第十三話 立場
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「「・・・・・・・・」」
轟の部屋。かすめる畳の匂いに、歌恋の上には轟がいる。なぜ、こうなった。
『今日、部屋に来れるか?』
『いいよ』
と、軽率にいつものように部屋に訪れたが・・・。
「・・・えっと・・・焦凍、くん・・・?」
目を合わせられない、歌恋は視線が泳ぐ。
「・・・・・・・・」
「・・・怒ってるの・・・?」
「怒ってねぇけど、腹が立つ」
「それ、怒ってるのと一緒じゃ・・・」
「何だっていい。インターン行きだしてから・・・俺は・・・」
「っ・・・ん・・・」
久しぶりのキス。けど、いつもより深くて長くて・・・。
「・・・と、くん・・・」
息継ぎの間に名前を必死に呼ぶ。優しくて甘やかな雰囲気に持っていかれそうになる。
「しょ、と・・・」
「・・・歌恋・・・」
これから先、ヒーローとしての活動を考えてるんだとしたら、これ以上は・・・。
自分の下で、恥ずかしそうに顔を赤く染め、涙で滲む瞳がやけに綺麗な奴で。
モヤモヤする行き場のない心の捌け口を、好きな奴にこうやって押し付ける。
二人で横に並ぶように、ゴロンと寝転ぶ。
「・・・好きって、なんだろうな・・・」
「え?」
「歌恋の真ん前で通形先輩のあれ見せつけられたり・・・」
「っ!」
「勝手に相談もなく髪の毛染めたり」
「ご、ごめんなさい・・・」
「歌恋にとって俺はなんだ?」
「なに・・・て、急にどうしたの、焦凍?」
「・・・俺は、親父のようにはなりたくねぇ。けど、わかんねぇ。どうなるか」
「焦凍?」
「・・・・・・・・歌恋の事、もっと知りてぇと思う反面、無茶苦茶にしたいって気持ち」
「っ・・・そ、それは・・・(自分の中で、葛藤してくれてるんだ・・・)」
「お互いヒーローになるってんなら、安全な保証もない」
命をかけて市民の安全を護る。それがヒーローだというのなら、一般人とは違う。
「私・・・ただ、焦凍に追い付きたくて必死に強くなろうって思って・・・。
ヒーローになるのはやっぱ皆と同じように憧れがあるからで。
私の中で焦凍は、好きな人で・・・。お茶子ちゃんに前言われたの・・・」
「麗日?」
「・・・お互いに気持ちが通じるって、どんな気持ちって。ハッキリ答えてあげられなかった。
好きだけじゃ・・・好きって想いだけじゃ・・・どうにも出来ないしどうにもならないのかな・・・」
ただただ、隣にいたい。でも、それだったら友達とも家族とも変わらない行為。
これ以上の関係性になるお互いの怖さ。
歌恋は轟の手を握り、彼の体に顔を寄せる。その仕草から、轟は逃げようとしない。
「焦凍と同じ足並みを揃えるなら、私もっと強くなくちゃいけない。
私将来ね、焦凍と一緒の事務所やるのが夢だよ。そうすれば側にいられるし。
学生からってんなら、プッシーキャッツがいい例でしょ?」
「一緒の事務所、か・・・」
「プロヒーローになれば、いま話題になってるチームアップだって、できるよ!」
人は変われる。彼が変わろうとしてくれたように。
ネットニュースを皆とみれば、公欠だった三人の名前が載っていた。
「おまえ、勉強やべーっつってたのに大丈夫かよー」→上鳴
「先生が補習時間儲けてくれるんだってよ」→切島
「俺も行きゃーよかったかなァ。両立キツそうでさァ・・・」→瀬呂
「学ぶペースは人それぞれですわ」→八百万
演習では、インターン先を同じ場所にしてくれた常闇と共に歌恋は空を飛ぶ練習をしていた。
「歌恋のあれさァー、どっからどうみても○○雲みたいにみえるのウチだけ?」
「常闇とダークシャドウの相手してたけど、最近は飛ぶ練習してるみたいだよ」
そう話すのは耳郞と尾白。二人の付近では常闇とダークシャドウが空を飛び、
彼らの後ろに張り付くように歌恋は手のひらを葉っぱ状態にしそれに乗り、
その葉っぱの下で桜吹雪を自在に操り飛行を試みていたのだ。
(常闇くんはもとより・・・!もっとコントロールできれば飛ぶのも自分の力で出来るようになる!)
