第六話 職場体験と過去
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「・・・麗日はさ、緑谷の事デクくんって呼んでるじゃん?それはいいの?」
「・・・あだ名みたいなものだし。ヤオモモだって、そうだよ」
「あだ名、ねぇ・・・アイツ、ヒーロー名も名前だもんなぁ。歌恋が臆病になるのはそれが原因か」
黙って歌恋は頷く。昔の、中学時代の自分の情けない過ち。
それ以来、クラスで一人になりやり過ごし、お腹がすぐ鳴る"個性"も使わなかった。
イジメられるのが怖くて、それなら誰ともつるまないで。
「それ、轟には話したの?」
「話してない」
「どうして?」
「・・・轟くんにあんな偉そうなこと、わかったような事言っておいて、結局は自分が逃げてたから。
意地汚い女になってるよね、アハハ・・・」
「まぁ・・・歌恋が轟に話す話さないは自由だけど、どちらにしてもウチはもう何も言わないよ。
それは歌恋が決める事だし、ウチのせいにされても困る。でも、一つだけ。
自由だって言ったけど、話してみないでアイツの意見聞いてやんないでそんなんじゃ、損じゃない?」
「・・・うん・・・」
話して、相手の出方伺ってそれでダメだったら・・・もう話せなくなるかもしれないけど。
疲れもあり、既に夜の23時前には二人して眠くなってしまう。
すっかり睡眠モードに入っている耳郎を起こさないようにそ~っと部屋を出る。
もちろん、手にはスマホを握りしめて。緑谷からの報告ではいま三人、病院に居るとあった。
「・・・こんな深夜に、病院にいる人に電話しちゃやっぱダメかな・・・」
なんだかんだいいつつ、耳郎が後押ししてくれた。話そうと思ってるいまがベストな時だと思ったからで。
「・・・・・・・・(無性に声が聞きたい・・・)」
震えながら、轟の名前を押す。
「っ・・・」
スマホの画面に映される歌恋の名前。出るべきか出ないべきかで思い悩む。
(・・・出ない、よね・・・こんな時間だもん)
出ないと察して、電話を切る。
(明日も早いし、私も寝よう)
諦めて、もう一度スマホを確認すれば轟の名前が出てた。折り返しの電話-・・・。
「も、もしもし・・・?」
「・・・わりぃ、すぐ出てやれなくて・・・」
久しぶりに聞いた声に、どうしてこんなに安心するんだろう。
「お・・・お話しても、大丈夫ですか・・・?」
「・・・あぁ」
「緑谷くんから状況は聞いてて・・・まだ病院、ですよね?」
「もうすぐ、俺は退院できるけどな。つぅか、なんで今さら敬語なんだよ。
(まぁ、あんな事言っちまった後だし、こっちもそれなりに許してねぇし)」
「・・・っ・・・あとになってしまうけど・・・電話じゃ申し訳ないので、直接お話したいことがあるんですが・・・。
聞いて、くれますか・・・?」
震えてるような、こんな改まった喋りに本当に電話の向こうは歌恋なのか疑ってしまう。
「・・・アンタ・・・本当に登坂か?」
「そう、です・・・ごめんなさい・・・。電話、ありがとう・・・それだけ伝えておきたくて。それじゃあ」
「おいっ・・・切れた・・・なんだ、アイツ?職場体験中に頭打ったか?
(俺に、後で直接話したい事・・・?名前を呼べない事・・・?)」
あんな、自分から彼女を突き放す言い方してしまったのに。
本当は、電話するのだって怖かったろうに。
(・・・普通に電話して、話しちまった・・・)
会えない時間が長いこの期間中に、お互い自然消滅するかのようにこの複雑な気持ちの原因忘れると思った。
また、入学当初のあの何も知らなかった頃の自然な間柄に戻るのが一番だと思ったから。
けど、やっぱり・・・我慢していた糸が、プチっと切れる音がして。
それでも、どう接してやるのが正解なのか分かんなくて。
(俺だって、本当は・・・でも)
『ヤオモモみたいな美女の方が似合うよ』なんて、本人の気も知らないでふざけるなって話で。
「・・・わかんねぇ。俺、どうすりゃいいんだ?」
更に時は経ち、歌恋と耳郎は職場体験最終日の今日、デステゴロに挨拶を終えていた。
「終わった・・・!」
日々鍛練、日々訓練のデステゴロについていくのは正直ツラかったけど、
学校では教えてくれない基礎のトレーニング方を嫌というほど学べた。
きっとプロヒーローになるって、そういう事なんだと。日々己との向き合いが大事なんだと。
「もっと体力つけないとダメだな、私も・・・」
「明日からもう学校じゃん?どっかでパーっとストレス発散しようよ!
