『私がセメントス先生を正面突破で、必ず後ろを振り向かせないようにする。
だから切島くんは硬化で、先生の後ろを取ってハンドカフスをかける！』
『俺だったら多少ガード出来るからな、任せろ！ぜってー捕まるな！』
『うんっ』

「･･･正面突破とは、甘くみられたものだな」
「先生を出し抜く方法が、これしか思い付かなかったので！」
セメントと幹とのぶつかり合い。
「っ･･･！！」
正直、歌恋の腕を変換させての幹は、相澤先生の布のように切り離しは不可。
出来たとしても、それは彼女にとって腕を無くすのと一緒である。
その為、敵からの攻撃はモロに歌恋にふりかかる。
体育祭で上鳴の攻撃を受けて手が麻痺状態になってしまったのはその為で。
だから、ヒーローとして不向きな"個性"なんだと親にも散々言われた。
「だけど･･･！」
迫りくるセメントの壁を体当たりで受け止める歌恋。
「負けっぱなしは、嫌なんです･･･！！」

(女に、男が負けられっかよ･･･！！)
万が一の為に、セメントスの背後を取る切島は硬化で。
(そのまま･･･！)
(いける･･･！！)

「甘い」
「「！！」」
切島からの攻撃を、セメントス先生自身が、セメントの球体を作り自身を守った。
「わっ･･･っ」
態勢が崩れ、おもいっきり転ぶ歌恋。
「イテェ！」
そのセメントの球体に、顔面から突っ込んでしまった切島。
(ダメだ、ダメだ！早く･･･！)
気持ちは焦ってるのに、これまでに感じたことのない腕の痛みの反動で"個性"にする力が出ない。

倒れて動けない二人の様子に、球体の中からセメントスが再び現れた。
「チェックメイトかな、お二人さん」
相手が、想像以上に強すぎた。もう二人に、なすすべはない。
「いいかい。戦闘っていうのは、いかに自分の得意を押しつけるかだよ」

八百万の策で、相澤先生を追い詰めていく二人。
「勝負は一瞬･･･よろしいですか？」
「ああ、文句なしだ」

一瞬、隙が出来た瞬間に轟が出した大氷壁で間合いを上手くつくれた。
相澤先生の"個性"に気をつけながら、二人は布を被り出ていく。
それでも先生の布に捕まってお互いにぶつかり合うが、一方は八百万が下でマネキンを縦に隠れていた。
そして、八百万特性の相澤先生を捕まえる為に創造で用意したカタパルトと大量の武器。
ただ、相澤先生を目の前にして八百万はカタパルトの発射を一度外してしまう。
避けられ、間合いをとられる前にもう一度発射させた。
「轟さん！！」
布に隠れたままの轟に、合図を送る。

「地を這う炎熱を！！」

(当てにこない。一体何を･･･)　
すると、八百万がカタパルトと発射させた相澤先生によくにた布の武器が固まる。

「先生相手に"個性"での攻撃を決め手にするのは極めて不安･･･。ですから、
二チノール合金、ご存知ですか？加熱によって瞬時に元の形状を復元する･･･形状記憶合金ですわ！」
相澤先生を、捕らえる事が出来た。
「･･･大したもんじゃないか」

「報告だよ。条件達成最初のチームは、轟・八百万チーム！」

セメントの中でも響くアナウンス。
(轟くん、条件達成･･･！倒れてる場合じゃないのに)
早く切島と、合流しなくちゃならないのに。
(腕が、痛い･･･)
たぶん、こんなのきっと、体育祭で見せた緑谷の戦いからしたら全然たいしたことないのかもしれないのに。

