第十八話 覚悟
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ボーッとする脳ミソを起こし、燐は廊下を歩く。その時、姿見を見つけ、自分の姿を見た燐はギョッとした。
「うおッ、誰だ、俺か!」
一番変わって驚いたのは、黒髪だったのが青白のグラデーションのような髪色になっていたこと。
でも、いまはそんなのどうでもいい。吹きつける風が通る方に顔を向ければ、大きなバルコニーにメフィストがいた。
振り向かなくとも気配に気付いたのか、近付くとともにメフィストが話しかける。
「一応言っておくと、皆無事です。折れた降魔剣も、然るべき場所に。
問題は・・・貴方は今、どちらの奥村燐くんかってことです。狂暴な方じゃないといいんですがね。
私も病み上がりなんで」
「メフィスト」
「ハイ?」
「俺と雪男と玲薇がどうやって生まれたのか、教えてくれ!!」
「・・・風美夜さんの事でもっと非情になると思いましたが」
知られていなかった過去が、今、明らかになろうとしている。
燐は人知れずギュッと、握り拳を作った。今更ここで喚いても仕方ない。メフィストは、全て知っている。
では何故、一番最初に出逢った時、玲薇の力について、血について触れなかったのか。
あたかも普通の人間として。それは、雪男も同じ事で。
「玲薇のことも、俺らのことも。サタンのこと、母ちゃんのこと。
神父がどんな人間だったか・・・俺は知らなきゃならねぇ、頼む!!」
例え現実がどうであれ、それが事実なのだとすれば目を背ける事は出来ない。
「ククク・・・イヒヒヒ、ハハハハハ!!待っていましたよ、奥村くん。
貴方がそう言い出すのをね・・・!!今の貴方こそ知るべきだ!覚悟はよろしいか?」
「早くしろ!!」
「上等!」
ヘリに乗っている玲薇たちは、すっかり雲の上まできていた。
下にあるハズの街や海は、雲に覆われてみえない。唯一、見えるものは、巨大な船。
「・・・凄い・・・」
玲薇は思わず、開いた口が塞がらなくなる。敵ながらこの技術には驚かされる。
窓際にいる玲薇に近寄り、雪男も一緒に外をみる。確かにコレは驚いても不思議ではない。
「まさか・・・空中要塞」
「そー。もー、信じられへんでしょ。こない巨大なステルス空中母艦飛ばすやなんて!
確か、ドミナスミニナンタラいうたかな?」
「"境界の主"ドミナスリミニス・・・」
志摩の説明では、イルミナティは悪魔の力・・・"魔力"の科学的応用研究がかなり進んでいるらしく、
エリクサーも人工ゲヘナゲートも、このドミナスナンチャラも、その魔法科学の賜物だとか。
ヘリを降りると、出迎えがいる。
「志摩!こっちだ」
「あっ、ドーモ!」
「・・・・・・・・」
こう、志摩廉造とイルミナティの人との親しげなやり取りを見ると、彼は本当にこちらのスパイでもあるんだなと、
改めて認識しざるを得なくなる。ここには、志摩の求める自由があるという事なのだろうか。
「まずは、よくやったと言っておく。総帥もお喜びだ」
「いやいや、俺はなんも・・・」
「お前が、奥村雪男・・・そして」
その女性は視線を、雪男から玲薇へ。
「風美夜玲薇か」
「「・・・・・・・」」
二人は何も答えない。玲薇はたまらず一歩下がり、雪男の背中に近寄る。
その様子を気に止めることなく、女性は続けた。
「私は藤堂誉。位階は大達人(アデブタスメイジャー)光の王ルシフェル総帥の親衛隊、金の星の隊長だ」
「藤・・・堂!?」
聞いた名字に、その女性にはどこか面影がある雪男。
「?」
藤堂三郎太とは面識のない玲薇は、小さく、人知れず首をかしげる。
「まずは、総帥がお会いになる。私について来い」
「あのー、俺は」
遠慮がちに志摩が疑問をなげる。
「お前は後だ。グンナルについて行け」
「うわーい。じゃ、お二人とも頑張って~!」
いつもの軽い口調で、一旦志摩とはわかれた。
二人で藤堂誉と名乗った女性の後をついていく。
(怖い・・・)
道中、恐ろしい場所に行くことはないが、雪男とは離れられなかった。
迷子になったら、それこそシャレにならない。
「・・・・・!」
玲薇に、ギュッと、背中に手を添えられるのが感触的にわかった。
その手を振り払おうとか、そんな冷たい態度は思わなくて。
(大丈夫)
何人かに警備されている、ドアの前に藤堂誉はボタンを押し連絡を入れている。
「藤堂です。奥村雪男と風美夜玲薇をお連れしました」
