第十話 入れ寮
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あのあと、轟らと合流した歌恋たち。お互いに喜び合う時間もなく、
歌恋は爆豪と警察へ送り届けられた。そこには迎えに来てくれた両親がいる。
お互いの両親は初めての顔合わせの筈なのに、爆豪の母親の持ち前の明るさで、
暗くて重たい雰囲気はどこにもなかった。
「あんた、何人様にご迷惑かけてるの!」
「ってぇな!」
「まぁ、帰ってきてくれてよかったけどね」
わしゃわしゃと、豪快に頭を撫でられる。
「やめろっ」
爆豪の世話しない母親とのやり取りに、歌恋は思わず笑顔になる。
「歌恋、おかえり」
「うん、ただいま!」
お母さんと、ギューと抱き合い、二人を抱くようにお父さんも両腕を抱く。
警察の人には、ヴィランに捕まったことで注目を集めてしまうだろうからと、
必要最低限の外出は控えるようにとお願いされてしまった。
何せしょうがない。自分らの救出の為に、平和の象徴であり続けてくれたオールマイトを、
終わらせてしまったようなものだから・・・。オールマイトに向ける顔がない。
お互いの両親が、挨拶をしている。
「爆豪くん、ありがとう」
「あ?」
歌恋は爆豪に、礼を述べた。
「あの場所に、爆豪くんが一緒にいてくれてよかった」
「それは・・・まぁ、俺も・・・(コイツは・・・違う。好きな奴が、俺じゃない・・・)」
「また学校で」
「あぁ」
残りの夏休みは、当分外出先では会えないとこの時は思っていた。
無事に家につき、居間にあるソファに見慣れた荷物があった。
「え、荷物届いてる!」
「林間合宿先から、わざわざ宅配で送られてきたぞ」
お父さんの言葉を聞きながら、鞄の中を必死に漁る。
「あった!スマホ!・・・だよね、充電切れてるよね」
バタバタと、自分の部屋に急ぐ歌恋をみて、母はため息をつく。
「あんな事あったあとなのに、元気ね・・・」
「元気でよかったじゃないか」
「そう、よね・・・」
充電がちゃんと出来るようになるまで時間があるので、とりあえず居間に戻る。
「お父さんは?」
「お風呂」
「ふーん」
「ねぇ歌恋」
改まって、お母さんは隣に座る。
「雄英高校は、楽しい?」
「楽しいよ」
「あんなに事件が続いても?」
「お母さん・・・?どうしたの?」
すると、お母さんは雄英から届いた郵送を歌恋に見せる。
それは全寮制になるというお知らせと、家庭訪問の件のプリントだった。
「USJ事件から、心配ばかりよ、お母さんは。歌恋が雄英高校に入学して変わったのは知ってる。
でも、今回は無事に帰ってきてくれたけど、次はどうなるか分からないわ。
オールマイト、No.1ヒーローが戦えなくなってしまった。そんな状況でも、雄英がいいの?
