第十六話 正月と寿
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「・・・・・・・・」
力なく、ヘナヘナと膝から崩れ落ちる玲薇。気力が抜けた。
それよりも、雪男からはもう逃げられない。言ってしまってから後悔してももう遅いけれど。
(・・・雪男はずっと、昔も今も、私を待ってくれていた・・・)
けど、自分が好きだと伝えた相手はただ一人、彼の兄の方で。それなのに燐とはすれ違ったまま。
雪男にも言われたような気がする。私は、好きになる相手を間違えたのか。違えど、そんな風には思いたくない。
『玲薇!』
笑顔で手を振って名前を呼んでくれる燐を、最近は全く見なくなってしまった。
あの無邪気な大好きな笑顔を。
「風美夜、大丈夫か?」
勝呂が膝を折り、心配そうな顔を玲薇に向けてくれる。
「ごめん・・・ごめんね、勝呂くん・・・」
「いや、俺はいい。一体、何があったんや?」
彼に話していいのか分からない。けど、三人のイザコザに、優しい彼を巻き込みたくなくて。
「・・・私、燐の事好き」
「え?」
「でも、燐は半分悪魔。もしかしたら私も雪男もそうなのかもしれない。
双子の雪男の方は、心のどっかでそう思ってる。兄が半分悪魔だから。
じゃあ、私は何?私のあの力もサタンの力なのかな・・・ねぇ、勝呂くん教えてよ」
『普通の人間だったら』彼を好きになってたかもしれない。
「本当の人の温もりってのを。私に教えて」
「・・・!」
彼女の表情が、動いていない。泣いているのか、悲しいのかもわからない、固まった表情、いや、恐ろしいくらいの作り笑顔。
メフィストから告げられ、知っている彼女の出生。だけど、今の状況話せる雰囲気じゃない。話してはダメだ。
(・・・今のコイツを支えられるんは俺だけ・・・?俺で嫌じゃないんかい・・・)
けど、今だけでも。
「好きなだけ泣いてええ。顔は見んさかい、俺でいいなら」
優しく抱き止めてくれるその腕は、温かくて。あぁ、これが本当の人の温もりって奴なのか。
「・・・変わらない、燐も一緒なのにっ・・・!」
声を殺して涙を流す。温もりも見た目もそんなに変わらないのに。どうして皆と違うのだろう。
(何やっとんじゃ、あのボケ・・・!)
抱いているのは自分。でも、彼女の頭の中は奥村燐だ。そんな彼に向かって、心の中で悪態をついた。
勝呂と玲薇から離れて一人、皆のいる所に向かおうとしている雪男。
『私がいるから』
「・・・・・・・・」
あれは本心なのかそうじゃないのか分からないがまぁいい。やっと彼女は自分を見てくれる。
兄ではなく、弟の方である自分に。初めからそうしていればよかったものを。
「遅いよ、玲薇」
待ちくたびれたじゃないか。
「!」
すると、雪男の行く手を阻むように、志摩が錫杖を突き出していた。
「アンタ、ええ加減にせぇよ」
「・・・・・・」
他の連中には滅多に見せない、志摩の真剣な表情。
「俺は「相談しろ」てゆーたんですよ。「脅せ」とはゆーてへん」
「相談・・・誰に?勝呂くん?君?まさか兄?プハハ!
・・・一番大事な人に相談しても、何の解決にもならない。
(それよか、どうしようもない)皆、違う人間なんだから」
「・・・大事な人・・・?あ・・・(玲薇ちゃん?)」
だから彼女は後を追って心配した。だから彼女はあの時反射的に飛び出したのか。
知っているから。
すると、雪男のスマホが鳴り電話に出ればシュラからで。
「・・・はい」
「雪男!至急、学園に戻れ!候補生も全員な。人手不足だ。テレビをつけろ!」
それだけ言い残し、シュラは電話を切ってしまった。志摩が問いかける。
「どーしました?」
「・・・・・・・・・」
何やら皆の集まっている部屋が、あの賑やかさとは違う色の声がし始める。
「「!?」」
「「・・・・・・・・・」」
玲薇の落ち着く様子もないまま、周りの異様な慌ただしさに勝呂と一緒に顔を上げる。
「・・・どうしたんだろう・・・」
皆で楽しく飲み食いしていた雰囲気とは何だか違う。
「もういいんか?」
「うん、ありがとう・・・戻らないと、皆に何か言われちゃうね」
力なく笑う玲薇に、掛けてやる言葉が見つからない。少し赤くなった彼女の目を、どうやって言い訳しよう。
立ち上がろうと、ふらつく彼女の身体を支えてやる。
「あ・・・」
再び抱いてしまう形になってしまう。離したくないと思ってしまうのは、まだ心のどっかで彼女を想ってるから。
皆の前では散々否定して強気になっているけど本当はまだ・・・。
けど、告白したところで答えは目に見えているから。言葉にしない、伝えない。
自分を頼ってくれているという今の事実があればそれでいいんだ。
二人で一緒に皆の所に戻れば、ちょうど雪男も志摩も戻ったところのようだった。
「あっ、雪ちゃん」
テレビを前に、最初に気付いたしえみが声をかける。その声に、燐は遠目で雪男と玲薇を見た。
(・・・雰囲気が、違う・・・?)