「ありがとう、通して下さい」
そう返事が返ってきた。
「総帥は今、お身体の様子が優れない。くれぐれもお心を煩わすな」
その時に、二人で顔を合わせる。玲薇はゴクリと、生唾を呑む。
(大丈夫、雪男がいる。一人じゃない)
部屋の中に入れば、眩しいくらいの光に、明かりに照らされた広いこの場所に、ルシフェルがいた。
ベッドに横になっていたのか、彼の身体のあちこちから機械が覗く。
「奥村雪男くんと、風美夜玲薇さん。このような姿で申し訳ない。
しかし、必ず来てくれると信じていました」
不思議と、初めてルシフェルと対面した時の恐怖はない。
「何が目的だ?」
「雪男・・・」
雪男は玲薇を庇うように、背中に隠す。
「「僕が欲しい」と言ったな。僕をどうするつもりだ。それに彼女の「組み込まれる」とは、どういう意味だ」
「っ・・・!!」
ルシフェルと眼が合う。その何とも言い難い視線に、眼差しに威圧される。逆らえないと。
だがその視線とは裏腹に、ルシフェルの口から出る言葉は、脅威なモノではなく。
「・・・・・・どうもしません。雪男くん、君が自分の意志でここまで来てくれる事が全てだったのです。
私の下へ父を連れて来てくれた事、感謝しています。そのためには玲薇さん、
貴方の力は父にとって必要不可欠です。父の血を混入させ副作用なくここまで来てくれました」
「・・・最初に、メフィストに会った時、私は問題ない。力がないからと言われてました。
それは・・・嘘だったってことですか?」
聞いていた。唐突に。きっとメフィストは答えてくれないであろう、ずっと疑問に思っていたこの事。
「・・・サマエルの考えは判りません。貴方の言う力は、言葉を変えると能力と言えば聞こえはよいでしょうか。
入学時は、その能力は微力だったのでしょう。貴方も目覚めてくれたのです」
「っ・・・!」
「あなた方は、世界を真の平和へと導く希望です」
「・・・真の、平和・・・?」
玲薇は呟き、たまらず雪男と顔を合わせる。
「・・・カン違いするな。その計画もこの組織もお前も"悪"だ、ここは"悪"の吹き溜まりだ。僕も、悪人だ」
その言葉を聞き、ドキリと胸が締め付けられる。
「この目と出生の秘密、僕自身について知る為に何もかも捨てた。
潜在的な力を呼び覚ますとも言ったな。全てはその"力"の為、必ずもらう」
「うおッ、誰だ、俺か!」
一番変わって驚いたのは、黒髪だったのが青白のグラデーションのような髪色になっていたこと。
でも、いまはそんなのどうでもいい。吹きつける風が通る方に顔を向ければ、大きなバルコニーにメフィストがいた。
振り向かなくとも気配に気付いたのか、近付くとともにメフィストが話しかける。
「一応言っておくと、皆無事です。折れた降魔剣も、然るべき場所に。
問題は・・・貴方は今、どちらの奥村燐くんかってことです。狂暴な方じゃないといいんですがね。
私も病み上がりなんで」
「メフィスト」
「ハイ?」
「俺と雪男と玲薇がどうやって生まれたのか、教えてくれ!!」
「・・・風美夜さんの事でもっと非情になると思いましたが」
知られていなかった過去が、今、明らかになろうとしている。
燐は人知れずギュッと、握り拳を作った。今更ここで喚いても仕方ない。メフィストは、全て知っている。
では何故、一番最初に出逢った時、玲薇の力について、血について触れなかったのか。
あたかも普通の人間として。それは、雪男も同じ事で。
「玲薇のことも、俺らのことも。サタンのこと、母ちゃんのこと。
神父がどんな人間だったか・・・俺は知らなきゃならねぇ、頼む!!」
例え現実がどうであれ、それが事実なのだとすれば目を背ける事は出来ない。
「ククク・・・イヒヒヒ、ハハハハハ!!待っていましたよ、奥村くん。
貴方がそう言い出すのをね・・・!!今の貴方こそ知るべきだ!覚悟はよろしいか?」
「早くしろ!!」
「上等!」
ヘリに乗っている玲薇たちは、すっかり雲の上まできていた。
下にあるハズの街や海は、雲に覆われてみえない。唯一、見えるものは、巨大な船。
「・・・凄い・・・」
玲薇は思わず、開いた口が塞がらなくなる。敵ながらこの技術には驚かされる。
窓際にいる玲薇に近寄り、雪男も一緒に外をみる。確かにコレは驚いても不思議ではない。
「まさか・・・空中要塞」
「そー。もー、信じられへんでしょ。こない巨大なステルス空中母艦飛ばすやなんて!
