第十話 入れ寮
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「・・・電話、少し長くなっても大丈夫?轟くん、今一人だよね?」
「(また戻ってる・・・)今さら確認かよ」
「アハハ、確かに」
もう嫌だった。些細な事で、轟と口聞けなくなるのも、距離が離れるのも。
自分のこと話して遠ざけられるのが怖くて少ししか話せてなかったけど。
轟だって、父親との嫌な関係を話してくれたんだ。今までの自分と、ちゃんと向き合うために。
だから、自分もちゃんと向き合おう。
「・・・焦凍くん、あのね・・・私ね・・・」
前に少し話はしたよね、中学三年間同じクラスで、仲のよかった男の子がいたって。
中学ともなれば、周りの女子から大人な子もいるわけで、よく一緒にいた男の子を、
普通に名前で呼んでいた歌恋は、目をつけられた。女子からその男の子に近付くなって。
雄英で、クラスで目立ちたくなかった理由もその一つ。だけど違うのは"個性"を気がねなく使えること。
中学で大抵分かれる"個性"の優劣。そこでわかれていく将来。
男の子と気が合ったのは、"個性"の授業。歌恋の桜の花びらと、
男の子の"個性"旋風で、見事に息があってしまったのだ。
歌恋達がいた中学は、それほどプロヒーローを目指せる"個性"がなかなかいないことや、
"個性"事態あまりよく思ってない者たちが集まる方が多かったため、逆に悪目立ちしてしまう。
男の子は不思議と、前向きな一風変わった性格をしていた為、男子友達も多そうな印象だったけど。
歌恋は違う。それっきり引っ込み思案になっていく。何より、彼女の"個性"が追い詰めていた。
桜という"個性"、最初皆『キレイ』とか『カッコいい』とか言ってくれるけど。
国語や古典の時間なんかで勉強する桜の文集なんかを詠むと人が変わる。
相澤先生が記者会見の時に話した[不吉の桜]まさにそれだ。
「そういう事だったのか・・・」
「・・・桜って、たまに不気味がられるんだよ。そういったおとぎ話とか本とかもあるでしょ。
ヴィラン連合が私に目をつけてたのもそんな理由だったとすれば、
私も一歩気持ちが違ったらヴィラン連合にいたのかなって・・・」
『真っ赤な真っ赤な、血のようで』
「そんなとこ、行かせねぇよ」
目の前で、大事な奴をつかみ損ねるのは、もうたくさんだ。
「緑谷も言ってた。歌恋の桜は、そんなんじゃないって」
「・・・ありがとう(やっぱり皆、優しい)」
「夏休み中に、寮制になるだろ。大丈夫だよな?」
「うん、たぶん・・・こんな私でも、嫌いにならない?」
「嫌いにならねぇよ」
「会いたい・・・轟くんに、いますぐ・・・」
「俺も」
抱きたい、抱いて欲しい。離れない、離れたくない。
学校で、待ってる。
そして始まる。雄英での、新生活が。
雄英敷地内。校舎から徒歩5分の築3日"ハイツアライアンス"。ここが新たな家となる。
家庭訪問の時、すでに家族と話が進んでいた歌恋らの答えははやかった。
『これからも、娘がご迷惑をおかけすることになると思いますが、どうかよろしくお願いします』
と。その言葉を聞いた相澤先生やオールマイトは驚いていたけど。
『雄英に入学してから、娘は本当によく笑って話てくれるんです。
相澤先生も言ってくれましたよね。ヒーローになるための大切な"個性"だと』
やっと外出が許された歌恋は、寮に行く前に轟と時間を合わせていた。
神野事件のあの日以来、会えていない。助けられたその日もまともに触れることは出来なかった。
だから―・・・皆と会う前に、会いたかった・・・。
雄英の最寄り駅から少し離れた場所にある公園は、まだ朝早いせいか人気がない。
「はぁ、はぁ・・・」
つい、走ってきてしまった。待ち合わせより少し早い、彼がいないのもまだ・・・。
「歌恋」
「!」
聞き慣れた声に、振り向く。そこには、歌恋と同じように息を荒くしている轟がいた。
またこうやって会えることが嬉しい。隣にいれることは、当たり前じゃないのだから。
無意識に歌恋は轟に抱きつく。彼はそれに答えるように抱いてくれた。
「会えて嬉しい」
「俺もだ」
そう、こうやって好きな人に巡り会うことだって。だから今の時間を大事にしたい。
ドクンドクンと、心臓の音がやけに響く。こんな近い距離にまだ慣れてないことに気がつく。
でも、絡み合う視線がはなれなくて―・・・雰囲気にのまれ、そっと歌恋は目をつぶる。
「っ・・・」
今なら受け入れられる。彼の全部を、受け入れたい。
優しい手つきで頭を抑えられ、触れ合うだけの優しいキス。
「焦凍くん・・・大好き」