『イナサくんの風はいらない』
風がなくても、爆風がなくても・・・。葉っぱには乗ることが出来るんだ。コントロールを。
少ない枚数の桜を意識的に操るようには出来てきている。それのもっと応用したやつ。
最初の日はやはりホークスの後を追うので精一杯だった。飛んでついていった常闇にも悔しさを覚えた。
切島も麗日も蛙吹も、インターンから帰ってきて、ネットに名前が上がる程になっていた。
(まだまだ・・・!!)
「・・・追いつかなきゃなのは、俺の方だ・・・」
『焦凍に追い付きたくて』と歌恋は言っていたけど。それは、違う。
「・・・・・・・・・」
教室の何処を見ても、歌恋の姿はない。今日彼女は、インターンに行っている。
心配して気にして八つ当たりであんな事をした自分を思い出すと少し恥じらいはある。
(・・・アイツを前にすると、歯止めがきかなくなる・・・)
以前、何だかんだ理由があり自分と距離置かれた時はあったが、いまは違う。
すんなりと自分を受け入れてくれる彼女。それが嬉しくて、後をついていって。
だからあんな恥ずかしい言葉も、普通に言えてしまって。自覚はしている。
「大丈夫か、轟くん」
ボーッと、顔を天井に向けていると、飯田が話かけてきた。
「飯田・・・」
「こうも教室に人がいないと、少し寂しいな」
「そうだな・・・」
インターンに行ってるのは、計6人。名前を挙げれば麗日・蛙吹・切島・緑谷・常闇・歌恋だ。
「早く俺も仮免取得しないと」
周りに、歌恋に追い付けなくなる。
「そう焦らずとも、時はやってくるさ。落ちてしまった理由が実力不足からではないのだから」
「ああ」
あんな口論にさえならなけば。けどそれは、過去の自分の態度の過ちでもあったわけであり仕方ない。
チャイムが鳴り、飯田が席に戻る。轟も視線を教壇にやる。
いつも勝手に視界に入る彼女の後ろ姿は、いまはない。しょっちゅう一緒にいる。それでも・・・。
(・・・会いてぇ・・・)
「俺が出した提案、なかなか様になってきてるじゃん」
ホークスの後をついて、常闇と一緒に現場を落ち着かせている歌恋。
「躍進が止まらないね、二人は」
「そんな、まだまだです」
珍しく誉めてくれるホークスに照れてしまう歌恋に、常闇はホークスに軽く頭を下げている。
「後押しするつもりなかったのに、キルシュも根が強い」
「学校ではそんな目立つ奴じゃないですよ」
「逆に常闇くんの方が元から強かったから」
「いや、そういうのとは別だろう。師を前に、あんな啖呵は切れん」
「そう、かな・・・なんかすみません・・・」
何を思ったのか、ホークスは歌恋のピンクに染まった髪の毛を掬い取る。
「あ・・・」
目の前にして、ホークスもなかなか。人気の出る理由がわかる。
(いや、いや、私は焦凍くんがいる!)
