第十八話 覚悟
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「やはり兄上は、奥村燐の悪魔の心臓をゲヘナに封印していたんだな」
アマイモンの声に、振り返る。
「封印する触媒が折れたことで、抑制されていた悪魔の心臓が、奥村燐の肉体へ完全に戻った。
ゲヘナのものが、アッシャーに干渉し続けるには、同等でなければならない。さぁ、奥村燐の肉体は、
完全な炎に耐えられるかな」
『燐!』
玲薇は、嬉しそうにアイツの名前を呼んでいた。
それが、肝心な時にいない。降魔剣が折れてのこの事実を、彼女らは知っているのか。
「た・・・耐えられへんかったら、どうなるゆーんや」
「?死ぬんじゃないですか」
「「「!!!」」」
「どっちにしろ、そこから離れた方がいいですよ」
姿を遠ざけるアマイモンは、屋根の上に飛び上がる。
「奥村燐が、父上の器に相応しいか見届けてやる・・・と思ったけど、なんだ。結局、あんなもんか」
ボンと、爆発にも似た音を立て、燐の身体は真っ黒な灰に成り果てていた。
彼の面影など、一つも残っていない。燃え尽くされた身体は、
立っていることもままならなく、崩れた時と共に、バラバラになる。
「つまらないな」
人間の肉体は所詮、儚く脆い。
「うそ(玲薇、アンタはこの姿を見たらどうするの・・•なんで、いなくなるの!)」
「そんな、奥村くん・・・!!」
「は、有り得んわ!なぁ、すぐ復活するに決まっとる!あの奥村燐やぞ!?」
ふらりと、足取りを重く、しえみが燐のそばに寄り膝をつく。
「杜山しえみ・・・!」
「・・・・・」
震える手を、黒い灰となっている燐の顔に伸ばしていく。
「り・・・ん・・•」
その時、ボッと、燐の胸元に炎が現れる。
「ほら見い!!」
嬉しさで抱き合う勝呂と子猫丸。
「・・・・・・あ」
しえみは声をもらす。何故ならその炎は、悪魔の心臓へと変化したからだ。
その心臓の復活から、燐は肉体を取り戻していく。
意識も戻り、ふと燐は目を覚まし上半身を起こした。
「・・・・燐・・・」
泣きながら燐の名前を呼ぶしえみ。
「・・・しえみ?」
名前を呼ばれた。嬉しいハズなのに、ザワつかせる燐が見せた揺らめく青い炎の目。
「奥村ァ!!」
「奥村くん・・・!!よかった、よかった~!!」
「ちょ、ちょっと全裸・・・!!早く服をあげてよ!」
「そーがなるなや・・・」
羽織っていた服を脱ごうとした勝呂に、一歩下がったしえみがぶつかる。
「!?杜山さん・・・?」
「熱い」
「え?」
「あったかくない・・・」
「ど、どういう」
「燐だけど・・・燐じゃない?」
燐の身体から、激しく炎が燃え上がっていく。
「ッツアッ」
「二ーちゃん!!」
辺り一面を燃やし尽くす勢いに溢れる炎。
「あ、ああ・・・ははは!!すげぇえええ!!!炎が漲ってくる、すげー気持ちいい・・・!!
今まで何だったんだ?・・・ははは!こんないい気分初めてだ・・・!」
皆を燐の炎から守る為に力を使い果たしたしえみは、膝から崩れ落ちる。
「・・・!!杜山さん」
「植物が、壁に・・・!!」
それでも、次から次へと草木を出していくしえみに、出雲は視線を向けた。
(この子・・・前からすごいとは思ってたけど・・・何者なの・・・!?)
「森?林・・・?しえみか?すげーな、しえみ。あ~~めちゃくちゃにしてえ・・・!」
いつもと様子が違う燐。体の限界を知らせるように、しえみの鼻からは血が流れる。
「・・・!もうこの子は限界よ!!」
苦しく肩で息をするしえみに、出雲が寄り添い叫び伝える。
「・・・くっ、せめて最後の壁になる!!」
「うう・・・覚悟を決めます!!」
勝呂と子猫丸が二人の前に出て身構える。だが燐は、容赦なく草木を破壊しながら突き進んでくる。
「奥村ァ!!正気に戻れ!!」
「奥村くん、もうやめてやぁ!!」
(せめてアイツが・・・風美夜が居れば・・・!)
