第十七話 雪の果て
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昨日から降っていた雪は、地面のコンクリートが見えないくらい、しかし、足場がなくならない程の量が積もっていた。
ライトニングから渡されたUSBを見て知った真実。
戦い方が危険だと忠告され、朝方になってしまったから帰っていいと言われたけれど、
二人がいる寮にも、修道院にも、騎士團にも、何処にも帰りたくなかった。
『私がいるから』
玲薇はそうに言ってくれたけれど、きっと兄の燐と一緒にいるのだろう。
だからー・・・。
気付いたらこの場にいた。自分に問いかけるのは不思議なことだけど、何故祓魔屋にいるのだろう。
そういえば、二年前にもこんなことがあったと思い出す。
『どうして神父さんは僕らを育ててるの?』
『いつか判る』
いつ何処で聞いても、獅郎から返ってくる言葉は同じで。
『シュラさんから聞いたんだ。兄さんの事、シュラさんに頼んだでしょ』
『ゲッ、あいつ言うなよ』
『その時、こう言ったって。"武器"にする為に育ててるって。何だよ"武器"って・・・何が目的だ!!』
『雪男・・・!』
雪男にとって、これが初めての家出だった。
「えっ、雪ちゃん!?」
「!?」
名前を呼ばれ、振り返る。
「・・・しえみさん」
「どうしたの!?こんな時間に・・・あ、備品を切らしちゃった!?」
「い、いえ・・・違います」
首を横に振る雪男に、しえみにも昔の事が思い浮かぶ。
確かあの日は、冷たい雨が降っていた。雪男に、『お家に帰りたくないの?』と、問いかけた。
あの時の雪男は、それに否定した。『雨に降られながら散歩するのもいいかと思って』と、はにかみながら。
自然と、帰っていく雪男の後ろ姿を、確かに見送っていた。
だから、今回もそうだと思った。
「・・・そういえば、二年前にもこんな事あったねぇ」
お話出来れば、雪男の心も少しは軽くなると思った。
「ほら、私が「お家に帰りたくないの?」って聞いたら雪ちゃん・・・」
「はい」
ハッキリと聞こえた肯定の言葉。あの日は、『いいえ』と言って、少しお話して、確かに見送っていたのに。
「え?」
あの時と真逆の答えに、動揺が隠せなくなる。
「帰りたくない」
寮では、きっと今も彼を心配している燐も玲薇もいる。それに、騎士團にはシュラだって。
どうすればいいのか、どう接してあげればいいのか。
「そ・・・そう。でも、外は冷えるよ。お店の中に」
あの日の、雨の日と彼は違う。
「お母さんはずっと出張してて・・・私もこれから任務で出掛けるけど、まだ時間あるからゆっくりしてて!」
しえみは慌てて雪男を家に上がらせ、キッチンに向かう。
「お茶淹れるね!」
彼の前では、出来るだけ普段通りに、笑顔で。
「・・・あ、すみません・・・」
(雪ちゃん・・・)
二年前、私は緊張して捲し立てるばっかりだった。私じゃダメかもしれない。
でも、今の私はあの時と違う•••。
「何処行くんや、風美夜」
玄関口に勝呂に声をかけられ、ドキリと身体が跳ねる。
「す、勝呂くん・・・あれ、まだ食堂にいたの?」
首元にはマフラーをし、寒さ対策はしている玲薇は、髪の毛をかき彼と目を合わせようとしない。
「慌ただし足音したからや。奥村はどないしたん?」
「燐はまだ。アイツ、朝弱いから・・・。雪男から連絡来たから、ちょっと出かけてくるね」
「あ、おいっ!」
嘘だ。嘘をついた。雪男から連絡なんて一切きていない。
彼に言った。『私がいるから』って。シュラにも修道院の人にも連絡したけど、雪男は戻ってなくて。
じゃあ、彼は今何処にいるの?燐に会いたくないのなら、せめて自分には会って欲しいと思う欲が出て。
燐の隣を選んだ自分。雪男を突き放したのは自分。それなのに、二人がこれ以上バラバラになるのは嫌で。
(矛盾してるのは判ってる)
それでも、どうすれば皆と笑って過ごせるのか考えてしまうんだ。
「・・・・・・・・志摩くん」
「・・・・・・・・・」
あとは、雪男の事を知っているのは志摩廉造、彼だけだ。
錫杖を雪の積もった地面に突き立て、中腰で座っていた志摩は、玲薇を見てヘラッと笑う。
「まさか、玲薇ちゃんから連絡くれるとー思ってへんかったわ」
「雪男は、何処にいるの?」
「直球やなぁ。少しは俺との会話楽しんでもらってもええやん」
「あんな雪男の行動を見て、余裕ではいられない。燐が動いて雪男が離れるなら、私がいなくちゃいけない」
雪男を一人に出来ない。自分が隣にいる事を待っててくれるのなら、行かなくちゃならない。
