第十一話 仮免
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(そうだったら嬉しい・・・。だったら私は、ちゃんと轟くんを見なくちゃ。
謝ろう。私が好きだと直接言ったのは、イナサくんじゃない。轟くんなんだから)
この気持ちは嘘じゃない。夜嵐とは、友達として―・・・。
「しょ、焦凍・・・くん、あ、いや、焦凍・・・」
名前を呼ぶ練習をする程試験をなめてる訳じゃないが、今はまた気持ちが離れないかの方が不安である。
せっかく、お互いよくなってきたのに、自分から離れ離れになるのはもうたくさんなのに。
「やっぱバカだよな、私・・・」
「さっきっからブツブツ、歌恋はさ」
「うわっ、響香ちゃん!」
「もう。試験だよ、歌恋。し・け・ん」
「はい、存じてます・・・」
「大丈夫?いろいろと」
「うん・・・」
考えるのはひとまずやめよう。試験のはじまりだ。
試験の説明は、ヒーロー公安委員会の目良という人が 説明してくれた。
だが、説明してくれる最中でも、眠たそうにコクリコクリ頭を揺らしている。
(大丈夫かな、あの人)
なんて人の心配をする。
「好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」
(いや、睡眠の種類はよくわかりません)
と、歌恋は心の中で突っ込んでみた。
「眠たい!そんな信条の下、ご説明させていただきます。
ずばり、この場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます」
(勝ち抜けの演習・・・)
現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくない。
何故ならヒーローとは、見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得る称号でなければならない。
「まァ・・・一個人としては・・・動機がどうであれ、命がけで人助けしている人間に"何も求めるな"は、
現代社会に於いて無慈悲な話だと思うワケですが・・・とにかく、対価にしろ犠牲にしろ、
多くのヒーローが救助・ヴィラン退治に切磋琢磨してきた結果、
事件発生から解決に至るまでの時間は今、引くくらい迅速になっています。
君たちは仮免許を取得し、いよいよ激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者、
ハッキリ言って厳しい。よって、試されるはスピード!条件達成者先着100名を通過とします」
「!!?」
受験者1540人もいるのに関わらず、先着100名。
演習のルール。
受験者はターゲットを3つ、体の好きな場所に。ただし、常に晒されている場所に取りつけること。
足裏や、脇などはダメ。そして、ボールを6つ携帯しターゲットは当たった場所のみ発光する仕組み。
3つ発光した時点で脱落。3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した"ことにする。
「えー・・・じゃ展開後、ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから、
一分後にスタートします。各々苦手な地形好きな地形あると思います。
自分を活かして頑張って下さい」
建物全体が広がっていく。目の前に飛び込んだのは、やたらと大袈裟な、
ビルや山、廃墟など小さな街のような雰囲気をあらわしていた。
「先着で合格なら・・・同校で潰し合いは無い・・・むしろ、手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋・・・!
皆!あまり離れず一かたまりで動こう!」
それが、緑谷の案。
「フザけろ。遠足じゃねぇんだよ」
「バッカ、待て待て!!」
一足先に群れから外れる爆豪を、そのままいつものように追う切島。
「俺も。大所帯じゃ、却って力が発揮出来ねぇ」
「轟くん!!」
緑谷の呼び止めも虚しく。
「緑谷くん、ごめんね・・・私も」
「ええ!?登坂さんまで!?」
轟と、同じ場所に行こうとは思わないが。
「桜吹雪で、やりたいことあるから」
視界の広そうな、ビルの屋上を目指す。ここからなら、新しい技を十分発揮できる。
「ここから、なら・・・」
「歌恋ちゃん!」
「ゲッ、イナサくんっ」
空に浮いている夜嵐と、再び再開。
「スタート!!」
目良のアナウンスが、始まりの合図をならす。
「やっぱあの頃と変わらないっすね!俺、歌恋ちゃんのターゲットは狙わないっすから!」
「言ったね、破ったら承知しないよ。けど、私は変わった!今は、イナサくんの風はいらない」
「・・・一時、俺から離れたじゃないっすか・・・なんでか、まだ答えてもらえないっすか?」
「・・・・・・・・・・」
ふと思い出す。苦い中学の記憶。
『彼の事、気軽に名前で呼ばないで』
『イナサくんと対等だなんて思ってないわよね』
『気持ち悪い"個性"』
「別に・・・理由なんてないよ。それに私、雄英の今の皆が好きだし、好きな人も出来たから・・・。
イナサくんの邪魔しちゃわるいから、場所かえて・・・」
グラリと足場が揺れる。
(地震・・・!?いや、"個性"・・・?)
