊下。
『・・・ここが、アサイラム?』
辺りを見回し、興味を引かれるユリ。しかし、燐には見覚えのある建物だった。
40年前、アサイラムと呼ばれていた場所は、いまでいう祓魔塾となっている場所だったから。
一時保護されるユリは、獅郎と離れ離れにされてしまう。少しの一人の時間、ユリは身綺麗にされ、身元を調査された。
身元調査の結果、彼女の正式な名前はユリ・エギン。蓉子・エギンという、六年前死亡した女性の子供だ。
父親は不明、祖父母蓉子・エギンの両親も自殺。エギン家は財閥であったが、解体された後没落した。
一族は散り散りらしく、ユリは孤立無援の身だと。
『因って、このアサイラムに正式に収容します。質問は』
『しつもん・・・えっと、ア、アサイラムはどんなとこですか?』
『ここは貴女のような才能を持つ子供を保護・教育する施設です』
『さいのうって、なに?』
『祓魔師になる才能です』
他に行くあてもないユリは、有無を言わさずアサイラムにいることになる。
初めての悪魔の勉強に、様々な訓練を受けたユリだが、とても楽しかったようだ。
ユリの行動が一先ず落ち着いたところで、燐は再び鍵をつかい次に移動する。すると、今度はメフィストの部屋にいた。
『さて、貴方がアザゼル群験体番号SO-004獅郎くんですね』
ユリと離れて獅郎が連れられた場所はどうやら、メフィストの理事室だ。
『貴方、警備を掻い潜って頻繁に十三號セクションを抜け出すそうですね?スラム街に隠れ家まで作ってたとか?
フフフ、面白い。験体全体でも、貴方のような個体は初めてですよ。隠れ家に三万円ほど小金が見つかったそうですが』
『!』
『どうやって、集めたんです?』
『チッ、盗んでねーぞ。掃除したり部品売ったりいろいろやって・・・貯めたんだ』
『それは大変だったでしょう。貴方は子供だ。世間は厳しい。
正直、セクションで大人しくしていた方が楽に生きられると気付いたのでは?』
『そうだな、世の中ゴミためだ。でも、クソセクションよりよっぽどマシだ。金が貯まったらここから脱出して、
どっか遠くで自由に生きるつもりだった。セクションで似たような顔した連中と、世間も知らねーまま生きるなら、
死んだ方がマシだ』
獅郎の心の察中を知り、メフィストは頷く。
『・・・成程ね』
『で?』
『え?』
『俺を殺すのか?お前、セクションで一番偉い理事なんだろ、メフィスト・フェレス』
するとメフィストは、大胆に笑い出す。
『ッはっはっはっはっ!?何を言うかと思えば、イッヒッヒッ!貴方・・・クク、イイですね、面白い・・・!』
『そうか・・・?』
なんでも構わない。こんなチャンス、獅郎にはもうないのかもしれないのだから。
今がメフィストに、言いたいことを全てさらけ出してやるのだ。
『俺が気に入ったか?メフィスト』
血相を変える獅郎に、メフィストは目を見開く。
『じゃあ俺を候補生にしろ!』
机の上に足を投げ出し、メフィストのネクタイを引っ張る。そして、頭を強く揺さぶりをかけた。
『十五年に一人、各験体群から候補生を出すはずだ。今年はその十五年目、アザゼル群はまだ決まってない。
条件も俺に合ってる、俺にしろ!!候補生になれば、実験体の務めも一年に一度になる!
祓魔師になれば、自分の力で生きていける!!聖騎士になれば、地位と名誉ときょ・・・女が手に入る!!自由だ!!
俺は人間が悪魔から助かる為につくられた、そんな人生はゴメンだ。悪魔の犠牲のままくたばるのはな・・・!!』
勢いに任せ、言いたいことは言い切った。
しかし、メフィストは嘲笑う。
『なんと無知で愚かなんでしょう。聖騎士は、自由への切符ではありません。いいですか?