玲薇達もテレビに目線を向ける。その映像は電車のフロントガラスに大きな穴が開いた映像。
一般人にはそれしか情報がない。ニュースの見出しは『大型動物の衝突か』などと書かれており、
池袋駅が原因調査の為封鎖されているが、見える人には見える。その窓が割れた電車の上にいる悪魔が。
その悪魔の名前、一目坊(サイクロプス)は上級悪魔。こんな都会に悪魔が現れたのは今までに記憶がない。
力なく、ヘナヘナと膝から崩れ落ちる玲薇。気力が抜けた。
それよりも、雪男からはもう逃げられない。言ってしまってから後悔してももう遅いけれど。
(・・・雪男はずっと、昔も今も、私を待ってくれていた・・・)
けど、自分が好きだと伝えた相手はただ一人、彼の兄の方で。それなのに燐とはすれ違ったまま。
雪男にも言われたような気がする。私は、好きになる相手を間違えたのか。違えど、そんな風には思いたくない。
『玲薇!』
笑顔で手を振って名前を呼んでくれる燐を、最近は全く見なくなってしまった。
あの無邪気な大好きな笑顔を。
「風美夜、大丈夫か?」
勝呂が膝を折り、心配そうな顔を玲薇に向けてくれる。
「ごめん・・・ごめんね、勝呂くん・・・」
「いや、俺はいい。一体、何があったんや?」
彼に話していいのか分からない。けど、三人のイザコザに、優しい彼を巻き込みたくなくて。
「・・・私、燐の事好き」
「え?」
「でも、燐は半分悪魔。もしかしたら私も雪男もそうなのかもしれない。
双子の雪男の方は、心のどっかでそう思ってる。兄が半分悪魔だから。
じゃあ、私は何?私のあの力もサタンの力なのかな・・・ねぇ、勝呂くん教えてよ」
『普通の人間だったら』彼を好きになってたかもしれない。
「本当の人の温もりってのを。私に教えて」
「・・・!」
彼女の表情が、動いていない。泣いているのか、悲しいのかもわからない、固まった表情、いや、恐ろしいくらいの作り笑顔。
メフィストから告げられ、知っている彼女の出生。だけど、今の状況話せる雰囲気じゃない。話してはダメだ。
(・・・今のコイツを支えられるんは俺だけ・・・?俺で嫌じゃないんかい・・・)
けど、今だけでも。
「好きなだけ泣いてええ。顔は見んさかい、俺でいいなら」
優しく抱き止めてくれるその腕は、温かくて。あぁ、これが本当の人の温もりって奴なのか。
「・・・変わらない、燐も一緒なのにっ・・・!」
声を殺して涙を流す。温もりも見た目もそんなに変わらないのに。どうして皆と違うのだろう。
(何やっとんじゃ、あのボケ・・・!)
抱いているのは自分。でも、彼女の頭の中は奥村燐だ。そんな彼に向かって、心の中で悪態をついた。
勝呂と玲薇から離れて一人、皆のいる所に向かおうとしている雪男。
『私がいるから』
「・・・・・・・・」
あれは本心なのかそうじゃないのか分からないがまぁいい。やっと彼女は自分を見てくれる。
兄ではなく、弟の方である自分に。初めからそうしていればよかったものを。
「遅いよ、玲薇」
待ちくたびれたじゃないか。
「!」
すると、雪男の行く手を阻むように、志摩が錫杖を突き出していた。
「アンタ、ええ加減にせぇよ」
「・・・・・・」
他の連中には滅多に見せない、志摩の真剣な表情。
「俺は「相談しろ」てゆーたんですよ。「脅せ」とはゆーてへん」
「相談・・・誰に?勝呂くん?君?まさか兄?プハハ!
・・・一番大事な人に相談しても、何の解決にもならない。
(それよか、どうしようもない)皆、違う人間なんだから」
「・・・大事な人・・・?あ・・・(玲薇ちゃん?)」
だから彼女は後を追って心配した。だから彼女はあの時反射的に飛び出したのか。
知っているから。
すると、雪男のスマホが鳴り電話に出ればシュラからで。
「・・・はい」
「雪男!至急、学園に戻れ!候補生も全員な。人手不足だ。テレビをつけろ!」
それだけ言い残し、シュラは電話を切ってしまった。志摩が問いかける。
「どーしました?」
「・・・・・・・・・」
何やら皆の集まっている部屋が、あの賑やかさとは違う色の声がし始める。
「「!?」」
「「・・・・・・・・・」」
玲薇の落ち着く様子もないまま、周りの異様な慌ただしさに勝呂と一緒に顔を上げる。
「・・・どうしたんだろう・・・」
皆で楽しく飲み食いしていた雰囲気とは何だか違う。
「もういいんか?」
「うん、ありがとう・・・戻らないと、皆に何か言われちゃうね」
力なく笑う玲薇に、掛けてやる言葉が見つからない。少し赤くなった彼女の目を、どうやって言い訳しよう。
立ち上がろうと、ふらつく彼女の身体を支えてやる。
「あ・・・」
再び抱いてしまう形になってしまう。離したくないと思ってしまうのは、まだ心のどっかで彼女を想ってるから。
皆の前では散々否定して強気になっているけど本当はまだ・・・。
けど、告白したところで答えは目に見えているから。言葉にしない、伝えない。
自分を頼ってくれているという今の事実があればそれでいいんだ。
二人で一緒に皆の所に戻れば、ちょうど雪男も志摩も戻ったところのようだった。
「あっ、雪ちゃん」
テレビを前に、最初に気付いたしえみが声をかける。その声に、燐は遠目で雪男と玲薇を見た。
(・・・雰囲気が、違う・・・?)
玲薇達もテレビに目線を向ける。その映像は電車のフロントガラスに大きな穴が開いた映像。
一般人にはそれしか情報がない。ニュースの見出しは『大型動物の衝突か』などと書かれており、
池袋駅が原因調査の為封鎖されているが、見える人には見える。その窓が割れた電車の上にいる悪魔が。
その悪魔の名前、一目坊(サイクロプス)は上級悪魔。こんな都会に悪魔が現れたのは今までに記憶がない。