「俺と似たような"個性"の性質ねェ・・・」
髪の毛が少なくなれば歌恋は技を使えないように、ホークスは羽が少なくなれば飛べなくなる。
『あの・・・今回インターン許可してくださり、ありがとうございます』
最初に来た日にした挨拶。
『俺が君を選んだ理由は、ツクヨミから聞いてる?』
職場体験で常闇を選んだ理由の一つは、USJ事件の話を聞きたかったから。
そして今回歌恋を選んだ理由の一つは、神野事件の話を聞きたかったから。
正直、思い出したくない事件。けど、せっかく目の前にチャンスがあるんだ。
エクトプラズム先生が言っていた。ホークスの羽のようにって。それをここで学ぶ為。
職場体験のように甘くないのはわかってる。
『はい。だから、その代わり一つお願いがあります。"個性"の使い方、教えて下さい』
轟の部屋。かすめる畳の匂いに、歌恋の上には轟がいる。なぜ、こうなった。
『今日、部屋に来れるか?』
『いいよ』
と、軽率にいつものように部屋に訪れたが・・・。
「・・・えっと・・・焦凍、くん・・・?」
目を合わせられない、歌恋は視線が泳ぐ。
「・・・・・・・・」
「・・・怒ってるの・・・?」
「怒ってねぇけど、腹が立つ」
「それ、怒ってるのと一緒じゃ・・・」
「何だっていい。インターン行きだしてから・・・俺は・・・」
「っ・・・ん・・・」
久しぶりのキス。けど、いつもより深くて長くて・・・。
「・・・と、くん・・・」
息継ぎの間に名前を必死に呼ぶ。優しくて甘やかな雰囲気に持っていかれそうになる。
「しょ、と・・・」
「・・・歌恋・・・」
これから先、ヒーローとしての活動を考えてるんだとしたら、これ以上は・・・。
自分の下で、恥ずかしそうに顔を赤く染め、涙で滲む瞳がやけに綺麗な奴で。
モヤモヤする行き場のない心の捌け口を、好きな奴にこうやって押し付ける。
二人で横に並ぶように、ゴロンと寝転ぶ。
「・・・好きって、なんだろうな・・・」
「え?」
「歌恋の真ん前で通形先輩のあれ見せつけられたり・・・」
「っ!」
「勝手に相談もなく髪の毛染めたり」
「ご、ごめんなさい・・・」
「歌恋にとって俺はなんだ?」
「なに・・・て、急にどうしたの、焦凍?」
「・・・俺は、親父のようにはなりたくねぇ。けど、わかんねぇ。どうなるか」
「焦凍?」
「・・・・・・・・歌恋の事、もっと知りてぇと思う反面、無茶苦茶にしたいって気持ち」
「っ・・・そ、それは・・・(自分の中で、葛藤してくれてるんだ・・・)」
「お互いヒーローになるってんなら、安全な保証もない」
命をかけて市民の安全を護る。それがヒーローだというのなら、一般人とは違う。
「私・・・ただ、焦凍に追い付きたくて必死に強くなろうって思って・・・。
ヒーローになるのはやっぱ皆と同じように憧れがあるからで。
私の中で焦凍は、好きな人で・・・。お茶子ちゃんに前言われたの・・・」
「麗日?」
「・・・お互いに気持ちが通じるって、どんな気持ちって。ハッキリ答えてあげられなかった。
好きだけじゃ・・・好きって想いだけじゃ・・・どうにも出来ないしどうにもならないのかな・・・」
ただただ、隣にいたい。でも、それだったら友達とも家族とも変わらない行為。
これ以上の関係性になるお互いの怖さ。
歌恋は轟の手を握り、彼の体に顔を寄せる。その仕草から、轟は逃げようとしない。
「焦凍と同じ足並みを揃えるなら、私もっと強くなくちゃいけない。
私将来ね、焦凍と一緒の事務所やるのが夢だよ。そうすれば側にいられるし。
学生からってんなら、プッシーキャッツがいい例でしょ?」
「一緒の事務所、か・・・」
「プロヒーローになれば、いま話題になってるチームアップだって、できるよ!」
人は変われる。彼が変わろうとしてくれたように。
ネットニュースを皆とみれば、公欠だった三人の名前が載っていた。
「おまえ、勉強やべーっつってたのに大丈夫かよー」→上鳴
「先生が補習時間儲けてくれるんだってよ」→切島
「俺も行きゃーよかったかなァ。両立キツそうでさァ・・・」→瀬呂
「学ぶペースは人それぞれですわ」→八百万
演習では、インターン先を同じ場所にしてくれた常闇と共に歌恋は空を飛ぶ練習をしていた。
「歌恋のあれさァー、どっからどうみても○○雲みたいにみえるのウチだけ?」
「常闇とダークシャドウの相手してたけど、最近は飛ぶ練習してるみたいだよ」
そう話すのは耳郞と尾白。二人の付近では常闇とダークシャドウが空を飛び、
彼らの後ろに張り付くように歌恋は手のひらを葉っぱ状態にしそれに乗り、
その葉っぱの下で桜吹雪を自在に操り飛行を試みていたのだ。
(常闇くんはもとより・・・!もっとコントロールできれば飛ぶのも自分の力で出来るようになる!)
