第十九話 過去へ
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「ご覧なさい」
メフィストの部屋のバルコニーから、燐は街を見る。ここはもう、人だけではなく、悪魔も群がり人々はパニックだ。
「人工ゲヘナゲートが開き、世界は混乱している。私がタクティクスを失敗したせいでね」
「タクテクス??」
「そこはスルーして下さい」
「?」
「とにかく私は、この事態に対処せねばならない。貴方は一人でお行きなさい」
「行く?・・・どこに」
「過去へ」
「はぁ???」
疑問が出る燐は、目を見開く。
「かこって、過去か?どうやって」
「貴方はすでに持っているはずですよ。過去へと繋がる、扉の"鍵"をね」
「鍵!?鍵なんて、塾のと寮のと親父の形見の・・・」
言いかけ、燐はハッとした。今まで大事に隠し持っていたもう一つの鍵の存在。
「まさか・・・」
初めて獅郎から降魔剣を渡された時に見た最初に出会った鍵。胸元から取り出し、メフィストに見せる。
「そう、それは"神隠しの鍵"。本来、持ち主を望む次元へ導く、唯一無二のマスターキーです」
「これが!?ずっと持ってたのに・・・早く教えろ!!」
「何事にも、然るべき時というものがあるのですよ。アインス、ツヴァイ、ドライ☆」
「!!」
そうメフィストが唱えると、燐はいつの間にか制服に着替えている。
「餞別です。特務警邏隊の制服を、貴方に。大抵の場所に入れ、フードを被れば迷彩ポンチョと同じく、
身を隠すことが出来る。私の特別仕様です。"心臓"も、まだ隠せないようですから、仕方ない。隠しておいてあげます」
胸元に揺らめいていた悪魔の心臓が消える。
「扉はどの扉でもよい。このバルコニーの巨大な窓に、内鍵がありますよ。
一度扉を閉じ、鍵を差して再び開けば、貴方は望む過去に導かれる」
中々扉に手をつけようとしない燐に、メフィストは嘲笑う。
「・・・おや?イヒヒヒ、どうしたんです。怖いですか?」
「怖ーよ。本当は、出来ることなら知りたくなかったんだ。正直、こんなにアッサリ教えてくれるなら、
俺なんかより雪男や玲薇に教えてやって欲しかったよ。あいつら・・・知りたがってた」
それぞれに、どんな過去があろうとも。しかし、メフィストは嫌そうに答えるのみで。
「そーんな事、とっくに試しましたよ。奥村雪男くんの方は何度もね」
「は?」
「スルーして下さい!まぁ、風美夜さんの方はわかりかねますが」
彼女の方こそ、本当のことを知ってしまえばどうなるか。
「人間って、現実から目を逸らしたり、誤魔化すクセがありますよね。
目玉があるのに、五里霧中な様は実に滑稽です。先へ進みたいならば、現実をあるがままに見留めねばならない。
あの二人が見留めるべき現実は、残念ながら過去などではない。しかし、貴方は過去を見留めるべきだ。
なにより、欲しがる者には与えず、嫌がる者に与えたい性分でして☆」
「てめぇ・・・最ッ悪だな!!」
「当然でしょ、私は悪魔なんでね。四の五のぬかさず、とっとと進めばいい。さあ!」
明るくなってきた空に気付き、嫌になる。
(ねれな、かったな・・・)
アクビは出るものの、寝た気はさらさらない。初めての敵地に、そんな余裕はなかった。
(そういえば・・・)
ネックレスが壊れ、溢れ出ていた自分のあの力。熱くなった身体は、いつの間にか普通に戻っている。
「はは・・・」
手をグーパーと、何度か開いては握り返したりとしてから、玲薇は丸めた膝に顔を埋めた。
「燐・・・」
果たして、自分が選んだこの行動は正解なのだろうか。
とりあえず、前日に支給された服に着替える。白を基調としたそれは、どこか医者が着るような服に似ていた。
ドアを開ければ、目の前にはもう雪男と志摩がいて、雪男も玲薇と同じような服を着ている。
「やっぱ隣にしてもろて正解ですね、俺の手間も省けますし」
「おはよう」
「お、おはよう・・・」
まだ緊張する身体を、何とか奮い立たせる。
「玲薇も、同じ服なんだね。これは何なんだ?」
雪男はマジマジと怪訝そうな顔をしながら、志摩に聞く。
「あー、お二人とも、イルミナティでの肩書き"客員研究員"てなってますんで、それに合わせた制服です。
イルミナティには入りたないって話だったもんで。地味になってまうけど、玲薇ちゃんもにおうてよかったで♪」
いつもの調子の志摩に、玲薇は眉を寄せる。行動したくないと思い、とっさにドアを閉めてしまう。
「わー玲薇ちゃん、開けてー!!」
「・・・変な風におちょくるからだ」
ドアを叩く志摩に、ヤレヤレと雪男は肩を竦める。
「・・・今日は、何をやるの?」