歌恋はさ、歌える?いま、凄い大声出したい気分なんだよね!」
「えぇ!?私、すっごい音痴だよ・・・!?」
「いいっていいって、二人なんだし!行こっ」
そうして耳郎との歌合戦が始まった。正直、耳郎の歌の上手さにビビったことは内緒だ。
それから翌日、学校にて。
爆豪の変わり果てた髪型を見て、大爆笑中の瀬呂と切島がいる。
「「アッハッハッハッマジか!!マジか爆豪!!」」
「ひーひーっ!!」
「笑うな!クセついちまって洗っても直んねぇんだ」
髪型のせいもあるのか、いつもの迫力が爆豪にまったくない。尚、笑い続ける二人。
「おい、笑うな。ブッ殺すぞ」
「やってみろよ8:2坊や!!」
「アッハハハハ!!」
我慢ならず怒り任せに二人を襲う爆豪の髪型が、そこでようやく反動で戻る。
「「戻ったー!!」」
「へぇー、ヴィラン退治までやったんだ、うらやましいなぁ!」
クラスの話題は職場体験の話で持ちきりで、来た早々に芦戸に耳郎と共に捕まっていた。
「避難誘導とか後方支援で、実際交戦はしなかったけどね」
「デステゴロさん、頑なに戦いには手出しするなよ、だったし」
「それでもすごいよー!」
「梅雨ちゃんは?」
「私も、トレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」
「「「それすごくない!!?」」」
さらっと何事もないように蛙吹が言うものだから、突っ込んでしまった。
「お茶子ちゃんはどうだったの?この一週間」
蛙吹が見る方に顔を向けてみれば、麗日の様子が可笑しい。
「とても有意義だったよ」
「目覚めたのね、お茶子ちゃん」
武道のポーズがやたらしっくりくる麗日を、遠巻きに峰田と上鳴もみていて。
「たった一週間で変化すげぇな・・・」
「変化?違うぜ、上鳴。女ってのは・・・元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」
「Mt.レディのとこで何見た。俺は割りとチヤホヤされて楽しかったけどなー。
ま、一番変化というか、大変だったのは・・・お前ら三人だな!」
と、話題は緑谷、飯田、轟の三人に集まる。爆豪に捕らえられてる瀬呂も切島も話に加わり。
「そうそう、ヒーロー殺し!!」
「命あって何よりだぜ、マジでさ。エンデヴァーが助けてくれたんだってな!さすが、No.2だぜ!」
ふと、歌恋も轟の席に集まっている三人に目を向ける。
(・・・エンデヴァー・・・)
「・・・そうだな、救けられた」
「うん」
お父さんの事を少しずつ受け入れられるようになった轟の言葉に、緑谷はほんのり嬉しそうにうなずいた。
「・・・心配しましたわ」
そう、八百万も言葉を漏らし、尾白が言う。
「俺、ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺し、ヴィラン連合ともつながってたんだろ?