彼の背中に、腕をまわす。
「・・・焦凍。くんは、いらねぇ」
「うー・・・努力します・・・。皆といる時は、普段通りでいいよね?」
「せっかく同じ屋根の下だけどな」
妙に意識してしまい、頬が赤くなる。そんな歌恋の頭を撫でながら轟が続けた。
「切島が、峰田と上鳴には気をつけろよって、言ってたな」
「あの二人にはバレたくないね」
「いや・・・もうバレてるかもな、クラスの連中に」
「え?え?」
さて、そろそろ時間である。
「歌恋ー!おはよう!」
「響香ちゃん!」
クラス一の親友に会えたことに、思わず二人は抱き合った。
「また会えてよかったぁ」
「ウチもだよ。面談の時てんやわんやだったけど」
「あ、爆豪くんも許可おりたんだね!」
「ケッ、朝っぱらからうるせー。調子狂う」
「?」
爆豪の向いている視線をおえば、いつもより気持ちの沈んでる切島がいた。
そういえば、二人でセットになっていないのが珍しい。
「どうしたの、歌恋」
耳郎に声をかけられる。二人を助けてくれた轟除く四人の雰囲気が、いつもと違う。
「あ、ううん」
相澤先生も到着し、HRが始まった。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
「無事に集まれたのは先生もよ。会見を見た時は、いなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
蛙吹の隣で、麗日が頷く。
「・・・俺もびっくりさ。まァ・・・色々あんだろうよ。さて・・・!これから寮について軽く説明するが、
その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった"仮免"取得に向けて動いていく」
「そういやあったな、そんな話!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ・・・」
「大事な話だ、いいか」
その相澤先生の言葉が、妙にキツイ。
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この五人はあの晚あの場所へ、爆豪と登坂の救出に赴いた」
「え・・・」
クラス皆からの視線が痛い。何も、五人が悪いわけじゃない。悪いのは、ヴィランに捕まった自分の弱さ。
五人が来てくれたことにより、自分はどれだけ救われたかって話もあるわけで。
「先生、でも私は・・・」
「いいから、黙って聞け登坂」
「っ・・・」
相澤先生の威圧には、敵わなくて。
「他も。その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせてもらうよ。
オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪・登坂・耳郎・葉隠以外全員除籍処分にしてる。
彼の引退によって、しばらくは混乱が続く・・・。ヴィラン連合の出方が読めない以上、
今、雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。行った五人はもちろん、
把握しながら止められなかった11人も、理由はどうあれ
俺たちの信頼を裏切った事には変わらない。
正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。
以上!さっ!中に入るぞ、元気に行こう」
いや、待って。行けないです・・・。
「私だ・・・私のせいで・・・」
「歌恋・・・」
『一歩気持ちが違ったら・・・』
(それは、違げぇ・・・)
「来い」
重たい雰囲気の中、爆豪が上鳴を引っ張る。
「え?何、やだ」
草陰に隠れたと思うと、上鳴の放電が放たれた。
「うェ~~い・・・」
「!!」
激しく"個性"を使ったのか、上鳴はアホになる。彼を見て、耳郎は爆笑だ。
「バフォッ」
「・・・(響香ちゃん・・・)」
「何?爆豪、何を・・・」
瀬呂も必死で笑いをこらえている。
「切島」
「んあ?」
爆豪から渡されたのは、なんと五万円だ。
「え、怖っ、何、カツアゲ!?」
「違え。俺が下ろした金だ!いつまでもシミったれられっと、こっちも気分悪ィんだ」
「あ・・・え!?」
切島はその大金を使ったところに見覚えがあり、ハッとした。それはアマゾンで購入した暗視鏡の値段。
「おめー、どこで聞い・・・」
「いつもみてーに、馬鹿晒せや」
爆豪なりの気遣い。彼らしいといえば、彼らしい。上鳴のアホ状態に笑いがおさまらないクラスメートたち。
「皆!すまねえ・・・!!詫びにもなんねぇけど・・・今夜はこの金で焼き肉だ!!」