「・・・好きな人って、誰っすか?」
夜嵐から笑顔が消える。そしてそれは、歌恋の耳に入ってこない。
彼女の目の前に、無数の受験者が現れたからで、既に攻撃体制に入っていたからである。
「雄英生みーっけ!」
「待てよ、近くにいるの士傑高校の奴じゃねぇか!?なんで、一緒にいるんだよ!」
言うや様々な遠距離の攻撃が二人に向かってくる。
歌恋は腕を幹にし、高い壁の如くつくっていく。ビルの下にも、受験者が多数。
(防御の態勢もバッチリ・・・!コスチューム変えてよかったぁ)
「歌恋ちゃん!」
「イナサくん!」
仕方ない、ここは彼と協力しようじゃないか。きっと夜嵐もそう思ってる。だから、夜嵐は自分に攻撃してこない。
歌恋は後ろを振り返り頷く。夜嵐はいつものように豪快に笑顔を作って見せた。
夜嵐の"個性"旋風が、強さを見せつける。歌恋と、彼女が防御した奴ら意外、
ビルの下にいた受験者のボールだけを、夜嵐は風に乗せた。
(凄いコントロール・・・!)
歌恋自身も、無数の攻撃を受けながら移動をはかる。
他の者も、夜嵐の実力に目を見張っていた。歌恋はその隙をつく。
「おいっ、そいつにばかり気をとられるな雄英が・・・!」
「しまった!」
「俺、ヒーローって!!熱血だと思うんです!!皆さんの戦い!熱いっス!
俺、熱いの好きっス!!この熱い戦い、俺も混ぜて下さい!!よろしく、お願いしますっス!!」
「わっ!」
巻き込まれぬよう、歌恋はビルの中に避難・・・。
「ゲッ、ここもか!(そりゃそうだよな!)」
その時、目良と名乗っていた人のアナウンスが響く。
「うお!?脱落者、120名!!一人で120人脱落させて通過した!!」
(マジか・・・!さすがだな、イナサくん!)
だったら、うだうだ競っている場合じゃない。自分にむけられるボール。
「桜花乱舞!」
大量の桜吹雪を操り、狭いビルの中に勢いよく飛ばしていく。
「なっ!」
「目眩まし!?」
「もらい!」
[通過者は控え室へ移動して下さい]
そう、ターゲットから連絡が入る。その前にももうすでに、50人以上はクリアしているとアナウンスもあった。
(イナサくんに先こされたけど、とりあえずクリア出来た。皆いるかな・・・)
すると、目の前に見慣れた姿があった。
「と!じゃないっ。焦凍くん!」
「・・・歌恋」
後ろから駆けてくる歌恋を、轟は待っていてくれる。
「えーと・・・焦凍くんもクリアしたんだね」
「まぁ・・・無理に名前呼ぶことねぇぞ?俺も、ムキになっちまったし・・・」
「ううん。私もちゃんと向き合いたいから・・・ごめんなさい・・・」
轟がフッと笑みを見せてくれる。その滅多に見せない笑みは貴重だ、素直に嬉しい。
二人で仲良く中に入れば、すでにたくさんの受験者がいた。
「・・・けっこういんな」
「うん。皆はどうかな?」
辺りを見回してみる。どうやらまだ皆いないようだ。すると、先にいた夜嵐と目が合う。
「「あっ」」
パッと笑顔になる二人。だが夜嵐は、隣にいる轟を見て笑顔を引っ込めてしまった。
「「・・・・・・・・」」
「え?え?」
戸惑う歌恋。轟の方は見てるって感じだが、夜嵐の顔は、完全に轟を睨んでいる。
だが、夜嵐は何を言うわけもなく、会話してたのだろうか、目の前の相手と話し出した。
「行こう。ただ、歌恋の言うように、推薦なら入試ん時に会ってるハズなんだよな・・・」
「でも、憶えてないんだよね・・・?」
「・・・・・・・・」
轟は悩む素振りを見せるが、やはり覚えがないようだった。
謝ろう。私が好きだと直接言ったのは、イナサくんじゃない。轟くんなんだから)
この気持ちは嘘じゃない。夜嵐とは、友達として―・・・。
「しょ、焦凍・・・くん、あ、いや、焦凍・・・」
名前を呼ぶ練習をする程試験をなめてる訳じゃないが、今はまた気持ちが離れないかの方が不安である。
せっかく、お互いよくなってきたのに、自分から離れ離れになるのはもうたくさんなのに。
「やっぱバカだよな、私・・・」
「さっきっからブツブツ、歌恋はさ」
「うわっ、響香ちゃん!」
「もう。試験だよ、歌恋。し・け・ん」
「はい、存じてます・・・」
「大丈夫?いろいろと」
「うん・・・」
考えるのはひとまずやめよう。試験のはじまりだ。
試験の説明は、ヒーロー公安委員会の目良という人が 説明してくれた。