確か、ドミナスミニナンタラいうたかな?」
「"境界の主"ドミナスリミニス・・・」
志摩の説明では、イルミナティは悪魔の力・・・"魔力"の科学的応用研究がかなり進んでいるらしく、
エリクサーも人工ゲヘナゲートも、このドミナスナンチャラも、その魔法科学の賜物だとか。
ヘリを降りると、出迎えがいる。
「志摩!こっちだ」
「あっ、ドーモ!」
「・・・・・・・・」
こう、志摩廉造とイルミナティの人との親しげなやり取りを見ると、彼は本当にこちらのスパイでもあるんだなと、
改めて認識しざるを得なくなる。ここには、志摩の求める自由があるという事なのだろうか。
「まずは、よくやったと言っておく。総帥もお喜びだ」
「いやいや、俺はなんも・・・」
「お前が、奥村雪男・・・そして」
その女性は視線を、雪男から玲薇へ。
「風美夜玲薇か」
「「・・・・・・・」」
二人は何も答えない。玲薇はたまらず一歩下がり、雪男の背中に近寄る。
その様子を気に止めることなく、女性は続けた。
「私は藤堂誉。位階は大達人(アデブタスメイジャー)光の王ルシフェル総帥の親衛隊、金の星の隊長だ」
「藤・・・堂!?」
聞いた名字に、その女性にはどこか面影がある雪男。
「?」
藤堂三郎太とは面識のない玲薇は、小さく、人知れず首をかしげる。
「まずは、総帥がお会いになる。私について来い」
「あのー、俺は」
遠慮がちに志摩が疑問をなげる。
「お前は後だ。グンナルについて行け」
「うわーい。じゃ、お二人とも頑張って~!」
いつもの軽い口調で、一旦志摩とはわかれた。
二人で藤堂誉と名乗った女性の後をついていく。
(怖い・・・)
道中、恐ろしい場所に行くことはないが、雪男とは離れられなかった。
迷子になったら、それこそシャレにならない。
「・・・・・!」
玲薇に、ギュッと、背中に手を添えられるのが感触的にわかった。
その手を振り払おうとか、そんな冷たい態度は思わなくて。
(大丈夫)
何人かに警備されている、ドアの前に藤堂誉はボタンを押し連絡を入れている。
「藤堂です。奥村雪男と風美夜玲薇をお連れしました」
「ありがとう、通して下さい」
そう返事が返ってきた。
「総帥は今、お身体の様子が優れない。くれぐれもお心を煩わすな」
その時に、二人で顔を合わせる。玲薇はゴクリと、生唾を呑む。
(大丈夫、雪男がいる。一人じゃない)
部屋の中に入れば、眩しいくらいの光に、明かりに照らされた広いこの場所に、ルシフェルがいた。
ベッドに横になっていたのか、彼の身体のあちこちから機械が覗く。
「奥村雪男くんと、風美夜玲薇さん。このような姿で申し訳ない。
しかし、必ず来てくれると信じていました」
不思議と、初めてルシフェルと対面した時の恐怖はない。
「何が目的だ?」
「雪男・・・」
雪男は玲薇を庇うように、背中に隠す。
「「僕が欲しい」と言ったな。僕をどうするつもりだ。それに彼女の「組み込まれる」とは、どういう意味だ」
「っ・・・!!」
ルシフェルと眼が合う。その何とも言い難い視線に、眼差しに威圧される。逆らえないと。
だがその視線とは裏腹に、ルシフェルの口から出る言葉は、脅威なモノではなく。
「・・・・・・どうもしません。雪男くん、君が自分の意志でここまで来てくれる事が全てだったのです。
私の下へ父を連れて来てくれた事、感謝しています。そのためには玲薇さん、
貴方の力は父にとって必要不可欠です。父の血を混入させ副作用なくここまで来てくれました」
「・・・最初に、メフィストに会った時、私は問題ない。力がないからと言われてました。
それは・・・嘘だったってことですか?」
聞いていた。唐突に。きっとメフィストは答えてくれないであろう、ずっと疑問に思っていたこの事。
「・・・サマエルの考えは判りません。貴方の言う力は、言葉を変えると能力と言えば聞こえはよいでしょうか。
入学時は、その能力は微力だったのでしょう。貴方も目覚めてくれたのです」
「っ・・・!」
「あなた方は、世界を真の平和へと導く希望です」
「・・・真の、平和・・・?」
玲薇は呟き、たまらず雪男と顔を合わせる。
「・・・カン違いするな。その計画もこの組織もお前も"悪"だ、ここは"悪"の吹き溜まりだ。僕も、悪人だ」
その言葉を聞き、ドキリと胸が締め付けられる。
「この目と出生の秘密、僕自身について知る為に何もかも捨てた。
潜在的な力を呼び覚ますとも言ったな。全てはその"力"の為、必ずもらう」