第十八話 覚悟
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「・・・・・・・・・」
もたれる玲薇を、雪男は黙って受け止める。
「ッま・・・待て・・・!?」
呼びかける燐だが、自身の身体にも異変を感じる。
「ぐ、あ・・・あ!?」
《イヒヒヒヒ始まったな、目覚めの時だ。サマエルによく鍛えられたな。
あの小便垂れから少しはマシになったじゃねぇか。その人間の肉体も、いい加減完全な炎に耐えられる頃だ。
まさかその女も一枚噛んでるとは思わなかったがまぁいい。晴れて耐えた暁には・・・クククヒヒヒ》
「うッ、ぐ・・・グギ・・・」
身体のあちこちが、悲鳴を上げる。
《その肉体は俺のものだ!ギヒャハハハハァァそういう約束だからなぁ・・・あ?》
燐の前に現れたのは、グリーンマンもとい二ーちゃんだ。
「二ー!!」
この使い魔の術者は、杜山しえみだ。
「しえみ!?」
「二、二二ーニォオー!!」
「!?」
「・・・!」
巨大化した二ーちゃんから伸びる草木に足を体を絡めとられる雪男と玲薇。
「二ーちゃん!!」
「二ーさん!?」
「・・・・・・・・」
「しえみさん・・・」
「雪ちゃん、風美夜さん・・・行っちゃダメだよ・・・!!」
ギリッと、玲薇は奥歯を噛み締める。
「・・・何にも、分からないくせに・・・」
「玲薇・・・?」
玲薇の名前を呼ぶ雪男に何も答えず、彼女は振り返る。
「誰も何も!私達の気持ちなんか知らないクセに!知ったふうに止めないで!」
「っ・・・!」
もう皆と並んで笑うのが、辛くて苦しくてどうしようもできなくて。
「私達は、皆と違うの!」
「違わないよ!ちゃんと、ここにいるよ!一緒だよ!」
「っ・・・それが、腹立たしいの!」
しえみと玲薇のやり取りを見て、出雲は勝呂に問いかけた。
「・・・あんた、あの時言いかけてたわよね、作られたも違うって・・・どういう意味よ。
いつから玲薇のことを知っていたの、嘘はいらない、答えなさいよ」
「・・・それ、は・・・」
勝呂は玲薇を見る。視線に気付いた玲薇は、笑みを作った。
「ありがとう。さようなら」
「風美夜!!」
二人の所に行かせないアマイモンに、候補生の仲間は身動きが取れない。
「立て、志摩くん。早く僕らをつれていけ!」
「雪ちゃん!!風美夜さん!!」
「雪男・・・玲薇・・・!」
身体が言う事を聞いてくれない。思うように動けない。
玲薇に、そんな寂しそうな顔で笑って欲しくないのに。
雪男に、こんなにも拒絶されたくないのに。手が、届かない。
「ありがとう、燐」
「イルミナティに行って、どうなるかは判らない。死ぬかもしれない。
でも・・・もし、万が一お互い生き残れたら、僕は兄さんより強くなる、必ず」
「そんじゃみんな、さいならぁ」
笑っていつもの調子で志摩は軽く手を振るう。
「志摩さん!!」
家族同然として一緒にいた子猫丸の声も、勝呂の声も、志摩はそのまま。
「・・・・・・志摩」
「次会うても殺さんといてなぁ。特に出雲ちゃん♡」
「・・・カス、ヤロウ・・・!」
遠ざかるヘリを見るべく、燐は顔を上げる。そこにはもう、三人の姿は見えなくなっていた。
「・・・・・雪男・・・!玲薇・・・っ!」
なんでだ、ドウシテダ。離れる理由なんて、何処にもないのに。
『そない悠長な事しとったら、誰かにとられるで』
いつか勝呂に言われたその言葉が浮かぶ。
心の何処かで、玲薇は大丈夫だと思っていた。いつも、気が付けば隣で笑っていてくれていた彼女。
だから余計にか、彼女が起こした自殺行為も、何度も言っていたありがとうも、近くにいてもいないあの感じに不安はあった。
でも、目を背けてた。大丈夫としか言ってやれなくて。大丈夫以外に何て言って伝えて支えてやればよかったんだ?