だが、説明してくれる最中でも、眠たそうにコクリコクリ頭を揺らしている。
(大丈夫かな、あの人)
なんて人の心配をする。
「好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」
(いや、睡眠の種類はよくわかりません)
と、歌恋は心の中で突っ込んでみた。
「眠たい!そんな信条の下、ご説明させていただきます。
ずばり、この場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます」
(勝ち抜けの演習・・・)
現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくない。
何故ならヒーローとは、見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得る称号でなければならない。
「まァ・・・一個人としては・・・動機がどうであれ、命がけで人助けしている人間に"何も求めるな"は、
現代社会に於いて無慈悲な話だと思うワケですが・・・とにかく、対価にしろ犠牲にしろ、
多くのヒーローが救助・ヴィラン退治に切磋琢磨してきた結果、
事件発生から解決に至るまでの時間は今、引くくらい迅速になっています。
君たちは仮免許を取得し、いよいよ激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者、
ハッキリ言って厳しい。よって、試されるはスピード!条件達成者先着100名を通過とします」
「!!?」
受験者1540人もいるのに関わらず、先着100名。
演習のルール。
受験者はターゲットを3つ、体の好きな場所に。ただし、常に晒されている場所に取りつけること。
足裏や、脇などはダメ。そして、ボールを6つ携帯しターゲットは当たった場所のみ発光する仕組み。
3つ発光した時点で脱落。3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した"ことにする。
「えー・・・じゃ展開後、ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから、
一分後にスタートします。各々苦手な地形好きな地形あると思います。
自分を活かして頑張って下さい」
建物全体が広がっていく。目の前に飛び込んだのは、やたらと大袈裟な、
ビルや山、廃墟など小さな街のような雰囲気をあらわしていた。
「先着で合格なら・・・同校で潰し合いは無い・・・むしろ、手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋・・・!
皆!あまり離れず一かたまりで動こう!」
それが、緑谷の案。
「フザけろ。遠足じゃねぇんだよ」
「バッカ、待て待て!!」
一足先に群れから外れる爆豪を、そのままいつものように追う切島。
「俺も。大所帯じゃ、却って力が発揮出来ねぇ」
「轟くん!!」
緑谷の呼び止めも虚しく。
「緑谷くん、ごめんね・・・私も」
「ええ!?登坂さんまで!?」
轟と、同じ場所に行こうとは思わないが。
「桜吹雪で、やりたいことあるから」
視界の広そうな、ビルの屋上を目指す。ここからなら、新しい技を十分発揮できる。
「ここから、なら・・・」
「歌恋ちゃん!」
「ゲッ、イナサくんっ」
空に浮いている夜嵐と、再び再開。
「スタート!!」
目良のアナウンスが、始まりの合図をならす。
「やっぱあの頃と変わらないっすね!俺、歌恋ちゃんのターゲットは狙わないっすから!」
「言ったね、破ったら承知しないよ。けど、私は変わった!今は、イナサくんの風はいらない」
「・・・一時、俺から離れたじゃないっすか・・・なんでか、まだ答えてもらえないっすか?」
「・・・・・・・・・・」
ふと思い出す。苦い中学の記憶。
『彼の事、気軽に名前で呼ばないで』
『イナサくんと対等だなんて思ってないわよね』
『気持ち悪い"個性"』
「別に・・・理由なんてないよ。それに私、雄英の今の皆が好きだし、好きな人も出来たから・・・。
イナサくんの邪魔しちゃわるいから、場所かえて・・・」
グラリと足場が揺れる。
(地震・・・!?いや、"個性"・・・?)
