第十五話 新No.1ヒーロー
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「着替えと羽織るもの、置いておくね」
「いつもありがとう」
轟の母、冷が入院している病院に、轟の姉の冬美と、兄の夏雄がお見舞いに来ていた。
「来週から冷え込むみたい」
「嬉しい、寒いのは好き」
「暑がりだもんねぇ、俺ら」
「夏くん、元気そうね」
するとさっそく、冬美にからかわれる夏雄。
「大学入ってから、全っ然帰って来ないの。ゼミで彼女できたんだって」
「姉ちゃん!!連絡入れてるからいいでしょ!?」
あわてふためく夏雄。きっと冬美には心配かけまいと連絡入れてるのだろう。
「おっ、お母さんも元気そうだね!血色、血色がいい!!」
「焦凍がお手紙くれるの」
冷がずらーと、手の中にいくつもの手紙を見せる。
「仮免補講大変だけど、友だちに追いつく為に頑張ってるって」
「へぇ~焦凍、筆マメなんね」
「寮制に補講で、あの子も以前のようには来れないのよ」
「ふふ。彼女といえば、焦凍にも出来たのは二人は知ってるの?」
「えぇ」
「はぁ!?」
頷く冬美に対して、夏雄は驚く。
「なに!?あいつもう彼女とかいんの!?俺、全然知らないけど!?」
「確か、名前聞いたら登坂歌恋ちゃんって。その子以前、神野事件に巻き込まれてた子よ」
「・・・桜の"個性"の子だよな。それ聞いて、お母さんも姉ちゃんもなんて答えたの?」
「・・・・・・・・」
冬美はチラッと、冷を見る。
「"自分で選んだ子は大切にしなさい"って。夏くんが選んだ子だって否定するつもりないし、
焦凍が選んだ子だって、否定するつもりはない。焦凍・・・あの子が変わるきっかけをくれた大事な子だって」
何にもとらわれない。自分で自分の歩む道を、彼は進んでいるのだから。
「お父さんにはまだ言えないって、言ってたけどね」
クスッと、冷が笑う。あの頃より変わったのは、何も焦凍だけでない。
お母さんも、ちょっとずつだけど明るく笑顔を見せてくれて。冬美と冷の話を、夏雄はボーッと聞いている。
「お母さん。あいつ、昨日正式にNo.1になったよ」
「夏」
「世間は、お母さんや兄弟にしてきた事、家族をどう扱ってたか知らないよ。あいつ、トーク番組とか出ないし」
「あんた、お父さんの話は」
「いいの、冬美」
しっかり現実を、夏雄が思ってる事実を受け止める必要はあるのだから。
「俺はろくに思い出もないし、あいつがどうなろうがもうほぼ他人感覚なんだけどさ。
けど、お母さんや焦凍たちの事・・・なかったかのように振る舞ってんのは許せねぇ。
もう約10年。お母さんに謝りにも来てないんだろ。過去も血も、あいつは置き去りにしていく気なんだ」
「それは違うよ」
「・・・何で、お母さんがあいつ庇うん・・・」
冷が視線を向けた先には、花瓶に生けてある一輪の花がある。
「このお花、私が好きって言ったの。初めて会った頃、たった一度」
「・・・・・・お父さん、来たの・・・!?」
それは、冬美も知らなかった事実。
「何度か来てるみたい。面会は・・・してない。まだ、恐くて。先生も、やめた方がいいって。
あの人が内心どう思ってるかはわからない。対外的な理由かもしれない。
でもね、置き去りじゃないよ。過去も血も、向き合おうとしてることは確かだよ」
―――――
お互いの部屋を行き来するのに、不安を覚えた歌恋と轟は、あの日以来行かなくなっていた。
(・・・まぁ、我慢しろといえば我慢出来るけど・・・)