ほら、中学の時はよくイナサくんと張り合ってたじゃない。彼が行った士傑高校とかではダメ?」
「・・・お母さん」
「ん?」
「お母さんが心配してくれるのは分かる。でもね、私、今が一番学校生活楽しいんだよ。
中学みたいなふうには戻りたくない。確かに雄英は危険かもしれない。
それでも私は、他の高校は考えられない。それにね、好きだって思える人も出来たんだよ。
その人の側に、近くにいたい・・・。それに、夜嵐くんとはあれっきり会ってないよ」
お母さんが、強くも優しく抱き止めてくれる。
「そっか。ふふ、好きな人って爆豪くん?」
「ち、違うよ!ほら、前にも少し話したでしょ・・・」
頬を僅かに赤くし、歌恋はお母さん耳元で伝えた。
「轟焦凍くん」
「ふふ」
「もう、お母さん笑いすぎだよっ」
「ごめんなさい、おかしくて。もう、大人なんだね・・・」
そう、中学の時に仲のよかったという男子は、士傑高校に通っている夜嵐イナサのことだ。
中学三年間同じクラスという、他の者より"個性"が優れていた彼に、桜という妙な"個性"の歌恋に。
一際目立っていた畑違いな二人の妙な組み合わせ。それが出来たのは、"個性"の授業。
それはまたの話。
緑谷たちと別れ、家に向かっていた轟はスマホでニュースを見ていた。
[オールマイトの正体 もう戦えない体だったことが判明]という見出し。
それにまだ、歌恋の連絡もない。
姉が出迎えてくれて、心配してくれる。
「もぉ~、何か凄い事起きてるわ、焦凍お見舞いから連絡返してくんないわで心配したよ!おかえり!」
「わりィ、姉さん・・・」
家の中とは思えない、物騒な物音が響く。
「ちょっと前に帰ってきてね・・・ずっとああなの・・・」
様子を確かめるべく轟は過去の苦い記憶しかない訓練場に足を進める。
(オールマイトが本当にもう前線に立てなくなったのなら・・・No.1の地位は―・・・)
そっとドアを開ければ、怒り任せに焼け跡が所々にある中、憤怒の表情でいる父親がいた。
「こんな形で・・・認めんぞ、認めてたまるか。認めるわけにはいかんのだ・・・っ!!」
今の状況で父親に声をかけれるほど、そこまでしてやる義務はない。
お風呂に入って、充電が終わったかを確認すれば、クラスメートから沢山のメールや着信があった。
(うわ、みんな・・・ありがとう・・・)
まず電話をかけたのは芦戸。彼女は泣きながら何度も謝罪していた。その必要は全くないのに。
大丈夫、大丈夫だからと何度も励まして。そして、耳郎にも。
「目覚めて、ニュース見た時ビックリしたけど、無事ならよかったよ。おかえり」
「ありがとう。響香ちゃんも、もう退院出来てよかったよ」
「ヴィランのガスにやられて、それからどうなったか記憶にないけど。
全寮制になるって郵送されたプリント見た?歌恋んちは大丈夫なの?」
「うん、さっき見たよ。お母さんとも話した。とりあえず、大丈夫かな」
「なら安心した。ウチは大丈夫だよ」
また、学校で。
そして残るは一人・・・。他のクラスメートは、クラスのラインで一斉に送信してるから平気だろう。
そう、この一人が問題なのだ・・・。どう話を切り出せばいいのか迷うが着信歴が何度もある。
(ごめん・・・後回しにしたな・・・)
ふぅーと、息を吐き落ち着いてから連絡をいれた。
「・・・もしもし・・・?」
「・・・・・・・・・・」
あれ、反応がない。でも、出てるは出てるんだよね、この状況。
「轟くん・・・?」
「・・・・・・・・・・・」
あ、これはもしかして、そういうことか。主導権は向こうが握ってるのか。
「・・・・・・・・切る」
「!」
返事を待たずに歌恋から電話を切る。
『俺が、俺自身だって思えるように』
轟はそれが理由だってこと、分かってる。
(そっか・・・いま、自分の部屋にいるんだから、私一人。轟くんも・・・それなら)
もう一度電話をかければ、また電話の出る音が聞こえた。
「・・・・・・しょ、焦凍、くん・・・」
意を決して、名前で呼びかけてみる。
「っ・・・!」
轟という名字だけじゃない。血もなにも関係ないと思える大事な自分の名前。
「怒ってる・・・?」
「怒ってねぇよ、別に・・・」
そう聞いて、ホッとする。
「電話かけて、迷惑させてんじゃねーかって思った」