アイツら二人の本当の気持ちって、何だったんだ・・・?理解してやろうとしなかった。
話を聞いてやらなかった。いや、聞いてあげたところであの二人は満足しただろうか。
『私達の気持ちなんか知らないクセに!』
たぶん、アレは彼女の本音。
「はっ・・・ッ、ぜぇ、あ、う・・・」
燐は耐えきれず、再び悶える。
「り、燐!!」
「奥村、大丈夫か」
心配してくれる皆が近寄ってくる。けれど、危ない、危険だ。
「寄るなあッ」
「「「!!?」」」
叫びにも似た声に、皆の足が止まる。
「燐・・・!」
「が、あ・・・あ!!だ、めだ・・・」
青い炎の暴走を、止められない。
「うああぁああ!!!」
「燐っ」
「ははぁ、やっぱり面白くなってきた!」
一人ワクワクとこの状況を楽しむのは、アマイモン。
「しっかし、奥村くん大丈夫かいな」
ヘリの中で、志摩が呑気に口を挟む。そう、雪男を睨む玲薇を気にして。
「雪男、燐を撃つなんてまでしなくてもイルミナティにはいけたでしょ」
怒りをあらわにする玲薇に、雪男はフッと意味深く笑みを作る。
「今更、後悔?兄さんがどういう性格か、玲薇が一番知ってるんじゃないの?」
「っ・・・・・」
燐は誰より優しい。だから、力が人一倍ある燐は、力の制御が小さい頃は難しかっただけで。
「玲薇・・・何か僕と目的が違くてイルミナティに行こうと考えてない?」
「私は・・・」
自分の本当のあるべき姿、この身体に生まれた理由。しなければならないこと。
サタン復活の阻止。それは・・・。
「燐は燐として、生きて欲しい」
自分たちはもう、どうなっても構わないから。理由なんて、それだけだ。
「どうであれ、もう絶対に後戻り出来ひんやん?今、ちょっとは後悔してはるんや・・・」
雪男の表情を伺うが、そんなことはないようだ。
「・・・ないですよね!」
「・・・・・・・・・」
玲薇は大人しく座り直す。そう、もう後戻りなんて出来ないのだから。
(燐・・・降魔剣折れちゃったけど、大丈夫だよね・・・?)
そばにいれなくて、ごめんなさい。
痛い。痛い痛い痛い。あの時とは、ケタ違いだ。負ける•••炎に•••!
雪男!!玲薇!!
「燐!!!」
「奥村!!」
炎が燃え上がり、燐の身体はみるみる壊死していく。誰も、炎を止めることは出来ない。
「燐・・・燐!!!」
近寄ろうとするしえみを、出雲が必死に抑え込む。
「・・・!!もう計画はめちゃくちゃよ!あのベリアルって悪魔は!?」
「あ、ベリアルさんは奥村くん達と合流する手はずで正十字学園駅に・・・連絡します!!」
子猫丸が携帯で連絡を取っている。わかっているようで、わかっていなかった。
いつ、彼女は自分の正体を知ったのだろう。
いつ、奥村雪男は自分の正体を知ったのだろう。
ライトニングとの調査結果。自分では教えなかった二人の秘密裏。
けどそれは、知らないところでライトニングが二人に教えたのだとすれば。
「・・・俺が判っとれば、少しは違う道もあったんか・・・?」
奥村燐よりも、近くもなく遠くもない存在。だからあんなに、頼って欲しくて・・・。
(・・・俺は、何も出来とらん・・・!!)
人の温もりって、何なんだ・・・?
もたれる玲薇を、雪男は黙って受け止める。
「ッま・・・待て・・・!?」
呼びかける燐だが、自身の身体にも異変を感じる。
「ぐ、あ・・・あ!?」
《イヒヒヒヒ始まったな、目覚めの時だ。サマエルによく鍛えられたな。
あの小便垂れから少しはマシになったじゃねぇか。その人間の肉体も、いい加減完全な炎に耐えられる頃だ。
まさかその女も一枚噛んでるとは思わなかったがまぁいい。晴れて耐えた暁には・・・クククヒヒヒ》
「うッ、ぐ・・・グギ・・・」
身体のあちこちが、悲鳴を上げる。
《その肉体は俺のものだ!ギヒャハハハハァァそういう約束だからなぁ・・・あ?》
燐の前に現れたのは、グリーンマンもとい二ーちゃんだ。
「二ー!!」
この使い魔の術者は、杜山しえみだ。
「しえみ!?」
「二、二二ーニォオー!!」
「!?」
「・・・!」
巨大化した二ーちゃんから伸びる草木に足を体を絡めとられる雪男と玲薇。
「二ーちゃん!!」
「二ーさん!?」
「・・・・・・・・」
「しえみさん・・・」
「雪ちゃん、風美夜さん・・・行っちゃダメだよ・・・!!」
ギリッと、玲薇は奥歯を噛み締める。
「・・・何にも、分からないくせに・・・」
「玲薇・・・?」
玲薇の名前を呼ぶ雪男に何も答えず、彼女は振り返る。
「誰も何も!私達の気持ちなんか知らないクセに!知ったふうに止めないで!」
「っ・・・!」
もう皆と並んで笑うのが、辛くて苦しくてどうしようもできなくて。
「私達は、皆と違うの!」
「違わないよ!ちゃんと、ここにいるよ!一緒だよ!」
「っ・・・それが、腹立たしいの!」
しえみと玲薇のやり取りを見て、出雲は勝呂に問いかけた。
「・・・あんた、あの時言いかけてたわよね、作られたも違うって・・・どういう意味よ。