「・・・好きな人って、誰っすか?」
夜嵐から笑顔が消える。そしてそれは、歌恋の耳に入ってこない。
彼女の目の前に、無数の受験者が現れたからで、既に攻撃体制に入っていたからである。
「雄英生みーっけ!」
「待てよ、近くにいるの士傑高校の奴じゃねぇか!?なんで、一緒にいるんだよ!」
言うや様々な遠距離の攻撃が二人に向かってくる。
歌恋は腕を幹にし、高い壁の如くつくっていく。ビルの下にも、受験者が多数。
(防御の態勢もバッチリ・・・!コスチューム変えてよかったぁ)
「歌恋ちゃん!」
「イナサくん!」
仕方ない、ここは彼と協力しようじゃないか。きっと夜嵐もそう思ってる。だから、夜嵐は自分に攻撃してこない。
歌恋は後ろを振り返り頷く。夜嵐はいつものように豪快に笑顔を作って見せた。
夜嵐の"個性"旋風が、強さを見せつける。歌恋と、彼女が防御した奴ら意外、
ビルの下にいた受験者のボールだけを、夜嵐は風に乗せた。
(凄いコントロール・・・!)
歌恋自身も、無数の攻撃を受けながら移動をはかる。
他の者も、夜嵐の実力に目を見張っていた。歌恋はその隙をつく。
「おいっ、そいつにばかり気をとられるな雄英が・・・!」
「しまった!」
「俺、ヒーローって!!熱血だと思うんです!!皆さんの戦い!熱いっス!
俺、熱いの好きっス!!この熱い戦い、俺も混ぜて下さい!!よろしく、お願いしますっス!!」
「わっ!」
巻き込まれぬよう、歌恋はビルの中に避難・・・。
「ゲッ、ここもか!(そりゃそうだよな!)」
その時、目良と名乗っていた人のアナウンスが響く。
「うお!?脱落者、120名!!一人で120人脱落させて通過した!!」
(マジか・・・!さすがだな、イナサくん!)
だったら、うだうだ競っている場合じゃない。自分にむけられるボール。
「桜花乱舞!」
大量の桜吹雪を操り、狭いビルの中に勢いよく飛ばしていく。
「なっ!」
「目眩まし!?」
「もらい!」
[通過者は控え室へ移動して下さい]
そう、ターゲットから連絡が入る。その前にももうすでに、50人以上はクリアしているとアナウンスもあった。
(イナサくんに先こされたけど、とりあえずクリア出来た。皆いるかな・・・)
すると、目の前に見慣れた姿があった。
「と!じゃないっ。焦凍くん!」
「・・・歌恋」
後ろから駆けてくる歌恋を、轟は待っていてくれる。
「えーと・・・焦凍くんもクリアしたんだね」
「まぁ・・・無理に名前呼ぶことねぇぞ?俺も、ムキになっちまったし・・・」
「ううん。私もちゃんと向き合いたいから・・・ごめんなさい・・・」
轟がフッと笑みを見せてくれる。その滅多に見せない笑みは貴重だ、素直に嬉しい。
二人で仲良く中に入れば、すでにたくさんの受験者がいた。
「・・・けっこういんな」
「うん。皆はどうかな?」
辺りを見回してみる。どうやらまだ皆いないようだ。すると、先にいた夜嵐と目が合う。
「「あっ」」
パッと笑顔になる二人。だが夜嵐は、隣にいる轟を見て笑顔を引っ込めてしまった。
「「・・・・・・・・」」
「え?え?」
戸惑う歌恋。轟の方は見てるって感じだが、夜嵐の顔は、完全に轟を睨んでいる。
だが、夜嵐は何を言うわけもなく、会話してたのだろうか、目の前の相手と話し出した。
「行こう。ただ、歌恋の言うように、推薦なら入試ん時に会ってるハズなんだよな・・・」
「でも、憶えてないんだよね・・・?」
「・・・・・・・・」
轟は悩む素振りを見せるが、やはり覚えがないようだった。