「そ、それはないっ。私が弱いから・・・捕まって・・・迷惑かけてるのは私、だよ・・・」
「何もされてねぇよな?」
ふと思い出すのは、一人で捕まってしまった時の、あのMr.コンプレスの表情。
怖かった・・・でも、いまは安心してる気持ちの方が大きくて。
「うん、大丈夫。一人じゃなかったから、爆豪くんも一緒だったから」
「そっか・・・」
そう、彼女を助けてるのは、爆豪の方が多い気がする。
「・・・名前、呼んでもらえるとは思わなかったけどな」
「だって・・・と・・・あ、焦凍くん黙ったままだったから。言わせようとしたでしょ」
「まぁ、それもある」
「あ、やっぱり」
普通にこうやって話せることが嬉しくて、思わず二人で笑ってしまう。
・・・いまなら、自分のことをちゃんと話せそうな気がする。
歌恋は爆豪と警察へ送り届けられた。そこには迎えに来てくれた両親がいる。
お互いの両親は初めての顔合わせの筈なのに、爆豪の母親の持ち前の明るさで、
暗くて重たい雰囲気はどこにもなかった。
「あんた、何人様にご迷惑かけてるの!」
「ってぇな!」
「まぁ、帰ってきてくれてよかったけどね」
わしゃわしゃと、豪快に頭を撫でられる。
「やめろっ」
爆豪の世話しない母親とのやり取りに、歌恋は思わず笑顔になる。
「歌恋、おかえり」
「うん、ただいま!」
お母さんと、ギューと抱き合い、二人を抱くようにお父さんも両腕を抱く。
警察の人には、ヴィランに捕まったことで注目を集めてしまうだろうからと、
必要最低限の外出は控えるようにとお願いされてしまった。
何せしょうがない。自分らの救出の為に、平和の象徴であり続けてくれたオールマイトを、
終わらせてしまったようなものだから・・・。オールマイトに向ける顔がない。
お互いの両親が、挨拶をしている。
「爆豪くん、ありがとう」
「あ?」
歌恋は爆豪に、礼を述べた。
「あの場所に、爆豪くんが一緒にいてくれてよかった」
「それは・・・まぁ、俺も・・・(コイツは・・・違う。好きな奴が、俺じゃない・・・)」
「また学校で」
「あぁ」
残りの夏休みは、当分外出先では会えないとこの時は思っていた。
無事に家につき、居間にあるソファに見慣れた荷物があった。
「え、荷物届いてる!」
「林間合宿先から、わざわざ宅配で送られてきたぞ」
お父さんの言葉を聞きながら、鞄の中を必死に漁る。
「あった!スマホ!・・・だよね、充電切れてるよね」
バタバタと、自分の部屋に急ぐ歌恋をみて、母はため息をつく。
「あんな事あったあとなのに、元気ね・・・」
「元気でよかったじゃないか」
「そう、よね・・・」
充電がちゃんと出来るようになるまで時間があるので、とりあえず居間に戻る。
「お父さんは?」
「お風呂」
「ふーん」
「ねぇ歌恋」
改まって、お母さんは隣に座る。
「雄英高校は、楽しい?」
「楽しいよ」
「あんなに事件が続いても?」
「お母さん・・・?どうしたの?」
すると、お母さんは雄英から届いた郵送を歌恋に見せる。
それは全寮制になるというお知らせと、家庭訪問の件のプリントだった。
「USJ事件から、心配ばかりよ、お母さんは。歌恋が雄英高校に入学して変わったのは知ってる。
でも、今回は無事に帰ってきてくれたけど、次はどうなるか分からないわ。
オールマイト、No.1ヒーローが戦えなくなってしまった。そんな状況でも、雄英がいいの?
ほら、中学の時はよくイナサくんと張り合ってたじゃない。彼が行った士傑高校とかではダメ?」
「・・・お母さん」
「ん?」
「お母さんが心配してくれるのは分かる。でもね、私、今が一番学校生活楽しいんだよ。
中学みたいなふうには戻りたくない。確かに雄英は危険かもしれない。
それでも私は、他の高校は考えられない。それにね、好きだって思える人も出来たんだよ。
その人の側に、近くにいたい・・・。それに、夜嵐くんとはあれっきり会ってないよ」
お母さんが、強くも優しく抱き止めてくれる。
「そっか。ふふ、好きな人って爆豪くん?」
「ち、違うよ!ほら、前にも少し話したでしょ・・・」
頬を僅かに赤くし、歌恋はお母さん耳元で伝えた。
「轟焦凍くん」
「ふふ」
「もう、お母さん笑いすぎだよっ」