いない今の彼女を思っても、どうにもならないのはわかっている。
けれど力押しで止めることも違う気がして、燐に対して技を出せない。
手足が出ない勝呂達を、しえみを見て、燐は笑う。
「この炎を全部ブチまけたい。友達なら、受け止めてくれるよな」
「燐は、どこ?」
静かに問いかけるしえみ。
「はッ」
意識を保つように、手放すように、暗闇に一人でいる燐が、揺らめく炎を見つける。
•••お前は、何だ?
自分にそっくりなその姿。だけど、性格は全く違うもう一人のソイツ。
•••俺か?判ってんだろ。向き合って乗り越えたつもりか?そーはいくか。
お前は俺を押さえつけただけだ。俺は、俺だ。俺がずっと押さえつけてきた俺自身だ。
やっと俺の出番だ、俺は消えろ!
(・・・!!そんなわけにいくか・・・!俺は皆を殺そうとした・・・!許せねぇ!!
それに、雪男と玲薇を、あのままにしておけない・・・!!)
はあ?あいつらは自分の目的の為に、勝手に出て行ったんだろ。放っておけばいい。
あいつを・・・あいつらを・・・。
『きっと、目障りだったんじゃないかな』
あんな事言わせたまま、行かせられるか・・・!!
二人の考えが間違ってるって、あの時はいえなかった。何にも知らないから。
(ビビリは、どっちだ!!)
あー、弱えなぁ。やさしくなりてーだの、迷いだらけの俺に今まで押さえつけられてたのかと思うと、
まじで腹立つな。んな甘い事言ってるから何度も簡単に撃たれるんだよ。玲薇の事もだ!
もっと強欲に欲張っちまえばよかったものを、おいそれと手放してたのは誰だ?
あんなネチネチしたアイツの考えなんて吹っ飛ばしてやるくらいの勢いで、めちゃくちゃにしてやればいい!
まぁ、それは俺でもあるか。もう我慢の限界だ•••!俺は俺が16年押さえつけてきた怒りと欲望だ!
力そのものだ!!力のある方が支配する、それが自然だよな?つまり、俺は死ね!
もう一人の燐と、皆の知る燐が、拳を交える。
(ああ、そうだな)
俺は雪男の言う通りビビッてた、臆病者だ•••!
本当の事を知ったって、きっとつらいだけだって。俺にも過去にも、フタしてきた。でも、弱くねぇ!!!
俺の16年は、俺のものだ、絶対に守る!!この身体は渡さねぇ!!
殴ったもう一人の炎を纏っていた燐が、消えていく。消えていく最後に、言われた。
•••そうか。まぁ、今はこの辺にしといてやる。いいか
"俺はやっぱりサタンの子で、この炎から逃げることは出来ない"
忘れるなよ、自分の言葉を。
「!?」
パァンと、炎が、光が一つに集結し燐の目の前で弾け消える。
「・・・・・・・・み、んな・・・・よかっ・・・・」
グラリと揺れる身体。支える力を失ったそれは、地面に倒れ込む。
「・・・おっ、奥村・・・!」
ここに、燐に続いて杜山しえみも、地面に倒れ込んでしまった。
アイツ・・・もう一人の自分に言われた事、一理あったのかもしれない。
雪男の事も、玲薇の事も、もっと強欲に自分が欲しがれば何か変わったのかもしれない。
本当は玲薇に、距離なんて置いて欲しくない。悲しい思いも寂しい思いも、して欲しくないのに。
自分の思うがままにめちゃくちゃにしたい気持ちはあった。力なら負ける気はしない。
でも、それ故に彼女にも心はある。だから、逃げられてしまうのが一番怖かった。
笑って笑顔を見せてくれる。それだけでよかったのに。
自分の気持ちが抑えられなくて困らせて八つ当たりして。
自分の元から離れてしまうのは、当たり前なのか。
ボーッと、燐は閉じていた目を開ける。ここは、いつもの自分の部屋の二段ベッドではない。
「・・・玲薇・・・」
サタンの血を入れられ研究の為に作られた人間。その事実を、彼女はいつ知ったのだろう。