「ウェーイ!」
「マジか!」
いつもの皆が、だんだん帰ってくる。
「(また戻ってる・・・)今さら確認かよ」
「アハハ、確かに」
もう嫌だった。些細な事で、轟と口聞けなくなるのも、距離が離れるのも。
自分のこと話して遠ざけられるのが怖くて少ししか話せてなかったけど。
轟だって、父親との嫌な関係を話してくれたんだ。今までの自分と、ちゃんと向き合うために。
だから、自分もちゃんと向き合おう。
「・・・焦凍くん、あのね・・・私ね・・・」
前に少し話はしたよね、中学三年間同じクラスで、仲のよかった男の子がいたって。
中学ともなれば、周りの女子から大人な子もいるわけで、よく一緒にいた男の子を、
普通に名前で呼んでいた歌恋は、目をつけられた。女子からその男の子に近付くなって。
雄英で、クラスで目立ちたくなかった理由もその一つ。だけど違うのは"個性"を気がねなく使えること。
中学で大抵分かれる"個性"の優劣。そこでわかれていく将来。
男の子と気が合ったのは、"個性"の授業。歌恋の桜の花びらと、
男の子の"個性"旋風で、見事に息があってしまったのだ。
歌恋達がいた中学は、それほどプロヒーローを目指せる"個性"がなかなかいないことや、
"個性"事態あまりよく思ってない者たちが集まる方が多かったため、逆に悪目立ちしてしまう。
男の子は不思議と、前向きな一風変わった性格をしていた為、男子友達も多そうな印象だったけど。
歌恋は違う。それっきり引っ込み思案になっていく。何より、彼女の"個性"が追い詰めていた。
桜という"個性"、最初皆『キレイ』とか『カッコいい』とか言ってくれるけど。
国語や古典の時間なんかで勉強する桜の文集なんかを詠むと人が変わる。
相澤先生が記者会見の時に話した[不吉の桜]まさにそれだ。
「そういう事だったのか・・・」
「・・・桜って、たまに不気味がられるんだよ。そういったおとぎ話とか本とかもあるでしょ。
ヴィラン連合が私に目をつけてたのもそんな理由だったとすれば、
私も一歩気持ちが違ったらヴィラン連合にいたのかなって・・・」
『真っ赤な真っ赤な、血のようで』
「そんなとこ、行かせねぇよ」
目の前で、大事な奴をつかみ損ねるのは、もうたくさんだ。
「緑谷も言ってた。歌恋の桜は、そんなんじゃないって」
「・・・ありがとう(やっぱり皆、優しい)」
「夏休み中に、寮制になるだろ。大丈夫だよな?」
「うん、たぶん・・・こんな私でも、嫌いにならない?」
「嫌いにならねぇよ」
「会いたい・・・轟くんに、いますぐ・・・」
「俺も」
抱きたい、抱いて欲しい。離れない、離れたくない。
学校で、待ってる。
そして始まる。雄英での、新生活が。
雄英敷地内。校舎から徒歩5分の築3日"ハイツアライアンス"。ここが新たな家となる。
家庭訪問の時、すでに家族と話が進んでいた歌恋らの答えははやかった。
『これからも、娘がご迷惑をおかけすることになると思いますが、どうかよろしくお願いします』
と。その言葉を聞いた相澤先生やオールマイトは驚いていたけど。
『雄英に入学してから、娘は本当によく笑って話てくれるんです。
相澤先生も言ってくれましたよね。ヒーローになるための大切な"個性"だと』
やっと外出が許された歌恋は、寮に行く前に轟と時間を合わせていた。
神野事件のあの日以来、会えていない。助けられたその日もまともに触れることは出来なかった。
だから―・・・皆と会う前に、会いたかった・・・。
雄英の最寄り駅から少し離れた場所にある公園は、まだ朝早いせいか人気がない。
「はぁ、はぁ・・・」
つい、走ってきてしまった。待ち合わせより少し早い、彼がいないのもまだ・・・。
「歌恋」
「!」
聞き慣れた声に、振り向く。そこには、歌恋と同じように息を荒くしている轟がいた。
またこうやって会えることが嬉しい。隣にいれることは、当たり前じゃないのだから。
無意識に歌恋は轟に抱きつく。彼はそれに答えるように抱いてくれた。
「会えて嬉しい」
「俺もだ」
そう、こうやって好きな人に巡り会うことだって。だから今の時間を大事にしたい。
ドクンドクンと、心臓の音がやけに響く。こんな近い距離にまだ慣れてないことに気がつく。
でも、絡み合う視線がはなれなくて―・・・雰囲気にのまれ、そっと歌恋は目をつぶる。
「っ・・・」
今なら受け入れられる。彼の全部を、受け入れたい。
優しい手つきで頭を抑えられ、触れ合うだけの優しいキス。
「焦凍くん・・・大好き」
彼の背中に、腕をまわす。
「・・・焦凍。くんは、いらねぇ」
「うー・・・努力します・・・。皆といる時は、普段通りでいいよね?」