もし、あんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」
「でもさぁ、確かに怖ぇけどさ、尾白動画見た?アレ見ると一本気っつーか、
執念っつーか、かっこよくね?とか、思っちゃわね?」
「上鳴くん・・・!」
「え?」
緑谷の焦りの声で、上鳴はハッとする。
「あっ・・・飯・・・ワリ!」
「いや・・・いいさ。確かに執念の男ではあった・・・クールだと思う人がいるのもわかる。
ただ奴は、信念の果てに"粛清"という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。
俺のような者をこれ以上出さぬ為にも!!改めてヒーローへの道を俺は歩む!!」
「飯田くん・・・!」
「さァそろそろ始業だ、席につきたまえ!!」
(席に座るのが一番落ちつかないって、なんだかなぁ・・・)
話すとは電話で伝えたけど、話すタイミングがなかなかない。
教室では、皆がいるときには話ずらいところもあるから。
「・・・あだ名みたいなものだし。ヤオモモだって、そうだよ」
「あだ名、ねぇ・・・アイツ、ヒーロー名も名前だもんなぁ。歌恋が臆病になるのはそれが原因か」
黙って歌恋は頷く。昔の、中学時代の自分の情けない過ち。
それ以来、クラスで一人になりやり過ごし、お腹がすぐ鳴る"個性"も使わなかった。
イジメられるのが怖くて、それなら誰ともつるまないで。
「それ、轟には話したの?」
「話してない」
「どうして?」
「・・・轟くんにあんな偉そうなこと、わかったような事言っておいて、結局は自分が逃げてたから。
意地汚い女になってるよね、アハハ・・・」
「まぁ・・・歌恋が轟に話す話さないは自由だけど、どちらにしてもウチはもう何も言わないよ。
それは歌恋が決める事だし、ウチのせいにされても困る。でも、一つだけ。
自由だって言ったけど、話してみないでアイツの意見聞いてやんないでそんなんじゃ、損じゃない?」
「・・・うん・・・」
話して、相手の出方伺ってそれでダメだったら・・・もう話せなくなるかもしれないけど。
疲れもあり、既に夜の23時前には二人して眠くなってしまう。
すっかり睡眠モードに入っている耳郎を起こさないようにそ~っと部屋を出る。
もちろん、手にはスマホを握りしめて。緑谷からの報告ではいま三人、病院に居るとあった。
「・・・こんな深夜に、病院にいる人に電話しちゃやっぱダメかな・・・」
なんだかんだいいつつ、耳郎が後押ししてくれた。話そうと思ってるいまがベストな時だと思ったからで。
「・・・・・・・・(無性に声が聞きたい・・・)」
震えながら、轟の名前を押す。
「っ・・・」
スマホの画面に映される歌恋の名前。出るべきか出ないべきかで思い悩む。
(・・・出ない、よね・・・こんな時間だもん)
出ないと察して、電話を切る。
(明日も早いし、私も寝よう)
諦めて、もう一度スマホを確認すれば轟の名前が出てた。折り返しの電話-・・・。
「も、もしもし・・・?」
「・・・わりぃ、すぐ出てやれなくて・・・」
久しぶりに聞いた声に、どうしてこんなに安心するんだろう。
「お・・・お話しても、大丈夫ですか・・・?」
「・・・あぁ」
「緑谷くんから状況は聞いてて・・・まだ病院、ですよね?」
「もうすぐ、俺は退院できるけどな。つぅか、なんで今さら敬語なんだよ。
(まぁ、あんな事言っちまった後だし、こっちもそれなりに許してねぇし)」
「・・・っ・・・あとになってしまうけど・・・電話じゃ申し訳ないので、直接お話したいことがあるんですが・・・。
聞いて、くれますか・・・?」
震えてるような、こんな改まった喋りに本当に電話の向こうは歌恋なのか疑ってしまう。
「・・・アンタ・・・本当に登坂か?」
「そう、です・・・ごめんなさい・・・。電話、ありがとう・・・それだけ伝えておきたくて。それじゃあ」
「おいっ・・・切れた・・・なんだ、アイツ?職場体験中に頭打ったか?
(俺に、後で直接話したい事・・・?名前を呼べない事・・・?)」
あんな、自分から彼女を突き放す言い方してしまったのに。
本当は、電話するのだって怖かったろうに。
(・・・普通に電話して、話しちまった・・・)
会えない時間が長いこの期間中に、お互い自然消滅するかのようにこの複雑な気持ちの原因忘れると思った。
また、入学当初のあの何も知らなかった頃の自然な間柄に戻るのが一番だと思ったから。
けど、やっぱり・・・我慢していた糸が、プチっと切れる音がして。
それでも、どう接してやるのが正解なのか分かんなくて。
(俺だって、本当は・・・でも)
『ヤオモモみたいな美女の方が似合うよ』なんて、本人の気も知らないでふざけるなって話で。
「・・・わかんねぇ。俺、どうすりゃいいんだ?」
更に時は経ち、歌恋と耳郎は職場体験最終日の今日、デステゴロに挨拶を終えていた。
「終わった・・・!」
日々鍛練、日々訓練のデステゴロについていくのは正直ツラかったけど、
学校では教えてくれない基礎のトレーニング方を嫌というほど学べた。
きっとプロヒーローになるって、そういう事なんだと。日々己との向き合いが大事なんだと。
「もっと体力つけないとダメだな、私も・・・」
「明日からもう学校じゃん?どっかでパーっとストレス発散しようよ!
