第十八話 覚悟
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『帰る?助ける?僕を?』
騎士團での僕はもう終わった。これからどうなるだろう。
尋問、人体実験、悪くすれば処刑。どれもゴメンだな
《確かにお前が使えなくなるのは面倒だ。手伝ってやろうかぁ?ヒヒヒ・・・》
左目から木霊するサタンの声。雪男がゆっくり目を閉じれば、溢れ出ていた炎も戻っていく。
(遠慮する。お前の言いなりもゴメンだ、まぁその内どうにかなる。
僕はただ、待つだけだ。子供の頃からずっとそうだった)
遠くの方から鳴り響く警報音。慌ただしく階段を上がってくる音。
(――ほら)
大胆に破壊されるドアの向こうから姿を見せたのは、燐だ。
「雪男、お前を助ける。来い!!」
階段を下る時に、雪男の視界に入ったのは、倒れている警備員のそばにある銃。
自分が持っていたのは、メフィスト襲撃事件の事で没収されたままだ。
備えあれば憂いなし、というものだ。
警備員の目を誤魔化す為に、他の候補生達も奮闘してくれている。
まさかあの時、アマイモンが協力してくれるとは思いもよらなかったが、
アマイモン曰く、メフィストは全てを知っているとか。
「俺達を逃がす為に、みんな協力してくれたんだ。ほれ、学園から脱出するまでそれ着てろ」
迷彩ポンチョを渡され、黙って受け取る。
「電車で行けるとこまで行って、終電で停まった先で宿取ろう。
(やっぱ玲薇連れてくりゃよかったかな・・・)」
リニュウなら、何処へだってひとっ飛びなのに。
「(いや、でもダメだ)話は、その後だ」
だが、燐の背後でバサリと音がする。後ろを振り返れば、雪男は迷彩ポンチョを足元に落としていた。
「雪男?」
この橋を渡れば、すぐ学園から抜け出せるのに。
「どうした・・・?」
「あーあ・・・。兄さんの事だから、遅かれ早かれ助けに来ると思ってたけど、まさかこんなに早いなんて・・・。
何で、いつも助けに来るんだ。生まれもほとんど同じなのに、どうしてこんなにも違うんだ」
外は、相変わらず冷たい冷たい雪が視界を遮るように降っている。
「何の話だ?こんな所でちんたら喋ってる場合じゃ・・・」
「僕なんかより、玲薇はどうしたの?」
「あ、あいつはもう、巻き込めねーから・・・」
「・・・(そういうところは優しいよね、兄さん)」
一際、強い風が吹き荒れる。
「!!」
眩しい光とともに姿を見せたのはヘリだ。これは、イルミナティのモノ。
ヘリの下に姿を現したのは、志摩廉造だ。
「奥村先生・・・イルミナティに歓迎します。どーせもう、騎士團にもおられへんでしょ?」
「志摩!!?」
「志摩さん・・・!」
地下監禁塔から抜け出した仲間たちは、遠くからも彼らのやり取りを見守る。
「あのヤロウ・・・!」
「・・・!!」
「てめー、ふざけんじゃねー!!何で雪男がイルミナティなんか・・・行くわけねーだろ!!」
『私は君に、"力"を与える事が出来る』
ルシフェルの言葉が、頭から離れない。
『君は弱い』
「雪男」
「・・・・・・・・・・」
「なっ!」
「「「!!?」」」
志摩の背後から姿を見せたのは、玲薇だった。
「な、なんで・・・お前がそっちにいるんだよ?」
かすかに震えている燐の声。だから姿を見せたくなかった。
けれど、自分の意志を、覚悟を、ここで見せなければと思ったから。
でも、何も答えられる言葉なくて。
「玲薇は兄さんより、いつも賢いよ」
「雪男!?」
燐に背中を向け、志摩と、玲薇の待つ方へ行ってしまう。
何がどうして二人をそちら側に引き寄せてしまうのか、燐にはさっぱり理解できない。
何で、どうして、玲薇は大人しく帰りを待ってくれると思っていたのに。
「兄さん、最後に教えてあげる。正十字騎士團が、イルミナティと何も変わらないってことをね。
騎士團・・・メフィストは、悪魔の器を造る為に大勢の人命を実験に使ってたんだ。
それどころか、イルミナティを生み出したのは騎士團だった。しかも神父さんはその実験で生まれた実験体で、
