第六話 職場体験と過去
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『話さねぇ方がいいか?』
(・・・言わせてしまった・・・)
数秒、時が止まったような彼女の目の前で、耳郎が手を振った。
「おーい」
「!?ご、ごめん!」
「いや、いいけど。何かあった?毎回なんかない、轟と」
「えっ」
「いやぁ、バカじゃない限りウスウスは」
「え、あ、あれだよ!響香ちゃんが上鳴くんいじる感じ?」
「ふ~ん?」
「響香ちゃんっ」
「ハイハイ。んで、どうする?」
「うん、響香ちゃんと一緒のデステゴロの事務所でいいかな」
皆、職場体験先が決まり当日。コスチュームもしっかり持ち、出発を迎えていた。期間は一週間。
「来たぜ来たぜ、この時がよぉ~・・・」
異様なテンションを隠しきれてない峰田を見て、麗日に確認する歌恋。
「峰田くんの職場体験って確か・・・」
「Mt.レディだよ」
「そうだった・・・」
クラス一性欲の強い彼は、女子皆近寄りがたい存在。なんで彼が隣なのか、悲しいくらいだ。
(もう一人誰かいれば緑谷くんが隣だったのになぁ)
「いいか、くれぐれも迷惑かけんように」
「はーい!」
元気に返事する芦戸に、注意する相澤先生。
「「はい」だ、芦戸」
同じ事務所を選んでくれた耳郎と一緒に行動を共に出きることが嬉しい。
デステゴロの事務所は比較的雄英の最寄り駅から近くて助かった。
「遠い人は遠いもんなー」
「常闇くんなんて、九州だって教えてくれたよ」
「麗日もさ、武闘派ヒーローガンヘッドだもんね」
電車の中で楽しくおしゃべりもあっという間。
「ここだ、事務所」
地図を確認しながら耳郎が言う。本当はもっと二人でおしゃべりしたかった。
他にも、彼女になら出きると思った相談も山のようにあったが、一先ずビシッと背筋を伸ばす。
「いい?」
耳郎が顔を合わせ、歌恋は頷く。
「うん!」
「失礼しまーす」
「おお、よく来たな待ってたぞ!!」
(デカイ・・・)
書類に目を通していたデステゴロが顔を上げ、そんな背の高い彼に歌恋は目を丸くしていた。
「女の子二人がオレんとこ選んでくれるとはなぁ!ビシバシ鍛えてやるからな!」
ニカッと微笑んでくれるが、耳郎と二人で顔を合わせる。
((・・・大丈夫、だよね・・・?))
「そう脅すな、デステゴロ」
「なに言ってんだ、彼女を推薦してやったんは、アンタの為でもあるんだぜ?
事務所持たないフリーのシンリンカムイくん」
「そういうな」
デステゴロの巨体に気付くのが遅くなってしまった。だけど、間違いない。
「・・・シンリン・・・カムイ・・・?」
まさかまさか、事件もないのにこんなに普通に会えるなんて思ってなかった。
「デステゴロに推薦だけでもって、お願いしたんだよ。同じ樹を扱う者が嬉しくてな」
「わ、わわわ私もです!!会えてとっても嬉しいです!!わ、わー!」
嬉しくて、耳郎の背中をバシバシ叩く歌恋。
「わ、わかった、痛いって!(こんなキラキラした顔、初めて見たよっ)」
「本当は"個性"を一緒に使ってやりたいが」
「ダメだぞ。こいつらの担任に俺が怒られる」
「そういう事なんだ。ごめんな」
「いえ、いえ、いいんですっ。ここで一週間頑張ります!」
「まぁ、今日はもう時間も時間だ。基本の仕事はパトロールからだが、身体作りも基本の一つ!
さっそくコスチュームに着替えてもらって、パトロールしながらジョギングだ!」
「「・・・は?」」
しょうがない、これは授業ではないのでデステゴロのやり方についていく。それが、職場体験。
「遅いぞー!!」
「「はいっ!!」」
もしかしたら、とんでもないところを選んでしまったのかもしれない。
いや、ヒーローになったらこれは避けて通れぬ道だ。
パトロールに向け、職場を出る三人。
「ヒーローは日々訓練!日々鍛練だ!パトロール中といえども、それはかわん!」
「「はいっ!!」」
もう二人は返事しか出来ない状況になってしまっている。
口には今出せないが、耳郎は心の中で悲鳴を上げていた。
(ヒィ~、授業よりキツいじゃんかぁ~!)