候補生になれば、セクションの事を外部に漏らさぬよう、命と引き換えにモリナスの契約を結ぶことになる。
訓練も、過酷を極める。元・実験体は生きている限り脱落することは許されません。仮に聖騎士になれても、
騎士團に一生忠誠を誓う犬になるだけです。可哀想に、永久に自由にはなれませんね、イッヒッヒッ』
『・・・上等だ。目の前の悪魔は、一匹残らず殺してやる。殺して殺して殺しまくって、
聖騎士になったら飼い主どもは用済みだ。最後はテメェの喉笛喰い千切ってやるよ・・・』
『面白い。いいでしょう!貴方をアザゼル群の候補生に推薦します』
『あ!?マジか!?』
『但し、条件があります』
『!?』
『貴方が一度でも悪魔の前に屈した時は、私のお願いを何でも一つだけ聞いて下さい』
この時はまだ、この条件の意味をろくに理解出来ないでいた。
『んだ、それ・・・』
それよりも、目前にした自由の道を閉ざしたくなかったのだ。
『まあいい、乗った。必ず守れよ!!』
獅郎が執務室から出て行ってから、様子を伺っていた燐の存在に気づいていたメフィスト。
燐のそのスタイルを見て、すっかり家政婦は見たみたいになっていると指摘されるが、どうすることも出来ない。
なので、今までみた過去の時の流れで疑問に思ったことを聞いてみる。
「・・・親父が言ってたその、何たらセクションって何だ?今は祓魔塾がアサイラム?って呼ばれてるのは判ったけど、
アサイラムとセクションは別のものなのか?」
「では、先へお進みなさい」
「教えてくんねーのか」
言われるがまま、鍵を使いドアを開ける。
「あれ、またメフィストの・・・?」
先程と部屋は変わっていないが、メフィストが出迎える。
「遅いですよ、奥村くん。さぁ、ついてきなさい」
「あれから何年経ったんだ?」
「四年です」
「急だな!」
「ここは長らく、通称"アサイラム"と呼ばれる児童養護施設兼祓魔師養成学校でもあったのです」
『見つけたぞ、いい加減観念しろ、獅郎!』
『・・・判ったよ』
『・・・立派な隠れ家だ。今まで抜け出してはここに隠れてたのか。アザゼル群でも、こんな事をするのはお前くらいだよ』
『・・・・・・・』
不幸中の幸いか、獅郎を捜しに来た大人はユリも見つける。
子供に話を聞かれてまずいと判断し、何かと処理しようと考えられたが、彼らが引き連れていた黒いイヌをユリが見つめていた。
そのイヌは悪魔の一種で、"黒妖犬"(ブラックドッグ)。悪魔が見えれば話は別だと、ユリは一旦アサイラムで保護されることになる。
獅郎共々ユリも車に乗り、まだ知らぬアサイラムまで一緒に行く。
初めて見る風景に、ユリは瞳を輝かせた。
『わぁ・・・』
小さい頃、俺は孤立していた。
気持ちや力の我慢の仕方が判らなくて、よく人に大怪我をさせて、気付いた時にはすっかりビビられてた。
でも、俺には雪男がいたし、玲薇もいてくれて。親父は、俺に帰る場所をつくってくれた。
それって、本当に幸せなことだったんだ。俺は本当の孤独は知らない。だから、この時の母ちゃんの孤独がどんだけか。
どんだけ心細いのか、俺には想像もつかない
『わ・・・』
大きな建物に、広い廊下。
『・・・ここが、アサイラム?』
辺りを見回し、興味を引かれるユリ。しかし、燐には見覚えのある建物だった。
40年前、アサイラムと呼ばれていた場所は、いまでいう祓魔塾となっている場所だったから。
一時保護されるユリは、獅郎と離れ離れにされてしまう。少しの一人の時間、ユリは身綺麗にされ、身元を調査された。
身元調査の結果、彼女の正式な名前はユリ・エギン。蓉子・エギンという、六年前死亡した女性の子供だ。
父親は不明、祖父母蓉子・エギンの両親も自殺。エギン家は財閥であったが、解体された後没落した。
一族は散り散りらしく、ユリは孤立無援の身だと。
『因って、このアサイラムに正式に収容します。質問は』
『しつもん・・・えっと、ア、アサイラムはどんなとこですか?』
『ここは貴女のような才能を持つ子供を保護・教育する施設です』
『さいのうって、なに?』
『祓魔師になる才能です』
他に行くあてもないユリは、有無を言わさずアサイラムにいることになる。
初めての悪魔の勉強に、様々な訓練を受けたユリだが、とても楽しかったようだ。
ユリの行動が一先ず落ち着いたところで、燐は再び鍵をつかい次に移動する。すると、今度はメフィストの部屋にいた。
『さて、貴方がアザゼル群験体番号SO-004獅郎くんですね』
ユリと離れて獅郎が連れられた場所はどうやら、メフィストの理事室だ。
『貴方、警備を掻い潜って頻繁に十三號セクションを抜け出すそうですね?スラム街に隠れ家まで作ってたとか?