歌恋はさ、歌える?いま、凄い大声出したい気分なんだよね!」
「えぇ!?私、すっごい音痴だよ・・・!?」
「いいっていいって、二人なんだし!行こっ」
そうして耳郎との歌合戦が始まった。正直、耳郎の歌の上手さにビビったことは内緒だ。
それから翌日、学校にて。
爆豪の変わり果てた髪型を見て、大爆笑中の瀬呂と切島がいる。
「「アッハッハッハッマジか!!マジか爆豪!!」」
「ひーひーっ!!」
「笑うな!クセついちまって洗っても直んねぇんだ」
髪型のせいもあるのか、いつもの迫力が爆豪にまったくない。尚、笑い続ける二人。
「おい、笑うな。ブッ殺すぞ」
「やってみろよ8:2坊や!!」
「アッハハハハ!!」
我慢ならず怒り任せに二人を襲う爆豪の髪型が、そこでようやく反動で戻る。
「「戻ったー!!」」
「へぇー、ヴィラン退治までやったんだ、うらやましいなぁ!」
クラスの話題は職場体験の話で持ちきりで、来た早々に芦戸に耳郎と共に捕まっていた。
「避難誘導とか後方支援で、実際交戦はしなかったけどね」
「デステゴロさん、頑なに戦いには手出しするなよ、だったし」
「それでもすごいよー!」
「梅雨ちゃんは?」
「私も、トレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」
「「「それすごくない!!?」」」
さらっと何事もないように蛙吹が言うものだから、突っ込んでしまった。
「お茶子ちゃんはどうだったの?この一週間」
蛙吹が見る方に顔を向けてみれば、麗日の様子が可笑しい。
「とても有意義だったよ」
「目覚めたのね、お茶子ちゃん」
武道のポーズがやたらしっくりくる麗日を、遠巻きに峰田と上鳴もみていて。
「たった一週間で変化すげぇな・・・」
「変化?違うぜ、上鳴。女ってのは・・・元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」
「Mt.レディのとこで何見た。俺は割りとチヤホヤされて楽しかったけどなー。
ま、一番変化というか、大変だったのは・・・お前ら三人だな!」
と、話題は緑谷、飯田、轟の三人に集まる。爆豪に捕らえられてる瀬呂も切島も話に加わり。
「そうそう、ヒーロー殺し!!」
「命あって何よりだぜ、マジでさ。エンデヴァーが助けてくれたんだってな!さすが、No.2だぜ!」
ふと、歌恋も轟の席に集まっている三人に目を向ける。
(・・・エンデヴァー・・・)
「・・・そうだな、救けられた」
「うん」
お父さんの事を少しずつ受け入れられるようになった轟の言葉に、緑谷はほんのり嬉しそうにうなずいた。
「・・・心配しましたわ」
そう、八百万も言葉を漏らし、尾白が言う。
「俺、ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺し、ヴィラン連合ともつながってたんだろ?
もし、あんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」
「でもさぁ、確かに怖ぇけどさ、尾白動画見た?アレ見ると一本気っつーか、
執念っつーか、かっこよくね?とか、思っちゃわね?」
「上鳴くん・・・!」
「え?」
緑谷の焦りの声で、上鳴はハッとする。
「あっ・・・飯・・・ワリ!」
「いや・・・いいさ。確かに執念の男ではあった・・・クールだと思う人がいるのもわかる。
ただ奴は、信念の果てに"粛清"という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。
俺のような者をこれ以上出さぬ為にも!!改めてヒーローへの道を俺は歩む!!」
「飯田くん・・・!」
「さァそろそろ始業だ、席につきたまえ!!」
(席に座るのが一番落ちつかないって、なんだかなぁ・・・)
話すとは電話で伝えたけど、話すタイミングがなかなかない。
教室では、皆がいるときには話ずらいところもあるから。