(考えない考えない、他の事考えよう)
シンリンカムイに会えたんだ。いまはそれの喜びを少しでも味わいながら。
一方、エンデヴァーの事務所を選んだ轟。目の前にはさぞ嬉しそうな父親がいる。
「待っていたぞ焦凍。ようやく覇道を進む気になったか」
「アンタがつくった道を進む気はねぇ」
『君の力じゃないか!』
緑谷がいってくれたあの言葉が、強く心に残ってる。だから・・・。
「俺は俺の道を進む」
緑谷の言葉もそうだが、歌恋に自分の過去を当て付けてしまったのも忘れないために。
『もう忘れちゃったよ』
あんな笑顔で何もなかったかのように振る舞って。少し距離が近付いたと思ったから。
『俺が俺自身だって思えるように』
あんなお願いしてみたが、結局は歌恋の事何にも知らなくて。
男が生理的に受け入れられないって訳じゃないんだろうが(普通に会話してるし)、
男の名前を呼ぶだけであんな動揺する理由が何かあるハズだろう。
聞きそびれてしまったが、職場体験が終わるのは一週間後。
(長いな・・・)
それまで会えないのか。
「焦凍、聞こえてるのか」
「えっ」
「お前も準備しろと言ったんだ。出かけるぞ」
「・・・どこへ?」
「ヒーローというものを見せてやる」
ジョギングしながらのパトロールという無茶振りな初体験を終え、
事務所に戻った途端力尽きた二人は膝から崩れ落ちる。
「つ・・・辛い・・・」
「ヒーロー・・・これが、ヒーロー・・・」
「むぅ、この後はまだ筋トレが残っているのだが・・・」
「「無理です!!」」
キッパリ断らなければ死が目の前を通り越しそうだった。
「ガハハッ!今日はこのへんでお開きだな!とりあえず荷物まとめな。部屋を案内してやる」
(順序逆じゃない・・・?)
なんて、さすがに突っ込めない。
それよか、雄英の職場体験をこれまでにも受け入れ可にしている成績もある為か、
宿泊先もご丁寧にご用意されていた。ホテル代が浮くだけありがたい。
「女の子二人なら、一緒の部屋でもいいだろう?」
「あ、はい!私は大丈夫ですけど」
チラッと、耳郎の様子を伺う。
「ウチも大丈夫っス」
夜はやっと、事務所も静かに落ち着いた。どうか夜にヴィランが出ませんようにと願いながら。
「疲れたね~」
伸びをしながら自由時間を惜しむように歌恋が言うと、耳郎がしみじみ言った。
「授業より辛いと思わなかった・・・」
「確かに」
そう、いま、耳郎と二人で会話できる絶好のチャンス。だが、今日ハードな一日でもあったため眠気もスゴい。
「明日寝坊しないようにもう寝るわ、おやすみ」
「えぇ、早いっ」
「んー?何で」
「・・・ヤオモモがいないいま、響香ちゃんに聞いて欲しい話しいっぱいあるのに・・・」
「あぁ、元気だなぁ歌恋は。轟絡みだろ?」
「う、うん・・・」
「うまく思考回せてやれないから、寝るよ」
強気のある口調とは裏腹に、耳郎の目はとろんといまにも半分寝てそうな状態だ。
(うぅ・・・しょうがないかぁ・・・)
「あぁ・・・でもウチ、その事に関しては全く首突っ込まないからね」
「!?べ、べべべ別に轟くんとそんなんじゃないよぉ!?」
「ハイハイ。んじゃ、おやすみ」
職場体験も、二、三日同じような時間を過ごせばなれてくる。
デステゴロの指導は相変わらず厳しいが、理論は通ってる為反論の余地がない。
さすが現プロヒーローだ。
(これだけ体力作りなんて、今までと学校でしたことなかった・・・これから地道に体力作りしていこう)
基礎の体力がなくては人助けだって、ヴィラン退治だってままならないだろう。
「身体ズタボロ」
「私もだ」
すると、ポケットに入れていたスマホが鳴る。
「ん?」
タイミングよく出られる状態だったのでラインを開いた。
「緑谷くん・・・?」
「え?」
「多分、これ皆に送ったのかな?」
歌恋は緑谷からのラインを耳郎に見せ、耳郎も自分のスマホを確認する。
(・・・言わせてしまった・・・)
