第十九話 過去へ
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メフィスト・フェレスが倒れたことにより、完全に開ききってしまった人工ゲヘナゲート。
それにより、世界中の人々が悪魔を見るようになってしまう。
メフィストが記者会見で話した反社会的生物のニュースでテレビでもSNSでもこの話題で持ちきりだ。
燐はメフィストの元へ、雪男も玲薇もいない中、力尽きたしえみを布団の中にいれ、旧男子寮に集まっていた。
そんな中、一筋の希望とまではいかないけれど、出雲は玲薇達が使っていた部屋を見る。
「・・・バカヤロウ・・・どうして・・・」
何度も携帯に連絡を入れてみた。だけど、繋がらないのは、やはり置いて行っていたから。
繋がらない時点で結果は見えていたけれど、悲しい。器用に、バカ賢く荷物は持っていかなったのだろう。
隠したい、自分の事で一つ二つはある。出雲自身もそうだったから。でも、同じ事をされて改めて思った。
「もっと・・・頼りなさいよ・・・」
足取りを重く、しえみが眠る部屋の前へと足を進める。その途中、子猫丸は折れた降魔剣をもっていた。
大事に燐がいつも使っていた袋にいれて、勝呂と話しているのが見える。
「神木さん、どうでしたか・・・?」
気付いた子猫丸に声をかけられ、出雲は首を横に振る。
「・・・何もかも、連絡のつけようがないわ」
勝手に持ってきて悪いとは思う。だけど、どうしても許せなかった。
てのひらにある、玲薇が使っていた携帯電話。絶対に渡し返してやる。
「さよか・・・」
いない今、どうすることも出来ない。まず、確実にやらなければならないことをしていくしかない。
「・・・降魔剣、持っていくのね」
出雲が玲薇の携帯電話から、子猫丸が持つ降魔剣に目を向ける。
「本来、俺が届けるべきところやのに、すまんな子猫丸」
「いいえ!鍵であっという間ですし。この折れた降魔剣、必ず和尚にお渡しします!」
子猫丸を見送り、勝呂はまた別の鍵を取り出す。
「・・・ほんなら、俺も師匠の用済ませてくるわ。済んだらすぐ戻るさかい。杜山さん頼んだで、神木!」
そう言い残し、勝呂もいなくなる。一緒に取り残された、メフィストの執事であるベリアルと出雲は顔を合わせた。
「「・・・・・・・・・」」
なんとも言い難い、気まずい雰囲気。
「ではまた、何かしらございましたら、私ベリアルに御連絡くださいませ」
丁寧に頭を下げるベリアル。
「あ・・・どうも、ありがとうございました」
返事を返すと、ベリアルは一瞬で出雲の前から姿を消した。
一人残った出雲は、しえみが眠る部屋に足を踏み入れる。
ふぅ、と小さく息を吐いた。緊張感が一気に抜けたのか、まだ気分は優れないけれど。
「・・・杜山しえみ」
「はい・・・」
「!?」
まさか返答されるとは思っていなかったので、驚く。
「ちょっと、起きてたの!?」
「さっき起きたよ。みんな無事だったんだね」
「あんたのお陰よ・・・!まだ、寝てなさい。それとも、何か食べる?」
しえみに対する出雲の態度の変化に、嬉しさを隠せない。
「ありがとう神木さん、優しいなぁ・・・」
「!?」
その発言に、目を丸くする出雲。どう返事をすればいいのか正直迷うし、照れくさい。
「そ、そんなの当たり前でしょ・・・別に」
「へへ・・・。どうなった?」
「!」
「雪ちゃんも・・・風美夜さんも・・・もう、いないんだよね・・・」
悔しくて、出雲は人知れずギュッと拳を握りしめる。
「そうね」
「・・・燐は?」
「フェレス卿が監禁してるはずよ。人工ゲヘナゲートが開いて、全人類が悪魔を見るようになった。
世界中が大混乱してるわ。奥村燐が、これからどうなるのかは判らない」
「そっか」
そして思い返すのは、本性を現したといっていいだろう、燐の姿。
「・・・あの時、本気で死ぬかと思ったわ。今思い出しても震えが止まらない。あいつは、まるで別人だった」
「・・・でも、気を失う時に「みんなよかった」って・・・。きっと私たちが殺されそうになる寸前で、
なんとか戻ってくれたんだと思う」
「・・・・・・・・」
出雲が小さくため息をつく。
「まあね。奥村先生も志摩廉造も玲薇も。奥村燐までいなくなったら、ヒサンすぎる」
「うん。燐が戻ってくれてよかった。あの時・・・燐が本当にいなくなったと思って・・・怖かった・・・!」
「・・・あんたって本当に、奥村燐が好きなのね」
その言葉に、しえみはハッと気付かされる。
「・・・わ・・・たし、燐が好き?」
思い返す、今まで燐と過ごした日々。そして、玲薇のあの不思議なやり取り。
『渡したくない』
やっと気付いた。そういうことだったのかと。燐の隣にいた玲薇を良いなぁと思った事も。
二人が喧嘩して、燐が自分にすがるように告白してくれたことも。あの時に気持ちを優先してしまえば、
燐は自分を選んでくれていたってことだろうか。
玲薇の気持ちと、しえみ自身の気持ちが一緒だっていうこと。
「・・・・・ッ~~ッぐ、あ・・・・・・うあああ」
メソメソと泣きじゃくるしえみに、出雲はカッとなる。
「・・・ちょ、いまさらなのよ!ニブイにも程がある。だから玲薇もアンタに好きな人を渡したくないって必死だったのよ。
ほんと、バカなやつね・・・!」
「うん・・・わたし・・・バカだ・・・!いっつも、人より遅れてる・・・!だから風美夜さんも、行っちゃったんだ・・・!