やっと気持ちが通じて、心を開けたと思ったのだけれど。
(寮制って、難しいな・・・)
隣に座る彼は、不機嫌そうである。
「?」
轟のポケットの中に入っているスマホが鳴っている。
「姉さん?」
彼は一言、席を外す事を伝えてくれてから男子寮の方へ向かっていく。
「なんかおもしれー番組ねぇかな」
今日も学校が休みで、自分の部屋にいたり、共有スペースにいたりと各々の時間を過ごしていた。
テレビで情報番組を見るのが好きな上鳴が、大体テレビのリモコンを占領しているが。
画面に映る映像に、目が離せなくなったのだ。エンデヴァーとホークスが、あの脳無と戦っている。
それは神野事件の時にも、ベストジーニストらの活躍で捉えた似たようなモノ。
思わずチャンネルを回していた上鳴の手も、止まった。
今、画面に釘付けになっている緑谷・切島・八百万・常闇・上鳴・麗日・蛙吹・歌恋は唖然とする。
轟とテーブルに座っていた歌恋は、近くでみようと皆がいる、テレビの前のソファまで歩いた。
間違いない。脳無と戦うエンデヴァーに、羽を自在に操り庶民を助けているのはホークスだ。
いつか彼のように、ホークスのようになりたいと思う反面、こういった戦いを見ると背筋が冷える。
なにせあのエンデヴァーが、脳無に勢いに押されているのだ。最大の火力を発揮しながらも。
ホークスが再びビル内から現れる。
「被害部分の76名、全員避難完了!エンデヴァーさん!!」
(微塵!!焼き切る!!)
上下に真っ二つになっていた崩壊しそうだったビルとともに、エンデヴァーは脳無を炎で巻き込む。
「料理!したこと!ないでしょ、エンデヴァーさん!」
落ちる瓦礫を羽で拾いながら飛んでいたホークスは、既に羽の枚数が少ない。
「みじん切り粗いですよ。均等に切ってもらわないと」
「喋るより、動きに神経を使うんだな」
「いや、羽減らし過ぎると飛行性能下がるんですって」
「それは悪かった」
目の前の脳無は、今までのモノとは出来が違う。脳無が喋ることはもちろん。
・[肩部のジェット機構]による飛行。
・[変容する腕]による飛行の補助及び伸縮・分裂攻撃。
・伸びた腕での攻撃を補強する[筋肉増殖]。
・鉄筋を振り払う程の[パワー]
・さらに[再生]
・6つ目、今目の前で繰り広げられている[分裂]
[分裂]に関しては、本体である黒の脳無の色とは違い白っぽく、これは体内に[格納]していたことになるのだろうか。
エンデヴァーの"個性"である炎は、体内に熱が篭っていく。
脳無が喋っていた、どれが強いか。他のヒーローが邪魔だとか。
(額面通りに捉えれば、目的は"強者との戦闘"。いっぱしのヴィランらしい思考回路・・・!
俺との戦闘継続の為に、加勢を分散させようってハラか。この脳無、考えている)
分散していく脳無は、ヒーローも市民も関係なく人を襲っていく。
「うわぁああ、来るなぁあ!!」
市民を襲う白脳無を、剣と見立てた長い羽が切り裂いていく。
「ホークス!わっ」
言葉を交わす前に、ホークスは羽で彼らを遠くへ追いやった。
「ハーイ、見えなくなるくらい下がっててください。何を隠そうパワー押しには割と無力なんで。
俺の背中やったら、安心させられん」
喋る脳無に、恐怖が芽生える。神野であったという大量の脳無。それが全員ここまでの強さになっているとするば。
「力を、あァ新たナおっおっ俺の強ヨサを、試ためさせてテくレ!!」
足が据わった。
(これは、俺が変わろうとして、彼女を好きになってしまった報いか?)