『イナサくんの風はいらない』
風がなくても、爆風がなくても・・・。葉っぱには乗ることが出来るんだ。コントロールを。
少ない枚数の桜を意識的に操るようには出来てきている。それのもっと応用したやつ。
最初の日はやはりホークスの後を追うので精一杯だった。飛んでついていった常闇にも悔しさを覚えた。
切島も麗日も蛙吹も、インターンから帰ってきて、ネットに名前が上がる程になっていた。
(まだまだ・・・!!)
「・・・追いつかなきゃなのは、俺の方だ・・・」
『焦凍に追い付きたくて』と歌恋は言っていたけど。それは、違う。
「・・・・・・・・・」
教室の何処を見ても、歌恋の姿はない。今日彼女は、インターンに行っている。
心配して気にして八つ当たりであんな事をした自分を思い出すと少し恥じらいはある。
(・・・アイツを前にすると、歯止めがきかなくなる・・・)
以前、何だかんだ理由があり自分と距離置かれた時はあったが、いまは違う。
すんなりと自分を受け入れてくれる彼女。それが嬉しくて、後をついていって。
だからあんな恥ずかしい言葉も、普通に言えてしまって。自覚はしている。
「大丈夫か、轟くん」
ボーッと、顔を天井に向けていると、飯田が話かけてきた。
「飯田・・・」
「こうも教室に人がいないと、少し寂しいな」
「そうだな・・・」
インターンに行ってるのは、計6人。名前を挙げれば麗日・蛙吹・切島・緑谷・常闇・歌恋だ。
「早く俺も仮免取得しないと」
周りに、歌恋に追い付けなくなる。
「そう焦らずとも、時はやってくるさ。落ちてしまった理由が実力不足からではないのだから」
「ああ」
あんな口論にさえならなけば。けどそれは、過去の自分の態度の過ちでもあったわけであり仕方ない。
チャイムが鳴り、飯田が席に戻る。轟も視線を教壇にやる。
いつも勝手に視界に入る彼女の後ろ姿は、いまはない。しょっちゅう一緒にいる。それでも・・・。
(・・・会いてぇ・・・)
「俺が出した提案、なかなか様になってきてるじゃん」
ホークスの後をついて、常闇と一緒に現場を落ち着かせている歌恋。
「躍進が止まらないね、二人は」
「そんな、まだまだです」
珍しく誉めてくれるホークスに照れてしまう歌恋に、常闇はホークスに軽く頭を下げている。
「後押しするつもりなかったのに、キルシュも根が強い」
「学校ではそんな目立つ奴じゃないですよ」
「逆に常闇くんの方が元から強かったから」
「いや、そういうのとは別だろう。師を前に、あんな啖呵は切れん」
「そう、かな・・・なんかすみません・・・」
何を思ったのか、ホークスは歌恋のピンクに染まった髪の毛を掬い取る。
「あ・・・」
目の前にして、ホークスもなかなか。人気の出る理由がわかる。
(いや、いや、私は焦凍くんがいる!)
「俺と似たような"個性"の性質ねェ・・・」
髪の毛が少なくなれば歌恋は技を使えないように、ホークスは羽が少なくなれば飛べなくなる。
『あの・・・今回インターン許可してくださり、ありがとうございます』
最初に来た日にした挨拶。
『俺が君を選んだ理由は、ツクヨミから聞いてる?』
職場体験で常闇を選んだ理由の一つは、USJ事件の話を聞きたかったから。
そして今回歌恋を選んだ理由の一つは、神野事件の話を聞きたかったから。
正直、思い出したくない事件。けど、せっかく目の前にチャンスがあるんだ。
エクトプラズム先生が言っていた。ホークスの羽のようにって。それをここで学ぶ為。
職場体験のように甘くないのはわかってる。
『はい。だから、その代わり一つお願いがあります。"個性"の使い方、教えて下さい』