私が、堂々と気付いてあげてれば、ちゃんとお話出来てれば・・・!」
クラスにいる時も、あんなに食ってかかるような態度も。自分を、恋のライバルだからって。
出雲から借りた漫画で恋愛のことを勉強したではないか。なんのために、出雲が貸してくれたんだ。
「今頃気付いたって、もう遅いのに・・・」
それを聞き、出雲が目を見開く。
「どういう事?何が遅いっていうのよ」
やり直そうと思えばいくらでもやり直せるのに。
「・・・!あ」
「・・・もう我慢できない・・・!」
しえみが祓魔師になるのをやめると言ってから、ずっとずっと気にしていた事。
「ねぇ、あんた何者?教えてよ!!あたし達、とも・・・とっとっとも・・・」
言いたい事を言えずにモゴモゴしていると、部屋からノックする音が聞こえる。
出雲がドアを開けると、そこには見慣れない煌びやかな白を基調とした正装をした人達が立っていた。
「ヴァチカン本部グリゴルセデスの者です。杜山しえみ様をお迎えに参りました」
「!?」
「失礼」
許可なくズカズカと入り込んでくる本部のもの達に、戸惑うばかり。
「え、何!?」
「世界の混沌を鑑みて、お母様と我々グリゴルセデスも御身を案じております。今すぐヴァチカンへいらして下さい」
「・・・・・はい」
断らないしえみに、出雲は疑問が膨らむ。
「ちょっと・・・何なのあんたたち!!その子をどこへ・・・!」
泣き止まぬまま、しえみはヴァチカンの人達についていく。そして、彼女は告げた。
「神木さん、今までやさしくしてくれてありがとう。皆にも、ありがとうって伝えてね」
「は、あ・・・?ちょ、待ってよ」
訳分からないまま目の前のしえみがいなくなる。
「待ちなさいよ!!!」
出雲が再びドアを開けた時にはもう、しえみたちの姿はなくて。
「な、な・・・なに!?何なの・・・!?」
それにより、世界中の人々が悪魔を見るようになってしまう。
メフィストが記者会見で話した反社会的生物のニュースでテレビでもSNSでもこの話題で持ちきりだ。
燐はメフィストの元へ、雪男も玲薇もいない中、力尽きたしえみを布団の中にいれ、旧男子寮に集まっていた。
そんな中、一筋の希望とまではいかないけれど、出雲は玲薇達が使っていた部屋を見る。
「・・・バカヤロウ・・・どうして・・・」
何度も携帯に連絡を入れてみた。だけど、繋がらないのは、やはり置いて行っていたから。
繋がらない時点で結果は見えていたけれど、悲しい。器用に、バカ賢く荷物は持っていかなったのだろう。
隠したい、自分の事で一つ二つはある。出雲自身もそうだったから。でも、同じ事をされて改めて思った。
「もっと・・・頼りなさいよ・・・」
足取りを重く、しえみが眠る部屋の前へと足を進める。その途中、子猫丸は折れた降魔剣をもっていた。
大事に燐がいつも使っていた袋にいれて、勝呂と話しているのが見える。
「神木さん、どうでしたか・・・?」
気付いた子猫丸に声をかけられ、出雲は首を横に振る。
「・・・何もかも、連絡のつけようがないわ」
勝手に持ってきて悪いとは思う。だけど、どうしても許せなかった。
てのひらにある、玲薇が使っていた携帯電話。絶対に渡し返してやる。
「さよか・・・」
いない今、どうすることも出来ない。まず、確実にやらなければならないことをしていくしかない。
「・・・降魔剣、持っていくのね」
出雲が玲薇の携帯電話から、子猫丸が持つ降魔剣に目を向ける。
「本来、俺が届けるべきところやのに、すまんな子猫丸」
「いいえ!鍵であっという間ですし。この折れた降魔剣、必ず和尚にお渡しします!」
子猫丸を見送り、勝呂はまた別の鍵を取り出す。
「・・・ほんなら、俺も師匠の用済ませてくるわ。済んだらすぐ戻るさかい。杜山さん頼んだで、神木!」
そう言い残し、勝呂もいなくなる。一緒に取り残された、メフィストの執事であるベリアルと出雲は顔を合わせた。
「「・・・・・・・・・」」
なんとも言い難い、気まずい雰囲気。
「ではまた、何かしらございましたら、私ベリアルに御連絡くださいませ」
丁寧に頭を下げるベリアル。
「あ・・・どうも、ありがとうございました」
返事を返すと、ベリアルは一瞬で出雲の前から姿を消した。
一人残った出雲は、しえみが眠る部屋に足を踏み入れる。
ふぅ、と小さく息を吐いた。緊張感が一気に抜けたのか、まだ気分は優れないけれど。
「・・・杜山しえみ」
「はい・・・」
「!?」