燐はムクリと上半身を起こす。ここは、メフィストの部屋だ。
アマイモンの声に、振り返る。
「封印する触媒が折れたことで、抑制されていた悪魔の心臓が、奥村燐の肉体へ完全に戻った。
ゲヘナのものが、アッシャーに干渉し続けるには、同等でなければならない。さぁ、奥村燐の肉体は、
完全な炎に耐えられるかな」
『燐!』
玲薇は、嬉しそうにアイツの名前を呼んでいた。
それが、肝心な時にいない。降魔剣が折れてのこの事実を、彼女らは知っているのか。
「た・・・耐えられへんかったら、どうなるゆーんや」
「?死ぬんじゃないですか」
「「「!!!」」」
「どっちにしろ、そこから離れた方がいいですよ」
姿を遠ざけるアマイモンは、屋根の上に飛び上がる。
「奥村燐が、父上の器に相応しいか見届けてやる・・・と思ったけど、なんだ。結局、あんなもんか」
ボンと、爆発にも似た音を立て、燐の身体は真っ黒な灰に成り果てていた。
彼の面影など、一つも残っていない。燃え尽くされた身体は、
立っていることもままならなく、崩れた時と共に、バラバラになる。
「つまらないな」
人間の肉体は所詮、儚く脆い。
「うそ(玲薇、アンタはこの姿を見たらどうするの・・•なんで、いなくなるの!)」
「そんな、奥村くん・・・!!」
「は、有り得んわ!なぁ、すぐ復活するに決まっとる!あの奥村燐やぞ!?」
ふらりと、足取りを重く、しえみが燐のそばに寄り膝をつく。
「杜山しえみ・・・!」
「・・・・・」
震える手を、黒い灰となっている燐の顔に伸ばしていく。
「り・・・ん・・•」
その時、ボッと、燐の胸元に炎が現れる。
「ほら見い!!」
嬉しさで抱き合う勝呂と子猫丸。
「・・・・・・あ」
しえみは声をもらす。何故ならその炎は、悪魔の心臓へと変化したからだ。
その心臓の復活から、燐は肉体を取り戻していく。
意識も戻り、ふと燐は目を覚まし上半身を起こした。
「・・・・燐・・・」
泣きながら燐の名前を呼ぶしえみ。
「・・・しえみ?」
名前を呼ばれた。嬉しいハズなのに、ザワつかせる燐が見せた揺らめく青い炎の目。
「奥村ァ!!」
「奥村くん・・・!!よかった、よかった~!!」
「ちょ、ちょっと全裸・・・!!早く服をあげてよ!」
「そーがなるなや・・・」
羽織っていた服を脱ごうとした勝呂に、一歩下がったしえみがぶつかる。
「!?杜山さん・・・?」
「熱い」
「え?」
「あったかくない・・・」
「ど、どういう」
「燐だけど・・・燐じゃない?」
燐の身体から、激しく炎が燃え上がっていく。
「ッツアッ」
「二ーちゃん!!」
辺り一面を燃やし尽くす勢いに溢れる炎。
「あ、ああ・・・ははは!!すげぇえええ!!!炎が漲ってくる、すげー気持ちいい・・・!!
今まで何だったんだ?・・・ははは!こんないい気分初めてだ・・・!」
皆を燐の炎から守る為に力を使い果たしたしえみは、膝から崩れ落ちる。
「・・・!!杜山さん」
「植物が、壁に・・・!!」
それでも、次から次へと草木を出していくしえみに、出雲は視線を向けた。
(この子・・・前からすごいとは思ってたけど・・・何者なの・・・!?)
「森?林・・・?しえみか?すげーな、しえみ。あ~~めちゃくちゃにしてえ・・・!」
いつもと様子が違う燐。体の限界を知らせるように、しえみの鼻からは血が流れる。
「・・・!もうこの子は限界よ!!」
苦しく肩で息をするしえみに、出雲が寄り添い叫び伝える。
「・・・くっ、せめて最後の壁になる!!」
「うう・・・覚悟を決めます!!」
勝呂と子猫丸が二人の前に出て身構える。だが燐は、容赦なく草木を破壊しながら突き進んでくる。
「奥村ァ!!正気に戻れ!!」
「奥村くん、もうやめてやぁ!!」
(せめてアイツが・・・風美夜が居れば・・・!)