祓魔師として養成された人間だったんだ。そんな人間に、人の心があったか疑問だよね」
「・・・はぁ・・・?」
「実際、僕らを武器にする為に育ててたんだ。道具みたいに。それに、玲薇も」
雪男は、玲薇を見る。彼女は一つ、頷いた。
「私はやっぱり、自分の存在価値を知りたい。きっと、メフィストは教えてくれない。
燐にはずっと黙っていたんだけど、雪男が教えてくれたお父さんの結果と、私の結果が一緒だって」
「は・・・?なんだよ、どー言う事だよ?最近、やたら二人で話してると思ってたらそんな・・・」
動揺する燐。自分は、自分にだけ今まで大事な部分を、二人は話さなかったってことか。
だから玲薇も雪男も、あんなに自分の出生の秘密を知りたがっていて。でも、疑問がある。
雪男が言うように、獅郎が本当に実験体なのだとしても、玲薇の言うお父さんと同じ結果ってなんだ。
「玲薇は、玲薇は俺達とは違う!普通の人間だろ!」
「それも全部違うの!全部嘘だった!嘘だったのよ!私は居ちゃいけないの!」
「っ・・・玲薇、何で・・・そんな事ねーよ!!親父がどんな生まれとか・・・知らねーけど、
でも、(俺の知ってる神父は・・・)そんな事ねえ!!」
「ああ、兄さんは違うかな、特別だったから」
「!?」
そう話を切り出すのは、雪男だ。
「・・・あの人も、少しは思い入れがあったのかもね。でも、僕は弱い出来損ないだったから。
きっと、目障りだったんじゃないかな。玲薇も、女の子だしね」
「・・・お前、何を言ってんだ!?お前は・・・お前こそ、俺と違って完璧で、神父や俺の自慢だったんだ!!
何を見てんだよ・・・その曇ったメガネふいてちゃんと見ろ!!玲薇もだ!!
お前らは誤解してんだ!俺がメフィストに本当の事話させてやる!!」
「どうでもいいよ、ここに未練はない。行こう、玲薇」
「っ・・・」
「駄目だ、行かせねえ!!!」
雪男を掴もうとした燐に向けられたのは、あの時警備員から取りもらった銃だ。
反射的に動きが止まる燐。玲薇はぐっとこらえる。ここで飛び出せば、全部、何もかもなくなってしまうから。
「ごめん、兄さん。僕は、強くなりたいんだ」
騎士團での僕はもう終わった。これからどうなるだろう。
尋問、人体実験、悪くすれば処刑。どれもゴメンだな
《確かにお前が使えなくなるのは面倒だ。手伝ってやろうかぁ?ヒヒヒ・・・》
左目から木霊するサタンの声。雪男がゆっくり目を閉じれば、溢れ出ていた炎も戻っていく。
(遠慮する。お前の言いなりもゴメンだ、まぁその内どうにかなる。
僕はただ、待つだけだ。子供の頃からずっとそうだった)
遠くの方から鳴り響く警報音。慌ただしく階段を上がってくる音。
(――ほら)
大胆に破壊されるドアの向こうから姿を見せたのは、燐だ。
「雪男、お前を助ける。来い!!」
階段を下る時に、雪男の視界に入ったのは、倒れている警備員のそばにある銃。
自分が持っていたのは、メフィスト襲撃事件の事で没収されたままだ。
備えあれば憂いなし、というものだ。
警備員の目を誤魔化す為に、他の候補生達も奮闘してくれている。
まさかあの時、アマイモンが協力してくれるとは思いもよらなかったが、
アマイモン曰く、メフィストは全てを知っているとか。
「俺達を逃がす為に、みんな協力してくれたんだ。ほれ、学園から脱出するまでそれ着てろ」
迷彩ポンチョを渡され、黙って受け取る。
「電車で行けるとこまで行って、終電で停まった先で宿取ろう。
(やっぱ玲薇連れてくりゃよかったかな・・・)」
リニュウなら、何処へだってひとっ飛びなのに。
「(いや、でもダメだ)話は、その後だ」
だが、燐の背後でバサリと音がする。後ろを振り返れば、雪男は迷彩ポンチョを足元に落としていた。
「雪男?」
この橋を渡れば、すぐ学園から抜け出せるのに。
「どうした・・・?」
「あーあ・・・。兄さんの事だから、遅かれ早かれ助けに来ると思ってたけど、まさかこんなに早いなんて・・・。
何で、いつも助けに来るんだ。生まれもほとんど同じなのに、どうしてこんなにも違うんだ」
外は、相変わらず冷たい冷たい雪が視界を遮るように降っている。