いつから玲薇のことを知っていたの、嘘はいらない、答えなさいよ」
「・・・それ、は・・・」
勝呂は玲薇を見る。視線に気付いた玲薇は、笑みを作った。
「ありがとう。さようなら」
「風美夜!!」
二人の所に行かせないアマイモンに、候補生の仲間は身動きが取れない。
「立て、志摩くん。早く僕らをつれていけ!」
「雪ちゃん!!風美夜さん!!」
「雪男・・・玲薇・・・!」
身体が言う事を聞いてくれない。思うように動けない。
玲薇に、そんな寂しそうな顔で笑って欲しくないのに。
雪男に、こんなにも拒絶されたくないのに。手が、届かない。
「ありがとう、燐」
「イルミナティに行って、どうなるかは判らない。死ぬかもしれない。
でも・・・もし、万が一お互い生き残れたら、僕は兄さんより強くなる、必ず」
「そんじゃみんな、さいならぁ」
笑っていつもの調子で志摩は軽く手を振るう。
「志摩さん!!」
家族同然として一緒にいた子猫丸の声も、勝呂の声も、志摩はそのまま。
「・・・・・・志摩」
「次会うても殺さんといてなぁ。特に出雲ちゃん♡」
「・・・カス、ヤロウ・・・!」
遠ざかるヘリを見るべく、燐は顔を上げる。そこにはもう、三人の姿は見えなくなっていた。
「・・・・・雪男・・・!玲薇・・・っ!」
なんでだ、ドウシテダ。離れる理由なんて、何処にもないのに。
『そない悠長な事しとったら、誰かにとられるで』
いつか勝呂に言われたその言葉が浮かぶ。
心の何処かで、玲薇は大丈夫だと思っていた。いつも、気が付けば隣で笑っていてくれていた彼女。
だから余計にか、彼女が起こした自殺行為も、何度も言っていたありがとうも、近くにいてもいないあの感じに不安はあった。
でも、目を背けてた。大丈夫としか言ってやれなくて。大丈夫以外に何て言って伝えて支えてやればよかったんだ?
アイツら二人の本当の気持ちって、何だったんだ・・・?理解してやろうとしなかった。
話を聞いてやらなかった。いや、聞いてあげたところであの二人は満足しただろうか。
『私達の気持ちなんか知らないクセに!』
たぶん、アレは彼女の本音。
「はっ・・・ッ、ぜぇ、あ、う・・・」
燐は耐えきれず、再び悶える。
「り、燐!!」
「奥村、大丈夫か」
心配してくれる皆が近寄ってくる。けれど、危ない、危険だ。
「寄るなあッ」
「「「!!?」」」
叫びにも似た声に、皆の足が止まる。
「燐・・・!」
「が、あ・・・あ!!だ、めだ・・・」
青い炎の暴走を、止められない。
「うああぁああ!!!」
「燐っ」
「ははぁ、やっぱり面白くなってきた!」
一人ワクワクとこの状況を楽しむのは、アマイモン。
「しっかし、奥村くん大丈夫かいな」
ヘリの中で、志摩が呑気に口を挟む。そう、雪男を睨む玲薇を気にして。
「雪男、燐を撃つなんてまでしなくてもイルミナティにはいけたでしょ」
怒りをあらわにする玲薇に、雪男はフッと意味深く笑みを作る。
「今更、後悔?兄さんがどういう性格か、玲薇が一番知ってるんじゃないの?」
「っ・・・・・」
燐は誰より優しい。だから、力が人一倍ある燐は、力の制御が小さい頃は難しかっただけで。
「玲薇・・・何か僕と目的が違くてイルミナティに行こうと考えてない?」
「私は・・・」
自分の本当のあるべき姿、この身体に生まれた理由。しなければならないこと。
サタン復活の阻止。それは・・・。
「燐は燐として、生きて欲しい」
自分たちはもう、どうなっても構わないから。理由なんて、それだけだ。
「どうであれ、もう絶対に後戻り出来ひんやん?今、ちょっとは後悔してはるんや・・・」
雪男の表情を伺うが、そんなことはないようだ。
「・・・ないですよね!」
「・・・・・・・・・」
玲薇は大人しく座り直す。そう、もう後戻りなんて出来ないのだから。
(燐・・・降魔剣折れちゃったけど、大丈夫だよね・・・?)
そばにいれなくて、ごめんなさい。
痛い。痛い痛い痛い。あの時とは、ケタ違いだ。負ける•••炎に•••!
雪男!!玲薇!!
「燐!!!」
「奥村!!」
炎が燃え上がり、燐の身体はみるみる壊死していく。誰も、炎を止めることは出来ない。
「燐・・・燐!!!」
近寄ろうとするしえみを、出雲が必死に抑え込む。
「・・・!!もう計画はめちゃくちゃよ!あのベリアルって悪魔は!?」
「あ、ベリアルさんは奥村くん達と合流する手はずで正十字学園駅に・・・連絡します!!」
子猫丸が携帯で連絡を取っている。わかっているようで、わかっていなかった。
いつ、彼女は自分の正体を知ったのだろう。
いつ、奥村雪男は自分の正体を知ったのだろう。
ライトニングとの調査結果。自分では教えなかった二人の秘密裏。
けどそれは、知らないところでライトニングが二人に教えたのだとすれば。
「・・・俺が判っとれば、少しは違う道もあったんか・・・?」
奥村燐よりも、近くもなく遠くもない存在。だからあんなに、頼って欲しくて・・・。
(・・・俺は、何も出来とらん・・・!!)
人の温もりって、何なんだ・・・?