警戒心剥き出しな玲薇に、困ったように志摩はヘラっと笑う。
「それは総帥に会ってみるまで分からんなぁ。とりあえず、俺について来て下さい」
「「・・・・・・・・」」
黙って志摩の後をついていく途中、得体の知れない生物がたくさん液体漬けにされている場所を通る。
なんて可哀想で酷いことなんだろう。これは一体、何の研究なのだろう。もしかして自分も、
こんな風に実験されながら生まれたのかもしれない。こんな風に生まれたなんて、燐の隣を歩けない。
自分の隠された秘密が、とても疎ましい。
「お早う、雪男くん玲薇さん。少しは休めましたか?」
もう、すっかり聞き慣れた声に、下唇を噛んでいた玲薇は顔を上げる。
そこには思っていた通りの人物=悪魔であるルシフェルがいた。彼は今日、仮面をつけているが。
「今日は私の"弟"を紹介させて下さい」
そうルシフェルが言うと、彼の後ろからひょっこり顔を出したのは、サメのような姿をした悪魔。
「あ・・・お、おはよーございます・・・。あ、ボクは水の王エギュン。この空中研究所の副所長です」
玲薇は目を見開く。名前だけは知ってる。教科書にも載っていた悪魔の名前だから。
(これが、パールの一柱・・・)
「ル、ルシフェル兄様からキミ達の事聞きました。まず、お二人の身体を検査・・・します」
「検査!?」
「!?」
雪男共々驚く。エギュンは視線をまず、雪男に向ける。
「父様とキミがどーやって繋がってるか調べなきゃ。それに貴方は、能力の因果関係をハッキリさせないと」
小さな白い目が、玲薇を見つめる。
「因果、関係・・・」
呟く玲薇を、雪男が庇うように背中に隠す。
「雪男・・・?」
「・・・誰が、身体を預けるようなマネするか。イルミナティの非人道的な研究について知っているんだ」
「怖いのは判ります」
そう言葉にするのはルシフェル。
「弱き者は自らを守る為に、周囲を拒絶し排除する。当然の事です」
「よ・・・ッ!?」
反論しようと威嚇し出す雪男に焦り、玲薇は彼の腕を離さない。
「お、落ち着いて・・・!」
「私には、君の気持ちが何より判る。私も、弱き者だからです」
「「・・・!」」
仮面の下に隠されていたルシフェルの顔面は、昨日の綺麗な皮膚の状態ではなかった。
皮膚はボロボロに剥がれ、血が溢れ出ている。
「しかし、君達は言った。強くなりたいと、真実をと。
ならば今、自分達がどういう状態か知るべきです」
メフィストの部屋のバルコニーから、燐は街を見る。ここはもう、人だけではなく、悪魔も群がり人々はパニックだ。
「人工ゲヘナゲートが開き、世界は混乱している。私がタクティクスを失敗したせいでね」
「タクテクス??」
「そこはスルーして下さい」
「?」
「とにかく私は、この事態に対処せねばならない。貴方は一人でお行きなさい」
「行く?・・・どこに」
「過去へ」
「はぁ???」
疑問が出る燐は、目を見開く。
「かこって、過去か?どうやって」
「貴方はすでに持っているはずですよ。過去へと繋がる、扉の"鍵"をね」
「鍵!?鍵なんて、塾のと寮のと親父の形見の・・・」
言いかけ、燐はハッとした。今まで大事に隠し持っていたもう一つの鍵の存在。
「まさか・・・」
初めて獅郎から降魔剣を渡された時に見た最初に出会った鍵。胸元から取り出し、メフィストに見せる。
「そう、それは"神隠しの鍵"。本来、持ち主を望む次元へ導く、唯一無二のマスターキーです」
「これが!?ずっと持ってたのに・・・早く教えろ!!」
「何事にも、然るべき時というものがあるのですよ。アインス、ツヴァイ、ドライ☆」
「!!」
そうメフィストが唱えると、燐はいつの間にか制服に着替えている。
「餞別です。特務警邏隊の制服を、貴方に。大抵の場所に入れ、フードを被れば迷彩ポンチョと同じく、
身を隠すことが出来る。私の特別仕様です。"心臓"も、まだ隠せないようですから、仕方ない。隠しておいてあげます」
胸元に揺らめいていた悪魔の心臓が消える。
「扉はどの扉でもよい。このバルコニーの巨大な窓に、内鍵がありますよ。
一度扉を閉じ、鍵を差して再び開けば、貴方は望む過去に導かれる」
中々扉に手をつけようとしない燐に、メフィストは嘲笑う。
「・・・おや?イヒヒヒ、どうしたんです。怖いですか?」
「怖ーよ。本当は、出来ることなら知りたくなかったんだ。正直、こんなにアッサリ教えてくれるなら、
俺なんかより雪男や玲薇に教えてやって欲しかったよ。あいつら・・・知りたがってた」
それぞれに、どんな過去があろうとも。しかし、メフィストは嫌そうに答えるのみで。
「そーんな事、とっくに試しましたよ。奥村雪男くんの方は何度もね」
「は?」