テレビのアナウンサーの声が耳ざわりだ。
【ああ、今!!見えますでしょうか!?エンデヴァーが!!この距離でも眩しい程に!!激しく発火しております!!】
エンデヴァーの必殺技であるプロミネンスバーンが、脳無に炸裂する。
ビルボードチャートの時に言った、『俺を見ていてくれ』と。情けない姿は見せられない。
「残ネン」
焼け切ったと思った脳無。だが、千切って投げていた首から再び現れる。
脳無の攻撃が、容赦なくエンデヴァーの顔の左側に当たった。
「いつもありがとう」
轟の母、冷が入院している病院に、轟の姉の冬美と、兄の夏雄がお見舞いに来ていた。
「来週から冷え込むみたい」
「嬉しい、寒いのは好き」
「暑がりだもんねぇ、俺ら」
「夏くん、元気そうね」
するとさっそく、冬美にからかわれる夏雄。
「大学入ってから、全っ然帰って来ないの。ゼミで彼女できたんだって」
「姉ちゃん!!連絡入れてるからいいでしょ!?」
あわてふためく夏雄。きっと冬美には心配かけまいと連絡入れてるのだろう。
「おっ、お母さんも元気そうだね!血色、血色がいい!!」
「焦凍がお手紙くれるの」
冷がずらーと、手の中にいくつもの手紙を見せる。
「仮免補講大変だけど、友だちに追いつく為に頑張ってるって」
「へぇ~焦凍、筆マメなんね」
「寮制に補講で、あの子も以前のようには来れないのよ」
「ふふ。彼女といえば、焦凍にも出来たのは二人は知ってるの?」
「えぇ」
「はぁ!?」
頷く冬美に対して、夏雄は驚く。
「なに!?あいつもう彼女とかいんの!?俺、全然知らないけど!?」
「確か、名前聞いたら登坂歌恋ちゃんって。その子以前、神野事件に巻き込まれてた子よ」
「・・・桜の"個性"の子だよな。それ聞いて、お母さんも姉ちゃんもなんて答えたの?」
「・・・・・・・・」
冬美はチラッと、冷を見る。
「"自分で選んだ子は大切にしなさい"って。夏くんが選んだ子だって否定するつもりないし、
焦凍が選んだ子だって、否定するつもりはない。焦凍・・・あの子が変わるきっかけをくれた大事な子だって」
何にもとらわれない。自分で自分の歩む道を、彼は進んでいるのだから。
「お父さんにはまだ言えないって、言ってたけどね」
クスッと、冷が笑う。あの頃より変わったのは、何も焦凍だけでない。
お母さんも、ちょっとずつだけど明るく笑顔を見せてくれて。冬美と冷の話を、夏雄はボーッと聞いている。
「お母さん。あいつ、昨日正式にNo.1になったよ」
「夏」
「世間は、お母さんや兄弟にしてきた事、家族をどう扱ってたか知らないよ。あいつ、トーク番組とか出ないし」
「あんた、お父さんの話は」
「いいの、冬美」
しっかり現実を、夏雄が思ってる事実を受け止める必要はあるのだから。
「俺はろくに思い出もないし、あいつがどうなろうがもうほぼ他人感覚なんだけどさ。
けど、お母さんや焦凍たちの事・・・なかったかのように振る舞ってんのは許せねぇ。
もう約10年。お母さんに謝りにも来てないんだろ。過去も血も、あいつは置き去りにしていく気なんだ」
「それは違うよ」
「・・・何で、お母さんがあいつ庇うん・・・」
冷が視線を向けた先には、花瓶に生けてある一輪の花がある。
「このお花、私が好きって言ったの。初めて会った頃、たった一度」
「・・・・・・お父さん、来たの・・・!?」
それは、冬美も知らなかった事実。
「何度か来てるみたい。面会は・・・してない。まだ、恐くて。先生も、やめた方がいいって。
あの人が内心どう思ってるかはわからない。対外的な理由かもしれない。
でもね、置き去りじゃないよ。過去も血も、向き合おうとしてることは確かだよ」
―――――
お互いの部屋を行き来するのに、不安を覚えた歌恋と轟は、あの日以来行かなくなっていた。
(・・・まぁ、我慢しろといえば我慢出来るけど・・・)
やっと気持ちが通じて、心を開けたと思ったのだけれど。
(寮制って、難しいな・・・)