「ごめんなさい、おかしくて。もう、大人なんだね・・・」
そう、中学の時に仲のよかったという男子は、士傑高校に通っている夜嵐イナサのことだ。
中学三年間同じクラスという、他の者より"個性"が優れていた彼に、桜という妙な"個性"の歌恋に。
一際目立っていた畑違いな二人の妙な組み合わせ。それが出来たのは、"個性"の授業。
それはまたの話。
緑谷たちと別れ、家に向かっていた轟はスマホでニュースを見ていた。
[オールマイトの正体 もう戦えない体だったことが判明]という見出し。
それにまだ、歌恋の連絡もない。
姉が出迎えてくれて、心配してくれる。
「もぉ~、何か凄い事起きてるわ、焦凍お見舞いから連絡返してくんないわで心配したよ!おかえり!」
「わりィ、姉さん・・・」
家の中とは思えない、物騒な物音が響く。
「ちょっと前に帰ってきてね・・・ずっとああなの・・・」
様子を確かめるべく轟は過去の苦い記憶しかない訓練場に足を進める。
(オールマイトが本当にもう前線に立てなくなったのなら・・・No.1の地位は―・・・)
そっとドアを開ければ、怒り任せに焼け跡が所々にある中、憤怒の表情でいる父親がいた。
「こんな形で・・・認めんぞ、認めてたまるか。認めるわけにはいかんのだ・・・っ!!」
今の状況で父親に声をかけれるほど、そこまでしてやる義務はない。
お風呂に入って、充電が終わったかを確認すれば、クラスメートから沢山のメールや着信があった。
(うわ、みんな・・・ありがとう・・・)
まず電話をかけたのは芦戸。彼女は泣きながら何度も謝罪していた。その必要は全くないのに。
大丈夫、大丈夫だからと何度も励まして。そして、耳郎にも。
「目覚めて、ニュース見た時ビックリしたけど、無事ならよかったよ。おかえり」
「ありがとう。響香ちゃんも、もう退院出来てよかったよ」
「ヴィランのガスにやられて、それからどうなったか記憶にないけど。
全寮制になるって郵送されたプリント見た?歌恋んちは大丈夫なの?」
「うん、さっき見たよ。お母さんとも話した。とりあえず、大丈夫かな」
「なら安心した。ウチは大丈夫だよ」
また、学校で。
そして残るは一人・・・。他のクラスメートは、クラスのラインで一斉に送信してるから平気だろう。
そう、この一人が問題なのだ・・・。どう話を切り出せばいいのか迷うが着信歴が何度もある。
(ごめん・・・後回しにしたな・・・)
ふぅーと、息を吐き落ち着いてから連絡をいれた。
「・・・もしもし・・・?」
「・・・・・・・・・・」
あれ、反応がない。でも、出てるは出てるんだよね、この状況。
「轟くん・・・?」
「・・・・・・・・・・・」
あ、これはもしかして、そういうことか。主導権は向こうが握ってるのか。
「・・・・・・・・切る」
「!」
返事を待たずに歌恋から電話を切る。
『俺が、俺自身だって思えるように』
轟はそれが理由だってこと、分かってる。
(そっか・・・いま、自分の部屋にいるんだから、私一人。轟くんも・・・それなら)
もう一度電話をかければ、また電話の出る音が聞こえた。
「・・・・・・しょ、焦凍、くん・・・」
意を決して、名前で呼びかけてみる。
「っ・・・!」
轟という名字だけじゃない。血もなにも関係ないと思える大事な自分の名前。
「怒ってる・・・?」
「怒ってねぇよ、別に・・・」
そう聞いて、ホッとする。
「電話かけて、迷惑させてんじゃねーかって思った」
「そ、それはないっ。私が弱いから・・・捕まって・・・迷惑かけてるのは私、だよ・・・」
「何もされてねぇよな?」
ふと思い出すのは、一人で捕まってしまった時の、あのMr.コンプレスの表情。
怖かった・・・でも、いまは安心してる気持ちの方が大きくて。
「うん、大丈夫。一人じゃなかったから、爆豪くんも一緒だったから」
「そっか・・・」
そう、彼女を助けてるのは、爆豪の方が多い気がする。
「・・・名前、呼んでもらえるとは思わなかったけどな」
「だって・・・と・・・あ、焦凍くん黙ったままだったから。言わせようとしたでしょ」
「まぁ、それもある」
「あ、やっぱり」
普通にこうやって話せることが嬉しくて、思わず二人で笑ってしまう。
・・・いまなら、自分のことをちゃんと話せそうな気がする。