「スルーして下さい!まぁ、風美夜さんの方はわかりかねますが」
彼女の方こそ、本当のことを知ってしまえばどうなるか。
「人間って、現実から目を逸らしたり、誤魔化すクセがありますよね。
目玉があるのに、五里霧中な様は実に滑稽です。先へ進みたいならば、現実をあるがままに見留めねばならない。
あの二人が見留めるべき現実は、残念ながら過去などではない。しかし、貴方は過去を見留めるべきだ。
なにより、欲しがる者には与えず、嫌がる者に与えたい性分でして☆」
「てめぇ・・・最ッ悪だな!!」
「当然でしょ、私は悪魔なんでね。四の五のぬかさず、とっとと進めばいい。さあ!」
明るくなってきた空に気付き、嫌になる。
(ねれな、かったな・・・)
アクビは出るものの、寝た気はさらさらない。初めての敵地に、そんな余裕はなかった。
(そういえば・・・)
ネックレスが壊れ、溢れ出ていた自分のあの力。熱くなった身体は、いつの間にか普通に戻っている。
「はは・・・」
手をグーパーと、何度か開いては握り返したりとしてから、玲薇は丸めた膝に顔を埋めた。
「燐・・・」
果たして、自分が選んだこの行動は正解なのだろうか。
とりあえず、前日に支給された服に着替える。白を基調としたそれは、どこか医者が着るような服に似ていた。
ドアを開ければ、目の前にはもう雪男と志摩がいて、雪男も玲薇と同じような服を着ている。
「やっぱ隣にしてもろて正解ですね、俺の手間も省けますし」
「おはよう」
「お、おはよう・・・」
まだ緊張する身体を、何とか奮い立たせる。
「玲薇も、同じ服なんだね。これは何なんだ?」
雪男はマジマジと怪訝そうな顔をしながら、志摩に聞く。
「あー、お二人とも、イルミナティでの肩書き"客員研究員"てなってますんで、それに合わせた制服です。
イルミナティには入りたないって話だったもんで。地味になってまうけど、玲薇ちゃんもにおうてよかったで♪」
いつもの調子の志摩に、玲薇は眉を寄せる。行動したくないと思い、とっさにドアを閉めてしまう。
「わー玲薇ちゃん、開けてー!!」
「・・・変な風におちょくるからだ」
ドアを叩く志摩に、ヤレヤレと雪男は肩を竦める。
「・・・今日は、何をやるの?」
警戒心剥き出しな玲薇に、困ったように志摩はヘラっと笑う。
「それは総帥に会ってみるまで分からんなぁ。とりあえず、俺について来て下さい」
「「・・・・・・・・」」
黙って志摩の後をついていく途中、得体の知れない生物がたくさん液体漬けにされている場所を通る。
なんて可哀想で酷いことなんだろう。これは一体、何の研究なのだろう。もしかして自分も、
こんな風に実験されながら生まれたのかもしれない。こんな風に生まれたなんて、燐の隣を歩けない。
自分の隠された秘密が、とても疎ましい。
「お早う、雪男くん玲薇さん。少しは休めましたか?」
もう、すっかり聞き慣れた声に、下唇を噛んでいた玲薇は顔を上げる。
そこには思っていた通りの人物=悪魔であるルシフェルがいた。彼は今日、仮面をつけているが。
「今日は私の"弟"を紹介させて下さい」
そうルシフェルが言うと、彼の後ろからひょっこり顔を出したのは、サメのような姿をした悪魔。
「あ・・・お、おはよーございます・・・。あ、ボクは水の王エギュン。この空中研究所の副所長です」
玲薇は目を見開く。名前だけは知ってる。教科書にも載っていた悪魔の名前だから。
(これが、パールの一柱・・・)
「ル、ルシフェル兄様からキミ達の事聞きました。まず、お二人の身体を検査・・・します」
「検査!?」
「!?」
雪男共々驚く。エギュンは視線をまず、雪男に向ける。
「父様とキミがどーやって繋がってるか調べなきゃ。それに貴方は、能力の因果関係をハッキリさせないと」
小さな白い目が、玲薇を見つめる。
「因果、関係・・・」
呟く玲薇を、雪男が庇うように背中に隠す。
「雪男・・・?」
「・・・誰が、身体を預けるようなマネするか。イルミナティの非人道的な研究について知っているんだ」
「怖いのは判ります」
そう言葉にするのはルシフェル。
「弱き者は自らを守る為に、周囲を拒絶し排除する。当然の事です」
「よ・・・ッ!?」
反論しようと威嚇し出す雪男に焦り、玲薇は彼の腕を離さない。
「お、落ち着いて・・・!」
「私には、君の気持ちが何より判る。私も、弱き者だからです」
「「・・・!」」
仮面の下に隠されていたルシフェルの顔面は、昨日の綺麗な皮膚の状態ではなかった。
皮膚はボロボロに剥がれ、血が溢れ出ている。
「しかし、君達は言った。強くなりたいと、真実をと。
ならば今、自分達がどういう状態か知るべきです」