「YＥＡＨＨＨＨＨＨＨ」
「うっるさ･･･！！」
耳郎・口田ペア、プレゼント・マイクの特大な声量に何も出来ないでいた。
「口田！！あんたの"個性"で、鳥葬にでもしちゃえないの！？動物操れるんでしょ！？」
[命令出したくても、プレゼント・マイクの"声"で動物たちが逃げてっちゃう！]
なんて、口田は逆に小さな声で喋ってくる。
「耳を塞いでても鼓膜破けそう･･･！格上どころじゃなかった･･･！！
完っ全に上位五感！近づけもしない･･･！！」

そして、一度オールマイトを緑谷が爆豪のコテで爆破を起こし拍子をつけたかと思っていたが。
「素晴らしいぞ、少年たち！不本意ながら協力し、敵に立ち向かう･･･。
ただ！二人共！それは今試験の前提だからね。って、話だぞ」
ゴールギリギリで、オールマイトに捉えられた。
「あと、20分程かな･･･？さて･･･この暴れ馬たち、どう拘束したものか･･･」
そんな中に響いた、最初のチームの条件達成者たち。
「驚いた･･･相澤くんがやられたとは！ウカウカしてられないな･･･埋めるか！」

(何をされたか･･･わかんねぇ！！)
足で踏まれている爆豪は、どうにか立ち上がろうとする。
(圧倒的な速度･･･！)
だが、オールマイトも力で勝たせてもらえる程あまくなくて。
(耐久力もパワーも！圧倒的に！シンプル！シンプルな強さ！対峙して改めてわかる。
そうだよ。この男は、世界一高い壁だ！！)

「っそ･･･！！」
「･････なんて顔だよ少年･･･」
緑谷を突き飛ばすオールマイト。
「「最大火力で私を引き離しつつ、脱出ゲートをくぐる」これが君たちの答えだったようだが。
その「最大火力」も消えた。終わりだ！！」
「うるせぇ･･･」
「！？」
オールマイトが気付いた時には遅く、爆豪の爆破がオールマイトに襲いかかる。
「ぬう！？」
反動で思わず避けられたオールマイトに、爆豪も自由を取り戻し緑谷に寄った。

「ブッとばす」
「え！？」
「スッキリしねぇが、今の実力じゃまだこんな勝ち方しかねぇ」
「ちょ、ま、まさか」
「っ･････死ね！！！」
死ね！？
爆破と共に勢いよく放り投げられる緑谷。
「痛っ～！(マジか、かっちゃん･･･でも･･･！オールマイトが浮いた！
着地までの一秒か二秒！今なら･･･！！)」
間に合う、そう確信したのに。それでも、届かない。背後から迫った、オールマイトの殴り。
「いやいやあまいぞ、ヒーロー共！！」
「コテは「最大火力」をノーリスクで撃つ為だ。バカだったぜ。
リスクも取らずあんたに勝てるハズ、なかったわ」
コテもなしに、ズキズキ痛む両の腕。

「行け、デク！！」
二度目の最大火力。
「役に立てクソカス！！」
先ほどの腰に受けたオールマイトの殴りで、緑谷は足元がおぼつかなくなってしまっている。
オールマイトに追い付かれそうになる。それでも、爆豪が体当たりでオールマイトを止める。

「寝てな、爆豪少年。そういう身の滅ぼすやり方は、悪いが私的に少しトラウマもんでね」
地面に叩き伏せられても、爆豪はオールマイトの腕を離さない。
「早よ･･･行けやクソナード･･･！！折れて折れて、自分ねじ曲げてでも選んだ勝ち方で。
それすら敵わねぇなんて、嫌だ･･･！！」

(かっちゃん！！)
緑谷が選んだ道、それは。
「どいて下さい、オールマイト」
オールマイトにスマッシュを入れ、倒れた爆豪と共に最後までゴールを目指す事。
(気絶してる･･･ごめんよ、かっちゃん。僕ってやつは)

「(まったく！！あと一歩駆けていればクリア出来てたかもしれんのに！！)
思い切り殴ったね･･･(そうだよ。初めからそうだったよ･･･君は"救けてしまう")」

そしてその時、そこに壁など一つもないんだ。