「何の話だ?こんな所でちんたら喋ってる場合じゃ・・・」
「僕なんかより、玲薇はどうしたの?」
「あ、あいつはもう、巻き込めねーから・・・」
「・・・(そういうところは優しいよね、兄さん)」
一際、強い風が吹き荒れる。
「!!」
眩しい光とともに姿を見せたのはヘリだ。これは、イルミナティのモノ。
ヘリの下に姿を現したのは、志摩廉造だ。
「奥村先生・・・イルミナティに歓迎します。どーせもう、騎士團にもおられへんでしょ?」
「志摩!!?」
「志摩さん・・・!」
地下監禁塔から抜け出した仲間たちは、遠くからも彼らのやり取りを見守る。
「あのヤロウ・・・!」
「・・・!!」
「てめー、ふざけんじゃねー!!何で雪男がイルミナティなんか・・・行くわけねーだろ!!」
『私は君に、"力"を与える事が出来る』
ルシフェルの言葉が、頭から離れない。
『君は弱い』
「雪男」
「・・・・・・・・・・」
「なっ!」
「「「!!?」」」
志摩の背後から姿を見せたのは、玲薇だった。
「な、なんで・・・お前がそっちにいるんだよ?」
かすかに震えている燐の声。だから姿を見せたくなかった。
けれど、自分の意志を、覚悟を、ここで見せなければと思ったから。
でも、何も答えられる言葉なくて。
「玲薇は兄さんより、いつも賢いよ」
「雪男!?」
燐に背中を向け、志摩と、玲薇の待つ方へ行ってしまう。
何がどうして二人をそちら側に引き寄せてしまうのか、燐にはさっぱり理解できない。
何で、どうして、玲薇は大人しく帰りを待ってくれると思っていたのに。
「兄さん、最後に教えてあげる。正十字騎士團が、イルミナティと何も変わらないってことをね。
騎士團・・・メフィストは、悪魔の器を造る為に大勢の人命を実験に使ってたんだ。
それどころか、イルミナティを生み出したのは騎士團だった。しかも神父さんはその実験で生まれた実験体で、
祓魔師として養成された人間だったんだ。そんな人間に、人の心があったか疑問だよね」
「・・・はぁ・・・?」
「実際、僕らを武器にする為に育ててたんだ。道具みたいに。それに、玲薇も」
雪男は、玲薇を見る。彼女は一つ、頷いた。
「私はやっぱり、自分の存在価値を知りたい。きっと、メフィストは教えてくれない。
燐にはずっと黙っていたんだけど、雪男が教えてくれたお父さんの結果と、私の結果が一緒だって」
「は・・・?なんだよ、どー言う事だよ?最近、やたら二人で話してると思ってたらそんな・・・」
動揺する燐。自分は、自分にだけ今まで大事な部分を、二人は話さなかったってことか。
だから玲薇も雪男も、あんなに自分の出生の秘密を知りたがっていて。でも、疑問がある。
雪男が言うように、獅郎が本当に実験体なのだとしても、玲薇の言うお父さんと同じ結果ってなんだ。
「玲薇は、玲薇は俺達とは違う!普通の人間だろ!」
「それも全部違うの!全部嘘だった!嘘だったのよ!私は居ちゃいけないの!」
「っ・・・玲薇、何で・・・そんな事ねーよ!!親父がどんな生まれとか・・・知らねーけど、
でも、(俺の知ってる神父は・・・)そんな事ねえ!!」
「ああ、兄さんは違うかな、特別だったから」
「!?」
そう話を切り出すのは、雪男だ。
「・・・あの人も、少しは思い入れがあったのかもね。でも、僕は弱い出来損ないだったから。
きっと、目障りだったんじゃないかな。玲薇も、女の子だしね」
「・・・お前、何を言ってんだ!?お前は・・・お前こそ、俺と違って完璧で、神父や俺の自慢だったんだ!!
何を見てんだよ・・・その曇ったメガネふいてちゃんと見ろ!!玲薇もだ!!
お前らは誤解してんだ!俺がメフィストに本当の事話させてやる!!」
「どうでもいいよ、ここに未練はない。行こう、玲薇」
「っ・・・」
「駄目だ、行かせねえ!!!」
雪男を掴もうとした燐に向けられたのは、あの時警備員から取りもらった銃だ。
反射的に動きが止まる燐。玲薇はぐっとこらえる。ここで飛び出せば、全部、何もかもなくなってしまうから。
「ごめん、兄さん。僕は、強くなりたいんだ」