数秒、時が止まったような彼女の目の前で、耳郎が手を振った。
「おーい」
「!?ご、ごめん!」
「いや、いいけど。何かあった?毎回なんかない、轟と」
「えっ」
「いやぁ、バカじゃない限りウスウスは」
「え、あ、あれだよ!響香ちゃんが上鳴くんいじる感じ?」
「ふ~ん?」
「響香ちゃんっ」
「ハイハイ。んで、どうする?」
「うん、響香ちゃんと一緒のデステゴロの事務所でいいかな」
皆、職場体験先が決まり当日。コスチュームもしっかり持ち、出発を迎えていた。期間は一週間。
「来たぜ来たぜ、この時がよぉ~・・・」
異様なテンションを隠しきれてない峰田を見て、麗日に確認する歌恋。
「峰田くんの職場体験って確か・・・」
「Mt.レディだよ」
「そうだった・・・」
クラス一性欲の強い彼は、女子皆近寄りがたい存在。なんで彼が隣なのか、悲しいくらいだ。
(もう一人誰かいれば緑谷くんが隣だったのになぁ)
「いいか、くれぐれも迷惑かけんように」
「はーい!」
元気に返事する芦戸に、注意する相澤先生。
「「はい」だ、芦戸」
同じ事務所を選んでくれた耳郎と一緒に行動を共に出きることが嬉しい。
デステゴロの事務所は比較的雄英の最寄り駅から近くて助かった。
「遠い人は遠いもんなー」
「常闇くんなんて、九州だって教えてくれたよ」
「麗日もさ、武闘派ヒーローガンヘッドだもんね」
電車の中で楽しくおしゃべりもあっという間。
「ここだ、事務所」
地図を確認しながら耳郎が言う。本当はもっと二人でおしゃべりしたかった。
他にも、彼女になら出きると思った相談も山のようにあったが、一先ずビシッと背筋を伸ばす。
「いい?」
耳郎が顔を合わせ、歌恋は頷く。
「うん!」
「失礼しまーす」
「おお、よく来たな待ってたぞ!!」
(デカイ・・・)
書類に目を通していたデステゴロが顔を上げ、そんな背の高い彼に歌恋は目を丸くしていた。
「女の子二人がオレんとこ選んでくれるとはなぁ!ビシバシ鍛えてやるからな!」
ニカッと微笑んでくれるが、耳郎と二人で顔を合わせる。
((・・・大丈夫、だよね・・・?))
「そう脅すな、デステゴロ」
「なに言ってんだ、彼女を推薦してやったんは、アンタの為でもあるんだぜ?
事務所持たないフリーのシンリンカムイくん」
「そういうな」
デステゴロの巨体に気付くのが遅くなってしまった。だけど、間違いない。
「・・・シンリン・・・カムイ・・・?」
まさかまさか、事件もないのにこんなに普通に会えるなんて思ってなかった。
「デステゴロに推薦だけでもって、お願いしたんだよ。同じ樹を扱う者が嬉しくてな」
「わ、わわわ私もです!!会えてとっても嬉しいです!!わ、わー!」
嬉しくて、耳郎の背中をバシバシ叩く歌恋。
「わ、わかった、痛いって!(こんなキラキラした顔、初めて見たよっ)」
「本当は"個性"を一緒に使ってやりたいが」
「ダメだぞ。こいつらの担任に俺が怒られる」
「そういう事なんだ。ごめんな」
「いえ、いえ、いいんですっ。ここで一週間頑張ります!」
「まぁ、今日はもう時間も時間だ。基本の仕事はパトロールからだが、身体作りも基本の一つ!
さっそくコスチュームに着替えてもらって、パトロールしながらジョギングだ!」
「「・・・は?」」
しょうがない、これは授業ではないのでデステゴロのやり方についていく。それが、職場体験。
「遅いぞー!!」
「「はいっ!!」」
もしかしたら、とんでもないところを選んでしまったのかもしれない。
いや、ヒーローになったらこれは避けて通れぬ道だ。
パトロールに向け、職場を出る三人。
「ヒーローは日々訓練!日々鍛練だ!パトロール中といえども、それはかわん!」
「「はいっ!!」」
もう二人は返事しか出来ない状況になってしまっている。
口には今出せないが、耳郎は心の中で悲鳴を上げていた。
(ヒィ~、授業よりキツいじゃんかぁ~!)