フフフ、面白い。験体全体でも、貴方のような個体は初めてですよ。隠れ家に三万円ほど小金が見つかったそうですが』
『!』
『どうやって、集めたんです?』
『チッ、盗んでねーぞ。掃除したり部品売ったりいろいろやって・・・貯めたんだ』
『それは大変だったでしょう。貴方は子供だ。世間は厳しい。
正直、セクションで大人しくしていた方が楽に生きられると気付いたのでは?』
『そうだな、世の中ゴミためだ。でも、クソセクションよりよっぽどマシだ。金が貯まったらここから脱出して、
どっか遠くで自由に生きるつもりだった。セクションで似たような顔した連中と、世間も知らねーまま生きるなら、
死んだ方がマシだ』
獅郎の心の察中を知り、メフィストは頷く。
『・・・成程ね』
『で?』
『え?』
『俺を殺すのか?お前、セクションで一番偉い理事なんだろ、メフィスト・フェレス』
するとメフィストは、大胆に笑い出す。
『ッはっはっはっはっ!?何を言うかと思えば、イッヒッヒッ!貴方・・・クク、イイですね、面白い・・・!』
『そうか・・・?』
なんでも構わない。こんなチャンス、獅郎にはもうないのかもしれないのだから。
今がメフィストに、言いたいことを全てさらけ出してやるのだ。
『俺が気に入ったか?メフィスト』
血相を変える獅郎に、メフィストは目を見開く。
『じゃあ俺を候補生にしろ!』
机の上に足を投げ出し、メフィストのネクタイを引っ張る。そして、頭を強く揺さぶりをかけた。
『十五年に一人、各験体群から候補生を出すはずだ。今年はその十五年目、アザゼル群はまだ決まってない。
条件も俺に合ってる、俺にしろ!!候補生になれば、実験体の務めも一年に一度になる!
祓魔師になれば、自分の力で生きていける!!聖騎士になれば、地位と名誉ときょ・・・女が手に入る!!自由だ!!
俺は人間が悪魔から助かる為につくられた、そんな人生はゴメンだ。悪魔の犠牲のままくたばるのはな・・・!!』
勢いに任せ、言いたいことは言い切った。
しかし、メフィストは嘲笑う。
『なんと無知で愚かなんでしょう。聖騎士は、自由への切符ではありません。いいですか?
候補生になれば、セクションの事を外部に漏らさぬよう、命と引き換えにモリナスの契約を結ぶことになる。
訓練も、過酷を極める。元・実験体は生きている限り脱落することは許されません。仮に聖騎士になれても、
騎士團に一生忠誠を誓う犬になるだけです。可哀想に、永久に自由にはなれませんね、イッヒッヒッ』
『・・・上等だ。目の前の悪魔は、一匹残らず殺してやる。殺して殺して殺しまくって、
聖騎士になったら飼い主どもは用済みだ。最後はテメェの喉笛喰い千切ってやるよ・・・』
『面白い。いいでしょう!貴方をアザゼル群の候補生に推薦します』
『あ!?マジか!?』
『但し、条件があります』
『!?』
『貴方が一度でも悪魔の前に屈した時は、私のお願いを何でも一つだけ聞いて下さい』
この時はまだ、この条件の意味をろくに理解出来ないでいた。
『んだ、それ・・・』
それよりも、目前にした自由の道を閉ざしたくなかったのだ。
『まあいい、乗った。必ず守れよ!!』
獅郎が執務室から出て行ってから、様子を伺っていた燐の存在に気づいていたメフィスト。
燐のそのスタイルを見て、すっかり家政婦は見たみたいになっていると指摘されるが、どうすることも出来ない。
なので、今までみた過去の時の流れで疑問に思ったことを聞いてみる。
「・・・親父が言ってたその、何たらセクションって何だ?今は祓魔塾がアサイラム?って呼ばれてるのは判ったけど、
アサイラムとセクションは別のものなのか?」
「では、先へお進みなさい」
「教えてくんねーのか」
言われるがまま、鍵を使いドアを開ける。
「あれ、またメフィストの・・・?」
先程と部屋は変わっていないが、メフィストが出迎える。
「遅いですよ、奥村くん。さぁ、ついてきなさい」
「あれから何年経ったんだ?」
「四年です」
「急だな!」
「ここは長らく、通称"アサイラム"と呼ばれる児童養護施設兼祓魔師養成学校でもあったのです」