いない今の彼女を思っても、どうにもならないのはわかっている。
けれど力押しで止めることも違う気がして、燐に対して技を出せない。
手足が出ない勝呂達を、しえみを見て、燐は笑う。
「この炎を全部ブチまけたい。友達なら、受け止めてくれるよな」
「燐は、どこ?」
静かに問いかけるしえみ。
「はッ」
意識を保つように、手放すように、暗闇に一人でいる燐が、揺らめく炎を見つける。
•••お前は、何だ?
自分にそっくりなその姿。だけど、性格は全く違うもう一人のソイツ。
•••俺か?判ってんだろ。向き合って乗り越えたつもりか?そーはいくか。
お前は俺を押さえつけただけだ。俺は、俺だ。俺がずっと押さえつけてきた俺自身だ。
やっと俺の出番だ、俺は消えろ!
(・・・!!そんなわけにいくか・・・!俺は皆を殺そうとした・・・!許せねぇ!!
それに、雪男と玲薇を、あのままにしておけない・・・!!)
はあ?あいつらは自分の目的の為に、勝手に出て行ったんだろ。放っておけばいい。
あいつを・・・あいつらを・・・。
『きっと、目障りだったんじゃないかな』
あんな事言わせたまま、行かせられるか・・・!!
二人の考えが間違ってるって、あの時はいえなかった。何にも知らないから。
(ビビリは、どっちだ!!)
あー、弱えなぁ。やさしくなりてーだの、迷いだらけの俺に今まで押さえつけられてたのかと思うと、
まじで腹立つな。んな甘い事言ってるから何度も簡単に撃たれるんだよ。玲薇の事もだ!
もっと強欲に欲張っちまえばよかったものを、おいそれと手放してたのは誰だ?
あんなネチネチしたアイツの考えなんて吹っ飛ばしてやるくらいの勢いで、めちゃくちゃにしてやればいい!
まぁ、それは俺でもあるか。もう我慢の限界だ•••!俺は俺が16年押さえつけてきた怒りと欲望だ!
力そのものだ!!力のある方が支配する、それが自然だよな?つまり、俺は死ね!
もう一人の燐と、皆の知る燐が、拳を交える。
(ああ、そうだな)
俺は雪男の言う通りビビッてた、臆病者だ•••!
本当の事を知ったって、きっとつらいだけだって。俺にも過去にも、フタしてきた。でも、弱くねぇ!!!
俺の16年は、俺のものだ、絶対に守る!!この身体は渡さねぇ!!
殴ったもう一人の炎を纏っていた燐が、消えていく。消えていく最後に、言われた。
•••そうか。まぁ、今はこの辺にしといてやる。いいか
"俺はやっぱりサタンの子で、この炎から逃げることは出来ない"
忘れるなよ、自分の言葉を。
「!?」
パァンと、炎が、光が一つに集結し燐の目の前で弾け消える。
「・・・・・・・・み、んな・・・・よかっ・・・・」
グラリと揺れる身体。支える力を失ったそれは、地面に倒れ込む。
「・・・おっ、奥村・・・!」
ここに、燐に続いて杜山しえみも、地面に倒れ込んでしまった。
アイツ・・・もう一人の自分に言われた事、一理あったのかもしれない。
雪男の事も、玲薇の事も、もっと強欲に自分が欲しがれば何か変わったのかもしれない。
本当は玲薇に、距離なんて置いて欲しくない。悲しい思いも寂しい思いも、して欲しくないのに。
自分の思うがままにめちゃくちゃにしたい気持ちはあった。力なら負ける気はしない。
でも、それ故に彼女にも心はある。だから、逃げられてしまうのが一番怖かった。
笑って笑顔を見せてくれる。それだけでよかったのに。
自分の気持ちが抑えられなくて困らせて八つ当たりして。
自分の元から離れてしまうのは、当たり前なのか。
ボーッと、燐は閉じていた目を開ける。ここは、いつもの自分の部屋の二段ベッドではない。
「・・・玲薇・・・」
サタンの血を入れられ研究の為に作られた人間。その事実を、彼女はいつ知ったのだろう。
燐はムクリと上半身を起こす。ここは、メフィストの部屋だ。