(考えない考えない、他の事考えよう)
シンリンカムイに会えたんだ。いまはそれの喜びを少しでも味わいながら。
一方、エンデヴァーの事務所を選んだ轟。目の前にはさぞ嬉しそうな父親がいる。
「待っていたぞ焦凍。ようやく覇道を進む気になったか」
「アンタがつくった道を進む気はねぇ」
『君の力じゃないか!』
緑谷がいってくれたあの言葉が、強く心に残ってる。だから・・・。
「俺は俺の道を進む」
緑谷の言葉もそうだが、歌恋に自分の過去を当て付けてしまったのも忘れないために。
『もう忘れちゃったよ』
あんな笑顔で何もなかったかのように振る舞って。少し距離が近付いたと思ったから。
『俺が俺自身だって思えるように』
あんなお願いしてみたが、結局は歌恋の事何にも知らなくて。
男が生理的に受け入れられないって訳じゃないんだろうが(普通に会話してるし)、
男の名前を呼ぶだけであんな動揺する理由が何かあるハズだろう。
聞きそびれてしまったが、職場体験が終わるのは一週間後。
(長いな・・・)
それまで会えないのか。
「焦凍、聞こえてるのか」
「えっ」
「お前も準備しろと言ったんだ。出かけるぞ」
「・・・どこへ?」
「ヒーローというものを見せてやる」
ジョギングしながらのパトロールという無茶振りな初体験を終え、
事務所に戻った途端力尽きた二人は膝から崩れ落ちる。
「つ・・・辛い・・・」
「ヒーロー・・・これが、ヒーロー・・・」
「むぅ、この後はまだ筋トレが残っているのだが・・・」
「「無理です!!」」
キッパリ断らなければ死が目の前を通り越しそうだった。
「ガハハッ!今日はこのへんでお開きだな!とりあえず荷物まとめな。部屋を案内してやる」
(順序逆じゃない・・・?)
なんて、さすがに突っ込めない。
それよか、雄英の職場体験をこれまでにも受け入れ可にしている成績もある為か、
宿泊先もご丁寧にご用意されていた。ホテル代が浮くだけありがたい。
「女の子二人なら、一緒の部屋でもいいだろう?」
「あ、はい!私は大丈夫ですけど」
チラッと、耳郎の様子を伺う。
「ウチも大丈夫っス」
夜はやっと、事務所も静かに落ち着いた。どうか夜にヴィランが出ませんようにと願いながら。
「疲れたね~」
伸びをしながら自由時間を惜しむように歌恋が言うと、耳郎がしみじみ言った。
「授業より辛いと思わなかった・・・」
「確かに」
そう、いま、耳郎と二人で会話できる絶好のチャンス。だが、今日ハードな一日でもあったため眠気もスゴい。
「明日寝坊しないようにもう寝るわ、おやすみ」
「えぇ、早いっ」
「んー?何で」
「・・・ヤオモモがいないいま、響香ちゃんに聞いて欲しい話しいっぱいあるのに・・・」
「あぁ、元気だなぁ歌恋は。轟絡みだろ?」
「う、うん・・・」
「うまく思考回せてやれないから、寝るよ」
強気のある口調とは裏腹に、耳郎の目はとろんといまにも半分寝てそうな状態だ。
(うぅ・・・しょうがないかぁ・・・)
「あぁ・・・でもウチ、その事に関しては全く首突っ込まないからね」
「!?べ、べべべ別に轟くんとそんなんじゃないよぉ!?」
「ハイハイ。んじゃ、おやすみ」
職場体験も、二、三日同じような時間を過ごせばなれてくる。
デステゴロの指導は相変わらず厳しいが、理論は通ってる為反論の余地がない。
さすが現プロヒーローだ。
(これだけ体力作りなんて、今までと学校でしたことなかった・・・これから地道に体力作りしていこう)
基礎の体力がなくては人助けだって、ヴィラン退治だってままならないだろう。
「身体ズタボロ」
「私もだ」
すると、ポケットに入れていたスマホが鳴る。
「ん?」
タイミングよく出られる状態だったのでラインを開いた。
「緑谷くん・・・?」
「え?」
「多分、これ皆に送ったのかな?」
歌恋は緑谷からのラインを耳郎に見せ、耳郎も自分のスマホを確認する。