まさか返答されるとは思っていなかったので、驚く。
「ちょっと、起きてたの!?」
「さっき起きたよ。みんな無事だったんだね」
「あんたのお陰よ・・・!まだ、寝てなさい。それとも、何か食べる?」
しえみに対する出雲の態度の変化に、嬉しさを隠せない。
「ありがとう神木さん、優しいなぁ・・・」
「!?」
その発言に、目を丸くする出雲。どう返事をすればいいのか正直迷うし、照れくさい。
「そ、そんなの当たり前でしょ・・・別に」
「へへ・・・。どうなった?」
「!」
「雪ちゃんも・・・風美夜さんも・・・もう、いないんだよね・・・」
悔しくて、出雲は人知れずギュッと拳を握りしめる。
「そうね」
「・・・燐は?」
「フェレス卿が監禁してるはずよ。人工ゲヘナゲートが開いて、全人類が悪魔を見るようになった。
世界中が大混乱してるわ。奥村燐が、これからどうなるのかは判らない」
「そっか」
そして思い返すのは、本性を現したといっていいだろう、燐の姿。
「・・・あの時、本気で死ぬかと思ったわ。今思い出しても震えが止まらない。あいつは、まるで別人だった」
「・・・でも、気を失う時に「みんなよかった」って・・・。きっと私たちが殺されそうになる寸前で、
なんとか戻ってくれたんだと思う」
「・・・・・・・・」
出雲が小さくため息をつく。
「まあね。奥村先生も志摩廉造も玲薇も。奥村燐までいなくなったら、ヒサンすぎる」
「うん。燐が戻ってくれてよかった。あの時・・・燐が本当にいなくなったと思って・・・怖かった・・・!」
「・・・あんたって本当に、奥村燐が好きなのね」
その言葉に、しえみはハッと気付かされる。
「・・・わ・・・たし、燐が好き?」
思い返す、今まで燐と過ごした日々。そして、玲薇のあの不思議なやり取り。
『渡したくない』
やっと気付いた。そういうことだったのかと。燐の隣にいた玲薇を良いなぁと思った事も。
二人が喧嘩して、燐が自分にすがるように告白してくれたことも。あの時に気持ちを優先してしまえば、
燐は自分を選んでくれていたってことだろうか。
玲薇の気持ちと、しえみ自身の気持ちが一緒だっていうこと。
「・・・・・ッ~~ッぐ、あ・・・・・・うあああ」
メソメソと泣きじゃくるしえみに、出雲はカッとなる。
「・・・ちょ、いまさらなのよ!ニブイにも程がある。だから玲薇もアンタに好きな人を渡したくないって必死だったのよ。
ほんと、バカなやつね・・・!」
「うん・・・わたし・・・バカだ・・・!いっつも、人より遅れてる・・・!だから風美夜さんも、行っちゃったんだ・・・!
私が、堂々と気付いてあげてれば、ちゃんとお話出来てれば・・・!」
クラスにいる時も、あんなに食ってかかるような態度も。自分を、恋のライバルだからって。
出雲から借りた漫画で恋愛のことを勉強したではないか。なんのために、出雲が貸してくれたんだ。
「今頃気付いたって、もう遅いのに・・・」
それを聞き、出雲が目を見開く。
「どういう事?何が遅いっていうのよ」
やり直そうと思えばいくらでもやり直せるのに。
「・・・!あ」
「・・・もう我慢できない・・・!」
しえみが祓魔師になるのをやめると言ってから、ずっとずっと気にしていた事。
「ねぇ、あんた何者?教えてよ!!あたし達、とも・・・とっとっとも・・・」
言いたい事を言えずにモゴモゴしていると、部屋からノックする音が聞こえる。
出雲がドアを開けると、そこには見慣れない煌びやかな白を基調とした正装をした人達が立っていた。
「ヴァチカン本部グリゴルセデスの者です。杜山しえみ様をお迎えに参りました」
「!?」
「失礼」
許可なくズカズカと入り込んでくる本部のもの達に、戸惑うばかり。
「え、何!?」
「世界の混沌を鑑みて、お母様と我々グリゴルセデスも御身を案じております。今すぐヴァチカンへいらして下さい」
「・・・・・はい」
断らないしえみに、出雲は疑問が膨らむ。
「ちょっと・・・何なのあんたたち!!その子をどこへ・・・!」
泣き止まぬまま、しえみはヴァチカンの人達についていく。そして、彼女は告げた。
「神木さん、今までやさしくしてくれてありがとう。皆にも、ありがとうって伝えてね」
「は、あ・・・?ちょ、待ってよ」
訳分からないまま目の前のしえみがいなくなる。
「待ちなさいよ!!!」
出雲が再びドアを開けた時にはもう、しえみたちの姿はなくて。
「な、な・・・なに!?何なの・・・!?」