「せっかく同じ屋根の下だけどな」
妙に意識してしまい、頬が赤くなる。そんな歌恋の頭を撫でながら轟が続けた。
「切島が、峰田と上鳴には気をつけろよって、言ってたな」
「あの二人にはバレたくないね」
「いや・・・もうバレてるかもな、クラスの連中に」
「え?え?」
さて、そろそろ時間である。
「歌恋ー!おはよう!」
「響香ちゃん!」
クラス一の親友に会えたことに、思わず二人は抱き合った。
「また会えてよかったぁ」
「ウチもだよ。面談の時てんやわんやだったけど」
「あ、爆豪くんも許可おりたんだね!」
「ケッ、朝っぱらからうるせー。調子狂う」
「?」
爆豪の向いている視線をおえば、いつもより気持ちの沈んでる切島がいた。
そういえば、二人でセットになっていないのが珍しい。
「どうしたの、歌恋」
耳郎に声をかけられる。二人を助けてくれた轟除く四人の雰囲気が、いつもと違う。
「あ、ううん」
相澤先生も到着し、HRが始まった。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
「無事に集まれたのは先生もよ。会見を見た時は、いなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
蛙吹の隣で、麗日が頷く。
「・・・俺もびっくりさ。まァ・・・色々あんだろうよ。さて・・・!これから寮について軽く説明するが、
その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった"仮免"取得に向けて動いていく」
「そういやあったな、そんな話!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ・・・」
「大事な話だ、いいか」
その相澤先生の言葉が、妙にキツイ。
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この五人はあの晚あの場所へ、爆豪と登坂の救出に赴いた」
「え・・・」
クラス皆からの視線が痛い。何も、五人が悪いわけじゃない。悪いのは、ヴィランに捕まった自分の弱さ。
五人が来てくれたことにより、自分はどれだけ救われたかって話もあるわけで。
「先生、でも私は・・・」
「いいから、黙って聞け登坂」
「っ・・・」
相澤先生の威圧には、敵わなくて。
「他も。その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせてもらうよ。
オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪・登坂・耳郎・葉隠以外全員除籍処分にしてる。
彼の引退によって、しばらくは混乱が続く・・・。ヴィラン連合の出方が読めない以上、
今、雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。行った五人はもちろん、
把握しながら止められなかった11人も、理由はどうあれ
俺たちの信頼を裏切った事には変わらない。
正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。
以上!さっ!中に入るぞ、元気に行こう」
いや、待って。行けないです・・・。
「私だ・・・私のせいで・・・」
「歌恋・・・」
『一歩気持ちが違ったら・・・』
(それは、違げぇ・・・)
「来い」
重たい雰囲気の中、爆豪が上鳴を引っ張る。
「え?何、やだ」
草陰に隠れたと思うと、上鳴の放電が放たれた。
「うェ~~い・・・」
「!!」
激しく"個性"を使ったのか、上鳴はアホになる。彼を見て、耳郎は爆笑だ。
「バフォッ」
「・・・(響香ちゃん・・・)」
「何?爆豪、何を・・・」
瀬呂も必死で笑いをこらえている。
「切島」
「んあ?」
爆豪から渡されたのは、なんと五万円だ。
「え、怖っ、何、カツアゲ!?」
「違え。俺が下ろした金だ!いつまでもシミったれられっと、こっちも気分悪ィんだ」
「あ・・・え!?」
切島はその大金を使ったところに見覚えがあり、ハッとした。それはアマゾンで購入した暗視鏡の値段。
「おめー、どこで聞い・・・」
「いつもみてーに、馬鹿晒せや」
爆豪なりの気遣い。彼らしいといえば、彼らしい。上鳴のアホ状態に笑いがおさまらないクラスメートたち。
「皆!すまねえ・・・!!詫びにもなんねぇけど・・・今夜はこの金で焼き肉だ!!」
「ウェーイ!」
「マジか!」
いつもの皆が、だんだん帰ってくる。