隣に座る彼は、不機嫌そうである。
「?」
轟のポケットの中に入っているスマホが鳴っている。
「姉さん?」
彼は一言、席を外す事を伝えてくれてから男子寮の方へ向かっていく。
「なんかおもしれー番組ねぇかな」
今日も学校が休みで、自分の部屋にいたり、共有スペースにいたりと各々の時間を過ごしていた。
テレビで情報番組を見るのが好きな上鳴が、大体テレビのリモコンを占領しているが。
画面に映る映像に、目が離せなくなったのだ。エンデヴァーとホークスが、あの脳無と戦っている。
それは神野事件の時にも、ベストジーニストらの活躍で捉えた似たようなモノ。
思わずチャンネルを回していた上鳴の手も、止まった。
今、画面に釘付けになっている緑谷・切島・八百万・常闇・上鳴・麗日・蛙吹・歌恋は唖然とする。
轟とテーブルに座っていた歌恋は、近くでみようと皆がいる、テレビの前のソファまで歩いた。
間違いない。脳無と戦うエンデヴァーに、羽を自在に操り庶民を助けているのはホークスだ。
いつか彼のように、ホークスのようになりたいと思う反面、こういった戦いを見ると背筋が冷える。
なにせあのエンデヴァーが、脳無に勢いに押されているのだ。最大の火力を発揮しながらも。
ホークスが再びビル内から現れる。
「被害部分の76名、全員避難完了!エンデヴァーさん!!」
(微塵!!焼き切る!!)
上下に真っ二つになっていた崩壊しそうだったビルとともに、エンデヴァーは脳無を炎で巻き込む。
「料理!したこと!ないでしょ、エンデヴァーさん!」
落ちる瓦礫を羽で拾いながら飛んでいたホークスは、既に羽の枚数が少ない。
「みじん切り粗いですよ。均等に切ってもらわないと」
「喋るより、動きに神経を使うんだな」
「いや、羽減らし過ぎると飛行性能下がるんですって」
「それは悪かった」
目の前の脳無は、今までのモノとは出来が違う。脳無が喋ることはもちろん。
・[肩部のジェット機構]による飛行。
・[変容する腕]による飛行の補助及び伸縮・分裂攻撃。
・伸びた腕での攻撃を補強する[筋肉増殖]。
・鉄筋を振り払う程の[パワー]
・さらに[再生]
・6つ目、今目の前で繰り広げられている[分裂]
[分裂]に関しては、本体である黒の脳無の色とは違い白っぽく、これは体内に[格納]していたことになるのだろうか。
エンデヴァーの"個性"である炎は、体内に熱が篭っていく。
脳無が喋っていた、どれが強いか。他のヒーローが邪魔だとか。
(額面通りに捉えれば、目的は"強者との戦闘"。いっぱしのヴィランらしい思考回路・・・!
俺との戦闘継続の為に、加勢を分散させようってハラか。この脳無、考えている)
分散していく脳無は、ヒーローも市民も関係なく人を襲っていく。
「うわぁああ、来るなぁあ!!」
市民を襲う白脳無を、剣と見立てた長い羽が切り裂いていく。
「ホークス!わっ」
言葉を交わす前に、ホークスは羽で彼らを遠くへ追いやった。
「ハーイ、見えなくなるくらい下がっててください。何を隠そうパワー押しには割と無力なんで。
俺の背中やったら、安心させられん」
喋る脳無に、恐怖が芽生える。神野であったという大量の脳無。それが全員ここまでの強さになっているとするば。
「力を、あァ新たナおっおっ俺の強ヨサを、試ためさせてテくレ!!」
足が据わった。
(これは、俺が変わろうとして、彼女を好きになってしまった報いか?)
テレビのアナウンサーの声が耳ざわりだ。
【ああ、今!!見えますでしょうか!?エンデヴァーが!!この距離でも眩しい程に!!激しく発火しております!!】
エンデヴァーの必殺技であるプロミネンスバーンが、脳無に炸裂する。
ビルボードチャートの時に言った、『俺を見ていてくれ』と。情けない姿は見せられない。
「残ネン」
焼け切ったと思った脳無。だが、千切って投げていた首から再び現れる。
脳無の攻撃が、容赦なくエンデヴァーの顔の左側に当たった。