好きな人を置いてでも。いいのだ、これで。所詮自分たちは、サタンの落胤なのだから。
(ごめんね、燐・・・)
ライトニングから渡されたUSBを見て知った真実。
戦い方が危険だと忠告され、朝方になってしまったから帰っていいと言われたけれど、
二人がいる寮にも、修道院にも、騎士團にも、何処にも帰りたくなかった。
『私がいるから』
玲薇はそうに言ってくれたけれど、きっと兄の燐と一緒にいるのだろう。
だからー・・・。
気付いたらこの場にいた。自分に問いかけるのは不思議なことだけど、何故祓魔屋にいるのだろう。
そういえば、二年前にもこんなことがあったと思い出す。
『どうして神父さんは僕らを育ててるの?』
『いつか判る』
いつ何処で聞いても、獅郎から返ってくる言葉は同じで。
『シュラさんから聞いたんだ。兄さんの事、シュラさんに頼んだでしょ』
『ゲッ、あいつ言うなよ』
『その時、こう言ったって。"武器"にする為に育ててるって。何だよ"武器"って・・・何が目的だ!!』
『雪男・・・!』
雪男にとって、これが初めての家出だった。
「えっ、雪ちゃん!?」
「!?」
名前を呼ばれ、振り返る。
「・・・しえみさん」
「どうしたの!?こんな時間に・・・あ、備品を切らしちゃった!?」
「い、いえ・・・違います」
首を横に振る雪男に、しえみにも昔の事が思い浮かぶ。
確かあの日は、冷たい雨が降っていた。雪男に、『お家に帰りたくないの?』と、問いかけた。
あの時の雪男は、それに否定した。『雨に降られながら散歩するのもいいかと思って』と、はにかみながら。
自然と、帰っていく雪男の後ろ姿を、確かに見送っていた。
だから、今回もそうだと思った。
「・・・そういえば、二年前にもこんな事あったねぇ」
お話出来れば、雪男の心も少しは軽くなると思った。
「ほら、私が「お家に帰りたくないの?」って聞いたら雪ちゃん・・・」
「はい」
ハッキリと聞こえた肯定の言葉。あの日は、『いいえ』と言って、少しお話して、確かに見送っていたのに。
「え?」
あの時と真逆の答えに、動揺が隠せなくなる。
「帰りたくない」
寮では、きっと今も彼を心配している燐も玲薇もいる。それに、騎士團にはシュラだって。
どうすればいいのか、どう接してあげればいいのか。
「そ・・・そう。でも、外は冷えるよ。お店の中に」
あの日の、雨の日と彼は違う。
「お母さんはずっと出張してて・・・私もこれから任務で出掛けるけど、まだ時間あるからゆっくりしてて!」
しえみは慌てて雪男を家に上がらせ、キッチンに向かう。
「お茶淹れるね!」
彼の前では、出来るだけ普段通りに、笑顔で。
「・・・あ、すみません・・・」
(雪ちゃん・・・)
二年前、私は緊張して捲し立てるばっかりだった。私じゃダメかもしれない。
でも、今の私はあの時と違う•••。
「何処行くんや、風美夜」
玄関口に勝呂に声をかけられ、ドキリと身体が跳ねる。
「す、勝呂くん・・・あれ、まだ食堂にいたの?」
首元にはマフラーをし、寒さ対策はしている玲薇は、髪の毛をかき彼と目を合わせようとしない。
「慌ただし足音したからや。奥村はどないしたん?」
「燐はまだ。アイツ、朝弱いから・・・。雪男から連絡来たから、ちょっと出かけてくるね」
「あ、おいっ!」
嘘だ。嘘をついた。雪男から連絡なんて一切きていない。
彼に言った。『私がいるから』って。シュラにも修道院の人にも連絡したけど、雪男は戻ってなくて。
じゃあ、彼は今何処にいるの?燐に会いたくないのなら、せめて自分には会って欲しいと思う欲が出て。
燐の隣を選んだ自分。雪男を突き放したのは自分。それなのに、二人がこれ以上バラバラになるのは嫌で。
(矛盾してるのは判ってる)
それでも、どうすれば皆と笑って過ごせるのか考えてしまうんだ。
「・・・・・・・・志摩くん」
「・・・・・・・・・」
あとは、雪男の事を知っているのは志摩廉造、彼だけだ。
錫杖を雪の積もった地面に突き立て、中腰で座っていた志摩は、玲薇を見てヘラッと笑う。
「まさか、玲薇ちゃんから連絡くれるとー思ってへんかったわ」
「雪男は、何処にいるの?」
「直球やなぁ。少しは俺との会話楽しんでもらってもええやん」
「あんな雪男の行動を見て、余裕ではいられない。燐が動いて雪男が離れるなら、私がいなくちゃいけない」
雪男を一人に出来ない。自分が隣にいる事を待っててくれるのなら、行かなくちゃならない。
好きな人を置いてでも。いいのだ、これで。所詮自分たちは、サタンの落胤なのだから。
(ごめんね、燐・・・)